ツバサはココ達を追う
シンさんにお米をもらってから、僕はたまにマオの家に呼ばれ、アリサさんとナギの料理研究に付き合わされる日があった。
僕は試食役だ。シンさんのレシピは曖昧にしか書いてない。だから味を確かめるために、一度食べたことがある僕の意見が必要なのだそうだ。
しかし…
「いや…十分おいしいんだけど?」
「しかしまだ、調和がとれていない気がしますね…」
「そうですねアリサさん…もう少し肉の味を引き立てて、野菜と調和するような調合にしないと…」
普通の家庭が、市販のカレールゥで作るような。そんな普通においしいカレーだったんだけど…
「まあまあ…そりゃシンさんの作るような、美味しい料理にも感動するけどさ。でもさ、こういう普通の懐かしい味にも、マオは感動すると思うし、僕もすごく懐かしい気分に浸れるからさ…」
「妥協は許されません!」
「ご主人様。可能性があるなら、そこへ至るために、努力するべきなんです」
「…はい…」
まあよりおいしいものが食べられるなら、僕としては問題ないか…
僕と二人が、意見を言いながら、カレーライスを食べていると、匂いにつられたのか、マオもフラフラとやってきた。
「ずるいよ!私にもカレー頂戴!!」
「あら?マオがこんなお昼時に、研究室から出てくるなんて珍しい…どうしたの?」
ナギがマオの為にカレーを用意し、持ってくる。
「ん!おいしいね!お米様様だなぁ…ああ‥ちょうど…んぐんぐ…ツバサさんの所に行こうと思ってたんだ」
マオがカレーを食べ終わるのを待ち。会話を続ける。
「僕の所に?なにしに?」
「ごちそうさま!…ちょっと気になることがあってね~私を冒険者ギルドに連れてってくれない?」
「ほう?マオが冒険者ギルドに?」
マオは冒険者としてやっていけるほど強いんだけど…争うのが嫌いな彼女は、魔道具店をやることにしたらしい。
そんなマオが冒険者ギルドに?
「この間私の所に、ココが来たんだよ。それで家のルイさん達を借りたいってね。あのココ達がだよ?」
「それは…気になるね…」
シンを慕ってる獣人たちは強い。僕なら勝てるけど…5人がかりで来られると、手加減はできないだろう…
「今から行く?」
「行くよ!」
そう言えば…僕はまだお米の代金を払ってないし、なんならココ達の案件を僕が終わらせてもいいかな?
そんな事を考えながら、マオと冒険者ギルドに向かうことにした。
冒険者ギルドに入り、受付に向かうと、狐族の獣人さんがいた。どうせなら、彼女の所に行くことにした。
「ご無沙汰ですね。ツバサ様、今日はどの様なご用件で?」
「ココ達の受けているクエストを、手伝ってあげようと思いましてね?報酬は別にいらないので」
というかすでにもらっているので…
「そうですか…ツバサ様にお手伝いいただけるなら、頼もしい限りですね。ではクエスト内容を軽く説明しますね?そちらのお嬢さんは…マオ様ですかね?」
「よくご存じで…」
「聞かせてください!ルイさん達がやってるクエストを!」
マオが食い気味だ、よほど心配なのだろう。
「今回ココ達が行ってるのは、盗賊の討伐なのですが…最近活発に動いている盗賊は、組織ぐるみでの犯行だと断言しました。なので黒幕の捕獲、もしくは討伐がクエスト内容になっております」
「ココ達で苦戦するとなれば、よっぽどの事なんですね?」
「ええ…しかし今回尻尾を掴んだので、補助要員として、ルイ様、ルル様、ニーア様に同行をお願いしました。万が一の為に。その見つけた拠点には、現在、他の冒険者と衛兵も向かっております。が…」
と少し苦い顔をする受付嬢さん。
「実は悪い情報なんですが…大陸の中心に調査に出ている冒険者たちと、連絡が途絶えました…そしてこの拠点は…首都から大陸の中心に向かって、数日ほど行ったところにあるんです…この情報は、まだ彼女たちに伝えられてないのです…」
「ココのクエストと、その件が関係あると思うわけですね…」
「ええ…これは私のただの勘ですけどね…総勢80名の冒険者…それも、銀より上の冒険者が失踪したわけです…私たちが思ってるより、大きな組織だったようで…」
銀の冒険者が、ただの盗賊に後れを取るわけもない…ならもしそれが、今ココ達の追っている黒幕の仕業なら?
