王都をしゅっぱーつ
魔人国の首都を出発して、数日がたった。
特に道中することもない私は、魔力操作の練習をすることにした。
通常は、水に魔力を流し精密な操作をするそうなのだが…どうせだし、もっと有意義な練習方法にしたいと思い……決して水難の相が怖いわけではないよ?
「糸に魔力を通わせて…布地を編む…縦、横重ね…」
言葉でイメージを明確にしていく…これはまだ慣れてないので、慣れると喋らずにできるようになっていくと思う。
そして私は一つの糸から布を作っていく…
何をしてるかというと…ゆくゆくは魔法で服を作りたいと思って…今制作しているのは私の服…ではなく。
ルイさんとルルさんの、クラシックなメイド服である!
メイドさんとは言っても、今のところ、ルイさんとルルさんの服装は、町娘のような恰好である。
少し膨らんだ、右足首くらいまであるくすんだ白いスカートに、なぜか腕の部分が膨らんでるドレスのような…それにエプロンをしているだけなのだ。
納得いかないよね~!メイド服を着て初めてメイドさんと言えるのだから!
というわけで、とりあえずフリルカチューシャ?を二人分作っている。
そして私の拠点につくまでにメイド服を完成させるのだ!!
そんな馬鹿な事?をしてると御者をしているルイさんから声がかかる。
「マオ様。少々止まりますね」
「どうしたの?何かあった?」
「道が倒木でふさがれているので…少々お待ちください。ルル」
「は~い。ちょっと見てくる!」
「しかし…この周辺で、魔物が暴れたという情報はないので、意図的なものかもしれません」
「意図的?それってもしかして?」
「……周辺に気配を感じますね。マオ様は少々馬車でお隠れになっておいてください」
「ルイさん気を付けてね…」
「ご安心ください」
そういうとルイさんは馬車を降り、周辺を警戒する。
数名の半裸男が街道の脇の森から姿を現す。
「久々の獲物だなぁ~こんな田舎に何の用かな?」
「……」
「ダンマリってか!しかも女3人!これはついてるぜぇ~お前らひっ捕らえろ!あんまり傷はつけんなよ!」
「へい!」
テンプレの盗賊…平和な元の世界ではありえない光景だ。私は普通に恐怖する…膝を抱えふるえてしまう…これは思ってた以上に怖い…
そんな私を横目で見たルイさんが
「ご安心くださいマオ様。あなたには指一本触れさせませんから…」
その声を聴いてちょっと安心する。
「言うねぇ~!おまえらやるぞ!一斉に行け!」
盗賊は数の有利を生かすように戦う。同時に殺到される、どんな達人でも数の暴力には勝てないのだ。
しかしルイさんは元の世界の…平和な世界のボケた達人など目にもならないのだ。
「シッ!」
ルイさんは、いつの間にか抜いていた片手剣を、振り迫る盗賊ののど元を掻っ切る。そして後ろからも盗賊が迫り…
「フレアバースト」
ボンッ!と爆発音がしたと思うと、後ろにいた盗賊3名が吹き飛ばされる。
「ハァァッ!」
吹き飛ばされた盗賊を片手剣でとどめを刺していく。
まったく相手を見てないのに、位置を完全に把握しているのだ。そして側面にいた盗賊も難なく切り伏せる。
「チッ!!お前ら弓を射れ!このままじゃ引き下がれん!」
森にまだ隠れていただろう手下に、指示を出す盗賊の男。
しかし…矢が飛んでくることはなかった。
「ルイ姉~、周辺は殲滅したよ~」
「お疲れさま。ルル」
「なっ!?」
ルルは森の中で、盗賊の手下を暗殺していた。倒木を見に行ったのはブラフであった。
「くそっ!!」
「逃がすわけ…アイスショット」
水魔法の亜種氷魔法。水を生成して魔力操作によって熱を奪い、凍らせる。難易度の高い魔法だ。
男の頭を撃ち抜き、盗賊は全滅したようだ。
「ルル、倒木を」
「は~い!」
そういうとルルさんかが光に包まれ…倒木を軽く持ち上げ、森に向かってポイする。
ルルさんは、光魔法を使って身体強化するのが主流だそうだ、本来の光魔法は、回復魔法とされている、要は万能細胞のようなものを魔力で作り出し、それによって失った部分にあてるのだ。しかしルルさんはそれを身体強化、つまりは筋肉や神経を増加させ、一時的に能力を底上げする。
簡単には言うけど、自分の体のどこを増強すれば能力が上がるかなんてわからないし…必死で生み出した技術なんだろう…
「では行きましょうか。出発します」
強いとは思っていたけど、ここまで強いとは思っていなかったなぁ…
「ルイさんルルさん!」
「はい」
「なになに?」
「守ってくれてありがとう!」
顔を見合わせるルイさんとルルさん、なぜか照れくさそうに。
「「どういたしまして(だよ!)」」
