VS魔神アミル
三人称視点になります。
マオ達一行は、大陸の中心へ近づいていく。肉眼で大陸の中心が、見えてくる。
「マオ~。シャルとミーシャはツバサのとこに行っていい?」とマオに懇願するシャル。
「…危ないよ?」
ありえない速度で迫ってくる敵がいるのだ。ツバサならともかくシャルとミーシャが戦えるとは思えない。
「今回の敵は…ツバサが必ず無事でいられるとは思わないわ…」
「ツバサがケガしても…すぐにそばに行けるようにしたい!」
マオは少し考え…
「せめてもう一人…誰かつけたほうが…」
そう言おうとした瞬間、ルイの魔力感知に何かが引っ掛かった。
「マオ!」
何か来ます。と言おうとした瞬間、魔法で作られた、数百もの矢が、空間を埋め尽くし、セフィーに殺到する。
「セフィー止まって!」
マオはそう言いながら、セフィーを囲うように、水魔法と風魔法で大きな球状の壁を作る。
グルグルと回転する球状の壁にはじかれ、矢は逸れていく。
しばらくすると矢が止み、マオは壁を解除する。すると少し遠くの空に、一人の人影が見える。
その人影は、手をこちらに向け、何か魔法を紡いでいる。
「セフィー!急降下!」
マオは自らの背中に羽を作り出し、セフィーから飛びあがる。セフィーはすぐさま真っ逆さまに地面に向いて降りていく。
まるで小さな太陽のような、火の玉が上空にボッと現れ、収縮していく。マオは周りの雨をすべて使い、氷の分厚い壁を生成していく。
壁を作り終わると、すぐさま下に飛んで逃げるマオ。そして…
カッ!と上空の火の玉が光ったかと思うと、遅れて…
ドォーーーーーンッ!
と爆発する。マオが作った、厚さ2メートルほどの氷の壁は、ひびが入り、衝撃を受け止めると、粉々に砕け散る。
マオは衝撃で、グルグルと体を回され、ルイがそれを飛んで受け止める。
「マオ!無事ですか?」
「うん…ありがとうルイさん!」
そのまま森に着地するセフィー。
「マオなら反射で何とかなったのでは?」とミーコが聞く。
「魔法の反射のスキルは全く検証してないんだよね…あれは私と言うより、空間自体を攻撃したっぽいから…危ないかなーと思ってね?」
魔法自体で攻撃したのではなく、魔法が起こすその余波で、攻撃したというのだ。
「シャルとミーシャはツバサさんの所に行くといいよ!こっちも危険だしね…」
「うん!そーするね!」
と、シャルがミーシャを抱えて、低空で森に隠れるように飛んでいく。
セフィーを圧縮で小さくしておく。大きいと攻撃の当てやすい的になるからだ。
「さてと…んー?アミルさんなのかな?何か用事?」
先ほど魔法を放った、人影が、マオ達の前に現れる。
白い甲冑に、ローブを付けた人物が、赤い眼光を光らせ、こちらに相対する。
「何か用事とは…私の人生を狂わせた魔女を…我が手で殺したいと思うのは、当然だろう?」
「ふーん…まったく…勝手だよね」
「マオ…あれがアルミ?あの膨大な魔力は…」
ルイは驚愕する。アミルの魔力量が、マオと同等かそれ以上なのだ。
アミルは剣を抜き、魔力を周りに漂わせる。魔力感知を発動したのだろうか。ルイとマオも同じく魔力を周りに漂わせる。
魔力が見えるものがいれば、青と白と赤の色が混ざり合い、とても幻想的な光景ではあるが、しかし彼らは、これから殺しあいを始める。
ルイとニーア、ミーコとシユは、スッとマオの前に立ち塞がる。
ルイとニーアが、左右からアミルに向かって突っ込む。
ニーアはさっと屈むと、足に向かって水平蹴りを、ルイは首を刎ねる様に、剣を振るう。しかし…
