ドラゴンの棲み処 後編
シンの視点になります。後半は三人称視点になります。
青竜が集めてくると言ってから三時間ほどたった。そんなにかかるのか?ドラゴンのちょっとってもしかして数日とかじゃないだろうな?
「おい赤龍。お前らの巣はそんなに広いのか?集めるのにかかりすぎじゃないか?」
椅子にふんぞり返って座っている赤龍に聞く。やられっぱなしだから少しでも威厳を出したいのだろう。
「ん?まだ一日もたってないぞ?ちょっとって言ってたから4回ほど太陽が沈めば帰ってくるだろう。青はすぐ道草を食うやつだし…どうせどっかのドラゴンと遊んでるんだろう」
「……ツバサ、セフィー。ミーコとティアを使ってもいい、一時間以内に全部のドラゴンを人型にしてここに集めろ」
「え~シンさんが行ってくださいよ~」
「俺だと腕力が足りん…ミーコの糸で縛り上げてきてもいいぞ」
「そんなに急がなくても…4日後にまた来るとか?マオもいることだし…」
「ダメだ。予定が狂う。明後日からの4日は絶対に空けとかなければならないし、その為にドラゴン達との和解は必要なんだよ」
「…何を企んでるかは知りませんが…そこまで言うなら…行こうセフィー。ティア、ミーコも協力してね」
「ほーい」「は~い」「うん。わかった」
そうして4人はドラゴン達を集めに行った。
それから1時間後、外はもうすぐ日が落ちようとしていた。なんて無駄な時間を過ごしてしまったんだ……。もっと早く気付くべきだったな…。
「シンさーんこれで最後です」
ツバサが最後の一体を連れてくる。そんなにいねえじゃねえか!?なんでそんなかかるんだよ。
総勢12体のドラゴンが全員揃う。
「無理やり連れてくるのも嫌だったので…」
「三人目ちゃんはみんなのお願いを聞いて来てもらったんだよ~すごいよね」
「私の出番なしです!」と元気良く手を上げるミーコ。
「疲れたよツバサ…」なぜかぐったりしているセフィー。
いったい何があったんだ?
「まあともかく…話を始めるぞ~。まずお前らに聞きたい。人と関わって生きていく気はあるのか?」
「はいはーい!関わりたい!」「いや…ここは慎重になるべきでは…彼らが怖がるかもしれない…」「気に入らなければぶっ飛ばせばいいんじゃないのか?」
ワイワイと自由にしゃべりだすドラゴン達……。
「まてまて…お前らが人をどう思ってるかだけ聞こう。人が嫌いか?それとも好きか?」
「「「「「「「好き!」」」」」」」
「「「どっちかって言うとまあ…好意的ではあるぞ?」」」」
「それだけ聞ければ上等だ。人のいる町に行かせてやる。そこで約束してほしいことが少しある」
「聞かせて?」と青いドラゴンが言う。そして周りのドラゴンが頷く。
「まずはその姿で…お前らが人って言うものを見てくれ。俺がいいって言うまでそのままの姿でな」
「いいわよ~どうせ暇だったし。久々に楽しそうじゃない。いいでしょ皆?」
もちろん!まあ仕方ないな…。人の姿なら戦っていいのか?とごちゃごちゃ騒ぎ出すが…。まあ了承を得たという事でいいのか?
「あともう一個だけ…模擬戦程度なら目を瞑るが…人を殺すのは禁止な。それだけは頼む…」
「もちろんよ~私達って短気に見えるかもしれないけど…そうでもないのよ?そもそも生きている時間が違うからね?私たちの100分の一も生きない人にイラつくことはないわよ」
「ならいいが…それなら…ティア」
「はいはーい!」
ティアが何処からともなく人一人が入れる程度の扉を出す。
「この扉はツバサの家とつながっている。5日後に入れるようにする。その先はもう人種族の国の首都だ。はしゃぎすぎるなよ?」
「「え!?」」
「そうと決まったら宴会だな。マオ箱舟とつないでくれ。調理を開始する」
「ちょっと待ってくださいよシンさん!!」
「待たん。人種族の首都にはマオもいるからそこが一番安全だ。異論は認めない以上」
これからドラゴン12体分の食事を作るのだ。これ以上時間を無駄にするわけにもいかん。
箱舟には調理場がある。あと酒もたんまり積んできたのでそれも降ろさないとな…。天人族は最低限…箱舟を動かす程度しか連れてきていない、だからほぼ俺が一人でやるわけだ……。
腕がなるな!!
