ミカの失態
ツバサの奴隷メイドの一人、ミカ視点のお話になります。
私はいま、幸せの絶頂にいるだろう。そう断言できる。
魔物に襲われて、右足を失って…奴隷に落ちたことを、感謝してもいいくらいだ。
シャル様とご主人様のお子さんであるシツル様が生まれ、私たちも一層気合が入る。屋敷も前の三倍以上に大きくなり、仕事も忙しく充実している。
こんな豪邸で働けるメイドなど、この世界でも指折りだろう。
しかも…そのご主人様は、私たちの最愛の人なのだ。これ以上何を望むのだろう。
このまま私達は死ぬまで、ご主人様と共に生きられるなら……それだけで幸せである。
「ごめんねミカ…」
「いいのよ?月の物の時はご主人様とゆっくり過ごしてね」
「マシになったら手伝いに来るから!」
「無理しなくていいのよ…ナギとアリサささんも手伝ってくれるそうだから…心配しないで?」
月の物の日は、夜ご主人様に愛されないので、その分お昼などに一緒に過ごす。そう言う事になっている。
夜激しく愛されるのもいいけど、日中にのんびりご主人様と過ごすのも、それはそれでとてもいいものだ。
「そう言えば…私もそろそろ…そういう時期なのかしら?」
次は私がのんびりご主人様と過ごす番だろう…少しくらい甘えていいだろうか?
しかし…その日は一向にやってこなかった…
「あらあら…ミカちゃんそれは子供を授かってるかもしれないわねえ~」
ふふふ~とミラさんが相談した私を見て微笑んでいるが…
「え…?」
頭が真っ白になる。
気づけば…私の部屋にいた。どうやら心配して、アミとナギも私の部屋に来たらしい。
「ミカ…大丈夫?なんか様子がおかしかったから…」
「どうかしましたか?お腹でも空きましたか?」
「いえ‥別にお腹は空いてないわ…ナギは何かあったら料理を作ろうとするのをやめなさい…ってそうじゃなくて…」
私は…もしかしたら今の幸せを…手放すことになるかもしれない…
「二人とも聞いてほしいの…その……私…ご主人様の子を…授かったかもしれないの…」
「「ええ!?」」
「気を付けていたはずなのに…」
「「おめでとうミカ!!」」
この二人は気づいてないの……?
「奥様方を差し置いて……私…この子を産んでいいの?」
私はこの子を産みたい…でも…それは許されるの?たかが奴隷のメイドが、奥様方を差し置いて?
「うっ…確かに…ご主人様が優しいから、ついそう言うの忘れちゃうね…」
アミは俯いてそう答える。
「どうしましょう…でもミカ……私たちも必死でお願いするので…一緒に報告しましょう?夕食の時辺りに…」
「そうね…ごめんね…アミ、ナギ…」
「私たちは三人で一人みたいなもんだからね!」
「うんうん。ミカとアミがいるところが自分の居場所ですから」
そんな二人の想いに、感謝しつつ…私は覚悟を決める。
最悪…今まで稼いだお金で、奴隷を解除してもらい…屋敷を出るしかない……
この子だけは……私の命に代えても…そんな覚悟をして、私は…夕食に向かう…
夕食を食べ終わり、片づけ終わる前に、私は床に頭をつけ、謝罪する。
「すいません!ご主人様!奥様方!」
「「すいません!!」」
ナギとアミも同じように、頭を下げる。
「え…どうしたのミカ?」
シツル様を胸に抱きかかえたご主人様が驚いている。
「どうしたの…?とりあえず…頭をあげなさい。三人とも」
「三人ともたってたって~?」
「何があったというのですか…」
ミーシャ様とシャル様とスピカ様が、各々に私たちを立ち上がらせる。
「その…私…月の物の日が来なくて…ミラさんに相談したら……子宝を授かったかもしれないと…」
「あら!おめでとう!」
「ミカ!おめでとー!」
「おめでたい事ですね!シツルちゃんもお姉ちゃんになりますね!」
各々が祝福の言葉を私なんかに…
「しかし…奥様方を差し置いて…奴隷如き私なんかが…」