ニーアの蹴りは土魔法で防がれ、ルイの剣はアミルの手前で止まる。
アミルの周りで暴風が起き、ルイとニーアが吹き飛ばされる。
「ルイさん!ニーアさん!」
木に叩きつけられ、フラフラと立ち上がる二人。
「どうした?また時間を止めないのか?」
アミルがそんなことを言う。
最初にアミルが魔法を撃つ前に、時間を止めて、迎撃しようとしたマオだが…
「…どうやってるのか知らないけど…認識できるなら、止めたところで私が不利だからね…」
アミルは止まった世界でも、動いていた。ならば止めたところで…周りの5人が殺されかねない。
「マオ一時撤退を…」ボソッとミーコが囁く。
「なにかいい案でも?」
「もちろん」
アミルに対峙している4人が後ろざり、ニーアとルイは森の中にスッと入る。
「逃がすと思うか?」
アミルは風魔法と火魔法の爆発による推進力で、マオに突っ込んでくる。
「させない」
シユは投げナイフをアミルに向かって投げる。アミルは剣で弾くまでもなく、風魔法によりナイフは逸れていく。
ミーコがナイフの逸れた方向と逆に、もう一つ投げナイフを投げる。
すると2本のナイフがアミルに纏わりつくように、体の周りをくるくると回り、ナイフに付いていた糸がアミルを絡めとる。
「ちっ…小賢しい…」
風魔法で、ナイフを糸ごと弾き飛ばす。しかし…目の前にいた3人とドラゴンはすでに消えていた。
「逃がしたか…まあいい…一人づつ始末するだけだ」
そう言ってアミルは、自身の膨大な魔力を、森全体に流す。マオ達の動向を探る為に。
マオはシユにおんぶされて、森の中を駆けて行く。しかし…
「そんな膨大な魔力を持っていて、見つからないとでも思ったか?」
行く先にアルミが立っていた。
シユはマオを背中から降ろし、ナイフを2本持ち、構える。アミルも剣を抜いて構えている。
シユはアミルに突っ込み、ナイフを振りかざす。
「ハァァ!!」
シンにもらったナイフなら、甲冑ごと切れる威力はある。胴体に向けて振られたナイフは、アミルの胴体を貫通する。
「ッ!?手応えがない…」
斬られたアミルはその場から姿を消し…
ドスッ!と剣が刺される音がした。
「ただ魔力が多いだけの魔女が…手間取らせるな」
とマオの後ろから、剣をマオの体に刺したアルミが言う。
「マオ!」シユが叫ぶ。
体を貫通する剣を見て、マオは愕然とし…
アミルが剣を抜くと、その鮮血が周りに飛び散る。
「俺レベルの使う闇魔法は、お前ら程度の策敵能力では、看破できまい」
マオはその場に倒れる。地面に血だまりを作っていく。心臓を一突きされたのだ。即死だったのだろう。
「さっさと終わらすとしようか」
そう言ってアミルは、剣を構え直す。
「そうですね。さっさと終わらせましょうか」
という声が何処からか聞こえる。すると…
あらゆるところから糸がアミルに巻き付いて行く。両足、両手、胴体すべてにシュルシュルと糸が巻き付いていく。
「な!?」
数秒経つと、全身に糸が絡みつき、身動きが取れなくなり、その場に倒れるアミル。
「魔女王を囮に使っただと…そんな人でなしだとは思わなかったな…」
「何の事かな?」
とシユの後方の木から、マオがひょこっと顔を出す。
「…なぜだ…お前は間違いなく俺が殺した…しっかりとこの手に感触が残ってるぞ!」
とふと自分が殺したはずのマオの方を見ると、光に包まれて消えて行く。
「闇魔法の偽装じゃないよ?光魔法で私自身を作っただけ。魔力のほとんどをつぎ込むほど精密に作ったのは初めてだけどね」
