天人族とツバサパパ
シンさんが世界を壊すものと手を繋いで、マオに運ばれている頃、僕は少し嫌な予感がして、先に箱舟に帰った。
「セミルだっけ?」
「うん!」
「天人族は、世界の危機が終わったら、島に帰るって、シャルが言ってた気がするんだけど…どういうことなの?」
「んっとね、世界の危機が来ると、この世界は終わりなんだって、だからその前に、あの光の柱にみんな帰るように言われてるんだ。ゆーしゃさまのお願いを叶えたら、私たちはすぐに光の柱に帰るんだよ。そういうきまり~」
「君たちは?」
「私たちのゆーしゃさまはお願いしたよ?自由に生きろって。だから私たちは自由に生きる。それがゆーしゃさまのお願いだからね。私たちは光の柱にかえらない。自由にいきるからね」
ならシャルは…僕のお願いはなんだった…?確か…
「僕を助けて?なら…さっき僕に回復を使ったことで…まさか…シャルとミーシャは?」
「島に帰ってると思うよ?」
「島の位置は!?」
「このうえ~」
「ありがとう!」
僕は箱舟から飛び降り、山の斜面を足場に、真上に飛んだ。
「シャル!!」
雲を突き抜け、島に接近していく。
「ツバサー!」
シャルが僕に向かって飛んでくる。そして空中で二人で抱き合う。
「ふふふ~なつかしいね……最初であった時も……こんなかんじ…だったね…」
シャルは涙を流しながら、僕に抱き着く。
「シャル…お願いだよ…僕と一緒にこれから生きてよ…」
「ダメだよ…ツバサ…もうツバサは……私のゆーしゃさまじゃ……ないんだから」
「僕を助けたから…?そんな…別に帰らなくたって……」
「ごめんねツバサ…決まりなんだ……」
「僕は……シャルを取り戻しに……行くよ。絶対に…」
「ダメだよツバサ……ミーシャと…スピカと…アキと…ミカと…ナギと…そして…いっぱいの人と……幸せに生きてね……シャルの大好きな……愛するツバサ……」
さようなら…と涙を流しながら、笑顔で僕の体を離すシャル…
僕は落下していき…森に落ちて行った…そしてそのまま森に落ちるが…
僕は当分そのまま大雨の降る森で、しばらく呆然とするのだった…
僕は仰向けに寝転んだ状態で、起きる気力もなく…ただ茫然としていると、箱舟が僕の上で止まる。
するとマオの町の執事、カインが僕を抱えて箱舟に乗せる。
「ミカヅキ卿…安心してください。シャル様は、多分島であなたをお待ちかと思います」
彼はそんなことを言う。そんな希望を持たせることを…
「希望を持たせないでください…殺しますよ?」
「ええ…外れていたら、殺してもらっても結構です。よく考えてください…シン様がそれを、許すとお思いですか?彼女だけ帰る、なんてそんなことを…」
確かに……なら…
「すいません…急いで島に向かってもらえますか?」
「ええ、もちろんそのつもりでございます」
そうして天人族が操作する箱舟は、島へと向かっていく。
島に着いて、僕は箱舟を降りる。
そこにミーシャと、シャルが手を繋いで待っていた。
「シャル!!」
僕は駆けよろうとするが、ミーシャに抱き留められる。
「ツバサ…落ち着いて、聞いたげて?シャルの言葉を…」
「え…?うん…」
僕は緊張した面持ちで、シャルの言葉を待つ。
「ツバサ…シャル…ツバサの子供が…おなかにいるんだって…」
「は…い?」
頭の中が真っ白になる…いやまておちつけいつかはこういうひがくるとはおもっていただろうぼくは
「シャルは…ツバサの子供を産んで…ずっとツバサといていいですか…?」
ふぅ~と僕は一息つく。シャルを見つめる。少し涙目になった彼女を。
「もちろん。ありがとうシャル…僕こそ…ずっとシャルといさせてほしいな…」
「もちろんだよツバサ!」
とシャルと抱き合う。
「生まれてくる子も、思いっきり可愛がってやるからね…シャル…頑張ってね?僕も全力で協力するからね?」
「うん!シャルは頑張るよー!」
「まったくイチャイチャしちゃって~三人目ちゃんは幸せそうで何よりだよ」
天人族の子がそう言って現れる。三人目?
