シン先生と科学の授業
ミーコの日のお話です。
「んじゃあ授業始めるぞ~」
俺はスーツ姿で教壇に立つ。
「きりーつ!」ミーコが号令をかける。
学生服のスカートとブレザーを着たミーコとフーコが椅子から立ち上がる。
「れい!着席!」
二人が席に座る。
「この間教えた原子記号は、全部覚えたか?」
「余裕…」
「大丈夫です!」
「よし…簡単な物質の構成について今日は説明していくぞ~」
「「はい!!」」
なぜこうなってるかと言うと…ミーコは俺に、また先生として勉強を教えてほしいとお願いされた。
だからミーコの日だけこうして俺は、先生になるわけだが…もちろん中卒の俺が教えられることなんて微々たるものだ…唯一得意な化学を中心に教えることにした。
料理やマジックにも応用できる化学は、俺が重宝した学問だしな…。
知識の補足の為に、一応高校に通っていたマオに相談していると、それを聞きつけたフーコが…
「私も…授業うけたい…」
「マオに聞けばいいんじゃ…」
マオの方が俺より知識があるんだぞ?
「つ…ついでだし…お兄さん!任せたよ?」
「ええ…俺は中卒だぞ?」
「私だって似た様なもんだし!」
「しかし…」
「ミーコの日の朝に、フーコちゃんを送っていくね!」
「マオちゃん…ありがとう」
と半ば強引に押し付けられた感じだ…。まさかアイツ…勉強ができない子だったのか?
俺が聞くことに対して、やけに言葉を濁していると思っていたが…
まあ中学校で習う事は全部頭に叩き込んでいる。じゃないと、ちょうど平均点ぴったりの点数を取れなかったからな。
国語と英語は意味がないので、歴史、数学、化学の三教科を教えているわけだ。
そしてなんでも形から入りたい俺は、二人に制服を具現化して渡してある。
何故かマオも欲しがった。なのでデザインはマオが手掛けている。今度制服デートしようとか言ってたが…。
コスプレデートの間違いじゃないのか?俺たちはもう、いい歳なんだぞ?
まあマオの日なので好きにさせるが…
「元素記号とは原子と言うもの記号の事だ。原子記号と覚えても間違いはないな。原子とは何か…物質を構成する小さな小さな微粒子のことだな。これがたくさん集まっていろんなものがあるわけだ。もちろん俺もお前らもな」
「どれくらい…小さいの…?」フーコが手を挙げて質問する。
「ん~原子大きさって言うのは定義が難しいんだが…電子の増減とかイオンとか言ってもわかんないし…そうだなーこれが大体1cmの玉だ」
俺は直径1cmの玉を創造する。パチンコ玉くらいのものだ。それを二人に渡す。
「その球の10000000分の一くらいが原子の大きさで、さらにその真ん中の原子核が100000000000000分の一くらいの大きさなわけだ」
「全く想像できないですね…」
二人とも渡した球をまじまじと見て考えるが、俺ですら数字は知っていても、実際見たことはないのでわからない。
「まあそんな難しく考える必要はないぞ?そう言うものの集まりで、この世界が構成されていると思っていたらいい」
「わかった…」
「んじゃあ簡単な分子について説明するぞ。まず基本の水だ。水素二つと酸素一つに原子がくっついたら、水分子になる」
黒板にH2Oと書いて、図にしていく。
「分子と原子は違うんですか?」
「分子って言うのは…例えば水を構成するには水素と酸素がいるわけだが、水素単体と酸素単体では水はできないわけだ…わかるか?」
「なんとなく?」
「水という性質の最小単位が分子…つまりH2Oだな。これ以上分解すると水素と酸素になって水じゃなくなるわけだ。性質が変わらない最小の単位が分子だな。そのもとになってるのが原子だ…まぁ…なんとなく覚えとけよ?別にテストするわけでもないし…」
「じゃあFe…鉄はどうなるんです?」
「鉄は分子を作らないんだよ。鉄の原子がたくさん集まればそれが鉄になる。そう言うものを単体。逆に水みたいにほかの原子と結びついて、物質を構成するものを化合物と言うわけだ」
「「ふむふむ…」」
ノートに書き記していく二人。別にとる必要はないんだけどな…
そうして俺が知ってる限りの分子を書き記していき、説明もしていく。二人の質問に答えつつ進めていたら、いつの間にかいい時間になったので、昼飯にすることにした。
「そろそろ飯にするか…昼からは今の事を踏まえて、実験にするぞ」
「実験!」
「わーい!」
まあ座学より、実験の方が楽しいよな。今後の課題だな…。
「フーコ、苦手な食べ物ってあるか?」
「……それ言ったら…また食べさせられるよね?」
「もちろん。好き嫌いはだめだぞ?」
「じゃあ…肉」
「んじゃあ野菜炒めにするか」
「いじわるっ!」
「俺に任せろって…旨けりゃ何でも食えるんだからな。ただホントに食べられないものは言えよ?アレルギーとかはまずいからな」
「じゃあピーマンは…アレルギーがあるからダメ」
「この間旨そうに食ってたじゃねえか…あのハンバーグに入ってたんだぞ?」
「っ!?!?」
「今日はピーマン炒めだな」
涙目のフーコと復習しているミーコを教室で待たせ、俺は調理場に向かった。
教室って言うか、俺の部屋なんだけどな…
俺は衣服や家具をすべて具現化しているので、全部消せば何もない部屋ができるのだ。本とかも一回読めば覚えるから、いちいち置いておく必要もないしな…
その後オイスターソース風ピーマン炒めと、白ご飯と牛乳とデザートを給食風にして、二人と食べた。
恐る恐るフーコは食べていたが、おいしかったのか、文句も言わず、黙々と食べ、完食していた。
下処理がなってないと、苦みや渋みが、変にでたりするからな…そういうので好き嫌いができる子供が多い。
午後からは実験をするので、三人とも白衣に着替え、フラスコやビーカー、アルコールランプなどなどを具現化し、机に広げていく。
なぜ白衣かって?その方が実験してる感が出るじゃないか…。
「まずは水の電気分解からだな。ど定番だ」
「この変な形のグラスですか?」
「うむ。H字管だな。準備はしてあるから…あとは電気を流して…」
「雷魔法…使う?」
「やめろ。いやまじで!」
手を翳すフーコを止める。
俺の部屋を黒こげにするつもりか!?
