ツバサの充実した日常
マオ達が屋敷を出てからも、僕の生活は変わらず、自堕落と言えば自堕落なのか?しかし当分働く気もない…
書室でひたすら読書していたり、嫁といちゃついたり、デートしたり、庭でお茶してみたり、ナギと料理を一緒に作ったり、アミやミカと、町で買い物したりと…僕的には、充実した毎日を送っていた。
そう言えばマオ達に、お風呂の浄化用の魔石を作ってもらった。なかなか魔石の値段が高かったけど…魔法陣は家賃という事でおまけしてもらった。
これで一つ快適になった。今では毎日、屋敷の皆でお風呂に入っている。
そう言えばメイド達にも…指輪を買ってやるべきだろうか…?奴隷の首輪も、外してもいいと思うんだよね…
しかし僕は臆病なので…もうちょっと後にしよう…奴隷じゃなくなったんで、もう用はないです。とか言われたら、心が持たないかもしれない…まあもし彼女たちが、それを望むのなら、僕は受け入れるしかないんだけどね…
勝手に傷心になりながらも、今日はミーシャと町でラブラブデートだ。
「どうしたのツバサ…いきなりしんみりなっちゃって…」
「いやね…メイド達にさ‥指輪を買ってあげようと思ったんだけど、断られたらいやだなぁと思っちゃってね?」
「馬鹿ね~泣いて喜ぶと思うわよ?」
「そうだったらいいんだけどね~下手な事をして、僕の元から、去って行っちゃったら怖いからさ…でも指輪は買っておこうかな?ミーシャ秘密にしててよ?」
「ふふふ…いいわよ~私は口が堅いからね。シャルだったらすぐメイドに言ってたわね」
「だからミーシャの時に買いに行くんじゃないか。信用してるさ」
「あら?嬉しいわね」
ふふふ~と腕を絡めてくるミーシャ。
仲良く二人で歩いていると、チリンチリンと、元の世界で聞きなれた音がした。
「あれは…マオの所の…ドラゴンのセフィーだっけ?」
「すごいきれいな子よね…綺麗に着飾って…逆に誰も近づけない様な、神々しさがあるわね…」
日の光を浴びて輝く彼女は、まさに神や天使のような、神聖な何かを感じざるを得ない。
「しかし…あの三輪車が全てを台無しにしてるよね…」
「そうね…宣伝なのかしら?ちぐはぐすぎる…」
少し恥ずかしそうに、チリンチリンと走っていく彼女は、まさに残念女子としか言えない感じだった…
「少しお節介をするか…」
「そうね…このままだと彼女はただの見世物ね…」
ミーシャの見つけた、安くておいしい食事屋さんの主人が老齢で、いろいろ大変だと聞いたので、彼女を頼ればいいですよ?と言っておいた。
このお店は、親しみやすい人が多い。その輪に彼女を入れてもらえれば、きっと大丈夫だろう。
指輪を買った帰りに、そのお店の前を通りかかると、主人とセフィーが楽しげに話しており、お店に招かれていた。ちゃんと三輪車に、盗難防止のチェーンを付けて…
あのお店なら大丈夫だろう…そしてミーシャはなぜ貧乏性が抜けない…いや…いいことだし、実際にあのお店は、値段の割にとても美味しい食事を出してくれる。主人の腕がいいんだろう…
「あら?いいお店の条件は値段じゃないのよ?心意気よ」
だそうだ…ミーシャに家計を任せていれば、財政で傾くことはなさそうだな…
少しのお節介を終え、屋敷に帰る。指輪は僕の収納で隠してある。ちゃんと頭の中にメモしておいて…いいタイミングが会ったら渡そうと心に決める。
翌日は、シャルと町でデートしていた。シャルが楽しみにしてくれていたようで、割と朝早い時間から、フラフラと歩いている。特にデートプランとかそう言うのはない。
一緒に歩いてるだけでいいんだよ…それだけで僕は幸せだからね。
ふとシャルが上を見上げる。つられて僕も上を見上げる。するとと空にちっさな点が見える。
「シャル…あれはもしかして?」
真眼を発動する。やっぱりそうか…
「そうだね~シャルのいた、つまんない所だよ?」
「そっか…僕はシャルの故郷を見てみたいから。行ってみてもいい?」
「ツバサが行くなら!」
シャルをお姫さま抱っこし、首都の外に駆けて行く。
首都から飛び出し、人のいない所まで走る。真眼で位置をチラッと確認し、シャルを胸に抱いて飛ぶ。
10秒ほどかけて高さ的にはついてるはずだが…少し位置がずれたか…
「シャル。僕を抱えて、連れてってくれる?」
「まかせて!」
とシャルが僕を抱えたまま羽を出し、空に浮く島に向かって飛んでいく。
そこまで位置もずれてなかったので、数分ほどかけて追いつき…
僕はとうとう空飛ぶ島にたどり着いた。ここがシャルの故郷…
「ツバサ!こっちこっち!」
とシャルに手を引かれる。なんだろう?
