ディスピアードのゆーしゃさま
天人族のセシルちゃんのお話です。
なんとなく書きたくなったのでここで挟んじゃいました。
私の名前はセシル。とは言っても天人族の容姿はみんな一緒だ。名前なんて有ってないような物。ただひたすら生きているだけ。
大体寿命…というのもあれだけど…4~50年くらいでみんな光の柱に入っていく。ただ待ってるというのもつらいものだから…。
でも私はもう150年ほどここでぼーっとしている。何かを期待するように。もしかしたら明日、ゆーしゃというのが来るかもしれないから。それを150年続けているだけだ。
「きょうもこなかった…あしたは来るかなぁ~?」
そうやっていつまでもいつまでも待ち続ける。ほかの天人族と違って私は忍耐強いのだ!
……そうやって私を主張しないと…狂ってしまいそうで…そうなるとあの柱に入って行かないといけない。
100年を過ぎたあたりから、私は消えるのが怖くなってしまった。それからはずっと耐える日々だ。
たまに島をうろうろしてみても…この島には何もない。結局退屈で、動くのもしんどいから、また同じ場所に座ってぼーっとしてる。
「そもそもゆーしゃってなんなの?変な人だったらどうすればいいんだろう?」
ただぼーっとしてるのも飽きてくる。なので色々考える。知識はあるのだ。ならば思考に時間を費やして、少しでも気を紛らわそう。
そう思ってたけど…見たこともないものを想像するのは難しい…。結局ゆーしゃさまに行きつく。
そしてついにその時がやってくる。
「セシル!ゆーしゃさまがきたよ!!」
「え!?ほんとに?」
ソミアが私の所に飛んでくる。ソミアは私ほどじゃないけど…100年ほど生きてる天人族だ。
そんな事より勇者様だ。私たちが長い間待ち望んでた人だ。…優しそうな人だといいなぁ……。
そこにいたのは死んだ目をした冴えない男の人だった。どう見てもゆーしゃって感じじゃない。でもここに来た天人族以外の人だったら、それはゆーしゃさまだ。
「自由に生きろ。以上だ」
ゆーしゃさまが私たちにそうお願いする。自由って何?縛られない、束縛されない事?
私は混乱しつつも、ゆーしゃさまに島を案内する。唯一歩き回ったことのある私が先頭でぞろぞろと歩く。
そのゆーしゃさまは草をかじったり、私たちがいつも食べている味のしない実をたべたり、その枝をかじったり……。
言っちゃ悪いけど…変な人だ。この人が私たちのゆーしゃさま……。私はこんな人を待つためにずっと生きてたの?
「おいおい。なに死にそうな顔してんだよ…まあ見てろって。これから俺が楽しく生きて行けるように変えてやるからよ。それで物足りないなら……言え。その時はまた考える…」
そう私の頭を撫でながら言うゆーしゃさま。変な人だし…正直期待はできないけど…。
私を撫でる手だけは、とても暖かく感じた。
その後変な機械を作ったり、色々唸り声をあげながら壊してはまた作り直してを繰り返している。
もう10日ほどあんな感じだ…。変な人。しかし彼の作る料理だけはおいしい。
毎日お魚なんだけど、いろいろ飽きないように工夫してくれている。今まで味のなかったあの実しか食べてなかった私たちは、とても感動した。
私たちの島でこんなおいしいものが作れるなんて……。
「うっし…!これでコメが収穫できるぞ……。あとは仕事を割り振って…。ちょっとそこの天人族。皆を集めてくれ」
「それがゆーしゃさまの願いなら…」
「嫌なら自分で集めるぞ?」
「…まってて」
私はセシルという名前がある。みんな同じに見えるかもしれないけど…。
むぅ…やっぱり嫌いかもしれない……。
そうしてすぐに私は天人族をを全員招集する。といっても全員近くでぼーっとしてたのですぐ集まった。
「まずは…すまんな。お前たちの名前を教えてくれ。あるんだろ?さっき嫌な顔をされたからな…っと‥まずは全員これを身に着けてくれ」
そう言っていろんな種類のアクセサリーを見せる。
「これがアクセサリー…とてもきれいでかわいい…」
「もらっていいのー?ゆーしゃさま!!」
「おう好きなのを選べ。欲しいのが被ったら…んー色違いでも作るか」
アクセサリーに殺到する天人族たち。まぁ私は彼女たちより長い間生きてるからね。落ち着いていいものを探すことに……
あ‥あの髪飾りいいな……っ!それは私の!!