「ちゃんと道具はあるから…みてろよ…」
電気を流すと、Hに入った水が徐々に減っていく。
「ん?なんかこっちだけ減りが早い?」
「ほんとだ!失敗しましたか?」
「んや。これで合ってるんだよ」
電気を止め、マッチと線香を用意する。
「分子の構造をよく考えてみろ」
「水素2個と酸素1個?」
「なるほど!つまりいっぱい減ってる方が水素!」
「そうだな。陰極の方から水素が発生するわけだが…それはまた別の機会にな」
陽イオンや陰イオンの説明までしていたら、キリがないしな…
「まずは水素の方に、このマッチを近づけてみろ」と火のついたマッチを渡す。
恐る恐る火を近づけるフーコ。するとマッチは音を立てて燃える。
「これが水素?でもマオちゃんは大爆発を起こしてたよ?」
「…水素と酸素が混ざると、急激に反応して爆発が起きる。爆鳴気っていってな‥それが今も起きてるわけだが、量が少ないからな…危ないから絶対に一人で実験しようとするなよ?辺り一面吹き飛ぶぞ?」
「さすがに…そんな危ないことはしない…」
「マオにもちゃんと言っとけよ…んじゃあミーコはこっちの線香だ。逆の方に入れてみろ」
「はーい!」
ミーコは火のついた線香を酸素の方に入れると、線香が激しく燃え盛る。
「「おぉ!!」」
「激しく燃え盛る方が酸素ってわけだ。ちなみに火が明るく光るのは、空気中の酸素が燃えてるからであって、物質自体が熱を持つことで光るわけじゃなくてだな…」
こうして三人で色々実験として遊んだ。原子や分子は、魔法を使えるフーコなら、何か役に立つのではないだろうか?そう思って、やったわけだが…
少しでも為になればいいけどな。
そうなるとイオンの事も、次は教えてもいいかもしれないな。陰イオン…日本の造語でマイナスイオンだっけ?海外で言うと馬鹿にされるから気を付けろよ?マイナスの電子を持った分子や原子は、人体にいいとされているからな。そう言う魔道具もいつか作れるんじゃないのか?
まあ加湿器だけでも、マイナスイオンを多くしたりは出来るわけだが…
そして夕方前になると、実験をやめ、俺は夕食の買い出しに行く。ミーコは俺の腕を取り、なぜかいつも後ろからフーコも付いて来る。
「いつも言ってるが、別にフーコは家で待っててもいいんだぞ?」
「仲間外れは…嫌…」
「別にそう言うわけじゃないんだがな…」
「フーコちゃんも先生のお嫁さんになります?」
「おいミーコ‥これ以上嫁を増やそうとするな…」
「それは…考えてみる…」
「おいおいおい!冷静になれ。俺みたいな偏屈な男より、もっといい男を探せ?な?」
「シンは…私の事嫌い…?」
涙目になって俺を見るフーコ…やめろ…俺をそんな目で見るなよ…
何とか切り抜ける道はないのか…
「はぁ…ずるいぞフーコ…俺はフーコの事は嫌いじゃないが…俺の可愛い生徒として好きだ…今はそれで満足してくれよ…」
「うん…許す」
何とか機嫌を取り戻したフーコが、俺の手を握ってきたので握り返し、俺は市場に向かった。
俺は別にハーレム願望はないんだが…そう言うのはツバサの仕事だろ?なにサボってるんだあいつは…今度アイツの屋敷に行って文句を言ってやろう。
そんな理不尽な事を考えながら、ミーコとフーコと手を繋いで、歩くのだった。
いつもお読みいただき有難うございます。
次回はまた水曜日に…




