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私の世界にようこそ  作者: てけと
番外編『異世界旅行と罪滅ぼし』
153/189

シンのお節介

今回の旅行の結末?的なものです。

僕たちの結婚式から40日ほどたった頃。いつものように突然シンさんが家に来た。


「ツバサさん。シン様がいらっしゃいました」とメイド長のミカが庭で、鍛錬していた僕の元に訪れる。


 僕の屋敷も家政婦さんが増え、それらをまとめる役が必要という事で、ミカを長に据えることにした。

 あの結婚式以降、僕はご主人様と呼ぶのを禁止した。はじめはぎこちなかったが、今では普通に名前を呼んでくれるようになった。

 ・・・まあ他のメイド達の前では呼ばないように気を使ってるみたいだけどね・・・。気を遣わせて申し訳なかったかな?でも僕はご主人様ではなく、夫として彼女たちと生きていきたいのだ。


「シンさんか・・・そう言えば最近見なかった気がするなぁ。どうしたんだろ?」

「ツバサさん。早く行かないとまた・・・」

「そうだね・・・すぐ行くよ。また勝手されたらたまらないし・・・今日はこの辺で切り上げますね。来ていただいたのに申し訳ない」

「いえいえ!ツバサ様とお手合わせできるうえに、お金ももらってるんですから!私は問題ないです!」


 彼女の名はリン。今は廃れた古武術の使い手だ。お師匠さんが亡くなって、今や彼女しかその流派の技を継いだ者がいないのだ。

 色々と訳ありだが・・・それはまた別の機会に話す時が来るだろう。


「ではリン様。こちらで報酬をお渡ししますね。あと食事も用意しておりますので・・・」

「行きます!!ツバサ様の家のご飯美味しいんですよねー!」

「それじゃあミカ。僕はシンさんの所に行くよ」

「はい。応接間にご案内しておりますので」

「ありがとう」


 僕は少しだけ急いで応接間に向かう。出来れば娘たちを合わせたくない・・・。彼は無自覚だろうけど・・・女性を惚れさせる何かがあるんだよなぁ・・・魅力って言うやつ?


 シンさんといえど・・娘は渡さない!


 数分で応接間に到着し、ノックする。


「どうぞ~」


 すぐさま扉を開く。そこにはマオとマオに寄りかかって眠っているシンさんが座っていた。


「どうしたの・・?シンさん目の下のクマがすごいよ・・・」

「うん・・・私もよくわからないんだ・・実は結婚式が終わってお兄さんはすぐどこかに行ったんだ。帰って来たのも今さっきなんだよ?説明もなしに連れてこられたんだけど・・・」

「んっ・・・おう来たか・・・んじゃあ行くぞ」


 少しふらつきつつ立ち上がるシンさん。


「具合が悪いなら無理しなくても・・・後日でもいいのでは?」

「今日じゃなきゃ・・・ダメなんだよ・・・っと・・・ちょっと遅れそうだな・・・屋敷の前に馬車を止めてるから、さっさと行くぞ」


 腕に着けている腕時計をチラッと見てすぐさま部屋から出るシンさん。


「そうだ。これを二人に渡しておく」


 ポケットから現代風の腕時計を取り出す。マオに手渡し、僕にはぽいっと投げて渡した。

 デジタル式の時計で日付や曜日まで見れるものだった。この世界にそう言う概念はないんだけど・・・。


「何の変哲もない腕時計?お兄さんから貰えるものはなんでもうれしいけど・・・」

「後々必要になるからな」





 屋敷の前まで歩くと、小さな馬車と御者にココが座っていた。

 馬車の扉を開き、僕とマオに乗るように促して、シンさんは御者席の方に向かった。


「まってまってー!」

「シツル!だめだよー!」


 馬車に乗り込もうとしたところで、シツルとシャルがこちらに走ってくる。その後ろにミーシャもいた。


「シンおじさん!どこいくのー?」

「ダメだよシツル!家でお留守番してないと・・・」

「んー・・・一緒に行くか?シツル」

「うん!」


 そう言うとすぐさまシンさんの膝の上に座るシツル。


「いいの?私とミーシャも行っても?」

「ああ。馬車に乗ってくれ」

「シツル?パパの膝の上に・・・」

「ココ。出発だ。予定よりだいぶ遅れちまった・・・」

「…あとでいろいろ聞きますからね」

「この件が終わったら煮るなり焼くなり好きにしろ」

「言いましたからね・・・」

「どうしたのココおねえちゃん?なんかちょっと怖い・・・」

「なんでもありませんよーシツルちゃん。出発しますねー」

「はーい!」


 馬車が走り出し、シツルは御者席の方で楽しそうにシンさんとココとおしゃべりしてるみたいだ。

 僕たちは他愛もない話をしたり、お互いの近況についていろいろと話したりしていた。

 

