ルルの子守り
マオの双子メイド、ルルさん視点のお話です。
余談ですが、今日から年号が令和になりましたね。おめでたい事なのでしょうかね?
10連休?そんな幻想は、当たり前のように殺されましたよ。ハハハハ
いつものクエストが終わり、お昼ご飯はいつもこの冒険者ギルドの中の食堂だ。報酬を受け取ってそのままご飯を食べる。
「ルイ姉。今日はお昼から自由でもいい?」
「いいわよ。珍しいわね、ルイからそう言うのは」
今日はお昼から、どうしても用事があるのだ。
「ちょっとツバサの所に行かないといけないんだよ~」
「へぇ~ツバサね~。わかったわ。気を付けるのよ?ミカヅキ卿によろしくね」
「ルイ姉も一緒に行く?」
「私はいいわ。ちょっとした用事もあるしね。ニーアと二人で行ってらっしゃい」
ルイ姉はいつも一人でどこかに行ってる。気にはなっているが…ルイ姉なら心配いらないよね?
冒険者ギルドを出ると、ルイ姉と別れ、私とニーアはツバサの屋敷に走る。
馬車より私たちの方が早いので、基本馬車は使わない。
少し走ると、巨大な屋敷が目に入る。あの豪邸が、ツバサの家だ。
塀を飛び越え、玄関まで入る。玄関の大きな扉の横にある呼び鈴をチリンチリンと鳴らすと、メイドが一人、私たちを出迎えてくれる。
「お待ちしておりました。ルル様ニーア様」
「様付けはやめてほしいかな~?」
いつも言ってるんだけど…なかなか直そうとしてくれない…
「お客様に失礼な態度をとることは、主人の格を落としかねないので…ご容赦ください」
「もう身内みたいなものじゃない…」
ニーアが呆れてメイドに言う。これだけ通ってるのだ、私もそう思うけどなぁ…
メイドに案内され、いつもの広間に通される。
「ルルおねぇちゃん!!」
シツルが私を見つけて走ってくる。私は少し屈んで、シツルを抱き上げる。
「今日はおめかししてもらったんだね~可愛いよ~!」
「へへへ~」
薄いピンク色のドレスを着たシツルが、私の首に手を回して抱き着いてくる。
可愛いなぁ~もう…持って帰りたい!!
「待ってたよルル。今日は頼むよ?」
「任せて!シツルとミサは私たちが守るよ!」
「ん。任せて。ツバサはミヤちゃんとアヤちゃん。それとナギの傍にいてあげて」
奥にいたサーニャが近づき、ツバサに優しく言葉をかける。
ミヤちゃんはミーシャの産んだ娘でまだ一歳だ。アヤちゃんがアミの産んだ娘で、まだ生後120日ほどだ。
そしてナギはもうすぐ出産日を控えている妊婦さんだ。出来るだけ傍にいてやりたいのだろう。
シツル(5歳)とミサ(3歳)を、たまに散歩に行かせたいのだが、心配性すぎるツバサは、彼女たちを外に出すのに、自分が付き添えない時は護衛を付ける。
それが私とニーア、そしてサーニャだ。
この三人は、いちいち頼まれなくても、勝手に来るんだけどね?サーニャは夫が出来たので、来る頻度が減っているけど…
と言うか…夫がいるのに、他の家の家族に交じってていいのかな?もうなんならツバサが夫でもいいんじゃないの?
「サーニャはツバサのお嫁さんになったりしないの~?」
シツルをシャルに渡し、気になったので聞いてみることにする。こっそりとサーニャの耳元で。マオの夫…シンは何とも思わないのだろうか?
「…シンはそう言うの気にしないから…俺が複数嫁を持ってるのに、お前も複数夫を持ってもいいんだぞ…だって‥」
「あの人らしいね…で?サーニャはどうするの?」
「考えるまでもない。私の夫はシンだけ。それ以外は考えられない…もし私がシンの子供を産んだら、あんまり来ないかもしれない…その時はお願い」
「そっか…うん。任せて~」
ツバサが夫でいいんだったら、彼のいない6年の間にツバサの嫁になってるよね。馬鹿な事を聞いたなぁ~
「ルルおねえちゃん!ニーアおねえちゃん!さーにゃ!はやくいこ!!」
シツルはシャルの胸から降り、玄関に向かって走っていく。
「シツル~家の中を走っちゃあぶないから!」
シャルがシツルを追って走っていく。ミカはミサの乗った乳母車を押してそれを追いかける。
「一応たまに僕もスキルで見張ってるけど…すぐには行けないからね…僕と彼女たちの子供を…」
「はいはい。任されたよ~」
「ツバサは心配し過ぎ」
そう言ってツバサが言い終わる前に、私たちは彼女たちを追いかける。
まったく…誰が襲ってきたら私たちに勝てるというのだろうか…心配し過ぎだよね~
「ルルおねえちゃん!つぎはあっち!」
「はいは~い」
あまりに動き回るシツルを肩車し、シツルの行きたいところにフラフラと歩く。
「ごめんねルル~つかれたら言ってね?」
「いいよシャル!私が好きでやってることだしね~」
私は子供が好きだったようだ。シツルを初めて抱かせてもらってから、それはもう夢中になった。
子供が次々とできるツバサの元に入り浸りしてしまうほどに…。
私自身が子供を産みたいかと言われたら…生みたいとは思うけど…今はツバサの子供たちで十分幸せなので、まだいいかな?と思ってる。
「あうあ~!」
「ん。ミサもお外が見たい?」
サーニャが手慣れた手つきで、ミサを抱き上げる。
サーニャに抱きかかえられたミサが、嬉しそうに周りを見渡している。
「あえ!あうお!」
「ん?ミサはあっちに行きたい?」
