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私の世界にようこそ  作者: てけと
終幕『私の世界で幸せに』
109/189

ルルとココ達の共闘

 私たち三人は、ココ達に連れられて、森の中を歩く。

 クエスト内容は、盗賊に攫われた人の救出と盗賊の動向調査らしい?基本的に難しいことはルイ姉に任せているからわかんない。

 しかしココ達は強い。彼女たちが助けを求めるくらいだ。よっぽど困難なクエストなのだろう。

 だから私は気を引き締める。生きてマオの所に帰らないといけないからだ。


 私たちはココ達と、模擬戦をよくさせてもらっていた。サーニャやリリア相手なら、互角くらいだと思う。

 しかし…シユ、ミーコ…特にココは段違いに強いんだよね~…

 ココならきっと、私たちの師匠、ガルドにも余裕で勝ってしまうだろう。そのくらいには…

 ココとは、一度しか戦ったことはないけど…何もできなかった…文字通り手も足も出なかった。攻撃する前にすべての攻撃が止められる。拳を振る前に止められ、ケリを放つ前に、止められる。組み伏せようとしても、躱され。何もできずに、ココは一度も攻撃することなく、戦闘は終わってしまった…

 それ以降はココだけは、全然戦ってくれなくなった…彼女曰く、私の力は全てシンの為にある物です。自衛とシン以外の為に使う事はありません。だそうだ…残念だよね~…


 



 ひたすら森の中を歩き続ける、道中出会う魔物を倒しながら…この魔物は解体して、後々の食料となる。

 首都から十数日馬車で走り、そこからひたすら歩き続けて数日経って、ようやく目的地?ミーコとシユが合流する。


「ミーコ。状況は?」

「確実に当たりです。人質はすべてここに集められていますね。しかし…洞窟に入ってからの動向は追えていません」

「洞窟がどこかに通じているのですか?」

「この周辺は調べたけど…なかったよ?あるとしたら…あそこだね」


 シユが指さす方向は、天候が常に荒れ狂っている、大陸の中心?


「やっかいですね…」

「敵の本拠地が大陸の中心ですか…?さすがに危険すぎる気がしますね…」


 ルイ姉がそう言う。その通りだ…まだ未開の地であり、何があるか全くわからない。そんな死地に飛び込むほど、私たちは無謀ではないよ?


「ひとまずこの拠点を抑えます…ルイかルルのどちらかは洞窟内の方に回ってもらえませんか?光魔法が使える人がいたほうが、安心なのですが…」

「私が行くよ~?」


 もちろん私が行く。ルイ姉より逃げ足は速いし、いざとなったら逃げきって見せる。


「ルル…気を付けるのよ?」

「もちろん!」

「ありがとうございます。では洞窟内に私と…ルル、リリア、サーニャ、。洞窟の外の見張りに、ルイ、ニーア、シユ、ミーコ。これで行きます」

「一応理由を聞いていい~?」


 私にはココの考えなんて少しも理解できない。だけど知っておかないと、ルイ姉たちが、危険にさらされるのだけは勘弁してほしい。


「洞窟内の策敵をサーニャに、ルルならリリアの方が連携がとりやすいと思ったからです。外の方は、シユの策敵はサーニャより上です。敵の位置は全て事前に察知できるでしょう。ミーコは外部との連絡役です。もし何かしら問題があった際、すぐ連絡できるように、ですね」


 そう言ってココは、ミーコから糸を預かる。


「この糸で、中と外の連絡を全てやり取りします。それは私たち狐族しかわからない暗号でやり取りするので、私とミーコはどのみち別れないといけません…まあおおよそこんな所です」

「納得したよ…でも命を優先してね?」

「ええ…私たちには大事な人がいるんですから…悲しませるわけにはいきません」

「それが分かってるならいいよ!」




 洞窟の前には、特に見張りもなく、私たちは洞窟内に入っていくけど…


「おかしいですね…誰もいない…サーニャ?」

「うん。人の気配は全くない」

「ひとまず…すべて回りましょう…」

 

 攫われた人どころか、盗賊の一人もいない。

 慎重に、トラップは全てココが解除して、洞窟内すべての部屋を回る…


「いったいどこに消えたんだろうね~?」


 この洞窟自体は、どこにも繋がっていなかった。ならどこに行ったんだろう?


