魔術師シユのデビュー戦
「ねえお兄ちゃん!もっと教えてよ~楽しくなる魔法!」
俺の膝の上で、上目遣いにシユが言う。今日はシユの日だ。
シユの日は大体、こうやってシユが俺にベッタリくっついて、手品を教えてるんだが…
「ん~基本は教えてるんだから…あとは盗まないとな~シユも自分で考えて、いろいろ作ってもいいんだぞ?」
「むぅ~お兄ちゃんのケチんぼ!」
「拗ねるなよ…よしよし」
シユの頭を撫でてやる。少しだけ機嫌が直る。
「手品ってのはな、毎日創意工夫して、自分で作るもんだよ。それを生業にしてる人だっていたくらいだ…そう言えば、シユ自身が、誰かに手品を披露したことがあるのか?」
「ん~…ココとかミーコとか?」
「身内じゃな~…よし!俺が助手してやるから…行くか!」
「どこに~?」
「魔法使いシユの、お披露目会に行くんだよ!」
「えええええっ!?」
シユの手を引き、獣人国の首都の大通りに行く事にした。
「さあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!世にも奇妙な、獣人が使う魔法を見たくはありませんか~?5名づつの入場になりま~す。はい。ありがとうございます!2名様ご案内!」
俺は声を張り上げ、客引きをする。銅貨3枚程度の入場料なので、割と人が出たり入ったりする。
20名程度入ると、一度客を止めて、俺は中に入る。
半円の黒いテーブルに、客がひしめいている。
シユが緊張で少し震えている。初舞台は緊張するよな~俺もそうだったし…
シユの頭をポンポンと叩き。
「心配すんな…ちゃんと俺がフォローしてやるから…行くぞ」
「う…ん…」
それでもシユは、手元が震えていた…なら俺がやることは…
「お待たせいたしました!俺は猫族のシンと言います。どうぞよろしくお願いします!」
そうして俺はトランプを取り出し、手品をする…
「さてこのカードを、二枚置きます。そしてこの銅貨を…このカードの下に置きましょう。そして俺の魔法をかけると…」
大げさに力を込めた演技をする。
「はい!消えましたよ!どうぞめくってみてください!」
そして手前にいた、獣人の男性がカードをめくる…
「ん?あるじゃないか?」
そのカードの下にコインが普通に置いてあった。
「あれ…おかしいな…確かにここに…」
と反対側のカードをめくる。しかし…そこにコインはない。
「何がしたいんだお前は!俺たちをからかいたいだけなのか?」
そう言って俺の胸ぐらをつかむ男性。
「まってくださいよぉ…師匠助けて~」
「えぇ!?」
俺はシユにウインクして、合図を出す。ちょっとはやりやすくなっただろ?と
「帰るぞ!」
「まあまあお客さん!弟子の俺が出しゃばったのは悪かった!師匠!見せてやってください!」
「わかった。もう一回だけ見てやろう…」
そしてかわりにシユがそこに立つ。
「では弟子が失敗した魔法をやるよ!」
シユはカードを二枚置く。そして右側のカードの下に、銅貨を一枚置く。
「さて銅貨はどこにあると思う?」
「はっ!こっちにあるに決まって…なんだと…」
カードをめくるが、そこにコインはない。
「ふははは!置いたふりをしただけだろ?」
「ではこちらのカードも見てみる?」
「おっと?それも俺がめくる。めくるときにコインを置かれたらかなわんからな!」
ほう‥なかなか慧眼だな。まあそれも織り込み済みなんだけどな…
「なんでこっち銅貨がある!?触ってもいないはずなのに…」
「それが私の魔法だからだよ?さて次は…このコップを使うよー!」
シユは紙カップを3つ逆さまに置き、右にあるカップにピンポン玉を入れる。
「動かすから、どこに入ってるか当ててね!」
シユは右のカップと、左のカップを交代させる。
「はい!どこに入ってるでしょう!…んじゃあ一番手前にいるお嬢さんに当ててもらおうかな!」
手前にいた小さい女の子を指さす。
「こっちだよね!そんなのわかるよ!」と左側のカップを指さす女の子。
「こっちでいいの?」
「うん!まちがいないよ!」
シユはカップを開けるが、玉はない。
「ええ!?なんで?じゃあ右?」
「どうせ右に有るんだろうよ!俺は最初から右だと思ってたぜ?」と男性が大声で言う。
今回はいい客がいるなぁ…ああいうのがいるとやりやすい。
「じゃあ同時にあけるねー?」
と真ん中と右のカップを開ける。
「なぜ真ん中に…」
「すごーい!なんでなんで!」
「それが私の魔法だからね!」えっへん!と胸を張るシユ。
それからシユは気分を良くしたのか、次々と手品を披露して、マジックショーは大成功をおさめたのだった。
その後、夕方ぐらいまで、客を呼び込んでは、手品をする。そうして最後の客が引けると…俺はすぐさまテントを消して、家に帰る。
家に帰る帰路で、隣で腕を組むシユと会話する。
「どうだシユ?楽しかったか?」
「うん!見るのも楽しいけど…やるのはもっと楽しいね!」
「そうだろ?次はシユの作った魔法でやると、もっと楽しいぞ~」
「それは楽しそうだね!!お兄ちゃん手伝ってね?」
「もちろんだ」
「ありがとう!お兄ちゃん!」
ふふふ~と嬉しそうに俺の腕にしがみつくシユ。
俺も、彼女に追いつかれないように…試行錯誤する必要があるな…弟子の存在ってのは、いい刺激になるもんだよな~
人種族の国にいる、二人の弟子の事も少し思いだしつつ…家に帰るのだった。
そしてその後、稀代の魔術師として、シユの名前が獣人国中に広まるのは、別のお話だ。
いつもお読みいただき有難うございます。
理想は一日一話なんですが、たまに戦闘シーンなどを書く時に、すっごく悩んでしまうので…
次回は水曜日21;00に投稿します。




