ルルとココ達の共闘
私たち三人は、ココ達に連れられて、森の中を歩く。
クエスト内容は、盗賊に攫われた人の救出と盗賊の動向調査らしい?基本的に難しいことはルイ姉に任せているからわかんない。
しかしココ達は強い。彼女たちが助けを求めるくらいだ。よっぽど困難なクエストなのだろう。
だから私は気を引き締める。生きてマオの所に帰らないといけないからだ。
私たちはココ達と、模擬戦をよくさせてもらっていた。サーニャやリリア相手なら、互角くらいだと思う。
しかし…シユ、ミーコ…特にココは段違いに強いんだよね~…
ココならきっと、私たちの師匠、ガルドにも余裕で勝ってしまうだろう。そのくらいには…
ココとは、一度しか戦ったことはないけど…何もできなかった…文字通り手も足も出なかった。攻撃する前にすべての攻撃が止められる。拳を振る前に止められ、ケリを放つ前に、止められる。組み伏せようとしても、躱され。何もできずに、ココは一度も攻撃することなく、戦闘は終わってしまった…
それ以降はココだけは、全然戦ってくれなくなった…彼女曰く、私の力は全てシンの為にある物です。自衛とシン以外の為に使う事はありません。だそうだ…残念だよね~…
ひたすら森の中を歩き続ける、道中出会う魔物を倒しながら…この魔物は解体して、後々の食料となる。
首都から十数日馬車で走り、そこからひたすら歩き続けて数日経って、ようやく目的地?ミーコとシユが合流する。
「ミーコ。状況は?」
「確実に当たりです。人質はすべてここに集められていますね。しかし…洞窟に入ってからの動向は追えていません」
「洞窟がどこかに通じているのですか?」
「この周辺は調べたけど…なかったよ?あるとしたら…あそこだね」
シユが指さす方向は、天候が常に荒れ狂っている、大陸の中心?
「やっかいですね…」
「敵の本拠地が大陸の中心ですか…?さすがに危険すぎる気がしますね…」
ルイ姉がそう言う。その通りだ…まだ未開の地であり、何があるか全くわからない。そんな死地に飛び込むほど、私たちは無謀ではないよ?
「ひとまずこの拠点を抑えます…ルイかルルのどちらかは洞窟内の方に回ってもらえませんか?光魔法が使える人がいたほうが、安心なのですが…」
「私が行くよ~?」
もちろん私が行く。ルイ姉より逃げ足は速いし、いざとなったら逃げきって見せる。
「ルル…気を付けるのよ?」
「もちろん!」
「ありがとうございます。では洞窟内に私と…ルル、リリア、サーニャ、。洞窟の外の見張りに、ルイ、ニーア、シユ、ミーコ。これで行きます」
「一応理由を聞いていい~?」
私にはココの考えなんて少しも理解できない。だけど知っておかないと、ルイ姉たちが、危険にさらされるのだけは勘弁してほしい。
「洞窟内の策敵をサーニャに、ルルならリリアの方が連携がとりやすいと思ったからです。外の方は、シユの策敵はサーニャより上です。敵の位置は全て事前に察知できるでしょう。ミーコは外部との連絡役です。もし何かしら問題があった際、すぐ連絡できるように、ですね」
そう言ってココは、ミーコから糸を預かる。
「この糸で、中と外の連絡を全てやり取りします。それは私たち狐族しかわからない暗号でやり取りするので、私とミーコはどのみち別れないといけません…まあおおよそこんな所です」
「納得したよ…でも命を優先してね?」
「ええ…私たちには大事な人がいるんですから…悲しませるわけにはいきません」
「それが分かってるならいいよ!」
洞窟の前には、特に見張りもなく、私たちは洞窟内に入っていくけど…
「おかしいですね…誰もいない…サーニャ?」
「うん。人の気配は全くない」
「ひとまず…すべて回りましょう…」
攫われた人どころか、盗賊の一人もいない。
慎重に、トラップは全てココが解除して、洞窟内すべての部屋を回る…
「いったいどこに消えたんだろうね~?」
この洞窟自体は、どこにも繋がっていなかった。ならどこに行ったんだろう?
