効率厨ゆえのパワーレベリング
戦闘描写に苦手・・・
レーブンヘルム。半径一キロほどの小さな町。初心者が最初に訪れる町で、周りのモンスターのレベルは1~20。近くの森にあるダンジョンの適正レベルは20~30レベル、どのプレイヤーも最初にクリアするのはこのダンジョンだろう。
LWというゲームの話ならば、クエストを受け、それをクリアして行けばまず迷わないし、レベルの順当に上がっていくだろう。クエスト報酬にも経験値がもらえるし、クエストを進めて行けば、誰でもすぐカンストまでは到達できる。
ゲームの話ならばだが・・・。
純はレーブンヘルムの南門から外に出て、その先にある平地に入る。ここはレベル6~12ほどのモンスターが跋扈する場所だ。主に子鬼の生息する場所だった。
クエストを順に追うなら、西門から出た先ある沼地にいるレベル1~5のスライムから倒していけばいいのだが・・・。
「セイから貰った転移ナイフを試すのと、半年ぶりのLWの戦闘やしな。なまってないか確かめんとな~・・・。レベル10まではここを狩場にするか~」
ぐるんぐるんと右腕を回し、両腰についている愛刀を抜く。転移ナイフを手に取り、魔力を込めて投げる。
「ふむ・・・距離で消費する魔力が変わる感じかな?ワイとナイフの間に魔力の線みたいんが見えるな・・。これに魔力を込めれば・・・」
ヒュッっとジュンの姿が消える。そしてナイフの刺さった先に転移する。
「おおー!めっちゃ便利!刺さった場所に転移魔法陣が起動するわけか!木とかに刺さったら注意せんとな」
足元に刺さったナイフを大事そうに回収する。
ふと前を見るとゴブリンが、ジュンに向かって走ってきていた。
ジュンはスッと両手の小太刀を逆手に持ち、構える。
向かってきた子鬼のナイフを横に躱すと、すれ違いざまに体を回転させて、二振りの小太刀で斬りつける。
レベル差もあってか、子鬼はまだ死なずに、振り返ってすぐにジュンに向かって突進する。
ジュンは冷静に、子鬼のナイフを上に弾き、両手の小太刀を振る。
シュババババっと四閃の斬撃を浴びせると、子鬼は光の粒となって消えて行った。
「ほー。死体として残るわけやないんやな。お?牙が落ちてる。ホンマ、ゲームみたいやねんな」
ドロップした牙をイベントリにしまう。レベルが1から3に上がっていた。
「ポイント振りは・・・STR3とAGI7の割合で分けとくかな・・・」
手慣れた操作で、レベルアップ分のポイントを割り振っていく。
「そんじゃあ・・・そろそろ始めるかな」
そういうや否や、ジュンは走り始める。
敵を見つけた子鬼たちが、ジュンに向かってくる。それでも淳は止まらず、次々と子鬼たちを引き連れて、円を描くように走っていく。
数にして約30匹ほどのゴブリンがジュンに向かって来てるのを確認し、ジュンは動きを止める。
普通の子鬼だけでなく、剣や斧、杖を持ったゴブリンもいた。ソードゴブリン、キャスターゴブリン、アックスゴブリンなど、ゴブリンが職を得た姿だ。
「いくでぇ~!」
そういうとジュンはその塊にまっすぐ突っ込んでいく。
振り下ろされる斧を躱し、胴に向かって斬りかかってナイフを弾き、横から振り下ろされる剣を蹴り飛ばし、魔力の塊を感じ、その場所から下がる。そうやってすべての攻撃に対応しながら、小太刀で敵を切り続ける。
「ははっ・・・あはははははははは!!たのし!!」
時間がたつにつれ、数をどんどん減らしていく子鬼達。まるで風と戦っているかのように、一つの攻撃もジュンに届くこともなく、最後に少し離れたところにいたキャスターゴブリンをめった刺しにして戦闘を終了した。
「ふぅ・・・さすがに生身やな・・・。肉体的な疲れはあるみたいやな」
ドロップ品をイベントリに入れながら息を整える。牙、ゴブリンの剣、斧、それと魔石だ。
「装備品は一応レアっぽいな。魔石はもっと珍しい感じか・・・。ちょっと休憩したらもう一回やな~」
30体ほど倒してレベルは3→6に上がっていた。ステータスにポイントを割り振り、レベル10になるまでジュンは狩りを続けた。
「ふぁ~~!!疲れたお腹空いた眠い!!帰ろ・・・」
戦闘に夢中になっていて、気づいたら日が赤く染まっていた。レベルも10予定だったのに12まで上がっていた。
髪も土で汚れ、装備も傷だらけになっていた。
「こんなことしてたらいつかぽっくり死にそうやな・・・最後の方とか危なかったしな・・・気をつけよ・・・」
もう少し安全を重視することを心に誓いながら、フラフラしながら町への帰路につく。
平原を出て、街道を少し歩いていると・・・。
「イヤアァァァァ!!」
と女性の叫び声が聞こえた。その声にびっくりして、ジュンはすぐに声のしたほうに向かって走る。
少し走ったところで、叫んでいたであろう女性を見つける。
「何やあのゴブリン・・・」
LWでは見たことのないゴブリンだった。肌は普通のゴブリンのように緑ではなく、赤黒い。背丈も本来一メートルほどしかないゴブリンのはずが、そいつは2メートル近くあった。
「ハイゴブリン?でもこの辺にいるわけないし・・・それにしても色がおかしいな・・・」
その異様なゴブリンが、気を失っている、甲冑を着た女性の金色の髪を掴み、引きづっていた。
すぐさまジュンは奇襲をかける様に、そのゴブリンの首めがけて小太刀を振るう。
「強いなぁ・・・」
ほぼダメージはなかったのか、ジュンを敵認定し、金髪女性の髪を手放し、こちらに目線を合わせる。
「グオオオオォォォォォ!!!!」
と叫び、とてつもない速さでこちらに駆けてくる。
一瞬で間合いを潰されたジュンは、その攻撃を避けるためにしっかりと敵のモーションを見る。
(上段切り!)