「準備をして、明日朝早く出ます」
「私も行くからね!」
マオが僕の服を引っ張る。
「んー…わかったよ…んじゃあ明日の朝に、西門に集合ね」
「分かった!」
「ツバサ様、マオ様…どうか彼女たちをよろしくお願いします」
「「もちろん!」」
ギルドを出て、各々準備するために、町に繰り出したのだった。
翌日、西門で、僕とミーシャとシャルで、マオを待つ。
「待たせちゃったかな?」
と少ししてから、マオとセフィーが合流する。
「んじゃあ行こうか」
と僕は馬車に乗り込む。
「ツバサさん達!飛んでいこうよ?」
「「「へ?」」」
マオに手を引かれ、西門から徒歩で出る。
そのまま街道を外れ、森の奥に出る。そして…
「セフィーお願い!」
「マオがそう言うなら…」
セフィーがドラゴン形態になり、その後マオが魔法をかけると、大きなドラゴンになる。
「さぁ!乗って乗って!」
「いいのか?」
「セフィーにちゃんと許可は取ってるよ!」
僕たちは恐る恐るドラゴンの背に乗り、鱗に捕まる。
「んじゃあセフィー!いこう!」
マオはドラゴンの頭に乗り、そこにある角に捕まる。
そして少し助走をつけ、空に舞い上がる。
「おおお~!飛空艇や、シャルに抱えられるのとは違った感動があるな~」
飛空艇はほぼ海での船旅だった。シャルに抱えられてるときは、ふわふわ浮いてる感じだ。そして今は…ジェット機に乗ってるような感じだろうか?
「むぅ…」
少し不機嫌そうにしたシャルは、背中っから綺麗な羽を出す。
「シャルと飛んでる時が一番気持ちいいからね?今飛び出す危ないからね?」
僕を抱えようとしていたシャルを、何とか止める。
「スピード上げるよー!しっかりつかまっててね!」
シャルとミーシャをぐっと抱え、体を伏せて鱗に捕まる。
するとドラゴンの翼が輝き、スピードが一気に上がる。
見る見るうちに、首都が小さくなっていき…大陸の中心へ猛スピードで飛んでいった。
そのまま数時間ほど飛んでると、遠目に大陸の中心が見える。見えるというか…大雨の所為でほぼ何も見えないんだけど…
「マオ!ストップ!!」
「ん?セフィー止まって!」
真眼を発動すると、魔法使いに追われているのだろうか?数十名の魔法使いと、獣人達が見えた。
「あそこにルイさんがいるぞ?ミーシャ頼むね」
「分かったわ」と目線だけでこっちの意図を察してくれる。
僕は収納スキルで、鉄杭を取り出し、魔法使いに向かってそれを投げていく。
まるで弾丸のように飛ぶ鉄杭が魔法使いに刺さっていく。
「こんなもんかな…?」
「じゃあ撃つわねー」
ミーシャが雷魔法を撃つと、鉄杭に向かって、電撃が飛んでいく。
すべてに当てたわけではないが…まあこれで下にいるメンツは迎撃できるだろう。
マオに頼み、下に降りてもらう、弧を描くように降下していき、森の木をへし折りながら地面に着地する。
するとそれに駆け寄ってくる、ルイさん達が見える。
「マオ!危ない!!」とルイさんが叫んでいる。
即座に真眼を発動し、周囲を策敵、少し遠くで魔法を放とうとする男に向けて、駆けようとするが…
ドゴォーーン!!とその男は爆発して爆ぜてしまった…
「ふぇ?」
マオがきょとんとしている。そう言えば…マオは魔法を跳ね返すんだったね…
マオがルイさんに抱き着き、僕たちは合流した。残っていた魔法使いは、シユとミーコとニーアさんが倒していた。
「マオ…覚えてますか?私たちを襲った金の冒険者…」
「ん~?……………あっ…いたね~そんな人」
「そいつがいたのですよ…さっき爆発して死んでましたが…」
「ああ‥ちゃんと契約が解けたんだ。約束通り、ちゃんと殺してあげたから良しとしようかな?」
そんな人の事はどうでもいいかな?と、マオは言い捨てた。