「少し気になる部屋が一つありました、そこに行きます」
ココの後に付いて行く。着いた先は、洞窟の最奥の、小さな広間。特に何もないよね。さっきも来たところだし…
ココは入念に何かを見ている…そして…
「ルル、ここに魔力を流せますか?」
ココは何の変哲もない壁に、魔力を流せという。
「やってみるけど…私は土魔法は得意じゃないんだけどなぁ…」
とりあえずココに言われた通り、壁に向かって、魔力を流す…あ‥これは…
ガコンッという音と共に、床の一部が横にスライドしていく。
「なるほど…魔法陣が刻まれてるね~…」
魔力を流すと浮き出るようにできていたのね~…
「そこだけ壁の色が少し違うんですよね。あとは…地面を擦った様な跡が、ここで途切れているんです。うまく消したつもりでしょうが…私にははっきりと見えますね」
床がずれたところに階段があった。きっとこの先に…
「さて…どうしましょうかね…ひとまずルルはここで残って…」
そう言った瞬間、ゴゴゴゴッと洞穴全体が揺れる。
「ッ!?全員この穴に入って!!」
すぐさま全員階段に駆け込む。そして最後にココが滑り込んだところで、洞窟が崩れていく…
階段の合った場所も、岩で埋め尽くされてしまった。
「…想定外ですね…」
「いったい何があったの~?」
「洞窟の外で、敵襲です。魔法使いが50名ほど強襲、洞窟ごと爆破したようです。ミーコたちは一時撤退中。そこで連絡が途絶えました」
「なっ!?ルイ姉たちは無事なの?」
「ええ…シユが接近に気付いていたので、問題はないはずですが…一人だけ強い魔法使いがいたようで、ルイの情報の元、一時撤退することにしたようです…」
「私たちはどうするの?」
「進むしかありませんね…敵はこちらが、侵入していることを知っている、と仮定して策を練ります。サーニャ、私、ルル、リリアの順で隊列を組みます。各自警戒を」
「「「了解」」」
所々にランプがついており、通路内は意外と明るかった。途中たくさんの分岐があったけど、サーニャの嗅覚で、人が通ったところはわかるから、それに従って進んでいった。
洞窟内だとどれくらい経ったかわからなくなるな~。ちょいちょい休憩しながら。道を進んでいく。
すると洞窟を抜けた。そこは少し気味悪い所だった。
黒い結晶が、所々に生えていて、まるで生きているかのように脈打っている。道は上に螺旋状に続いている。下は底が見えないほどの、崖になっている。まるで…大きな穴だ。その穴の中心に、滝がある。ドドドドドッと音を立て、下に落ちていく。
「なんだろう…気味が悪い場所だね~」
「大陸の中心ですね…」
「ココ。魔物来るよ」
「落ち…ないように…気を付け…ないと…ね」
飛行型の魔物だ。くちばしが鋭く、まるでドリルのように、こちらに向かって突っ込んでくる。
私たち三人は、戦闘に入るために構える。
「大丈夫です。もう終わりました」
ココがそう言う。すると私たちの手前で、鳥の魔物は止まり、そして何かに切り裂かれるように、バラバラになって落ちて行った。
いったい何が…
「シユから二本だけ借りておいてよかったです。遠距離攻撃に少し乏しかったですからね」
そう言ってココは、まるで宙を舞うかのような、投げナイフを、腰にしまう。
敵の位置を把握して、投げナイフを投げ、奥の方にいた敵に刺し、ナイフに付いている糸で、飛んで来ていた敵を、糸に絡めて切断?
ちょっとよくわからないかな?
「さて…一体こんなところで…何をしているのだか…」
「嫌な予感しかしないよね~」
「私の中の獣が…騒いでる…」
少し苦しそうにしているサーニャ。獣?