「シン手伝いますよ」
ココが調理場にいる俺の横に立つ。
「邪魔をしたら叩きだすからな」
「私を誰だと思ってるんですか?任せてください」
調理開始だ!
「すごいわねー。まるで踊ってるみたい…」
「さすがココと先生。一番息があってますよね~少し嫉妬しますよ…」
「私たちの中で一番最初にお兄さんと出会って……それからずっと想ってたんだもんね…そりゃ…あれくらいは朝飯前ってわけだね…魅せつけちゃって~」
「ドラゴン食べるの早すぎて…私の分はまだ…?お腹空いた…」
「はは…サーニャはそればっかりだね」
「シンさんおかわりだそうです!」
「まだまだ足りないよ~」
予想以上に食うなアイツら…くッそ手が回らん……。
「一人目ちゃーん。連れてきたよ~」とティアと5名の天人族が現れる。島に残していた天人族だ。
「おう。助かる…すまんな休みなのに…給仕手伝ってくれるか?」
「もっちろーん!ゆーしゃさまのお願いは何より優先されるよ!」
「うんうん。セシルの言うとーりだよ。気がねなく私たちを頼ってね!」
「ありがとうな。落ち着いたらお前らも一緒に宴会に参加していいからな」
「「「「「わーい!」」」」」
これで調理だけに集中できる…。
それから俺とココはあいつらの腹が満たされるまで、ひたすら食材と向き合うのだった。
~~宴会の様子(第三者視点)~~
「おぉ!!人はこうやって食材を加工するのか!!美味い!!しかし…少し柔らかいか?もう少し食べ応えがほしいな」
「あら?私は柔らかくておいしいけどね~。もう少し味が濃くてもいいかな?」
シンの作った料理をドラゴン達は次々と平らげていく。片っ端から全てあっという間に…。皿まで食べる勢いで…。
「はい。歯ごたえたっぷりのお肉だよー!こっちのソースは味が薄いと感じたらつけてね」
ドラゴン達の不満にすぐ対応していくシンの料理。給仕の天人族たちが会話をシンに伝えているのだ。
「ほほう!これが人の作る酒か!なかなかうまいじゃないか」
「うん!私たち天人族が作ったんだ!」
そう胸を張る天人族の少女。しかし相対するドラゴンはニヤリと笑い…。
「ちみっこ。これを飲んでみろ」
そう言ってヒョウタンの様なものを取り出す。それの中身をコップに注ぎ、渡す。
「ん!!……アルコール度数は少し低いけど…おいしい……」
「ふはは~!うちの秘伝の酒だ。竜水って言ってな。まあ作り方は教えられないけどなぁ」
「……なるほど…米で作ってる訳じゃないんだ…何で作ってるんだろう…私たちの知らない食材?…これさえわかれば……」
「おいちみっこ…作ろうとするなよ?お前の言う食材は…言えないがやばいもんだからな?」
「ちみっこじゃないよ!セシルだよ!」
「そうかセシル。興味津々なのはいいが…内緒だぞ?絶対内緒だからな?」
「うん。ぜ~~たいに言わないよ。だから教えて?」
「それは…俺たち龍の角や牙を水に漬け込んだだけの物だ。もちろん戦いで折れたりした物だ。長年つければつけるほどうまくなるんだよ。それは数年ってとこだ」
「なるほど…下手すると龍狩りが始まるかもしれないしね…絶対に言わないよ。私たちのゆーしゃさまに誓うよ」
神ではなく、シンに誓うセシル。それだけ彼のこと思ってるのだろうか?