「でもなんでルイさん、敵の位置が手に取るようにわかってたの?長年の勘とか?」
「そうですね…マオ様もできると思いますが…自分以外の魔力を感知するのです。すべての生物に魔力は存在します。それを感知することで、敵の位置くらいはわかるようになります」
「なるほど…」
「私とルルは、あの過酷な闘技場で、生き延びなければなりませんでしたから、相手の魔力を見て思考、戦力、これから行うであろう行動などを知る術を身に着けました。」
「私はルイ姉ほどは見えないけどね!なんとなーく、こうかな~って感じで曖昧!」
「じゃあルイさんには私の考えなんて筒抜けなんだね…」
「どうでしょうね…マオ様の魔力は底が見えないですし…でも人となりくらいは見えますよ?」
そういってほほ笑むルイさん。美人さんはずるいなぁ~私が男だったら骨抜きにされてる自信があるね!
そうして、多少トラブルはあったものの、中継地点の町に到着するのであった。
「今日はこちらで宿を取ります」
「は~い!」
「ルルはこの町の情報収集を。明日1日補給や準備に費やして2日後にまた出発します」
「りょ~かい!じゃあマオ様またあとでね!」
「気を付けてね!」
ルルさんは颯爽と町に繰り出していった。
私とルイさんは先に宿に入る。どうやら王都を出る前に先ぶれを出して、中継地点の町の宿を確保していたそうだ。
「部屋は2部屋頼んでいたはずですが…?どうして一部屋しか取れてないんですか?」
とルイさんがちょっと怒り気味に宿の主人に言う。
「精いっぱい努力はしたんですが…どうしても一部屋しか取れなくて…しかし一番大きな部屋を用意させていただいたので…」
ジーと何かを見るようなルイさん。
「…嘘は言ってないようですね…でしたら仕方ありませんね…」
トラブルかな?別に一部屋でもいいとは思うんだけどな?
「マオ様。部屋が一部屋しか取れていないという事で…すいませんが安全のため、私とルルの同室をお許しください…」
「え?許すも何もむしろ嬉しいだけだけど?」
「はい…?」
「一人とか寂しいから、ルイさんとルルさんは部屋は一緒がいいかなっ…盗賊の人怖かったし…」
「…ではそのようにいたしましょう…」
困ったように笑いながらそう言ってくれた。
馬車を宿の馬小屋に預けて、宿の部屋に大事なものだけ運び入れる。
ルイさんと二人きりの部屋で魔法についていろいろ聞くことにした。
「氷魔法って、魔力で熱を奪うって書いてたけど、どんなイメージで作ってるの?」
「そうですね…人によって違うのですが…私は負のイメージですかね」
「負のイメージ?」
「暗く冷たく死んでいくような…自分がどんどん奈落に沈んでいくような…そんなイメージで熱を消していくイメージですね」
「そんな…ルイさん氷魔法禁止だよ!」
「え…?」とルイさんが目を開いて驚く。
「私にとって魔法は楽しく、人が幸せになるためのものだと思ってるんだから!後ろ向きなイメージは禁止!!」
「いや…もう私は慣れましたから…」
「違うイメージで使えるまで禁止だよっ!これはご主人様権限を使わせてもらうからね!」
「はい…ではそのように…」と微笑む
「でも…私は使えそうにないなぁ~水魔法自体もう苦手意識がすごいし…。じゃあ魔力感知を教えてほしいな!」
「わかりました。ではマオ様目を閉じてください」
そういわれ目を閉じる
「自分の魔力は感じますよね?」
もちろん、それは何となくわかる…
「では、その自分の魔力を周りに向けて漂わせるのです。範囲を広く、自分の感覚がどんどん広くなっていくイメージです」
広く…魔力を広げる…
「ちょっと広げる魔力が濃すぎますかね…もっと薄く…感覚を研ぎ澄ましていってください」
薄く…研ぎ澄ます…
「まだ濃いですが…でもこれくらいなら…自分の魔力が漂ってる空間で、自分のとは違う魔力を感じますか?」
自分とは違う…自分の感覚ではない魔力…
「なるほど…微かに…自分の魔力じゃない魔力を感じる…」
「それが魔力感知です。微かにというのは傷つきますが…もっと薄く魔力を広げれば小さな存在でも気づくことができると思います」
目を開けると、苦笑いしているルイさんと目が合う。そうか…あれはルイさんの魔力だったのか…
「微かだったけどとてもきれいな魔力だったと思います!(小並感)」
とフォローしておく。
「ありがとうございます…魔法に関しては、魔力操作が精密であればあるほど、いろんなことができますので…」
「頑張ります!」
フンス!と鼻息を荒らげて答える。魔法に関してのモチベーションは天井知らずなのだ!
