初心者しかいない世界
ジュンさんの視点に戻ります。イチャイチャが書きたい・・・でも百合は趣味じゃない・・・アアア
「ギガアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
子鬼の洞窟のボス。大鬼が威圧スキルを使用して叫ぶ。ボス部屋に入った時しか使わないが、叫び終わるまで硬直するのは、何度やられても気分が悪い。雑魚の癖に・・・。
硬直が終わるや否や、颯爽とボスに向かって走り出す。大鬼は手に持った棍棒で敵を迎撃する。
力はあるのだが、遅いし直線的な攻撃。そんな攻撃当たるわけないよなぁ・・・。
作業感の増したダンジョン周回で、軽く欠伸をしながら棍棒を避ける。
「あかん・・・さすがに眠いな・・・緊張感がなさ過ぎて・・・さっさと終わらせて今日は帰るかな・・・」
大鬼の体長が3mほど。持っている棍棒がトゲのついた禍々しいものだ。その私の体より大きな棍棒に殴られたら、一撃でぺちゃんこになるだろう。
まぁ・・当たるわけないんやけどな・・・。
棍棒をギリギリのところでスライディングして、足元に潜り込む。目の前にある太ももを切り刻む。
大鬼はたまらず片膝をつく。その片膝を足場にして飛び、肩に乗っかるとひたすら首に攻撃を加える。
倒せるまで、ひたすらこれの繰り返しだ。
十数分後、大鬼は倒れ、宝箱が出現する。中身はダンジョンノクリア報酬。大概は装備なので、イベントリに入れ、後で町で売る。
「お・・・。これはラッキーやな。スキルオーブか・・・いい値段で売れるやろか」
0.5%ほどの確率ででる、スキルを習得できるレアアイテム。とは言っても大概はゴミだし、そんな確率でしか落ちないアイテムを、わざわざ狙う人もおらん。
「こんな低級ダンジョンで落ちるもんに、何の価値もないしな・・・帰ろ・・・」
ステータスを見ると・・・。
タチバナ ジュン /種族 ハーフエルフ /性別 女性
職業 なし
レベル 28
HP 660/660
MP 108/108
STR 69
VIT 153
AGI 48
INT 68
MND 38
≪ユニークスキル≫【幽体化】【健体】
≪スキル≫【気配察知】【カウンター】
「う~・・・あと4週くらいかぁ・・・死体が残るのが邪魔やし・・・返り血でベタベタやし・・・なんでダンジョンだけこんなリアルなんやろか・・・というかこの世界は現実やったな・・・はぁ・・・」
予定が狂うことに若干がっかりしながら、町に帰ることにした。
宿に帰ると、ポンコツ聖騎士が寝ていた。そう言えば・・・。
「つーかなんで寝てんねん・・・起きろー」
体を揺さぶる。起きなければ無視して飯食いに行こ・・・。
「んぅ・・・。あれ・・・」
体を起こし、目をコシコシする聖騎士。可愛いさ余って憎さ100万倍とはこういう事か・・?
「お腹すきました・・・」
若干イラっとするが、これ以上ストーカーされてもめんどいので、ちゃんと話し合いをしよか・・・。
「飯行くで!さっさと目ぇさまし!」
服を脱ぎ、サッと汗を濡れた布で拭く。血でかぴかぴになったインナーはあとで捨てるとして・・・。防具も予備持っといたほうがいいか?手入れする時間がもったいないしな・・・。
綺麗な服に着替え、夕食を食べに行く準備をする。
「ご飯・・・オカネナイ・・・」
「知っとるわ!奢ったるから行くで!」
昨日来たレストランに入る。ドレスコードとかは無いようやけど、さすがに血まみれ汗まみれでは入れないだろう。
ウエイターに案内され、席に着く。
「おススメで。あんたはどうする?何頼んでもええで」
「では私も同じものを・・・。こんな高級店でご馳走になっていいのでしょうか・・・」
かしこまりました。と言いウエイターが去っていく。
「高級?一食たかだか金貨1枚やろ?はした金やん」
「ええ・・・。金貨一枚稼ぐのに何日かかる事やら・・・」
今日のダンジョン周回の素材だけでも金貨30枚程度稼げたし、前世のLWでは常にイベントリには10万金は入れてた。倉庫に貯金していた分合わせると200万金・・・金貨200万枚は持っていたわけやし・・・。金貨一枚程度でワーワーいう世界なんやろか?