指をさしている方向を見ると、少し人だかりができているところがあった。
「なんだろう!?ルルおねえちゃん!いこ!」
「はいはい~!」
そうして人だかりの方に向かうと、少し変わった小屋があった。
お店のようだが…アクセサリーや食料品、工芸品などを売る商人ではなく…
「何でも屋ですか‥何でも売ってるってことですかね?」
ミカが不思議そうに露店の看板を読む。
『何でも屋!貴方の欲しいものがきっと見つかります!ぜひご相談を!』
そんな看板がでかでかと飾られていた。
「ルルおねえちゃん!ここ何~?」
「ん~と‥何でも売ってるらしいよ?」
「すごーい!!」
列に並び、少しすると店の中に呼ばれる。お客さんの中には、人には聞かれたくない要望もあるからと、一組づつ相談を受けているとか。
私達6人で小屋の中に入る。すると椅子に座った老人と、その少し後ろに黒髪で顔に狐のお面をかぶった女性?が立っていた。
「いらっしゃいませご一行様。どのようなものをお求めですかの?」
「シン?」とサーニャが老人に言う。
「はて?シン?それをお求めですかの?」
そう言って不規則に手を動かす老人。シン?マオの夫の彼ならサーニャはもう手に入れてるのに…
「ん。忘れて…この子たちに何かプレゼントしたいの。この子がシツル、シャルの子供。この子がミサ、ミカの子供」
「そうですか…あの有名なミカヅキ卿のお子様ですか」
「うん!パパはすごいの!かっこいいしつよいんだよ~!」
「ぱぱ!すおい!!」
「そうですな~…でしたら…32番のやつを取ってくれんかの」
仮面の女性が頷き、老人の後ろに消えて行く。
すると少し大きめの箱を持って来て、老人に渡す。その箱に老人が手を突っ込み…
ズルリと明らかに箱より大きいサイズの物を取り出す。
「僕はウサギのピョンタだよ!僕のことがほしいのはお嬢さん?」
「「「「ッ!?」」」」
シツルより少し小さい、ウサギのぬいぐるみが喋り出す。
「あうあ!!」
「僕を呼んだのは君かー!ちゃんと僕の事を大事にしてくれる?」
「あう!!」
「わかったよ!これからよろしくね!ミサちゃん!」
そして老人は、ミサにウサギのぬいぐるみを渡す。それを受け取ると、ギュッと抱きしめるミサ。
「ふぉふぉふぉ…いい主人に会えたようで何よりじゃな。わしの手を離れると喋らくなってしまうが…大事に扱ってやってくれ…」
「私も!おじいちゃんおねがい!」
机にぶら下がり、目を輝かせてシツルが老人にお願いする。
「もちろんじゃよ~」
そしてまた同じ箱に手を入れ…ズルリと同じように何か取り出す。
ミサのウサギが水色で、取り出したウサギは、薄い赤色だ。
「私はウサギのピョンコ!私を呼んだのは…そこの可愛いあなた?」
「うん!シツルて言います!」
「シツル。ちゃんと私を大事にしてくれる?すぐ捨てられるのは嫌だよ?」
「ずっとたいせつにするよ!だから…わたしのところにきてくれる?」
「わかったよ!これからよろしくね!シツル!」
「よろしくね!ピョンコ!」
そうして老人はシツルにぬいぐるみを渡す。それを嬉しそうに抱きかかえるシツル。
「ワシの手を離れると喋る力はなくなってしまうが、ちゃんと心をもってるからのぉ~頼みますぞ。シツル殿」
「うん!ありがとうおじいちゃん!!」
そうしてウサギのぬいぐるみを大事そうに抱える二人と、小屋を出たのだけど…
「すぐ追いつくから先に行ってて」
そう言うと、サーニャは小屋の中に戻っていった。
私は気になったので、小屋の中の会話に耳を澄ませる。気になることはすぐに解決したい…じゃないと気持ち悪いからだ。
光魔法を全力で使い、聴力を限界まで引き上げると、かろうじて会話が聞き取れる。
(サーニャあんまり引っ付くなって…ルイ…便乗するんじゃねえ…まだ仕事が残ってるんだよ!)
(シン成分を補給。もう少し…)
(ちゃんと手伝ってるんですから、いいですよね?…ちょっと休憩です)
(…はぁ…ノルマまであとちょっとだし…少しくらいはいいか…)
「なるほどねぇ~マオの夫だったのか…ならいろいろ納得だよね~」
彼は楽しくなる魔法を使う。ならばあれくらいは、軽くやってのけるのだろう。
本当は…ツバサから、彼をシツル達に近づけないでほしいと言われている。
「シンさんに娘たちが会うと、ほぼ間違いなく惚れちゃうからね…たとえシンさんと言えど、娘をやるわけには…だからできれば会わせない様に…」
だそうだ…
まぁ…今回は彼と分からなかったことだし、よしとしよう。
しかしあのルイ姉が…。
いいんじゃないかな?マオの幸せそうな顔を見ると、彼が悪い人じゃないのはわかるし。
私は彼よりツバサの方が好みだけどな~。男の趣味は、ルイ姉とは違うみたいだね~。
シツルとミサのとても嬉しそうな顔を見ると、あながちツバサの言ってたことも、ホントなのかもしれないなぁ…
少し苦笑いをし、また少し町を散策する。
ルイ姉がもし、彼の嫁となる時が来たら…私もツバサに告白でもしようかな~。
そんなことを軽く考えながら、疲れて眠ったシツルをおんぶして、ツバサの屋敷に帰るのだった。
いつもお読みいただき有難うございます。
ちょっとづつ話を進めています。ジリジリと…
次回は土曜日に投稿します。