「教えてくれてありがとう!これからもいろいろ教えてください!」
「もちろんです」
そうしているうちにルルさんが返ってきた、この町の情報と、明日の行動についてすり合わせを行っておく。
どうやらこの町から、王都に行く途中で、倒木が道をふさいでおり、どう考えても盗賊の待ち伏せが予想されるそうだ。
その盗賊の討伐に、この町の衛兵が明日出立し、盗賊討伐を行うそうだ。そのため、この町には立ち往生している商人が、結構な数滞在している。
倒木で盗賊?どこかで聞いたような話だよね?
滞在している商人が、街で臨時的に物売りをしている、滞在中に価値が下がってしまう食料品等があるため、少しでも売りさばきたいとか。今この町では、商人たちによるバザーのようなものが開催されているのだ。
「じゃあさ!明日は手分けして買い物しようよ!」
「ではマオ様の護衛に、ルルを付けておきましょう。私は次の町までの必要な食料品、水などをを買っておきます」
「そんな広い町じゃないし、ルイさんもルルさんも自由行動にしようよ!」
「いえ…しかし…」
「マオ様それは危ないと思うよ~?危険はどこに潜んでるかわからないから…」
「むぅ…」
なんとか交渉し、朝の2時間程度だけ、行動範囲を限定し、一人になる時間をもらえることになった。
その後ルルさんと合流し町を見て歩くことになった。
「ではマオ様お体お拭きしますね」
少し恥ずかしいが、背中の方は拭いてもらう。お風呂に入りたいが、この世界でお風呂に入るのは王族クラスの趣味とか、それくらい贅沢なのだ…
拠点についたら何とかして見せるけどね…
体を拭いてもらい、すっきりしたところで…
「次は私が、ルイさんとルルさんを拭いてあげるね!」
「ご主人さまにそのようなことをさせるわけが…」
「だめ!これは強制だよ」
「…はい…」
そしてルイさんとルルさんの背中をしっかりきれいに拭いて上げ(すべすべでしたごちそうさま!)、私は寝床につく。
「ではおやすみなさいませマオ様」
「?ルイさんとルルさんは寝ないの?」
「私とルルで、警戒しておくので…マオ様はお気になさらずお休みください」
「マオ様に万が一が起きないようにね!」
「…あ~今日は怖いことがあったからなぁ~さみしくて一人じゃ寝れないなぁ~だれか二人くらい一緒に寝てくれないかな~?」
チラッチラッの二人を交互に見る。
二人は顔を見合わせ…諦めたように…
「…では失礼して…」
「マオ様は…しょうがないなぁ…」
そうして両脇に、ルイさんとルルさんが横になるり、私を抱きしめてくれる。
「ごめんね二人とも…私は結構わがままなんだ、そして私についてきてくれてありがとう!」
「知ってます…」
「それがマオ様だもんね…」
そうして二人の心地よい体温に、マオは眠りにつくのであった…
いつもお読みいただきありがとうざいます。