「管理者?でも名前はティア…?」
「管理者であり、今はティアと言う一人の天人族さ。一人目ちゃんの説明をしようと思ってね~」
「この世界に干渉できないんじゃ?」
「うん。私はこの島から出られないんだ。だから干渉できない…はずだったんだけど…一人目ちゃんがここまでするとはね…」
と苦笑いするティア。まあ…シンさんだし…仕方ないよね…
「そこの半魔人の子~獣人ちゃんたちと、二人目ちゃんを集めてきてくれないかな?」
「私?まあいいけど…」とミーシャが渋々呼びに行く。
「さて三人目ちゃん。何か聞きたいことがあるんじゃないの?」
なるほど…だからわざわざ僕とシャルだけ残したわけか。
「んじゃあ天人族について、聞いていいですか?」
「もちろんさ。何が聞きたい?って全部だよね?」
「ええ…まずはシャルについてですね。彼女はなぜ成長したのです?今この子のお腹にいる子は…種族的にどうなるんですか‥?」
「そうだねー…そもそも天人族には、生殖する機能はないんだよね。こづくりは出来ても、子供ができることはない、と言えばいいのかな?なぜ子供が出来たのか、なぜ急に成長したのか、それは君の能力付与、のおかげだね。君はシャルに体力と、身体能力だけじゃなく、『人』という機能も付与してしまった」
「天人族は、人じゃないんですか?」
「厳密に言うとちがうね。彼女たちに魂はあるが…この世界を回すシステムのような…そう言う役割を持った物という感じ?それに君は、人の機能を与えた。すると彼女は年相応に成長してしまった。天人族という種族ではあるけど、彼女はほとんど人種族だよ。生まれてくる子供も人種族さ」
「そうですか…では天人族はどうやって生まれるのですか?」
繁殖しないならどうやって生まれるんだ?
「彼女たちは、昔私を慕ってくれていた子たちさ…私が世界を去るときに、魂ごと付いて来てくれた100人の人達。彼女たちはもともと、獣人だったり人族だったのさ…その魂が、天人族として回ってるんだよ?」
「それは…」
「可哀想だって言うのかい?上辺だけで、そんなことを言わないでほしいな?彼女たちに当時の記憶はない、でもね…どれだけ下の人にひどい目に合わされたか…想像がつくかい?そうだね~簡単にいうと…スピカ王女なんて生易しいほどの拷問さ。それだけ狂ってたのさ。当時の人はね」
だから…彼女は隔離したのか…この空飛ぶ島に、愛する彼女たちの魂を…
「でも今は、一人目ちゃんのおかげで、みんな楽しそうだし!それにシャルも三人目ちゃんと幸せにね!」
「うん!」
シャルは僕の腕に体を寄せて、笑顔で頷いた。
「シャルの当時の事でも聞いちゃう?」
「いえ‥シャルはシャルなので…昔の彼女に興味ありませんよ」
「シャルはシャルだよ!ツバサの事が大好きな天人族!」
「即答か~まあそうだろうと思ってたけどね~っと揃ったかな?」
「じゃあ僕たちはこれで…」
「一人目ちゃんの事を聞いて行かないのかい?」
「ええ…それは彼女たちの役目ですし…僕は彼女たちで手が一杯ですからね」
そうして僕は、ティアの元を離れ、箱舟に乗り込んだ。
子供が出来た時に何を買い込めば…そうだ…ミラさんに相談しないとな…忙しくなりそうだなあ~
決意と覚悟を決め、僕はこの日、パパになった。




