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私の世界にようこそ  作者: てけと
終幕『私の世界で幸せに』
114/189

VS世界を壊すもの

 天人族の国で俺は試行錯誤を繰り返す。なかなかうまくいかないが…最初から成功するなんて、そんな哀れなご都合主義ではない。ならばひたすら試すだけだ。

 とある部屋に引きこもり、ひたすら試す。助手の天人族と共に。


「シン様?いったい何をなさっているのですか?」


 そう声をかけられる。マオの町。今はリトルサンタウンだっけ?から人種族まで乗せて行ってほしいと懇願されたあの城の執事、カインだ。


 あの町に貿易と、俺の作った船、箱舟の試運転の為に立ち寄った。

 この島は、何か核があるわけでなく、この地面そのものが、宙を浮く物体だったので、それを素材に船を作っていた。

 この島自体にも細工はしているが、精々その場に留まる程度しかできない。元々巡っているルートを変えるのは無理だったので、少し留まれるようにするのが精いっぱいだった。

 そして少し留まってる間に、この空飛ぶ船、箱舟で貿易を行う。貿易は毎回、一定量の物資を交換する感じだ、それを決めるため、各国を一度回らないといけない。

 今回は一番近かった魔人国、その後大陸の中心を経由し、人種族、獣人国というルートなのでその通りに回る予定だ。

 なぜ、マオのいた町に行ったかと言うと、あそこには商人ギルドがある。獣人国行の商人たちに、獣人国へ都合をつけてもらおうかと思ったからだ。人種族の方は、ツバサがばら撒いているはずだし、この町が一番都合がよかった。

 後は天人族の自衛手段として、レールガン…これは苦労した…鉄板をくっつけるだけだと思ったんだが…武器として使うにはいろいろ試行錯誤した…あとは捕獲用ネット、撃てばネットが広がって捕らえるものとか、ペイント弾、アンモニアで作った色付きの玉が出て、当たると破裂する…あとめっちゃ臭い…もう二度と試したくないほどには…



 とまあ貿易の為にいろいろ作り、俺は、最初に貿易をする町として、リトルサンタウンを選んだわけだ。

 この町に、いざ天人族たちと入ってみると、まるでゴーストタウンのように活気がなくてな…

 

 理由を聞いて少し喝を入れた。


「お前らは何のために生きてるんだ?マオとか言う神の為か?いなくなったら死ぬのか?それがアイツの望みか?違うだろ…せっかくあいつが頑張って作ったこの町を、ちゃんと守れよ。あいつがいまのこの町を見て、どう思うだろうな…いいか?本当にアイツを想ってるなら、あいつの行動を全て肯定してやれ。自分たちの傍にいてほしいなんて、お前らの自己勝手な考えに、あいつを巻き込んでやるな。あいつが胸を張って、この町を誇れるように努力をしろ。この町はあいつの故郷のようなものだ。いつか帰ってくる時の為に、何なら今より発展してやれ。またこの町に住みたいと思うほどにな!」


 そんな感じだったか…すると少し考えた町のやつらは、各々動き出した。

 そして城の執事とメイドが、俺が次に人種族の町に行くことを知ると、連れて行ってほしいと…マオに一言報告しておきたいと…


 自分たちで勝手に行け、と断ったが、いつの間にか船に乗り込んでやがった…仕方ないので放置することにした…



「ん?これは醤油と味噌の試作中だ。これがあると、とうとう俺の故郷の味が完成するわけだ」


 大豆…ではなく、ベヤズビーンズとかいうらしいが、味や特性はほぼ大豆だ。これを今仕込んでるわけだ。

 麹は米がある。あとは分量が違うものをいろいろ作り、温度や湿度の違う部屋を用意し、いろいろ試している。あとは時間を待つだけだ。


「ほほう…それは興味深いですね…どれくらいで出来るのです?」

「そうだな…早くて180日、遅くて600日くらいか…んじゃあこれがメモだ。後は任せるぞ?」

「はーい!まかせて!」


 天人族に、今後の製法と、熟成具合、味などを記したメモを渡しておく。この大豆擬きがどんなものかわからないから、しっかりと管理するように言っておく。


「そんな長い時間…腐らないのですか?」

「それはわからんが…まあその時はまた、考えるまでだろ?どうせただの暇つぶしだしな…」


 世界の危機とやらが来るまでの暇つぶしだ。天人族の貿易品も増えるしな。


「ん…?」


 俺の具現化しているものが、消える気配がする。これは…


「ツバサに持たせた紙か?そう言えばそんな約束していたな…」


 仕方ねぇな~と場所をふと見ると、今から向かう大陸の中心辺りだった。


「なんであんな大雨の中、俺を呼ぶんだよ…」


 めんどくせぇ…と思うが、俺は約束は守る主義だ。

 島はちょうど、大陸の中心で、分厚い雲を生成している。これを落ちてきていた海水の8割を消費するまで行うらしい。じゃないと大陸を回ってる間に、海の水で島が溢れるからだ。

