VS魔神族アキ
三人称視点になります。
セフィーから飛び降り、森に降り立つと、アキは笑顔でツバサを待っていた。
「お久しぶりですツバサ様」
「2度と会いたくなかったけどね」
苦笑いで応えるツバサ。皮膚は黒くなっており、赤い眼光を光らせたアキが、ツバサを見据える。
「私の目論見とは違いましたが…世界を壊すのは彼ではなく、私達だったとは…素晴らしいとは思いませんか?」
「あの黒い塊の事か?どういう事なんだ?世界を壊す?」
「ええ…彼が世界を壊すのではなく…彼は世界を壊す力を他者に与える、そう言う役割だったようですね!その第一段階が魔物だったわけです!ぐふふふふ」
「ふーん…自ら世界を壊す力を与えられて、そんなに嬉しいわけ?」
「もちろんです!あぁ…このクソっタレな世界を壊せるなんて…ゾクゾクします!」
光悦とした顔で、頬を抑えるアキ。
「なぜそこまで世界を恨む?貧しい家庭とか?虐げられていたとか?」
「いえ?私は普通に裕福な家の商人でしたよ?」
キョトンとしているアキ。何言ってるんだこいつは?みたいな顔でツバサを見る。
「何もしなくても何でも手に入る家庭。とてもとてもつまんない。全て私の家の名前と金で手に入る。でもある日、何気なしに、奴隷を3つほど壊してみたんですよ。それはもうグチャグチャに。いやぁ~快感だったな~でもそれからと言うもの、家族は私を避けるようになりました。まあ家族ですら私にとってはゴミのようなものですし?さっさと全員殺して、私は家を乗っ取り好き放題していました…でも…飽きたんですよね~…なので暇つぶしに…この世界を壊そうと…色々調べました。しかし、いろいろやりすぎてしまったようでね?家に来た衛兵にボコボコにされるわ。牢屋に入れられるわ。奴隷に落とされるわ…」
「自業自得じゃないか…」
「私がそんな目に合う糞な世界なんて…壊れて当然だと思いません?私が心を入れ替えたと、ニコニコしてたら、すぐに馬鹿どもは騙されてくれましたよ?私をこんな目に合わせた、世界への憎悪を心に秘め…世界を壊す術を、模索していたんですよ」
「それがあれか…」
「ええ!素晴らしいですよね!」
そう言っていつの間にかツバサの目の前まで来ているアキ。その眼には狂気が宿っていた。
「まあさせないけどね?」
「ツバサ様ならできるかもですねぇ~だから何とかして殺したかったのですけど?」
アキが突如、拳をツバサの顔に向けて振るう。横に顔を動かし避ける。
ツバサはケリを放つが、腕でガードするアキ。
1mもない間合いで、お互い攻撃し合うが、決定打はなかなか生まれない。
「あはははははは!楽しいですね~ツバサ様!!」
「っこの…」
ガッとアキの胸元を掴み上にほおり投げるツバサ。そして手を翳し、火魔法を放つ。
ドォーン!と爆発するが…
無傷なアキがそのまま地面に着地する。
「めんどくさい相手だなぁ…」
「世界が壊れるときまで…私と踊ってましょうよ~ツバサ様?」
光悦とした表情でツバサを見るアキ。ツバサは何となく気付く、こいつは時間稼ぎするためだけにいるのか?っと‥
彼女を無視して、大陸の中心に行くべきか?と思うが…
「私を置いて行ってもいいですが…大事な嫁が死にますよ?」
ニヤリとアキは笑う。ツバサは真眼で周りの情報を少し確認する。するとシャルとミーシャが、こちらに向かって飛んでくるのが見えた。
「チッ…」
そうしてツバサはまた、アキに向かって突っ込んでいく。しかし彼は覚悟を決めた。
アキからの攻撃を、避けず、代わりにそれ以上の攻撃を叩きこむ。
ツバサは踏みとどまり、アキは吹っ飛んでいく。それを追いかけ、また同じことを繰り返す。
「ぐはっ…なんでぇ!?」
「お前の上っ面の覚悟とは違うからだよ」
たまらず上に飛び上がって逃げるアキを追いかけるツバサ。アキはツバサの胴体に向かって蹴りを放つ。ツバサは痛みで、息を吐き出しそうになるが、歯を食いしばって堪え、下に叩きつける様に、アキの顔面を拳で打つ。森に向かって飛んでいくアキ。
ツバサの口から血が垂れるが、それを拭き、またアキを追いかける為、地面に降りた瞬間、すぐ駆けて行く。
「自分の命より大事な者が、僕にはいるんだよ」
「くそくそくそくそ!!わかってはいたけど…強すぎる…」
森の中を逃げるように走っていくアキ。殺される恐怖に、ただ逃げることを選択した。
時間さえ稼げば…彼があのクソっタレな結界から出れば、それで世界は終わる。それまで時間を稼げればいいのだ…
何か策はないか…と考えながら走り回っていると…遠目に彼女は見つけてしまう…
ツバサの嫁の二人を…
「ミーシャ様…シャル様…」
とアキは二人に近づく、顔を伏せ、弱弱しく、まるで助けを求める様に…
「あなた…アキかしら?」