 首都を出て少し走ったところで馬車は停止した。目的地が意外に近くだったみたいだ。


 馬車から降りると、すぐさまシンさんは馬車を消し、馬はマオの魔法で厩舎に戻される。


 シツルを肩車し、森の中に入っていくシンさん。後に続いて僕たちも森に入っていく。


「んーこの辺だったはず・・・」


 街道からずいぶん森に入り、木々が生い茂り、何の変哲もない所で立ち止まるシンさん。

 シツルを肩車したまましゃがみ、地面と軽く叩いていく。


 コツンコツンと明らかに土を叩く音じゃない音がする場所があった。どう見ても土だし、雑草まで生えているのに・・・。


「あったあった。んじゃあこの木か・・・ほいっと」


 ドンッと近くにあった木を殴る。すると・・・

 ゴゴゴゴと地面がスライドしていき、下に降りる階段が現れる。


「わぁ~!すごいすごい!」とシツルが目を輝かせて声をあげる。

「すごいだろー。結構苦労したんだぜこの仕掛け」

「いったいここに何が・・・」


 僕の疑問に答えず、すたすたと階段を降りていくシンさん。全員が階段を降りると開いていた地面が元に戻っていく。


 中は真っ暗かと思ったら、所々床が光ってて明るく、ただまっすぐ廊下が続いているだけの空間だった。

 少し進むとドアがあり、少し離れたところにもう一つドアがある。しかしそれだけだ。あとは何にもない。


「んじゃあそっちの部屋にツバサとシツル、シャル、ミーシャが入ってくれ。もうちょっと待たせてるからな・・・」

「はぁ・・・」

「そっちの部屋にはマオだな・・・俺は少しばかり寝るから・・・終わったら起こしてく・・れ・・」


 廊下いつの間にか置いてあったソファーに座りこむシンさん。そして目にもとまらぬ速さで横にココが座り膝枕しようとするが・・・。


「ココちゃんもマオちゃんと一緒に行ったげなよ。シン君は私が見ておくからさ」

「ティア!?いつの間に・・・」

「ここで色々調整をしていたからねーささ入った入った!」

「何があるんだろう・・・まあお兄さんの事だから悪いもんじゃないだろうし・・・よし!行こうココ!」

「ちょっと・・マオ・・わかりました・・・」

「いってらっしゃーい」


 満面の笑みで僕たちを見送るティア。膝の上に乗せているシンさんの頭を撫でながら・・・。


「行こうパパ!」とシツルに手を引かれ、部屋の中に入る。


 部屋の中には大き目のテレビとその前にソファーがあるだけだ。しかし・・・


『まだなの!?約束の時間はとっくに過ぎてるわよ!やっぱり騙されたんじゃないの・・・?』

『落ち着きなさい・・・。ちゃんと納得して彼を信じたんだ。もう少し待ってみようではないか』

『お兄ちゃん映らないの・・・?』


 テレビに映ってる家族がやいやいと何かしゃべっているが・・・この人達は・・・。


「んー?誰だろうこの人達?」とシツルが首を傾げてテレビをペタペタと触る。

「なんか少しツバサに似てないかしら・・?」

「ほんとだー。この子なんてツバサを女の子にした感じだねー!かわいいー」

「あー・・・なんで・・・まあシンさんがやったんだろうけど・・・」


 すこし時差があるのか、しばらくしてからテレビに映ってる人の反応が変わる。


『『『翼!!(おにいちゃん!!)』』』

「あはは・・・ご無沙汰・・・父さん、母さん、未空(みく)

「ツバサのご両親?でも違う世界って・・・」

「こんなことできるのは・・・ティアだろうね・・・さすがに家族を見間違えることはないよ。これが僕の両親で、もう一人が妹の未空だよ。僕も含めて三日月一家だよ」

『良かった・・・あの人の言ってた事は本当だったのね・・・元気そうで何より・・よ・・・』

『お兄ちゃんの馬鹿!!家を出るときは私と一緒に出ないと死ぬって言ったでしょ・・・本当に死ぬんだから・・馬鹿・・・』


 僕が世界から嫌われるほどの不運な反面、妹の未空は世界から愛されている幸運の持ち主だ。詳細は省略するけどね・・・妹と一緒に居れば、僕は死ななくて済んだのだろう。


「まあいつまでも親のすねをかじり、妹の加護を受けないとダメな僕なんて・・・まあ今は幸せに暮らしてるからさ。紹介するよ、シャルとミーシャ。僕の妻だよ」

「シャルだよー!」

「みみ・・ミーシャです・・ご機嫌麗しゅう・・お義父さま、お義母様」

「そんでこの子がシャルと僕の子のシツル」

「パパ―この人達はー?」

「お爺ちゃんとお婆ちゃんだよーご挨拶して」

「シツルだよー!始めまして!」


『おぉ・・・いつの間にかこんなかわいい孫が・・・!?抱きしめてあげたいっ!!!はぁはぁ・・・』

『こんの・・・ロリコンがっ!!』

『グフッ・・・』

『私・・知らない間におばさんに・・・』


 父さんは母さんに腹部を蹴られてフェードアウトし、未空はなんか膝をついてがっくりとうなだれている。


「楽しそうな家族ね」

「まったくだよ・・・」


 僕が自殺に至らなかったのも、この明るさにいろいろ救われたからだろうね・・・。


『っと・・いろいろ話したいけどもう時間がないみたいね・・・毎週土曜日の22時~0時だけここで通信できるみたいなの。今日はあいさつ程度という話だったしね。翼の元気そうな顔を見れてよかった!また来週ねー』