「サーニャ…大丈…夫?」
「ん。シンの首輪のおかげで大丈夫」
「ルル…闇魔法の隠密は使えませんか?」
「使えるよ~まだ得意な方だね~」
「ではサーニャ、人を感知したら教えてください。そこから隠密の魔法で様子を見ることにします」
「ん!」
そして私たちはぐるりと、この大きな穴を回るように、上に向かって歩いていく。
しばらく歩くと、坂だった道は平坦になり、所々横穴があった。上は滝が落ちているところ以外は、天井があった。
「ココ…人の気配が…いっぱい」
「ではルル。お願いします」
「はいは~い。マルチハイド!」
洞窟をひとつづつ調べていく…盗賊がたむろしている部屋。攫われた人が一纏めにされている部屋。そして…まるで闘技場のような、大きな広間が一つ。
その大きな広間には、戦って死んだのか、剣や盾を持って死んでる人の死体が、山のように転がっていた。
「これは…いったい何がしたいんでしょう…?」
獣人、そしてローブを被ってるのは魔人族だろうか?甲冑を着た人族。あらゆる種族の死体が転がっていた。
酷い血の匂いに、少し気分が悪くなる…ここで一体何が…
「おや?こんなとこで奇遇ですね?お嬢さん?」
奥から出てきた獣人が、こちらに声をかける。私の隠密で姿は見えていないはず…
「その魔法は…姿は消せても、匂いまでは消せん」
「なっ!?あなたがどうして…」
「俺がお嬢さんの匂いを嗅ぎ間違うはずがない…こんな血なまぐさい所まで、私を迎えに来て下さるとは…やっとあの人族と縁が切れましたかな?」
「確か…シンに決闘で敗れた獣人ですね…」
「アミル…どうしてあなたが…」
そこに立ってたのは、トラ族の獣人と、マオの元奴隷のアミルだった…髪が真っ白になり、魔人国の首都で見た時より、かなりやつれていた。
ハイドを解き、二人と相対する。
「ダイと申します。お嬢さん?いえ‥我が嫁ココよ!」
「キモいです…」と苦虫を噛み潰したような顔をするココ。
「ふははは!しかしすぐ俺の嫁になりたいと懇願するだろう!」
「アミル…あなたは一体何を…?」
「そんなことはどうでもいい。俺たちはお前らを殺せと命じられている。あの女が一番警戒していた男が来ないなら…なんてことはない」
「ココはちゃんと俺がたっぷり可愛がって、俺に嫁になると言うまで、たーっぷりいたぶってやるからな?」
「キモいです…せっかくシンにいただいた命を…私は彼のように甘くないですよ?」
そう言って、ココは剣を抜く。彼女が剣を抜いてるのを見たのは、私は初めてだ。
私も戦闘態勢に入る。光魔法を紡ぐ。
「いいのか?お優しい冒険者さん?こっちには人質もいるんだぜぇ?」とダイがニヤリと笑みをこぼす…
「その件はもう終わっています。かかってこないなら、こちらから行きますよ?」
ココが真っすぐ、ダイに向かって駆けて行く。しかし…
「そう簡単に行くと思ったか?」
さっきまでそこにあった、山のような死体が、ココの前に立ち塞がる。
ココは一度バックステップ。元の位置まで下がる。
「アンデット!?なんで…」
魔物になったのか?まさか…こんな都合よく?
「俺の隷属の魔法は、死後までその肉体を縛る。解除されない限りな」
「ルル」
私にしか聞こえないような声で、私の名前を呼び。目線とハンドジェスチャーで、作戦を伝えるココ。
私はすぐ前を向き。彼女の策の為に動く。
「流石にこの数じゃどうしようもないだろう!諦める気になったか?」
「雑魚はいくら束になっても雑魚だよ?虫が増えたところで、面倒さくなるだけだね~」
「ならば…なんとかして見せるんだな」
私たちにアンデットが押し寄せる。私が左にいるアミルへ、ココがダイのいる右へ駆ける。
「私を狙うか…」
アンデットの動きは遅い、私はアンデットたちの横をすぐ駆けて行き、アミルに切迫する。
「させると思うか?」
ズズズッとアミルの前に、壁ができる。
「そんな壁で止められると思わないでね~っ!」
ドゴォーン!と壁を拳で打ち抜き。奥にいるアルミごと、撃ち抜く。
そして上から降ってくる、炎でできた矢を左に避ける。
「ルル!」
とココが私に投げナイフを投げて寄越す。それを掴み、腰についてたナイフを抜き、両手にナイフを持って、奥に走る。