 島は当分止まっているが、俺が帰るまでは止めといてくれと、天人族に言う。


「シン様どちらへ?」

「呼ばれたから行ってくる。このほぼ真下だ」

「でしたら、私たちも…少しでもお役に立たないと、タダ乗りになってしまいますからね」

「そもそも密航者だろ…まあ勝手にしろ…」


 箱舟一台で、分厚い雲を下に抜ける。すると異様な光景を目にする。

 

 大きな山の中心にでっかい穴が開いている。これはまあ普通の火山のようなものだが…そこから何か黒い物が出ようとしていた。

 見えない力でもあるのか、そこに突進して、山全体が揺れていた。


「お?これが…世界の危機か?ふむ…一度戻るぞ」


 俺は一度、箱舟を島に戻す。そしてもう一台の箱舟に、天人族数名と乗り込む。


「よし。カイン。お前らには働いてもらうぞ」

「何なりと…」

「俺はあの黒いやつの所に行く。お前らはここから東に数キロほど進め。望遠鏡を船内に用意しているのは知ってるな?」

「ええ、拝見しております」

「それで地上を見ながら進め。マオもいるかもしれん。ツバサとマオを回収して、島へ戻れ。以上だ」

「かしこまりました」

「ソミア。前来た人種族のツバサと同族のシャルを覚えてるか?」

「うん!」

「見つけたら助けてやれ。レールガンの持ち出しも許可する」

「はーい!まかせて!」


 カイン達が乗った箱舟と別れ、俺は大陸の中心へ向かう。


「さてと…まずは穴の奥へと、引っ込んでもらうかな…俺が先に降りるから、後から追って来い」

「「「はーい!」」」


 俺は中心の穴の真上に箱舟を動かしてもらい…具現化を使う。


 山に刺さるような、でっかい剣を、まるで大陸を斬る為に作ったかのように…それほどの大きい刀を作り、その剣の柄に飛び乗る。


 そして山のように大きな剣は、大陸の中心へと落ちていく。


「ってお前らは…箱舟で待機だろ!」

「ゆーしゃさまと一緒に行くの~」

「ね~」


 まったく緊張感なく。剣は山の穴にぶっ刺さり。黒い塊と共に下に落ちていく。

 数分ほど落ちると、ガンッ!と何かに引っかかり、剣が止まるが、衝撃に押され、黒い塊は下まで落ちて行った。


「ん?ここから少し狭いんだな…」


 剣の鍔が引っ掛かっている。仕方ないな…具現化を消し。自分も下に落ちようと思ったところで…



 俺の周りに、とても眩しく光る玉が纏わりつく。


「ココ…?」


 なんとなくそう思ったのだ。別に根拠があるわけではない。そしてその光の残滓がある方向に歩いていくことにした。



 光の残滓を追って、洞窟内に入ると、すで息絶えたココと、叫び続けるサーニャとリリア、そして魔力を使い切ったのか、ぐったりしたルルがそこにいた。


 やっぱりこの光は…ココだったのか…どうりて見たことある光だと思った…


「死んでまで、俺の元に来るなんて…俺は神様でもなんでもないんだぞ?」


 ちゃんと神様の所に帰るんだぞ?普通は…な

 サーニャたちの元へ、俺は向かう。


「シ…ン…ココが…ココが!!」


 サーニャは特に、ココを一番想ってる。ひどく錯乱している。落ち着け、と頭を撫でながら、言葉を紡ぐ。


「任せとけ。この自分の命を顧みないバカを、ちゃんと連れ戻してやるから、起きたら叱ってやれ…セシル。ココの治療を」

「はーい!でも体しか治せないよ?」

「それでいい。あとは俺がやる」


 俺に纏わりついているココの魂を摑まえる。この光の残滓は、ココの魂の一部だろう…ならば減った分の魂を補う必要がある…俺の魂で…

 サーニャやリリアのチョーカーと同じの感覚だ。俺の命を削って創造する。素材はココの魂だ。

 彼女を想い、想像し、これから生きていくだろう彼女を創造する。


「ちゃんと生きて待ってろよ?もしくは誰かと、ちゃんと幸せになれ」


 そして少し暖かい光の玉が、俺の手のひらに生まれ…それを彼女の胸に押し入れる…丁寧に…体とちゃんと繋がるように…


 そしてココの魂が入ったのを確認すると、体を生き返らせる為に、心臓を動かし、肺に空気を入れ、循環させる。


「カハッ!…ケホッ…ケホッ……スゥ…」

