マオのお使い
マオ視点のお話です。
旅行当日の朝。私は夜、お兄さんにあずかった物を届けに行かないといけない。
ベットから飛び起き、リビングへ向かう。朝ごはんのいい匂いがした。
「あら?マオが自分から起きるなんて珍しいですね」
「おはようルイさん!ちょっと用事があるからね~これはこの家の皆の分ね!」
私は圧縮していた箱を取り出し、床に置いておく。
「アリサさん!朝ごはんおねがーい!私はすぐ出かけてくるよ!」
はいはい~とキッチンからアリサさんの声がする。
「おはようマオ~。…これはなに?」
「今日の旅行に来ていく服だよ。みんなの分用意してもらったからね~」
「この服が私たちの普段着みたいなものですけどね」
とメイド服を名残惜しそうに見るルイさん。大切にされるのはとっても嬉しい。
でもこの旅行じゃダメなんだよね~。
「大切にしてくれてありがとう!でも今日は休みなんだから、ラフな格好で行かないとね!それにその服は…とても私たちにとって特別なんだ!だから…お願い!」とルイさんとルルさんに手を合わせて頭を下げる。
「まあせっかくなので…お願いされなくても着ますけどね~」
「動きやすかったらいいんだけどね~」
「ご飯置いときますよ~」
「ありがとうアリサさん!いただきます!」
「落ち着いて食べてくださいマオ…」
料理の腕が日に日に上がっているアリサさんの、美味しいご飯を急いで食べて、私はまずココたちの元へ向かった。
いつも通り空間魔法で、遠い地点の空間と目の前の空間を繋げる。一度行ったところなら、どこにでも繋げる。
流石に元の世界には繋げられなかったけど…この世界とどのくらい離れているのか…座標が分かればあるいは…
まあ今の生活に不満はないし、私はいまとっても幸せなので、別に無理に帰る必要はないかもしれない。
ただ…元の世界の家族に、一言だけでも伝えられたらいいなと思って…私はこの魔法を創ったのだけどね。
さて…しんみりするのはここまでだ。
見慣れた大きなログハウスの前に到着する。私たちとお兄さんの愛の巣だ。
まあ…お兄さんはあまりこの家にいない。常にどこかに出かけている。お兄さんの日なんて、私に頼んであっちこっちを飛び回っている。
何をしているのか聞いても…
「まあ…そのうち分かるから楽しみにしてろよ」
だそうだ。それが今回の旅行なのかな?
思考もほどほどに、私は家の中に入る。
「マオ?どうしたのですか。お昼まではまだ時間がありますよ?」
家に入ってすぐのリビングで、完全武装しているココが白い紙を口にくわえ、刀の手入れをしていた。
「久々に本気の戦闘だもんね。準備はしっかりしないとね」
投げナイフの入った皮のポーチを腰に巻きながらシユがそう言う。
「先生はうっかり死んじゃいそうですからね…私たちが守らないと…」
装備品を1つづつ確認するようにカバンに入れていくミーコ。
「ん。抜かりない」
これまた完全装備をしたサーニャが階段から降りてくる。
「……」
精神を統一しているのか、目を閉じ集中しているリリア。
「あの~…これから私たちはどこに行くんだっけ?」
完全に戦争しに行く空気になってるんですけど…
「旅行ですよね?私達だって馬鹿じゃないんですから…分かってますよマオ」
「分かってないよね!?今日からちょっと休みに入るってお兄さん言ってたよね!?」
「むしろそうして気が抜けているところに、敵がやってくるんですよ?油断大敵です」
この子たちは…お兄さんの事になるとタガがはずれるというかなんというか…
「武器は没収します!」
私は時間を止め、彼女たちの武器を取り上げ、私の持ってる箱にぶち込み、圧縮してポッケに入れる。
「マオ!?なにを…」
「お兄さんが戦闘になるかも、とは言ってたから、これはお兄さんに渡します。服も着替える様に!お兄さんから預かってきてるからね」
そう言って私は別の箱の圧縮を解き、床に置いておく。
「シンが言うなら…どんな服でも着ますけど…」
「渡したからね!私はもう2軒回るところがあるからね。お昼には迎えに来るから、着替えて待ってるように!」
私はまた移動する。次はリトルサンタウンだ。
「やっぱり俯瞰で見ると…お兄さんの言う通り…城だよねコレ…」
この世界での実家に来ると、毎回その大きさに唖然とする。
こんな城に住んでたんだなぁ…そりゃお兄さんたちもドン引きするよね。