「少し気になる部屋が一つありました、そこに行きます」


 ココの後に付いて行く。着いた先は、洞窟の最奥の、小さな広間。特に何もないよね。さっきも来たところだし…

 ココは入念に何かを見ている…そして…


「ルル、ここに魔力を流せますか?」


 ココは何の変哲もない壁に、魔力を流せという。


「やってみるけど…私は土魔法は得意じゃないんだけどなぁ…」


 とりあえずココに言われた通り、壁に向かって、魔力を流す…あ‥これは…


 ガコンッという音と共に、床の一部が横にスライドしていく。


「なるほど…魔法陣が刻まれてるね~…」


 魔力を流すと浮き出るようにできていたのね~…


「そこだけ壁の色が少し違うんですよね。あとは…地面を擦った様な跡が、ここで途切れているんです。うまく消したつもりでしょうが…私にははっきりと見えますね」


 床がずれたところに階段があった。きっとこの先に…


「さて…どうしましょうかね…ひとまずルルはここで残って…」


 そう言った瞬間、ゴゴゴゴッと洞穴全体が揺れる。


「ッ!?全員この穴に入って!!」


 すぐさま全員階段に駆け込む。そして最後にココが滑り込んだところで、洞窟が崩れていく…

 階段の合った場所も、岩で埋め尽くされてしまった。


「…想定外ですね…」

「いったい何があったの~?」

「洞窟の外で、敵襲です。魔法使いが50名ほど強襲、洞窟ごと爆破したようです。ミーコたちは一時撤退中。そこで連絡が途絶えました」

「なっ!?ルイ姉たちは無事なの?」

「ええ…シユが接近に気付いていたので、問題はないはずですが…一人だけ強い魔法使いがいたようで、ルイの情報の元、一時撤退することにしたようです…」

「私たちはどうするの?」

「進むしかありませんね…敵はこちらが、侵入していることを知っている、と仮定して策を練ります。サーニャ、私、ルル、リリアの順で隊列を組みます。各自警戒を」

「「「了解」」」

 

 所々にランプがついており、通路内は意外と明るかった。途中たくさんの分岐があったけど、サーニャの嗅覚で、人が通ったところはわかるから、それに従って進んでいった。

 



 洞窟内だとどれくらい経ったかわからなくなるな~。ちょいちょい休憩しながら。道を進んでいく。

 すると洞窟を抜けた。そこは少し気味悪い所だった。

 黒い結晶が、所々に生えていて、まるで生きているかのように脈打っている。道は上に螺旋状に続いている。下は底が見えないほどの、崖になっている。まるで…大きな穴だ。その穴の中心に、滝がある。ドドドドドッと音を立て、下に落ちていく。


「なんだろう…気味が悪い場所だね~」

「大陸の中心ですね…」

「ココ。魔物来るよ」

「落ち…ないように…気を付け…ないと…ね」


 飛行型の魔物だ。くちばしが鋭く、まるでドリルのように、こちらに向かって突っ込んでくる。

 私たち三人は、戦闘に入るために構える。


「大丈夫です。もう終わりました」


 ココがそう言う。すると私たちの手前で、鳥の魔物は止まり、そして何かに切り裂かれるように、バラバラになって落ちて行った。

 いったい何が…


「シユから二本だけ借りておいてよかったです。遠距離攻撃に少し乏しかったですからね」


 そう言ってココは、まるで宙を舞うかのような、投げナイフを、腰にしまう。

 敵の位置を把握して、投げナイフを投げ、奥の方にいた敵に刺し、ナイフに付いている糸で、飛んで来ていた敵を、糸に絡めて切断?


 ちょっとよくわからないかな?


「さて…一体こんなところで…何をしているのだか…」

「嫌な予感しかしないよね~」

「私の中の獣が…騒いでる…」


 少し苦しそうにしているサーニャ。獣?


