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私の世界にようこそ  作者: てけと
続・私の世界にようこそ
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相棒

5話連続投稿しているので注意してください

 父さんに紹介された職場を色々回った。鍛冶屋、和紙職人、染め職人、和食、フレンチ、家具職人、陶器、畳、襖、民芸品、などなど、まさに手作業の極みにいる人たちの職場ばっかりだった。

 きっといつか機械化されたり、すでにされているものもあるだろう。しかし・・・彼ら彼女たちの作る物は、きっと機械などでは再現できない高みにある物だと思った。

 触覚のみでコンマ数ミリの違いを感じたり、音の違い、匂い、味、常人には見えない何かが見えているのだろう。人の一生をかけてまで高められたそれは、精緻の極み。神の領域だろうと思う。


 その熱すぎる情熱にあてられた俺は、何か胸の奥に滾る何かを感じていた。


 それから約一年。職人の仕事に魅入られ、ずっと入り浸っていた。その世界に。

 

 時間を忘れるほど。

 

 夢中に。

 

 何に悩んでいたか忘れるほどに・・・・。






 


「で?聖はうちの弟子になってくれるのかい?」


 依頼された包丁を研いでいると、鍛冶屋の親方に声をかけられる。


「いえ・・・もっと覚えたい技術もありますし・・・」

「お前さんが良ければいつでも・・・あれこれ手を付けてると中途半端になるぞ?」

「ははは・・・お察しの通りですが、俺は極めても親方のようにはいかないと思いますし、所詮器用貧乏ですから」


 所詮そつなくこなせる程度だ。身の程はわきまえないといけない。


「馬鹿だなぁ・・・そういう不器用なところは親父似だな。いいか聖。俺ら職人にとって、才能なんてもんは糞みたいなもんなんだよ。要はどれだけその道に没頭できたか。数多の試行錯誤、改良と改悪、失敗と成功の先にあるのが俺らの腕だ。自分で何でも決めつけんじゃねえぞ?」

「はい・・。心に刻んでおきます」



 仕事が終わり、家に帰る。仕事を初めて半年ほどは風呂に入って、飯を食って寝るだけの生活だったが、ここのところ体力がついたのか、すぐに眠くなることもなくなった。

 最近は覚えた技術や、知識をつけるために勉強や、教えてもらったことを復習していたが、ふとLWのことを思い出した。


「流石に復帰はないな・・・もし知り合いがいたら、持ってるもんあげて引退だな」


 そんなことを考えつつ、俺は最後になるであろうLWの世界にダイブしていった。













 見慣れた町並。たかが一年来ていなかっただけで懐かしく思う。今日はこの世界の見納めだ。のんびりと散策しよう。そう思い歩きはじめた時・・・。


「セイ・・・」


 思いつめたような顔をしてこちらを見ているプレイヤーがいた・・・。ジュンだった。


「ようジュン!久しぶり!元気にしてたか?」


 そう問いかけるとジュンはすごいスピードで走ってきて俺の頭をヘッドロックする。町中なのでダメージはない。


「お前な・・・お前なぁぁぁっぁぁ!!!インしなくなるなら言えや!!心配するやろ!?」

「ごめんって!ちょっとリアルの事情でな・・・ほんとすまんかった・・・」

「まぁええわ・・・間に合ってよかった・・・」


 寂しそうな声でジュンはそう言った。


「間に合って?なにが?」

「いや・・・こっちの話や。なんでもない・・・わけでもないねんけどな」

「?・・・あ・・・俺LW引退しようと思ってるんだ・・・。ジュンが現役なら俺の溜めてた資産ぜんぶ渡してもいいぜ?」


 そういってメニューを操作する。溜めていたとはいえ、廃プレイヤーからしてみれば雀の涙かもしれないが、少しは足しになるだろう。そう思いトレード申請する。


「いや・・・実はワイもそうやねん。半年前にギルドも解散してん」

「ええ!?なんかもったいないな・・・」

「まあリアルの事情や・・・」


 そう言いながらジュンはトレード申請を許可した。


「どうせやめるんやし、セイにコレあげるわ」


 トレード欄に選択されたのはジュンのお気に入りの二振りの刀桜花と紅桜だった。気に入りすぎて戦闘では一回も使った事のないという。MOBの血で汚れるのが嫌だったとか・・・。


「もったいね~・・・んじゃ俺はこれだな」


 そう言ってトレード欄に入れるのは、魔法付与で作ったオリジナルの転移ナイフ100本。魔法職の俺の命綱だった装備だ。


 OKボタンを押し、トレードが完了する。


「前からこのナイフ欲しかってん!なんで今更くれるかなぁ~」

「それがないと俺は近づかれたら死ぬだけの雑魚職だからな・・・」

「ソロでやってるからやろ~?さっさとワイのギルドに入ったらよかってん!まあ過ぎたことやけどな・・・」


 そんなことを言いながら二人で歩きだす。あれやこれやと昔の話で盛り上がったり、思い出の場所に行くとそこについての話で盛り上がったり、あぁ・・・こいつといるのはやっぱり楽しいなぁと心の底から思う。


「俺も落ち着いたら時間できると思うからさ。その時はまた一緒に遊ぼうぜ」


 何気なく俺はそう誘った。ジュンとは今後も付き合っていきたいと、そう思ったからだ。


「・・・。せやな。そうできたらどれだけいい事か・・・」

「ダメなのか・・・?」

「あ~も~・・・。ホンマは言うつもりやなかってんけどな・・・。ワイはもうセイには会えん。すまんな」

「なんで?リアルの事情か?今どきネットがあればどこにいても会えるだろ?」

「そうやな~・・・ワイはもうじき、ネットの届かへん所に行くねん。だからもう会えん。これ以上聞かんといてな。堪忍や」

「まあ深くは聞かないよ・・・悲しいけどな・・・」

「ッツ!・・・と時間みたいやわ。ワイはセイと遊べてホンマ楽しかった!めっちゃ感謝してる!」

「俺の方こそ・・。ありがとうなジュン」

「ふふふ・・・。じゃあな~相棒!」

「おう!じゃあな相棒!」











(さようなら・・・ワイの・・・私の最初で最後の・・・) 


 星野聖は知る由もないが、LWの廃プレイヤージュンはこのログアウトのあと・・・・安らかな顔で息を引き取った。不治の病により、体を動かせなくなったジュンは、LWという生き甲斐をくれたセイに感謝の言葉を言いたかったがためだけに、気力を振り絞って生き永らえていたのだった。

サクッと死んで異世界へGOは飽きたので、書きたかったお話を書いている感じです。

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