「ココ!?……良かった…」サーニャは泣きながらココを抱きしめる。


 ひとまずこれで…彼女は大丈夫だろう。ふとその洞窟の広場を見渡すと、沢山の人がいた。ならば…


「よし…あとは大丈夫だろう…セシル、この場にいる全員で撤退しろ。俺は用事を済ませに行く」

「はーい!頑張ってね!ゆーしゃさま!」

「シン…ちゃんと帰ってきて…ね?待ってる…から…」


 リリアが心配そうにそう言うが…俺はこの用事が済んだら、彼女たちの元には帰れない。少しごまかす様に…


「保証はできないな」と言葉を濁しておく。





 俺はまた穴に降りるため、洞窟を出る。すると追って来ていた箱舟が目の前に現れる。


「この洞窟にいる人を、ぜんぶ回収して島に戻れ」

「ゆーしゃさまはどうするの~?」

「ん~島に戻ったら、また迎えに来てくれ。頼んだ」

「はーい!」


 そして俺は穴に飛び降りた。真っ暗な穴に…





 思ったより穴は深く、数十分ほど落ち続け、ようやく終点に到着する。


 グチャッ!という音と共に、俺が落下で潰れ。再生する。


「暗いな…ランプでも作っとくか…」


 大き目のランプを作り、地面に置く。目の前には黒い何かが蠢いていた。


「お前が世界の危機か?会話できるのか?」

「なんで私と会話するの?世界を壊す私と?」


 声を出すというより、頭に直接響く、そんな感じだった。


「なんで世界を壊すんだ?出来れば阻止したいんだが?」

「仕方ないよ?だってまた人が殺し合うんだもん。そうなった時の為に、私は残されたんだし」

「ん?殺し合う?そうなのか?」

「うん…いろんな種族の血が流れてた…そしてここに来た人が言うんだ。人がまた殺し合うこの世界を壊してほしいって…」

「じゃあなんでお前は…この穴から出られないんだよ…」

「え…確かに…でも…起こされたのは確かだし、壊さないとね」

「じゃあ俺はそれを止めるぞ?俺の為にな」

「出来るといいね」


 黒い塊は、黒い人型の形になり…俺を壊すために動く。

 まったく何をされたが見えなかったが…俺が細切れにされたのはわかった。


「簡単に壊れちゃった…口だけってやつ?まあいっか…さっさと戻ろう…」

「それは困るな…ちゃんと俺を壊してから行けよ?」

「……面白い体をしてるね…」


 表情はわからないが、驚いている感じだろうか?


「ならこれならどう?」


 まるで獣の口のような物が俺に向かって飛んでくる。

 俺の勘が何となくやばいと危険信号を発する。ギリギリで避けるが…右腕を持っていかれる。そして…


「お?回復しない?」


 割とのんきに考える。今までならすぐ回復していたが、今しがた取られた右腕は、再生しなかった。


「やっぱりそうか…ならこれで終わりだね?」


 そう言って、先ほどの攻撃をする為か、獣の口のようなものを、大量に作り出す。


「前までの俺なら…ここで喜んで死んでたんだがな…今は俺の(いのち)は…俺だけの物じゃなくなってな‥抗わせてもらうか…」


 俺は残った左腕を胸に当て、自分の(いのち)を素材に、創造する。こいつに勝てる力を…体を…


 そして俺を壊すために、殺到する攻撃。数瞬速く、俺の具現化が終わり…


「へぇ?今のを避けるんだ?」

「止まって見えるほど遅かったぞ?」


 すべての攻撃を薄皮一枚かすめるように避け、その場で立ち尽くす。

 俺は懐から、ナイフを取り出す。そして…それを創りなおし…少し長めの刀にする。刃はなく、白い刀身に、黒い筋が一筋だけ入った刀だ。


「ボコボコにして、その()()()()をさらに歪めてやるからな?」

「ふっ…やってごらん?」


 剣を両手で持ち、中段に構える。そしてあらゆる角度から、攻撃が殺到する。

 避け、弾き、避けきれないものはたまにくらい、少しボロボロになりながらも、前に走っていく。


「もらったああ!」


 俺はとうとう間合いに入り、上段から、黒い影を攻撃する…しかし


「残念。あと少し足りなかったね…」


 ザクッ!と両腕が、後ろから噛み切られ、刀は宙を舞う。

 