「サーニャ…大丈…夫?」

「ん。シンの首輪のおかげで大丈夫」

「ルル…闇魔法の隠密は使えませんか?」

「使えるよ~まだ得意な方だね~」

「ではサーニャ、人を感知したら教えてください。そこから隠密の魔法で様子を見ることにします」

「ん!」


 そして私たちはぐるりと、この大きな穴を回るように、上に向かって歩いていく。

 しばらく歩くと、坂だった道は平坦になり、所々横穴があった。上は滝が落ちているところ以外は、天井があった。


「ココ…人の気配が…いっぱい」

「ではルル。お願いします」

「はいは~い。マルチハイド!」


 洞窟をひとつづつ調べていく…盗賊がたむろしている部屋。攫われた人が一纏めにされている部屋。そして…まるで闘技場のような、大きな広間が一つ。

 その大きな広間には、戦って死んだのか、剣や盾を持って死んでる人の死体が、山のように転がっていた。


「これは…いったい何がしたいんでしょう…?」


 獣人、そしてローブを被ってるのは魔人族だろうか?甲冑を着た人族。あらゆる種族の死体が転がっていた。

 酷い血の匂いに、少し気分が悪くなる…ここで一体何が…


「おや?こんなとこで奇遇ですね?お嬢さん?」


 奥から出てきた獣人が、こちらに声をかける。私の隠密で姿は見えていないはず…


「その魔法は…姿は消せても、匂いまでは消せん」

「なっ!?あなたがどうして…」

「俺がお嬢さんの匂いを嗅ぎ間違うはずがない…こんな血なまぐさい所まで、私を迎えに来て下さるとは…やっとあの人族と縁が切れましたかな?」

「確か…シンに決闘で敗れた獣人ですね…」

「アミル…どうしてあなたが…」


 そこに立ってたのは、トラ族の獣人と、マオの元奴隷のアミルだった…髪が真っ白になり、魔人国の首都で見た時より、かなりやつれていた。

 ハイドを解き、二人と相対する。


「ダイと申します。お嬢さん?いえ‥我が嫁ココよ!」

「キモいです…」と苦虫を噛み潰したような顔をするココ。

「ふははは!しかしすぐ俺の嫁になりたいと懇願するだろう!」

「アミル…あなたは一体何を…?」

「そんなことはどうでもいい。俺たちはお前らを殺せと命じられている。あの女が一番警戒していた男が来ないなら…なんてことはない」

「ココはちゃんと俺がたっぷり可愛がって、俺に嫁になると言うまで、たーっぷりいたぶってやるからな?」

「キモいです…せっかくシンにいただいた命を…私は彼のように甘くないですよ?」


 そう言って、ココは剣を抜く。彼女が剣を抜いてるのを見たのは、私は初めてだ。

 私も戦闘態勢に入る。光魔法を紡ぐ。


「いいのか?お優しい冒険者さん?こっちには人質もいるんだぜぇ?」とダイがニヤリと笑みをこぼす…

「その件はもう終わっています。かかってこないなら、こちらから行きますよ?」


 ココが真っすぐ、ダイに向かって駆けて行く。しかし…


「そう簡単に行くと思ったか?」


 さっきまでそこにあった、山のような死体が、ココの前に立ち塞がる。

 ココは一度バックステップ。元の位置まで下がる。


「アンデット!?なんで…」


 魔物になったのか?まさか…こんな都合よく?


「俺の隷属の魔法は、死後までその肉体を縛る。解除されない限りな」

「ルル」


 私にしか聞こえないような声で、私の名前を呼び。目線とハンドジェスチャーで、作戦を伝えるココ。

 私はすぐ前を向き。彼女の策の為に動く。


「流石にこの数じゃどうしようもないだろう!諦める気になったか?」

「雑魚はいくら束になっても雑魚だよ?虫が増えたところで、面倒さくなるだけだね~」

「ならば…なんとかして見せるんだな」


 私たちにアンデットが押し寄せる。私が左にいるアミルへ、ココがダイのいる右へ駆ける。


「私を狙うか…」


 アンデットの動きは遅い、私はアンデットたちの横をすぐ駆けて行き、アミルに切迫する。


「させると思うか?」


 ズズズッとアミルの前に、壁ができる。


「そんな壁で止められると思わないでね~っ!」


 ドゴォーン!と壁を拳で打ち抜き。奥にいるアルミごと、撃ち抜く。

 そして上から降ってくる、炎でできた矢を左に避ける。


「ルル!」


 とココが私に投げナイフを投げて寄越す。それを掴み、腰についてたナイフを抜き、両手にナイフを持って、奥に走る。

 

「ココ!」


 私が腰にさしてたナイフをココに投げる。私はココの投げてきたナイフを奥の壁にぶっ刺す。

 