いつも通り玄関から普通に入る。実家に入るのにわざわざ呼び鈴を鳴らしたりはしないよね。
「おや?マオ様?いかがなさいました?」
カインさんが、執事服ではなく、皮のズボンにシャツというとてもラフな格好で現れる。
なんていうか…とても新鮮だ。
「いやはやお恥ずかしいですね…私も元はただの庶民ですからね。自分の服なんてこの程度しか持っていなくて…」
頭をポリポリと恥ずかしそうにかくカインさん。
「なんかとっても新鮮だよ!そう言うカインさんもいいね!」
「ありがとうございます。今引き継ぎが終わりまして、各々準備しているところですよ」
「へー?事務作業の引継ぎって誰が来たの?カインさんレベルとなると…相当な人じゃないと無理じゃない?」
「えーと…まあ別にいいですかね。まずお二方、ファルネウス夫妻ですね。魔人国の公爵で、ミカヅキ卿の義理の姉と兄になるんですかね?」
「あぁ…確かスピカちゃんのお姉さん」
「ええ…あともう一人は魔人国魔法騎士団長ですよ。国王から直々に依頼されたらしいですね」
「へぇ~…魔法騎士団の団長って…まさか?」
「ええ…知っての通り…アミルですよ」
「…そっか…変わった様子とかはなかった?」
「ええ。彼なら私も安心して仕事を任せられますし。お会いになられますか?」
「やめとくよ。また私の所為で彼の人生を壊したくないし…」
彼との出会いをなかったことにした私は、もうなるべく彼とは会いたくなかった。
また同じことになるとは思わないけど…でもそれも必ずじゃないのだから…
「それより…これを渡しに来たんだよ!」
私は箱を数個、床に置いていく。この屋敷全員分となると、量も多くなる。商人ギルドの獣人さんの分もある。
「これは…衣服?…これが私の分ですか」
カインと書いてある、ビニールに包まれた衣服一式を手に取るカインさん。
「全員の分ちゃんとあるからねー。商人ギルドの獣人さんにも渡しておいてくれる?」
「ええ。もちろんですとも。私共は仕事着以外の衣服はほぼ何も持っていませんからね…助かります」
「お礼はお兄さんにね!またあとでね~!」
さて…最後はツバサさんの所だね!
大きな豪邸の玄関の前に立ち、呼び鈴をチリンチリンと鳴らす。
少しすると玄関の扉が開き…
「あれ?お昼くらいに迎えに来るんじゃなかった?」
ツバサさんが私を出迎えてくれた。
「お兄さんにお使いを頼まれてね~」
「シンさんに?まあ中に入ってよ」
「お邪魔しまーす!」
ツバサさんに付いて行き、この屋敷の全員が集まっている広間に到着する。
「まおだー!」
「おはようシツルちゃん!」
トトトトッと走ってくるシツルちゃんをしゃがんで抱き留める。
「あら?もうマオが迎えに来たの?」とミーシャが言う。
「まだ朝ごはん食べたところだよ?」とシャルが首を傾げている。
「みんなが着替える前で良かったよ。お兄さんから贈り物だよ」
床に圧縮していた箱を数個置く。
「マオ…これって…」
箱の中身を見て、ツバサさんが目を見開く。
「ふふふ~私たちにとっては懐かしいよね。みんなの分も、もちろんお子さんの分もあるからね?」
私がみんなに配っているのは、私達転生者三人の、元の世界の衣服だ。私はそう言う流行とか服とかには疎かったけど、どんな服があったかくらいは覚えている。
それをお兄さんと少し話し合いながら、いろんな服を作って、それを個人個人にサイズを合わせ、お兄さんが作っていた。
丁寧にビニールで梱包し、みんなの名前を書いているお兄さんを想像するとちょっと笑えるよね。
「届けてくれてありがとうマオ。これを着てみるのが楽しみだよ。僕はファッションと言うものを楽しんだことがないしね」
「お嫁さん達も可愛くなるだろうしね!」
「そうだね…」
「なにこのふくかわいー!!これシツルのふく?」
自分の名前くらいは読めるようになってきたシツルちゃんは、自分の名前の書いてある服を手に取り、目を輝かせていた。
「そうだよ―シツルちゃん!後でまた着たところを見せてね!」
「うん!!パパ!早くお着替えしようよ!」
「シツル…そんなに急がなくても…マオ。また後でね」
「うん!また数時間後に迎えに来るからね~」
ツバサさんがシツルちゃんに手を引かれ奥に消えて行った。
私はツバサさんの屋敷を後にし、自分の家に帰る。私も着替えて準備しないとね!
いつもお読みいただき有難うございます。