……………ふぅ…何とか手に入れたよ…激戦だった…まさかソミアが敵になるとは……。
「あのなぁ…欲しいのが被ったら色違いを作るって…」
「あれが良かったの…」
「そうか…まあ各々それを身に着けてくれ。それは世界で一つだけの俺のオリジナルだ。なるべく無くすなよ?それじゃあ名前を教えてくれ」
「セシル」
「おし。覚えたぞセシル。次々来い」
そうして次々と名前を言う天人族。まさかあれだけで覚えたって言うの?私たちは何となく同族の区別はつくけど……。それでも全員名前を言えるかって言われると怪しい…。
「それじゃあちょっと手伝ってくれ。人手がいるんだ。漁業、農業、製造業、俺が一人で建設業はこなすから…天人族で三つに分担するぞ」
そうして私たちは、ぼーっとしてた日々から、少しづつ忙しくなっていった。
そして彼は…私たちのゆーしゃさまはきっとこう言いたかったのかもしれない。
誰かの為でなく自分の為に生きろと……。
「ねぇねぇゆーしゃさま。私たちを使えば何でもできるよ?私たちはゆーしゃさまに逆らえない種族だからさ。まさになんでもするんだよ?」
生活がとても充実してきたある日。ゆーしゃさまに聞いてみた。世界の危機でもないのにこんな辺境まで来たんだ。私たちが欲しかったからじゃないのかな?と思って…。
「そりゃ~魅力的な提案だなーセシル……。技術を身に着けたお前らは確かに欲しいが…その勇者に逆らえないってのが気に入らないんだよな」
「…私たちの事がほしいんだ…ゆーしゃさまだったらいいんだよ?」
「だからその勇者さまだったらってのが気に入らないんだよ。おれはどっかの管理者が作ったルールが気に入らん。それを壊すためにここに来たようなもんだ」
私たちの為に…?そうか…彼がこの島に来た時に言った自由って言うのは……。
「ならゆーしゃさまの言う通り。私たちは好きなように生きるよ」
「おう。俺の言う事にだってお前らには断る権利はあるからな。そこんとこ分かっとけよ」
「は~い!」
私たちのゆーしゃさまは、勇敢なる者でも、勇気ある者でもない。自由に生きる者でゆーしゃだ。
彼がこの島のゆーしゃならば……それに従う私たちも自由でなくてはいけない。
私たち天人族は、神の使いでもなく、世界を救う種族でもない。ただの一人の人として、好きなように生きる。そう心に誓った日になった。
世界の危機が終わり、ゆーしゃさまは猫族になってこの世界に帰ってきた。姿は変わっても、なんとなく空気で分かる。
ゆーしゃさまはちょくちょく私たちの島に訪れる。そしてある日の事。
「ティアに許可をもらったから、これからここの大改築といろんな準備を始めるんだが……手伝ってくれるか?」
少し困ったような顔をしたゆーしゃさまが私たちにお願いする。
「……私達にも断る権利はあるんだよ?」
「もちろん承知の上だ。嫌なら……なんでも条件を聞こう。頼む…お前らが必要なんだよ…」
「ふふふ~。どうしよっかな~」
まぁ無条件でもゆーしゃさまのお願いごとなら聞いてあげてもいいんだけど…。
私たちもタダでお仕事をするわけにもいかない。いまや天人族は国の一つとして経済を回しているのだから。だから……。
「そうだな~。ゆーしゃさま独占権とか?」
「それがいいね~セシル。ゆーしゃさまはお嫁さんが増えて構ってくれないもんね~」
「……俺の身一つなら何でもお願いを聞こう…」
「契約成立だね!」
いえーい!と湧きたつ天人族の皆。そしてじっーとゆーしゃさまを見て指示を待つ。
「実は大掛かりな旅行をやろうかと思ってな…そこで……」
ゆーしゃさまのお願いと、計画の全貌を全て説明される。
「楽しそう!!」
「あぁ存分に楽しんでくれ。俺はすぐ準備にかかるから…セシル。これが俺の世界でのいろんなルール―だ。みんなに教えといてくれ」
「……良く私がセシルってわかったね?アクセサリーはソミアのなのに…」
私とソミアはたまに髪飾りを交換する。色違いなんだけど…たまに違うのもつけてみたくなるからだ。
「ん?もう割と長い付き合いだろ?アクセサリーなんてなくても誰が誰がだかくらいはわかるぞ?それに……」
「それに?」
「生活環境が変わったろ?皆若干容姿が違うようになってるんだよ。ちなみにセシル…お前少し太っただろ?ちゃんと野菜も食べろよ?」
「!?むぅ!余計なお世話だよ!!」
私太ってるの!?そんな…みんなと変わらないと思ってたのに…。
ともかく…私たちはゆーしゃさまの言う通りに、彼らを出迎え、接待する。
きれいな服を着て、驚く彼らを見るのが楽しい。ありがとうと感謝してもらえることが嬉しい。
それだけで十分代金はもらっているようなものだけど、ゆーしゃさまへの要求はまた別腹だ。
何でもしてくれるのか~。何をお願いしよう。私たちに恋愛感情はない。お嫁さんにしてもらうにしても、そもそも生殖器官がないのだ。それに寿命もない。ならば……。
うんと楽しませてもらおう。彼が生きている間に……。
そして私たちは、彼の作ったこの島をずっと存続させていこう。
いつか彼が死んだとしても……その魂がまた私たちの元を訪れることを願って……。
いつもお読みいただき有難うございます。
最後シンが死ぬフラグみたいになっていますが、まだまだ彼は死にませんのでご安心を。