「ここがねー!シャルがずっといたところだよ!」
そこには何かの実がなってる木がぽつんと一本だけ生えていた。
「ここでシャルは、座ったりねたりしながら、ぼーっと空をみてたんだ!」
「ここで20年も?」
シャルに促され座る。おぉ…なんかとても感動するが…この場所に20年か…
シャルが僕に寄りかかってくる。
「ここがシャルの始まりのばしょなんだよ?ずっとこの実をたべながらね?ぼーっとしてるだけだったの…ツバサが来てくれて…シャルは幸せになったよ?」
「そっか…僕もシャルと出会えて幸せだよ…」
愛しい彼女をギュッと抱きしめてやる。そして気になってる実をかじってみる。
「あじしないよね?」と苦笑いするシャル。
「んー確かにほぼ水だけど‥少し甘酸っぱい?」
フレーバーの入った天然水のような感じだ。ずっとこれを食べてれば、そりゃ味を感じなくもなるか…
しばらくこの天人族の島の端で、シャルを抱きしめ続けた。
「シャル。ちょっとだけこの島を案内してよ?他にもいるんだよね?天人族」
「いいよー!どうせどこかでぼーっとしてるよ。ツバサを見てゆーしゃとか言っちゃっうとおもうけど…」
「大丈夫さ‥シャルで慣れてるよ」と苦笑いしておく。
シャルと二人で、腕を組んでしばらく歩いたが…特に天人族を見かけなかった…
「あれ~?確かあっちとそっちにも座ってたはずなのに…」
シャルが指さすところには、木がぽつんと一本だけ立っている。確かにいたのだろう。
「事件か?天人族が誘拐されたとか?しかしこんなところまで…少し嫌な予感がするな…シャル、島の中心まで急ごう」
「わかった!こっち!」
シャルに手を引かれて、島の中心へと向かう…またトラブルか…?いい加減にしてほしい所だ…それに僕の嫁の故郷を襲うとは…
一族郎党皆殺しだよ?
数分ほど走ると、この島に来て初めて天人族を見かけた。しかし…
「シャル…天人族って…農業やってたの?」
「え?みんなただ、座ってるだけだったよ…?」
かつてのシャルのように、小さい少女が、農作業用の白いシャツと、ジーパンをはいて、カマで雑草を刈っていた。それも10人ほどが…雑草を刈っては、ひもで束にして、リアカーに乗せていく。
「あの…天人族ですよね?」と恐る恐る聞く。
「ん?お客さん!珍しいね―こんなところまで…セミル。ゆーしゃのお兄さんの所に案内してあげて」
「はーい!こっちだよお客さん方!」
「は…はぁ…」
こんなことをする人は…あんまり思いつかないが…
「シャル?実はシャルのいた島とちがうんじゃない?」
「そんなことないよ!まちがいなくこの島…のはず?」とシャルも首を傾げる。
セミルという天人族に案内され、数分後すると‥
そこにはでっかい宮殿があった。宮殿ってこういうのだよな~と想像するような、まさしく宮殿だった。
シャルがずっと困惑した顔をしているが…とりあえず案内されるままに付いて行く。
「あ‥そう言えば今日は、かいぎの日だったね…お客さん。ちょっとだけ待ってね?」
そうは言われても…少し気になるので、ドアの隙間から覗く。シャルも覗く。
何かぼそぼそ聞こえるので、耳を澄ます。
「脱穀機の方の不具合はもう無さそうか?」
「はい!じゅんちょうです!せんべつの方も問題ありません!」
「魚醤の方が少しなんこうしてますが…どういたしましょう!」
「んー塩加減で味が全然変わってくるからな…出来れば大豆がほしい所だが…毎回出来たものを、細かくレポートして、現物と一緒に寄越せ。調整する」
「はい!」
「チョコの方はどうだ?」
「順調にラインは、かどうしております!しかし…少し苦いかも?」
「牛乳か何か手に入ればいいが…しかし…大丈夫だ。お前たちが作るこのチョコレートは、世界を支配する。安心しろ」
「はい!ゆーしゃ様の仰せのままに!」
「シンと呼べと…まあいい…休みの日は楽しく遊べてるか?」
「「「「「「「「「「はい!たのしいです!」」」」」」」」」」
「ならいい‥以上で今日の会議を終了する!!各自励め!お前らが自らの手で自由を掴め!」
「「「「「「「「「「はーい!」」」」」」」」」」
「何やってんだあんたはッ!!!!!」
つい会議が終わるまで待ってしまった。
「お?この国に客とは珍しいな?ようこそ天人族の国ディスピアードへ。歓迎するぞ?ツバサ、シャル」
大きな円卓の最奥にいたシンさんが、楽しそうに笑っていた。
「シン…私たちのしまで何やってるの~?」
一番聞きたかったであろうシャルが、会話を切り出す。
「ん?国興し?」
「軽く言いますね…王にでもなる気ですか?」
「王になる気はないが…これは俺の策の一端だ。気にすんな。それより今から全員で昼飯だ。食ってくだろう?」
そう言いながらエプロンを締めるシンさん。
「そう言えば昼時か…もちろんご馳走になりますよ」
「シンの作るごはんはおいしー!」
「それに今日の昼飯は、ツバサ。お前にも懐かしいあれだぞ?」
「あれ?」
あれ?ってなんだ?