「ココ!」
私が腰にさしてたナイフをココに投げる。私はココの投げてきたナイフを奥の壁にぶっ刺す。
「ん?血迷ったのか?」
後ろから迫ってきていたアルミの剣を屈んで躱し、後ろ蹴りで胴を打つ。
アミルはそのまま後ろに後退し、剣を構える。
「アミル如きが私に勝てると思ってるのかな?」
「あの数の亡者をどうにか出来てから……」
しかしアンデットにもう動きはない。全てのアンデットがひと固まりになって、動けなくなっていた。
「なにをした?」
「さあね?ココからあなたは殺していいって言われてるからね~。マオには悪いけど、ここでお別れだね」
「マオ…あの腐れゴミ女の名前を…俺の前で口にするなぁ!!!!」
風魔法の補助を受け、すごいスピードで迫ってくるアルミ…しかし…
「遅すぎだよね」
スッと突っ込んできたアミルの剣を躱し、懐に入り、鳩尾に掌底を上向きに打つ。
ドンッという音と共に、ルルの足元の地面が割れ、アミルの体が少し宙に浮く。
「ガッハ…」
「風魔法の防御を張るなら…内部破壊するに決まってるよね~」
師匠もこの風魔法の防御を駆使するが、私と戦う時は使わない。なぜなら…内部を揺らされる衝撃も、逃がせなくなるからだ。
そのままアルミは倒れ込む。内部で衝撃が反復して、彼の内臓はもうズタズタだろう。
じきに死ぬ彼を無視し。ココの元へ向かう。
因みにココは、私に糸の付いたナイフを投げた時点で、ダイを昏倒させていた。
私の腰にさしていたナイフと、ココの持っていたナイフの糸は繋がっていて、それでアンデットを一時拘束した。
一分でも止められれば、それで事は済むからだ。
「こっちは終わったよ~」
「お疲れ様です」
「ココ、殲滅完了」
「人質も…無事…だけど…どうする…の?」
サーニャとリリアは、人質の救出と、盗賊の殲滅に行っていた。
そしてココは、ダイをしっかり拘束しながら、次の策を伝える。ちなみにダイの両爪は全部根元から切断されている…まさに爪だけを切ったかのように…
「獣人族領に続く道があるはずです。魔人族側は塞がれている可能性が高いので、そちらを探すことにします」
「なるほどね~」
三種族領すべてに、この場所に繋がる道は必ずあるはずだ。人種族領から離れるが…ひとまず脱出が優先だね。
「しかし気になりますね…あと一人は…というかその彼女が首謀でしょう」
その時…
ゴゴゴゴゴゴゴッと大きな地鳴りと共に、地面が揺れる。
「なに!?」
「…ふふ…ふははははははっ!これでこの世界も終わりのようだな…」
目を覚ましたダイが狂ったように笑いだす。
「この場所で…いったい何をしてたんですか?」
鋭く睨むココがダイに言う。
「神話の再現だな…神の寵愛を受けようと、争う人々に呆れて、神はこの世界を去った。それだけじゃないだろ?魔物の誕生だ。魔物がすでにいて、神はすでに去った、この世界で、そんなことを起こせばどうなると思う?」
「…何この気配…」
魔力感知に引っかかる、大きすぎる存在に、震える…
「魔物として分散できないエネルギーは塊となり、この世界を壊す。世界の破滅だよ!あの女が言うには、神は去ったが、魔王が残った。ならば彼を…よみがえらせる為の力を…だそうだぞ?」
「なるほど…だから三種族を集めて戦わせたと…妻や子供を人質に…」
「正解ですよ?お嬢さん」
にやりと笑うダイ。しかしこの大きな気配は、こちらに向かって、下から上がってくる。
「まずいよココ?すごいスピードで大きななにかが…こっちに来てる」
「…ひとまず攫われた人を、安全なところへ…下に降るのは諦めて、奥に逃げ込みます。急いでください」
「「「了解!」」」
私たちは人質のいるところへ行き、なるべく奥に詰め込み、隠れるようにする。
すると穴の中心からズ…ズズズズという音がしたかと思うと…
ドッゴーッンと天井を破る音がした。そしてザーッと雨粒が大量に落ちる音がする。
「…シン…」
とあの気丈なココが少し震えている…無理もない…あれは私たちが、勝てるとか、負けるとか、そういう次元にない。
世界を壊す魔王…その名の通りに、膨大な力を秘め、彼はこの世界に放たれてしまった。