「ミカ…それにアミとナギも。このあと僕の部屋に来て」
やはり…ご主人様は許してくれないんでしょうか…
私は懐に入れた、今まで溜めていたお金を握りしめ…ご主人様のお部屋に向かう事にした……
「失礼しますご主人様…」
「「失礼します」」
「ごめんね呼び出して…そこに座って?」
ご主人様に促され、三人でソファーに座る。ご主人様も書類を持って、私たちの前にすわる。
「さて…ミカ」
「はい!」
「ミカは…その子を産みたい?」
「もちろんです!!」
「そっか…じゃあ…ミカ、アミ、ナギ。今日で僕は、君たちのご主人様をやめる事にするよ」
「「「っ!?」」」
私たちは捨てられてしまうのですね…そんな…
「ご主人様…捨てるなら私だけを…アミとナギは悪くありません!」
「そんな!?ご主人様…ミカを許してあげて…」
「ミカが捨てられるなら…自分も付いて行きます…」
三人とも涙を堪え…俯いてしまう…
せっかく手に入れた幸せが…私の不注意ですべて壊れてしまった…
ごめんね…アミ……ナギ…そう小声で呟く。
「ん?…あぁ…ごめん!!そう言うつもりじゃないんだよ。それに言ったでしょ?僕の為に生きてってね」
そう言うとカランカランッと首についていた首輪が取れる。
ふと前を向くと、ご主人様が、私たちの契約書を火魔法で燃やしていた。
「三人ともこっちに来て?」
ご主人様は立ち上がり、ソファーの横に立つ。私たちは主人様の前に行く。
ご主人様は跪く。
「ご主人様!?」
「いいからいいから、みんな左手を出して?」
言われるままに、私たちは左手を前に出す。
「いつか渡そうと思ってたんだけど…ちょうどいい機会だしね」
ご主人様はどこからともなく、手のひらに指輪を三つ取り出す。
「これからはメイドとしてじゃなく…三人には僕の妻として…一緒に人生を歩んでくれないかな」
「「「ふぇ!?」」」
「え……嫌なら無理強いはしないけど……」
ご主人様は悲しそうに俯く。
嫌なわけない!!!!
「いいんですか…私達なんかで…」
「むしろ三人だからこうやってプロポーズしてるんじゃないか。あと…僕が愛してる三人を、あんまり貶さないでほしいかな?」
少し怒ったような顔をするご主人様。
ならば私たちは…ちゃんとご主人様の愛する人になれるように努力していこう。
「喜んでお受けします。ありがとございますご主人様…私を幸せにしていただいて…」
「ありがとうございます!!これからずっとご奉仕いたします!!」
「ご主人様に……自分のこれからの人生を…捧げたいと思います」
「よかった…内心断られたらどうしようと冷や冷やしてたんだからね…」
そんなわけあるはずないのに…
そうしてご主人様に、左手の薬指に指輪をつけていただく…
私達の目から涙が零れ…腕を広げてくれているご主人様に三人で抱き着く。
「これからもよろしくね?ミカ、アミ、ナギ」
「「「は…い…これからもずっと…よろしくおねがいします…」」」
しばらく私たちは嗚咽を漏らし、ご主人様の胸で泣き続けた。慰めるように頭を撫でてくれる、ご主人様の手が…とても暖かくて気持ちよくて…
私たちはきっと…この人といる限り幸せだろうと、確信するのだった…
その後私は、みんなのサポートのおかげで、私は無事出産を終え、シツルちゃんの妹、ミサが誕生する。
ご主人様は、シツルちゃん同様、溺愛している。ほぼ子供から離れないほどに…
私とご主人様…そしてこの屋敷にいる全員で、あなたをきっと幸せにするからねミサ…あなたもいつか…私のように素敵な方を見つけて…幸せになるんですよ?
そう思いつつ、私は愛しの我が娘を、優しく撫でるのだった…
いつもお読みいただき有難うございます。
明日のお昼に没ネタを一話と、夜に一話で2話投稿します。
暇すぎてやることない方は暇つぶしにお読みください_(:3 」∠)_