スッと横に体をずらす、ゴブリンの持っていた剣はそのまま地面に到達し地面をえぐる。
それを隙と見たジュンは、すぐさま小太刀で斬りつけるが・・・。
子鬼は振り下ろした剣をそのまま横に薙ぎ、ジュンの足元を薙ぐ。
(!?ヤバッ!!)
回避するにも、まだ速さが足りず、少し足のつま先にあたってしまう未来が見えた。この一撃が当たると、倒されてチェックメイト。そう考えたジュンはすぐさまユニークスキルの幽体を発動する。
剣はジュンを通り抜け、子鬼は怪訝そうに剣を中段に構え直す。
(ハイゴブリンの攻撃パターンやない。つまり未知の敵か・・・)
LWの敵の攻撃パターンはすべて読み切っている。だから無茶をすることが出来る。しかし未知の敵の場合は、死に戻り前提であらゆる攻撃を仕掛けていた。しかし、ここはゲームの世界ではない。死んだらそこで終わりなのだ。
ジュンは呼吸を整え、全神経を敵に向ける。一度逃げて、いろいろ準備を整えて挑みたいのも山々だが、子鬼の後ろには倒れている人がいるのだ。これを放っておくのは目覚めが悪い。
子鬼が踏み込み、胴をに向けて剣を薙ぐ、ジュンはとっさに後ろに飛びのく。予想以上に早くて、少し衣服に掠る。喉に向かって突いてくれば横に飛び、避ける。
ジュンは攻撃を大ゲザによけ、スピードや攻撃パターンを体で覚えていく。子鬼の攻撃は苛烈を極め、剣ではなく、足で蹴ってきたり、剣を片手に持ち替え、拳で殴ってきたりもした。
それでも当たらない。ジュンが全ての攻撃を捨て、回避に専念しているからだ。
時間がたつにつれ、ジュンはギリギリで躱していく。数十センチくらい横を剣が通り抜けていたのを、今では数ミリ、剣を振る際の風圧が、ジュンの髪の毛を揺らす。
(大体わかったけど・・・。硬そうやなぁ・・・暗くなるまでに終わればいいんやけど・・・)
ジュンはこの敵を倒す算段はたった。しかし暗くなると敵の攻撃が見えにくいので不利なのだ。その前に倒せるかが勝負だった。
しかし割と勝負は早かった。ジュンはひたすら、急所に小太刀を突くように攻めた。喉、心臓に腹部など、生物的には柔らかいであろう場所を。
ジュンが驚いたのは、血が飛び散ったのだ。腹部を刺せば血が流れ、首を斬りつければ、血が噴き出る。そうして舞うように切り刻み続け、自身も返り血を浴び、青色の血まみれになった両者。そして、血が足りなくなったのか、少しふらつき、子鬼は前のめりに倒れた。
「・・・。死体も消えへんし・・・。血生臭いし・・・最悪やな・・・なんやったんや・・・」
ふと思い出したかのように、倒れていた女性に駆け寄る。
「生きてるかー?・・・。脈はあるようやな。気絶してるだけなんか?ポーションも持ってへんし、とりあえず町に帰るか・・・」
女性の武器であろうものをイベントリにしまい、甲冑を脱がせ、背中に背負い、町に帰る。
「めんどくさいことに巻き込まれんかったらええねんけど・・・」
ふとそんなことをいい。盛大なフラグを立てていることに気付かないジュンであった。
お読みいただきありがとうございました。ステータスに関しては、今後ジュンさんがいろいろ説明してくれます。なので説明を省いております。