「それでこの腕時計ってわけか・・・なるほど。たくさん紹介したい人もいるし、また来週の土曜日に来るとするよ・・・またね母さん。倒れてるとおさんとうなだれてる未空にもよろしくね」

『ええ・・・またね翼』


 そこで通信が途絶える。


「いいの?ツバサ・・・もう会えないと思ってたご両親と、のんびり話す機会なのに・・・」とミーシャが神妙な顔で僕の顔を覗き込んでくる。


「・・・いいんだよ。それよりも僕の大切な人達を紹介したいしね・・・元気そうな顔を見れただけで僕は十分だよ」

「そう・・・でも次の通信?のときくらいは一人でいいんじゃないかしら?私たちのことを先に紹介しておいてね」

「そうだね・・・ありがとうミーシャ」

「なんの事かしらね?」


 ホントお節介な人が僕の周りには多すぎるよ・・・有り難い事だね・・・。


「ティアとシンさんにお礼を言わないとね」


 部屋を出るためドアノブをひねりドアを開けると・・・・。


「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああん!!ありがとおおおぉぉおにいさんんんっ!!ティアァぁぁ!!」

「私の所為でもあったしね・・・ごめんよ・・悲しい思いをさせて・・・よしよし・・・」


 シンさんとティアに抱き着いて号泣しているマオがいた。


「終わったか・・ツバサ。マオがこんな状態だからな・・・詳しい話はまた後日話す。今日はこれで解散だ・・・ティア」

「はいはーい。はいってきたところは一方通行で帰れないから、帰るときはマオちゃんに頼むようにしてね」


 そう言うとティアはゲートを開く。僕の屋敷に繋がってるんだろう。


「マオ俺たちも帰るぞ・・・ってマオ!?」

「ふへへ・・・そう言えばお兄さんに抱き着くの久しぶりだね!今夜は寝かせないからね!」

「待て待て!せめて今日だけは・・・」

「煮るなり焼くなり好きにしましょうか」とココもシンさんに抱き着く。


 今日だけはゆっくり寝かせてくれぇぇぇぇ・・・と悲痛な声をあげながらシンさんは暗闇に消えて行った。


「ティアは行かなくていいの?」とシャルがシンさんの消えて行った方を指さす。

「ん~・・・私は雑務を終らせてからかな・・・いろいろ忙しくてね・・・5・6年ほどしたら私も落ち着くと思うからさ」

「そっか・・・僕に手伝えることがあったら言ってね?出来る限りなんでもするから」

「ありがとうツバサちゃん。まあ私のわがままと不手際の後始末だからね。大丈夫さ」

「・・・ありがとうティア。まさか元の世界の家族にまた会えるなんてね・・・」

「私もその辺の配慮が足りなかったからね~アイディアはシン君だし、今回の件で一番苦労したのは彼だしね。私はほんのちょっとお手伝いをした程度さ」

「シンさんにはたま改めてお礼を言うことにするよ」

「そうしてくれるとありがたいかな~シン君は当分奥さんたちの機嫌取りで忙しそうだしね。んじゃあまたね~ツバサちゃん。シャルにミーシャちゃんとシツルちゃんも」

「またねーティアお姉さん!!」


 シャルに手を引かれながら力いっぱい手を振るシツルに、手を振り返すティアを背に屋敷に帰ったのだった。








 その後は定期的にマオと一緒に通信する部屋に行く事にしている。最初の頃はマオも僕も紹介したい人がいっぱいいて大所帯になったりしていたが、少しすると定期的に連絡する程度にはなってしまった。実際合えるわけでもないけど、やはり顔を合わせると少し安心するんだよなぁ。

 マオはいつも楽しそうにおしゃべりしているみたいだ。家族に愛され、マオ自身も家族を愛していたんだろうね。


 それは僕も同じか。



 でもシンさんは・・・・。




 やめておこう。それは僕の出来ることの範疇を越えている。だから僕は、いつかシンさんが僕の手を必要とするときの為に・・・。




「今僕にできる限りのことを尽くすべきだよな」


 そう独り言をポツリとつぶやき、僕は今日もこの世界で生きていく。少しだけ強くなりつつ・・・。

あと一話か二話で一区切りします。それでこの物語は一区切りになります。あとはSSを書いたり次回作を書いたりします。

更新は遅いですが。。。のんびり書いて行きたいと思います。

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