あなたが神か
のんびり更新。物語を書くのは好き。面白いかは別にして・・・
病は突然きた。最初はなんか力が入らへんなー程度やった。
しばらくすると、コップや箸も握れない。歩くのもつらくなった。
私が動けなくなるまで、そう長い時間はかからへんかった。
誰かに依存しないと生きられへん。そんなんは、果たして人間が生きているとホンマに言えるもんなんか?ただ生命活動をしているだけの木や植物と変わらん。
私はそれが嫌だった。金をかければ、いくらでも延命は出来るんやろうけど、私はそれを望まなかった。
医者は一つ治療法を提示してきた。
それがLW。仮想世界へのダイブだった。
動かせない体自体を、どうこうすることはできない。だから、脳の信号だけで体を動かせる仮想現実で動き回ることにより、現実の身体も動かせるように誤認できるのではと。要は体の伝達信号が衰えない様に、リハビリをする感じらしい。
結果から言うと、症状の改善には何の意味もなかった。けど・・・私がもうちょっとこの世界に居たい。と思うようにはなった。そのせいか、実際私の寿命は少しだけ伸びることになった。精神力っていうのはあながち馬鹿にはできひんもんやねんな・・・。
LWは楽しかった。始めた当初は右も左もわからなくて、そもそもゲームなんてしたことないから、新し世界にポーンと放り出されて、何から始めればいいのかわからなかった。
訳も分からず、町をふらふらし、外に出てはMOBに殺されて町に帰る。そんな何の面白みもないものやった。それでも治療のためには仕方ないと、とにかく動き続けた。
そんなツマらん日々を過ごしていたら、とあるプレイヤーに声をかけられる。
「君初心者?」
真っ黒いローブを着た、怪しげなプレイヤーだった。
「せやけど・・・なんか迷惑でもかけましたか?」
「いや・・・そんなことはないんだけど・・・。つまんなそうにしてるからさ。もったいないよ。このゲームめっちゃ面白いんだぜ!」
そう言って笑う怪しげな男。これが私・・・ワイとセイの最初の出会いだった。
セイのおかげでLWをプレイするのが楽しくなった。睡眠時間以外はずっとLWにインしてた。人生で初めて、何かに没頭した気がする。
そのおかげで、いつの間にかは私の周りにはたくさんの仲間がいて、PVEでは最強とか言われていた。
しかし、そんな楽しいLW生活も、終わりに向かう。セイがインしなくなった。私は毎日、同じ時間におんなじ場所で待っていた。なによりもセイと遊ぶのが楽しかったから。それが無くなった時に、私は何とも言えない喪失感を感じた。
そんな私の心の機微を、体が感じ取ったかのように、私の病は急速に悪化していく。
日に数回意識を失う。そのせいでゲームを続けることが難しくなった。ダンジョンに潜れなくなった私は、私のギルドを解散した。仲間たちもしぶしぶ了承してくれた。
起きている時間の方が短くなって、命の終わりを強く感じてきた。しかし私は・・・もう一度だけセイと話したかった。
私の命の終わる最後の瞬間まで、セイを待とう。そんで、最後にちゃんとお礼とお別れを・・・。
私に声をかけてくれてありがとう。生きる元気をくれてありがとう。あなたのおかげで、楽しい人生を送れました。さようなら、私の最初で最後の・・・最高の相棒。
と、心置きなく死を迎えたはずやってんけど・・・。
「なんかごめんね・・・。」
真っ白な空間の中、小さな女の子が申し訳なさそうにこちらに謝った。
「死後の世界?私は天国に行ける感じ?」
親より先に死ぬのは地獄生きって聞いた気もするけど・・・。
「ん~・・・。そもそも天国とか地獄とかないんだけどね。死した魂は、世界に溶け廻る。としか言えない?そこから私が勝手に立華 純ちゃんの魂を引っ張って来たんだよね。だから先に謝るね。ごめんなさい。あなたの綺麗な、納得した死を、私は歪めてしまうかもしれない」
「んっと・・・どーゆーこと?」
「単刀直入に言います。私の管理する世界で、終わったあなたの人生を続けてみませんか?」
「!?」
「正直言うと、あなたに拒否権はないんですが・・・。ただ、私の願いは、あなたに幸せな人生を歩んでもらいたい。それだけなんです。それに・・・これから行く世界は、あなたのよく知っている世界です」
「ちょっと待って。頭が混乱するわそんなん。どーせ拒否権がないならいろいろ聞いてもええ?」
「もちろんです。あっ、私はここの世界の管理人のティシーと言います」
「わかったわティシー様。それで?私のいた世界と違う世界ってことでいいねんな?いうゆる異世界ってやつ?」
「はい。あなたならよくご存じの世界・・・。LWの元になった世界です」
そう言われて、私は目を見開く。数年過ごしたあの世界は、私にとっては現実よりも思い出深い場所だ。
「おぉ・・・。でもさすがにゲームみたいにはいかんやろ?リアルにはスキルも魔法も、ステータスさえないんやからな。あんな世界に生きても、一週間もかからんでMOBにやられて死ぬのが目に見えるわ」
「ありますよ?スキルも魔法も、ステータスさえ可視化しています。レベルもありますし。ただ・・・蘇生とコンテニューはありませんけどね」
「ほうほうほう。ええやん。楽しそう。でもゲームじゃなくて現実やねんな?」
「もちろん。死んでも拠点にリスポーンとかはしませんからね。出来ればゲーム感覚で無理をするのはやめてほしいです。あなたのプレイスタイルは、見てて怖かったですから・・・」
「見てた・・・?LWの世界ってことは地球ではないはずやんな」
LWは、時代で言えば中世ヨーロッパ風の建築で、魔法があるがゆえに、化学が発展しなかったという世界だ。
そんな世界がおんなじ宇宙にあるはずがない。お気軽に、見てました!なんて、普通はありないが・・・。神様には何でもお見通しってやつか?
「神扱いされるのは苦手なんで止めてほしいんですけど・・・。LWは私が作って、私の分身体が運営しているのですよ。あなたは不思議に思いませんでしたか?あの時代にフル感覚ダイブのゲームがあることに。あれはあなたの世界の化学力をもってしても、数百年先の技術です。普通は先に、医療や軍事に使われますし、真っ先に娯楽であるゲームを作るはずがありません」
「そう言われてみれば・・・なるほど、あなたが神か」
ははぁ~っと土下座をティシー様に向けてやる。
「だからやめてくださいって!」
「いえ、私にとってはLWはそれほどのもんなんです。もはや何も言いません。ティシー様の御心のままに。私ごときで良かったら好きに使ってください」
「えええ・・・。奴隷じゃないんですから・・・。私は理不尽な死を迎えたあなたに、幸せにこの世界で生きてほしいだけ。あなたの思うように、好きに生きてください。世界に降りたら、私はほとんど干渉できません」
「はい。ありがとうございます。最後に一個だけ聞いてもええですか?」
「どうぞ」
「なんで私なんでしょうか。他にもプレイヤーはいっぱいいたでしょうに、それに理不尽な死を迎えた人なんて、星の数ほどいるでしょう」
「LWをプレイしていて、理不尽な死を迎えた人なんて数少ないですが、そうですね。私はあなたのファンなんです。きっとLWを一番楽しんでくれているのは、あなただと思ったので」
ティシーの眩しい笑顔と見ると共に、私の意識は途絶えた。
という事で一人目はLostWorldというゲームで、対モンスター戦最強というジュンさんの物語。