「ん?血迷ったのか?」


 後ろから迫ってきていたアルミの剣を屈んで躱し、後ろ蹴りで胴を打つ。

 アミルはそのまま後ろに後退し、剣を構える。


「アミル如きが私に勝てると思ってるのかな?」 

「あの数の亡者をどうにか出来てから……」


 しかしアンデットにもう動きはない。全てのアンデットがひと固まりになって、動けなくなっていた。


「なにをした?」

「さあね?ココからあなたは殺していいって言われてるからね~。マオには悪いけど、ここでお別れだね」

「マオ…あの腐れゴミ女の名前を…俺の前で口にするなぁ!!!!」


 風魔法の補助を受け、すごいスピードで迫ってくるアルミ…しかし…


「遅すぎだよね」


 スッと突っ込んできたアミルの剣を躱し、懐に入り、鳩尾に掌底を上向きに打つ。

 ドンッという音と共に、ルルの足元の地面が割れ、アミルの体が少し宙に浮く。

 

「ガッハ…」

「風魔法の防御を張るなら…内部破壊するに決まってるよね~」


 師匠もこの風魔法の防御を駆使するが、私と戦う時は使わない。なぜなら…内部を揺らされる衝撃も、逃がせなくなるからだ。


 そのままアルミは倒れ込む。内部で衝撃が反復して、彼の内臓はもうズタズタだろう。

 じきに死ぬ彼を無視し。ココの元へ向かう。


 因みにココは、私に()()()()()ナイフを投げた時点で、ダイを昏倒させていた。

 私の腰にさしていたナイフと、ココの持っていたナイフの糸は繋がっていて、それでアンデットを一時拘束した。

 一分でも止められれば、それで事は済むからだ。


「こっちは終わったよ~」

「お疲れ様です」

「ココ、殲滅完了」

「人質も…無事…だけど…どうする…の?」


 サーニャとリリアは、人質の救出と、盗賊の殲滅に行っていた。

 そしてココは、ダイをしっかり拘束しながら、次の策を伝える。ちなみにダイの両爪は全部根元から切断されている…まさに爪だけを切ったかのように…


「獣人族領に続く道があるはずです。魔人族側は塞がれている可能性が高いので、そちらを探すことにします」

「なるほどね~」


 三種族領すべてに、この場所に繋がる道は必ずあるはずだ。人種族領から離れるが…ひとまず脱出が優先だね。


「しかし気になりますね…あと一人は…というかその彼女が首謀でしょう」


 その時…


 ゴゴゴゴゴゴゴッと大きな地鳴りと共に、地面が揺れる。


「なに!?」

「…ふふ…ふははははははっ!これでこの世界も終わりのようだな…」


 目を覚ましたダイが狂ったように笑いだす。


「この場所で…いったい何をしてたんですか?」


 鋭く睨むココがダイに言う。


「神話の再現だな…神の寵愛を受けようと、争う人々に呆れて、神はこの世界を去った。それだけじゃないだろ?魔物の誕生だ。魔物がすでにいて、神はすでに去った、この世界で、そんなことを起こせばどうなると思う?」

「…何この気配…」


 魔力感知に引っかかる、大きすぎる存在に、震える…


「魔物として分散できないエネルギーは塊となり、この世界を壊す。世界の破滅だよ!あの女が言うには、神は去ったが、魔王が残った。ならば彼を…よみがえらせる為の力を…だそうだぞ?」

「なるほど…だから三種族を集めて戦わせたと…妻や子供を人質に…」

「正解ですよ?お嬢さん」


 にやりと笑うダイ。しかしこの大きな気配は、こちらに向かって、下から上がってくる。


「まずいよココ?すごいスピードで大きななにかが…こっちに来てる」

「…ひとまず攫われた人を、安全なところへ…下に降るのは諦めて、奥に逃げ込みます。急いでください」

「「「了解!」」」


 私たちは人質のいるところへ行き、なるべく奥に詰め込み、隠れるようにする。


 すると穴の中心からズ…ズズズズという音がしたかと思うと…


 ドッゴーッンと天井を破る音がした。そしてザーッと雨粒が大量に落ちる音がする。


「…シン…」


 とあの気丈なココが少し震えている…無理もない…あれは私たちが、勝てるとか、負けるとか、そういう次元にない。




 世界を壊す魔王…その名の通りに、膨大な力を秘め、彼はこの世界に放たれてしまった。

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