「アキ~?なんでここに?」
猛スピードで迫ってきていたのが彼女とは、思いもよらなかったのだろう。
「大陸の中心の調査隊が襲われてしまって…はぐれてしまったのです…」
「近づかないで」
とミーシャが言い放つ。
「え…?そんな…」
「無駄よ?そんな三文芝居…あなたは銅の冒険者、調査隊のクエストは銀以上じゃないと、受けられないのよ?あなたにそんな実力があったとは…思えないわね…シャル!」
「うん!」
ミーシャはシャルを抱えたまま上に逃げるように飛びあがる。
「チッ!逃がすか!」
シャルを追いかけるように、アキは飛び上がる。
一瞬でシャルに迫り、二人を摑まえる。首を掴み、少し力を籠めると首が折れる様に。
「ぐ…」
「ふふふ~?あなた達を先に殺すか、ツバサ様を先に殺すか迷いますね~」
森の中で震えるほどの殺気が放たれるが、アキはお構いなしだ。なにせツバサは、これでアキに手を出せない。
「終わりですわねーツバサ様?先に死ぬか後に死ぬか選んでくださいね~!」
とアキが叫びながら下に落下していく。二人の首を締めながら…
「させないよ~?」
そんな声が上から聞こえる。
と同時にドンッドンッ!!と言う音と共に両腕が弾き飛ばされる。
「え…?」と呆然とするアキ
「シャル~浮上して?」
「ケホッケホッ…うん!」
咳込みながらも、ミーシャを抱えて浮上するシャル。両腕を失ったアキは、そのまま落下していく。
ツバサの待つ地獄へと…
木をバキバキ折りながら、落下していくアキ。そしてドサッと地面に到達する。
アキは即座に、光魔法で腕を生成する。そのくらいは余裕でできるのだ。
「なんなの今のは…魔法?しかしあの威力は…」
「僕の嫁に手をかけるとは…本当にいい度胸してるよね」
真顔でアキに話しかけるツバサ。そんなツバサに恐怖を感じるアキ。
「貴方の嫁を殺せなかったのは残念…」
アキが全く見えなかった。いつの間にか、ツバサの手が伸び、ガッと首を取られ、そのまま地面に叩きつけられる。
ドォン!ドン!と地面に叩きつけられる。そしてそのままツバサは馬乗りになり…
「ぐはっ…やめ…たす……」
「おしゃべりは終わりだ。さっさと死ね」
アキの顔に向けて、何百発もの拳を打ち付ける。まったく拳が見えない速度で。
ドドドドドドドドと地面をえぐりながら、殴り続ける。
なかなか死ねないアキは、ひたすら殴られ、頭を潰され、治り、また潰され…それが数十分ほど続いた。
そうして完全に体から力が抜けたころ、返り血で血まみれになったツバサは立ち上がり、とどめとばかりに、火魔法で彼女の体を焼き、土魔法でえぐった穴を元に戻した。
しかしアキに受けたダメージは少なくなく、ドサッと地面に腰を下ろす。
「疲れた…あとはあれを何とかしないと……ん?あぁ‥なるほど…意外と早かったんですね…」
真眼を発動し、現状を確認するツバサ。少し安心して、仰向けに寝転がる。
「「ツバサ!!」」
シャルとミーシャが、寝ているツバサに覆いかぶさる。
「痛い痛い…割と怪我しちゃってるから勘弁してぇ…」
「ツバサの怪我はシャルが治すよ!」
シャルがツバサの胸に手を当て、傷を治していく。
「ツバサが怪我を負うなんて…よっぽどの相手だったのね…」
「いや…シンさんにボコボコにされたときに、ほぼストックが無くなっててね…こんなことになるなら、もう少し魔物を狩っておくんだったな…」
そしてツバサは、起き上がり、大陸の中心を見据える。
「さて…シンさん一人に任せる訳にもいかないし…僕も向かわないと…しかしどうやって行くか…」
「ツバサ~私たちの船があるよ?」
「君は…そうか…僕たちが乗っても大丈夫?」
「もっちろ~ん」
上空からふわりと降りてきた天人族達、その腕には大きな銃のようなものを持っていた。
「その武器は?」
「ゆーしゃさまが自衛できるようにって、れーるがん?とかいうやつらしいよ?ここに雷魔法を使うの!」
「まあ構造は簡単だけどさ…自衛って…過剰すぎるよね…」
そしてツバサは、シャルとミーシャを抱え、天人族が乗ってきた箱舟とかいう、空を飛ぶ船に乗り込む。
人が魔法で作った飛空艇とは違い、完全に空を自在に飛び回っていた。それにツバサは驚愕する。いろいろ聞きたそうにしていたが…
「それよりまずは大陸の中心だね」
大陸の中心に向かって舟が進んでいく。途中マオ達が合流する。
「何この船!?構造はどうなってるの?原理は?」
「私たちはしらな~い。ゆーしゃさまにきいて?」
「むぅ!」
「マオ…まずは魔力を回復しなさい…」
とルイが魔石を取り出している。
「そうだね…もう一戦する可能性があるわけだし…」
渋々マオは魔石から魔力を吸っていく。そして彼らは、大陸の中心へ向かう。
世界の危機とやらを何とかするために…