自分が二人いればいいのに…とマオは思い、研究していた。かつてマオが研究に引きこもる為に、ルイ達メイドを、欺く魔法。最終的にはルイにはばれてしまうのだが…
「さて…アミルさん…消しちゃおうかな」
「俺を…なめるなよ!!!」
糸で縛られたまま、宙に浮き周りの木々を吹き飛ばす。
そしてアミルの持っていた剣が宙を舞い…マオに向かって飛んでいく。
「ふぇ?」と間抜けな声を出し、飛んでくる剣を見るマオ。
すでに彼女にはほぼ魔力が残ってなく…成すすべなく、飛んでくる剣を見ている事しかできなかった。
「死ねぇぇぇぇ!!」アミルが赤い目を輝かせ、殺意を込めた剣がマオに飛んでいく。しかし…
キィン!とどこからともなく、2mほどの剣が降ってきて、アミルの剣を弾く。
弾かれは剣はまた宙を舞い、マオに襲い掛かろうとするが…
ドドドドドッ!とマオの周りに、剣が降り注ぎ、まるで壁のように立ち塞がる。
そしてマオの前に一人の男が降り立つ。
「ご無事そうで何よりです。マオ様」
そう言って、刺さっていた大剣を抜き、背中に背負う。
「カインさん?なんでここに?」
「なに…少しご報告がありまして。その前に…目の前の敵を排除致します」
するとマオの周りに、屋敷にいたはずのメイド達が降り立ち、各々が刺さっていた剣を抜き、腰に携える。
「はっ!たかが元奴隷どもが!俺に勝てるとでも!」
「アミル殿…あなたには感謝しております。私共に生きがいを下さったのだから…それに…もう戦闘は終わっております」
「なに?」
そう言うや否や、上空から雷が、アミルに向かって落ちていく。一発ではなく、数十ほどの雷が…
数十分ほど雷が落ち続け、最初は抵抗していたアミルだったが、次第に力尽き、ドサッと地面に倒れた。
「いえーい!」と上空で喜んでいる天人族達。
彼女たちが魔法を放っていたのだろう。天人族達が空から降りてくる。
「殺しちゃったの?」とマオが聞く。
「んーん?死んではないとは思うけど…?それはマオに任せろって、ゆーしゃさまが言ってたー」
「そのゆーしゃって…」
「シン様でございますよ。マオ様」とカインが答える。
そっか…と少しうれしそうにするマオ。そして気を失ってるアミルの元に近寄り。
「やり直そう、アミルさん。私に出会うことなく、あなたはあなたの人生を生きてください」
アミルの魔力と、自分の残り少ない魔力を練って、魔法を紡ぐ。
世界の時間は巻き戻らないけど…私が初めて会った時の、アミルさんをイメージして…
「あの頃へ戻れ…時間遡行」
真っ白だった髪は青に戻り、やつれていた顔も…魔力もすべて、元の魔人族のアミルに戻る。
「これは…私だけの魔力じゃできない欠陥魔法だなぁ…」とマオは後ろに倒れる。
魔力を使い尽くし、体に力の入らないマオをルイとニーアが支える。
「私と出会う前に…戻ったはずだから…カインさんに…あとは任せるよ」
「…ええ…任されました。あとご報告です。マオの町はその名を変えました。マオ様は、もうあの町に縛られることはありません。しかし…もしお帰りになられるのであれば、いつでもその準備は整えております。マオ様の好きなように生きて…もし疲れて帰りたくなったら、いつでもお待ちしております」
「ふふ…誰の入れ知恵なのかな?ありがとうカインさん。一応私の、この世界での故郷だからね。気が向いたら帰るよ…で?なんて町になったの?」
「私達を照らしてくれた、小さな太陽のいた町。リトルサンタウンでございます」
「この世界の…町の名前じゃないよね…でも嫌いじゃないよ?」
とてもいい笑顔で、マオはそう言うのだった。




