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私の世界にようこそ  作者: てけと
私の世界のショートストーリー
123/189

魔術師シユのデビュー戦

「ねえお兄ちゃん!もっと教えてよ~楽しくなる魔法!」


 俺の膝の上で、上目遣いにシユが言う。今日はシユの日だ。

 シユの日は大体、こうやってシユが俺にベッタリくっついて、手品を教えてるんだが… 


「ん~基本は教えてるんだから…あとは盗まないとな~シユも自分で考えて、いろいろ作ってもいいんだぞ?」

「むぅ~お兄ちゃんのケチんぼ!」

「拗ねるなよ…よしよし」


 シユの頭を撫でてやる。少しだけ機嫌が直る。


「手品ってのはな、毎日創意工夫して、自分で作るもんだよ。それを生業にしてる人だっていたくらいだ…そう言えば、シユ自身が、誰かに手品を披露したことがあるのか?」

「ん~…ココとかミーコとか?」

「身内じゃな~…よし!俺が助手してやるから…行くか!」

「どこに~?」

「魔法使いシユの、お披露目会に行くんだよ!」

「えええええっ!?」


 シユの手を引き、獣人国の首都の大通りに行く事にした。









「さあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!世にも奇妙な、獣人が使う魔法を見たくはありませんか~?5名づつの入場になりま~す。はい。ありがとうございます!2名様ご案内!」


 俺は声を張り上げ、客引きをする。銅貨3枚程度の入場料なので、割と人が出たり入ったりする。

 20名程度入ると、一度客を止めて、俺は中に入る。


 半円の黒いテーブルに、客がひしめいている。

 シユが緊張で少し震えている。初舞台は緊張するよな~俺もそうだったし…


 シユの頭をポンポンと叩き。


「心配すんな…ちゃんと俺がフォローしてやるから…行くぞ」

「う…ん…」


 それでもシユは、手元が震えていた…なら俺がやることは…


「お待たせいたしました!俺は猫族のシンと言います。どうぞよろしくお願いします!」


 そうして俺はトランプを取り出し、手品をする…


「さてこのカードを、二枚置きます。そしてこの銅貨を…このカードの下に置きましょう。そして俺の魔法をかけると…」


 大げさに力を込めた演技をする。


「はい!消えましたよ!どうぞめくってみてください!」


 そして手前にいた、獣人の男性がカードをめくる…


「ん?あるじゃないか?」


 そのカードの下にコインが普通に置いてあった。


「あれ…おかしいな…確かにここに…」


 と反対側のカードをめくる。しかし…そこにコインはない。


「何がしたいんだお前は!俺たちをからかいたいだけなのか?」


 そう言って俺の胸ぐらをつかむ男性。


「まってくださいよぉ…師匠助けて~」

「えぇ!?」


 俺はシユにウインクして、合図を出す。ちょっとはやりやすくなっただろ?と


「帰るぞ!」

「まあまあお客さん!弟子の俺が出しゃばったのは悪かった!師匠!見せてやってください!」

「わかった。もう一回だけ見てやろう…」


 そしてかわりにシユがそこに立つ。


「では弟子が失敗した魔法をやるよ!」


 シユはカードを二枚置く。そして右側のカードの下に、銅貨を一枚置く。


「さて銅貨はどこにあると思う?」

「はっ!こっちにあるに決まって…なんだと…」


 カードをめくるが、そこにコインはない。


「ふははは!置いたふりをしただけだろ?」

「ではこちらのカードも見てみる?」

「おっと?それも俺がめくる。めくるときにコインを置かれたらかなわんからな!」


 ほう‥なかなか慧眼だな。まあそれも織り込み済みなんだけどな…


「なんでこっち銅貨がある!?触ってもいないはずなのに…」

「それが私の魔法だからだよ?さて次は…このコップを使うよー!」


 シユは紙カップを3つ逆さまに置き、右にあるカップにピンポン玉を入れる。


「動かすから、どこに入ってるか当ててね!」


 シユは右のカップと、左のカップを交代させる。


「はい!どこに入ってるでしょう!…んじゃあ一番手前にいるお嬢さんに当ててもらおうかな!」


 手前にいた小さい女の子を指さす。


「こっちだよね!そんなのわかるよ!」と左側のカップを指さす女の子。

「こっちでいいの?」

「うん!まちがいないよ!」


 シユはカップを開けるが、玉はない。


「ええ!?なんで?じゃあ右?」

「どうせ右に有るんだろうよ!俺は最初から右だと思ってたぜ?」と男性が大声で言う。


 今回はいい客がいるなぁ…ああいうのがいるとやりやすい。


「じゃあ同時にあけるねー?」


 と真ん中と右のカップを開ける。


「なぜ真ん中に…」

「すごーい!なんでなんで!」

「それが私の魔法だからね!」えっへん!と胸を張るシユ。



 それからシユは気分を良くしたのか、次々と手品を披露して、マジックショーは大成功をおさめたのだった。


 その後、夕方ぐらいまで、客を呼び込んでは、手品をする。そうして最後の客が引けると…俺はすぐさまテントを消して、家に帰る。

 家に帰る帰路で、隣で腕を組むシユと会話する。


「どうだシユ?楽しかったか?」

「うん!見るのも楽しいけど…やるのはもっと楽しいね!」

「そうだろ?次はシユの作った魔法でやると、もっと楽しいぞ~」

「それは楽しそうだね!!お兄ちゃん手伝ってね?」

「もちろんだ」

「ありがとう!お兄ちゃん!」


 ふふふ~と嬉しそうに俺の腕にしがみつくシユ。

 俺も、彼女に追いつかれないように…試行錯誤する必要があるな…弟子の存在ってのは、いい刺激になるもんだよな~

 人種族の国にいる、二人の弟子の事も少し思いだしつつ…家に帰るのだった。



 そしてその後、稀代の魔術師として、シユの名前が獣人国中に広まるのは、別のお話だ。

いつもお読みいただき有難うございます。

理想は一日一話なんですが、たまに戦闘シーンなどを書く時に、すっごく悩んでしまうので…

次回は水曜日21;00に投稿します。

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