「まあ所詮、俺は道化師…最後の最後で失敗して、観客に笑われるのが仕事なんだよ…」

「んじゃあさようなら~」


 と俺の頭めがけて、攻撃を繰り出そうとする


「「させない!!」」


 宙に舞った刀を握り、それを振り下ろすツバサ。そして俺を守る為、横に火魔法を爆発させて移動させるマオ。


 ドドォン!!と爆発音と、ツバサが剣を振り下ろし、黒い人影を打つ音が重なった。 


「いったあーーい!!!」


 と頭を押さえる人影。俺は爆発で吹っ飛び、転がっていく。


 腕がないので、起きにくい…少し手間取って起き上がる。


「お兄さん…!腕が!」

「ん?ああ‥」


 何とかイメージを固め…右腕だけは回復する。


「これでいい。多分マオにも治せないからな、気にすんな」と治した右腕で、泣きそうになってるマオの頭を撫でる。

「ツバサ。それ返してくれ」

「ああ‥はい。どうぞ」と戸惑うように刀を返してくれるツバサ。


 右手でしっかり握り、刀を肩に担ぎ、蹲ってる黒い人影の元に向かう。


「うぅ…痛い…なんで…」

「おい」

「はいぃ!」

「ボコボコにするって言ったよな?」


 俺はニヤリと笑い、黒い人影に近づく。


「ひぃ…ごめんなさい…でも私もこれが仕事なんだよ…」

「じゃあ…おとなしく俺に付いてこい、お前はもうこの世界に必要ない」

「へ?」

「この世界をわざわざ壊す必要なんてないんだよ…欠落した管理者の片割れ(感情)。それがお前だろ?」

「……知ってたの?」

「常に泣きそうな顔しやがって…あの常に楽しそうな馬鹿と正反対だな。悲しみ、恨み、そう言った負の感情を、この世界に残したんだろ…そうじゃないとあの管理者は壊れてしまうと思ったから」

「私はこの世界の人が好きだからね…なら…また私が起きるようなことがあれば…その時は世界が壊れるべきだってね…私…顔なんてないのによくわかったね……そうか…君ならわかるか…」

「楽しいだけしか感じないのに、なんで…楽しい、うれしいがわかるんだよ。悲しいだけしか感じないのに、なんで悲しい、辛いがわかるんだよ…お前はさっさと元に戻れ。そのうえで楽しませてやるからよ?」


 刀をナイフのサイズに戻し、俺の懐に入れる。そして俺はそいつの手を握る。


「まったく…君は何者なの?」

「俺はシン。ただの死にたがりの道化師だ………ツバサかマオ…俺をあの天人族の国まで送ってくれ…よく考えたら帰る方法がないわ」

「最後まで締まりませんねシンさんは…」

「お兄さんらしいね…」


 途中まで、マオに抱えられて飛び、箱舟に乗り、天人族の島に帰る。

 

 宮殿の奥に向かう…するとなぜかシャルが、光の柱に入ろうとしている…


 は?


「シャル!待て待て…そこは俺が先約だぞ?」

「うっ…シン…でもシャルたち天人族は…せかいの危機と共にかえらないと…うぅ…」


 と涙を流しながら俺を見るシャル。そう言えばこいつは、ずっと下にいたんだったな。

 それに…ツバサは気づいていないのか?


「シャル…いいんだよ帰らなくて…お前の自由に生きろ」

「でも…でもぉ~うああああぁぁぁぁん」

「はぁ…今回は俺しか入れないようになってんだよ…それにお前気付いてないのか?」

「え……な‥に?」

「ちょっと失礼するぞ?」


 シャルのお腹に触れる。まだ一か月もたってないのか?微かにお腹が張っている。


「おめでただな。シャル。多分お前…ツバサの子供を授かってるぞ?」

「え…?ツバサの子供?ほんと?」

「俺は医者じゃないから確証はないが…その子の為に…ツバサと共に幸せに生きろよ…な?」

「シャル…ツバサといっしょに…生きていいの……こども産んでも……」

「ああ。さっさとツバサに報告して来い。俺がもし戻ってきたら、ちゃんと見せてくれよ」

「う…ん…うん!ありがとう…シン!私たちの子供、見にきてね!!」

「おう。ツバサにもよろしくな。…あんま走んなよ!」

「は~い!!」


 まったく…危うくすべて台無しにされるとこだったぜ…


「君は……人の魂が見えるんだね…普通は気づかないよ?」

「そうか?なんとなくわかるもんだろ?ああいうのは…」

「そう言うことにしておこうかな?」

「はいはい‥」


 そうして俺は光の柱に入る。世界を壊すものと共に…




 そしてこの世界から、魔物という概念は消える。彼らの植え付けられた、人への敵意、殺意が、消えた瞬間でもあった…

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