「ねぇねぇ赤龍しゃん」とマオが赤い顔で赤い髪をしたドラゴンの元へ行く。
「あ?なんだ?」
「あなたは~人をなめしゅぎだよ?こらしめてあげる…」
ガシッと赤龍の首根っこを掴むと、ズルズルと引きづって外へ行くマオ。
「やめろ!儂は女と戦う趣味はねえ!というかなんでわしを片手で引きづっていけるんだ!?」
「ははははは!!暴れても無駄だよ~?」
そして外で轟音が響き渡り……。
「ふぅ~しゅっきり!!さぁのみなおしゅぞ~」
意気揚々と外から一人で帰ってくるマオ。赤龍の言動に少しイラついていたのか、満面の笑みでまた椅子に座り、酒をあおり出す。
一方ツバサとセフィーはというと‥…。
「ツバサさんとセフィーの馴れ初めは?もう交尾はしたの?ねえねえ~」と二人に絡む青竜。
「婚約したのは昨日ですよ。交尾はまだですねぇ~」
「ツバサ!!真面目に答えないで!お母さんももうやめて…恥ずかしくて死んじゃう……」
「え~!可愛い娘の惚気話を聞きたいじゃない~。ツバサさんはセフィーのどこが好きなの?」
「そうですね~…恥ずかしがりやで、怖がりな癖に…たまに大胆な事をする彼女に、僕は心から惹かれたんだと思います。この子と一緒に生きて行けば…きっと楽しいだろうなって」
「へぇ~。セフィーはツバサのどこに惚れたの?」
耳が真っ赤になって、顔を俯かせているセフィーに青竜が聞く。
「うぅ……暖かい所かな…ツバサの傍にいるととても安心するんだ……ってなんでそんなこと言わせるの!?」
「へぇ~」と終始ニヤニヤしている青竜。
青竜の気が済むまで、ツバサとセフィーはいじられ続けるのだった。
「さて…片付けでもしようかな…」
日も落ち切り、辺りは真っ暗になった頃。銀髪を月明りで光らせたティアがポツリとつぶやく。
「箱舟で一人目ちゃん…シン君とココちゃんは寄り添いあって寝てるし…もう少し寝かせてあげよう」
箱舟から転移し、宴会場へ行く。そして…
スタッと地面に恐る恐る降り立つ。
「約4000年ぶりの地面か……怖いと思ってたけど…意外に…いや…怖いね…」
ぶるっと体を震わせるティア。まるで嫌な思い出を振り払うように頭を振ると、翼を広げ、宙に浮く。
「ま…まあ地面に降りなくても片づけくらいできるしね?全然怖くないよ?」
誰に言い訳しているのかは知らないけど…そう言い訳するティア。
静まり返った部屋を見渡すと、ドラゴンと人がごっちゃごっちゃになって眠っていた。
青竜はセフィーと抱き合い、赤龍はなぜかドラゴンの姿で気絶している、その周りにもたれかかって寝ている天人族たち。
マオとリリアはひょうたんを片手に人に扮した龍たちと大の字で寝ている。
「食器の類はシン君が消すとして……床の掃除と…みんなに毛布を掛けるかな…」
(食器類はシンの具現化で作ってるはずだ。ならば床の清掃と……みんなが風邪を引かないようにしないとね。)
「しかし…またこんな日が来るとはねぇ~…龍と人が手を取り合い…私が地上で楽しく過ごす…もしかしたら…私が幸せに生きる日が…来るのかなぁ~」
ははっなんてね。と軽く笑い、作業を始めるティア。
幸せなんて人それぞれだ。管理者の幸せとは何なのか……。
そして…割とそんな日はすぐ来たりするのかもしれない。
いつもお読みいただき有難うございます。
次回はちょっと書きたくなってしまったお話を書こうかと思います。