「それで・・・私にいろいろ教えていただけるのでしょうか・・・?」
「んー・・・その前にワイの方からいろいろ聞いていいか?この世界について」
「はぁ・・・私の応えられる範囲でしたら・・・」
この世界はLWのモデルになった異世界やと、ティシー様は仰ってた。しかし、この世界はゲームではない。町の位置や、ダンジョンの位置、ポップするモンスターには変わりなかった。ならあとは・・・この世界に生きるプレイヤー・・・、つまり冒険者?のレベルや習性を確認したかった。
流石に高レベルダンジョンになるとソロだと厳しい。倒せんこともないけど、時間がかかりすぎる。効率よく回すためには仲間は必須や。
高レベルで固定パーティー、もしくはギルドに入る、もしくは作るつもりやってんけど・・・。
「マジで?」
「え?はい。カスタムポイント?CPですよね?あれは職を得るためのポイントですよね?早い人だとレベル10には職を得てますよ?そうしないとスキルも手に入りませんし」
「たかだか低級ダンジョンに一日かけるのも?」
「一日だと早い方です。準備をして、3,4日かけるパーティーもいます。いくら子鬼とは言え連戦はつらいですし、消耗した状態でボスなんて挑めませんし、ボス部屋の前に完全回復するまで待つのが常識です」
「・・・それでも高レベルの冒険者もおるんやろ?」
「たしか・・・ギルド過去最高レベルは108です。今だと・・・94だったと思います」
「種族は?」
「108レベルの方はエルフでした。今最高レベルなのは確か・・・龍人の方ですね」
「もうええ・・・頭痛い・・・初心者しかおらんのかこの世界は・・・」
首を傾げてモキュモキュと食べ物を咀嚼しているポンコツ。
最初の町で、すでに計画が音を立てて崩れる。終焉のダンジョンどころか、高レベルダンジョンすら危うくなってくる。
無能な味方は敵よりも厄介。背中を預けると言うほどでもなくても、ちゃんと戦力になってくれる仲間を探すつもりだったのに・・・。
「それよりも、レベル100の聖騎士必須スキルってなんなんですか?気になるんです!」
「ん?あぁ・・・。聖域の盾っつてな、半径20メートル以内の味方にダメージ無効&継続回復効果のあるスキルや」
「なんですかそれ!?」
「ダメージ無効とは言っても上限値はあるけどな。聖騎士の特徴は、対アンデット属性に強い。物魔の防御力も高い、仲間を回復する専用スキルがある、その反面火力はほぼない、職のステ振りがほぼVITとMNDに振られるししかたないんやけど」
戦闘をするに至って、守りを固く時間をかけて勝つか、圧倒的火力で短期戦で勝つか、極端に言えばこの二つだ。時間がかからないほうがいいのは当然だが、それに応じたプレイヤースキル・・・技術がいる。逆に言えば、技術さえあれば、防御力なんていらない。
死に戻りしながら技術を磨けるLWでは、聖騎士とか盾役の職業は不遇で不人気だった。
「ポンコ・・・あんたはなんで聖騎士になろうとしたんや?ほかにもいろいろあったやろ」
「・・・今ポンコツって言いかけました?そりゃーかっこいいからです!」
ドヤ顔で、ない胸を反らすポンコツ。
「それに・・・私は攻撃するよりも、守る方が性に合うんです。もちろん、敵をバッサバッサなぎ倒す英雄にも憧れますが、私の理想はそうではない。人々を守る盾。それが私の理想なんです」
「そうか・・・。おっしゃ!んじゃあ、あんたにいろいろ教えたる。ワイの知識を。強くなるための秘訣を」
そういうとポンコツは目を輝かせて、少し涙目になりつつ頭を下げる。
「よろしくお願いします!師匠!」
「師匠はやめぇ・・・。ジュンや。そう呼んだらいい」
「はい!ジュン様!アリスです!よろしくお願いします!」
「敬称禁止。それは人間関係において壁を作るからな。それと・・・」
「わかりましたジュン。それと・・・?」
「ワイはお前を育てる。その代わり・・・ワイのギルドに入れ」
高レベル帯に碌な人材がいないのなら、作ってしまえばええ。かつてセイがそうしていたように。
予定より時間はかかるやろうが・・・焦る理由もない。
(まぁまぁ、のんびりやっていこうぜ!)
そんな相棒の声が聞こえた気がした。
お読みいただきありがとうございます。