「それよりルルさんと…ココとサーニャとリリアはどうしたの?」
マオはきょろきょろと辺りを見渡してそう言った。
「私が説明しますね」とミーコが言う。
「その前に一個だけ、首都の狐族から情報だ。大陸の中心に調査に行った、冒険者80名が行方不明だそうだ」
「……そうですか…最悪ですね……。ルル、ココ、サーニャ、リリアは攫われた人を追って、洞窟に入っていきました。隠し通路を見つけ、一旦私たちと合流しようとしたのですが…さっきマオを攻撃してきたあいつが、洞窟を崩しました」
「え!?ルルさん達は無事なの!?」
「ええ。隠し通路に飛び込み、無事だと思いますが…ココお姉ちゃんの事ですから、先に進んでいるでしょう…そしてその通路は…大陸の中心に繋がってるのでしょうね…」
ふむ…ならば大陸の中心に向かうべきか…でもあの荒れた天気をどうするか…
全くが前が見えないほどの大雨に、荒れ狂う風、雷…僕なら大丈夫だが…
「何してるのツバサさん?さっさと行くよ?」
すでに全員セフィーに乗り込んでいた。シャルとミーシャもだ。
「え?あの気候はどうすんの?」
「え?ツバサさん魔法使えるよね?獣人には魔石を渡したけど…ツバサさんもいる?」
そう言って魔石を取り出すマオ。え?僕と獣人以外みんな使えるの?
ひとまず魔石をもらい、起動してみる。
「なるほど…風魔法ってこういうう使い方もできるんだ」
自分の体から、数センチほどの所に、風の膜のようなものが展開された。雨粒や、風を受け流すように、自分の周りをまわっているように見える。
「魔法使えるなら…割とこれくらいは、簡単にできるんだけどね?」とマオが僕を見て言う。
「風魔法はイメージが湧きにくくてね…」
そんな言い訳をしておこう…決して闇魔法と、光魔法ばかりを、ずっと練習、研究していたわけではない…
今ではメイドも含めて、六人でも、一人で相手できるようになってるけど…何かは言わないが…
どして僕もセフィーに乗ると、飛び上がり、大陸の中心に向かって飛行する。
すこしすると、天候が荒れだす、前も見えない様な豪雨だ。
しかしマオが、大陸の中心まで、水魔法で雨を誘導し、道を開く。
「流石マオだな…しかしこれは山?…それも火山のような…」
真眼で確認する。火山のように、山の頂上部分に大きな火口があり…
「何か黒い物が…火口から出ようとしてる?…っ!?」
「どうしたの?ツバサさん」と僕を見て、マオがきょとんとしている。
「これはまずいかも‥魔王なんていなかったんじゃないのか?」
いや…確か管理者は…いまのところと言ってた気がする…ならあれが…
「マオ、気を付けて…僕の力でステータスが見えないのがいる…ただ一文だけ…『世界を終らせるもの』とだけ…」
「それは…ヤバそうだね……」少し顔がこわばるマオ。
「今のところは、あの火口から出られないみたいだね…」
まるで火口のに透明な壁でもあるのか、ずっと体当たりしている。
するとその脇に、二つの人影が火口から出てくる。
そのうちの一人が、ありえないほどのスピードでこちらに向かって来て…
「まずい…っ!マオ達はこのまま進んで!すぐ追いつく…」
僕はそう言い、セフィーの前に飛び、迫ってくる人影を迎え撃ち、下に叩き落とす。そしてそのまま僕も下に落ちていく。
落ちる途中で、手のひらサイズの紙を火魔法で燃やし、僕は呟く。
「彼女の相手は僕がしないとね…」
彼女をステータスを真眼で見る…
アキ
魔神族 ♀
体力 ?????/?????
筋力 ?????/?????
魔力 ?????/?????
スキル≪魔神化≫
かつてミーシャの孤児院で出会った。魔物を研究しているという彼女だった。