期待しながら、天人族80名ほど一緒に席に座る。この宮殿で、天人族が生活しているそうで、ベットが並んでる部屋や、ボードゲームやおもちゃがいっぱい置いてある部屋や、お風呂、トイレなどなど…なんていうか…
ここ異世界だよね?って僕は感じるほど近代化していた。
「シャルはなんでそんなに大きいの?天人族だよね?」
「シャルの中には…ツバサが入ってるんだ~だからかな~?」
「「「「「「へぇー!!」」」」」」
とシャルも同族と横で楽しそうに会話している。
少しすると、天人族十数名と、シンさんが料理の乗ってる台を運んで、全員に配っていく。
「これは…!!」
まさにラーメン定食だった。すこし白濁色のスープに麺、そして餃子に…夢にまで見た米!チャーハンがそこにはあった。
「お代わりはあるからなー。んじゃあ行きわたったら…」
「「「「「「「「「「いただきまーす!」」」」」」」」」
天人族90名ほどに交じって、僕とシャルもいただく。シンさんは奥から調理台を引き出してきて、麺をゆでだす。チャーハンは作り置いてあり、餃子はいつでも焼けるように準備していた。
僕は少し涙を流しながら食べていた。ラーメンは魚介系のラーメンで、餃子もたぶん、魚なんだろうが…肉に負けない旨みがあった。そしてチャーハン。久々のコメに感動する。
そして約100名のお代わりの嵐に、シンさんが一人で対応していく、何者なんだこの人は…?
全員お腹いっぱいまで食べ終わり、シンさんが片づけをしている。
「ほら…お前ら昼飯を食ったら、少し昼寝して来い」
「ゆーしゃさまもいっしょにねよー?」
「俺はやることがあるからな、さっさとベットに入れ」
「はーい!」
そうして天人族たちは寝床に…
「シャル…シャルはストップ…」
「ツバサもいっしょにねるー?」
「僕らはそろそろ帰らないと、離れ過ぎちゃうからね?帰れなくなるよ?」
「それはだめー!」
この島は動いている、あんまり長い時間いると帰れなくなる。
「帰る前に土産を持って帰れよ。お前の待望する米をな」
「いいんですか?」
「もちろんタダじゃないがな?」
「なんでも払いますよ!」
「んじゃあついてこい」
シンさんに付いて行くと、大きな倉庫に着いた。体育館4個分はあるような、大きな倉庫だ。
「ツバサは収納系のチートがあるんだっけ?」
「制限はありますが…50キロ以内ならいくらでも?」
「んじゃあこれだな…一袋30キロだ」
そう言って、シンさんはコメ袋に紙を張っていく。
「よし…この辺ぜんぶもってけ。精米はしてないが、精米機も収納スキルで入れていけるだろ」
「この紙は?」
「俺の弟子共が研究してるなら…そろそろできるだろう。カレーがな」
「な!?」
「用途別の米だ。カレーやどんぶりなどに使うコメ、白米で食うとうまい米。あとは…もち米だな。全てあいつらにレシピは渡してある。弟子共によろしく言っといてくれ」
「ありがとうございます…」
「気にすんな。あとは…こいつをお前の住む地域でばらまけ。天人国ディスピアードの特産品チョコレートだ。これを使うレシピは…こいつだな。弟子たちに渡してくれ」
「これをばらまいて一体何を?」レシピを収納スキルに入れておく。
「この島を、国として興す。あとは時間待ちなんだけどな…その下地だ」
「そのディスピアードとは?」
「ディストピアをもじって俺の名前を一文字いれた。ユートピア…理想郷の反対の意味だ。まあそんなことはどうでもいい。この米とチョコのお代に、俺の頼みを一つ聞けよ?」
「ええ、もちろん…嫁と僕の命以外なら何でも」
「んじゃあ。ココ達を頼むわ。あいつらは危なっかしいからな…俺は当分戻れないし、任せたぞ?」
「任されました。彼女たちが僕に惚れても知りませんよ?」
「はっ…そいつは有り難いな…むしろそうなるように動けよ?」
「まあ無理でしょうね…」
そう苦笑いして、シンさんから一式いろいろもらい、シャルと共に、島からとびおりる。
シンさんがパラシュートをくれたので、帰りはさながらスカイダイビング気分だった。
パラシュートは夜になったら消してくれるそうなので、そのまま放置し、屋敷に帰ることにした。
「やっぱりシンの作る料理はおいしーね!」
「だねー…あの域まで、ナギがたどり着けるのか…お米をマオの所にも持って行こう。まだナギは向こうにいるはずだし」
そう言ってシャルとマオの家に向かう。
シンさんの頼みなら断れないなぁ…ココ達は面倒ごとに突っ込んでいる。しかたない…僕は少し冒険者家業をやるか…お米の代金と思えば安いものだな!




