ココ達の冒険者業
私たちは、マオ達と別れ、42日かけて人種族の首都までたどり着いた。やはり盗賊の襲撃は特になく、彼らがミカヅキ卿を狙っていると確信した。
しかしなぜ…それに…魔人国領になぜ、人種族の盗賊がこんなに集められていたのか…
疑問には思うが…ひとまず冒険者ギルドに向かう。
ミーコとシユには、宿を確保してもらったり、明日からの旅に必要なものを買い出ししてもらう為、別行動だ。
ギルドに入り、同族の受付嬢の元に向かう。
「あら?意外と早かったのね…助かるわ~」
「私たちの為に動いてもらったので、もちろん協力します。あと今日は筆記試験でしたよね。後ろの二人を受けさせたいです」
そう言って、実力テストのラージラットの素材と試験の料金銀貨20枚を受付の台の上に置く。
「もうすぐ始まるから…この木札を持って奥へどうぞ」
「サーニャ、リリア…大丈夫ですよね?」
「たぶん…?」
「頑張る…わ」
移動中に彼女たちに勉強を教えていたのですが…覚えが悪いというか…脳筋というか…苦労したとだけ言っておきましょう…
まあ別に、彼女たちが落ちたところで、なんてことはないのですが…シンの為にと頑張る彼女たちには、受かってほしいものです。
二人は木札を持って奥に向かって行った。
「で…今回の件ですが…異常なのは、魔人国で理解しました」
「盗賊の組織があるのは知ってはいたけど…ここまで表立って動いてるのは初めてね」
盗賊は、街道で襲撃なんてめったにやらない。家荒らしや、裏家業で殺人依頼を受けたり、詐欺を働いて稼いだり、あまり表立ったことはやらない。街道で襲撃なんてすると、そこに盗賊がいることがばれる。ならば警戒されて、そこ周辺ではもう活動できなくなるだろう。なのに…
「そうなのよ…今はほぼ、街道での襲撃を主に活動してるの。ツバサさんを狙ってるだけじゃなくて、各地でね。獣人国でも魔人国でもね。でも首謀はこの国にいる。なぜなら…」
「人種族の盗賊が各地にいるのですね…特に獣人国なんて…」
「そうね。獣人で盗賊になる人なんて、ほぼいないからね」
「それで…どこまで当てがついてるんですか?」
「そうねー…小さな拠点は衛兵と、冒険者に頼んでるの…だからあたなたちに頼みたいのは…」
そう言って彼女は地図を出す。人種族領の地図だった。そこに赤い丸を書いていく。そしてバツマークも、これは襲撃された場所だろうか…ん?これは…
「どう?なにかわかった?」
「ええ…もしかして彼らの目的は…人攫い?それがなぜなのかは、わかりませんが…」
「そうね…襲撃場所は、どこも商人が通るような、大きな街道じゃないの。小さな街道…食料を運んだり、ちょっと隣町に買い物に行ったりするような、小さな町と町を繋ぐものよ」
「攫われた人の移送先は?」
「不明ね。一つ大きな拠点を、ツバサさんが潰してるんだけど…そこにもいなかったわ。だから今回あなた達に頼みたいのは…」
「拠点をしらみつぶしに潰して、なおかつ移送先の特定ですね。分かりました。受けましょう」
「頼んだわ。情報はいつも通り飛ばしてね」
そう言って、大きな拠点に丸の付いた地図をもらう。
「ええ…明日から始めます。出来ればさっさと終わらせたいところですね…」
「無理はしないようにね?」
「私たちは、シンと添い遂げるまで死ねませんから、自分たちの命が大事です」
「ふふふ…いいわねー…」
サーニャとリリアも試験が終わったようで、合流する。
どうでした?と聞くと、多分大丈夫、と言っていた…この二人は…
夜に、全員と情報を共有し、明日、近くの拠点から潰すことにした。
翌日、私たちは最初の拠点に向かう。シンから頂いた、武器を大事に装備し、準備を整える。
「私は…いらないって…言っちゃったけど…やっぱり羨ましいわ…ね」
リリアが私たちの装備を見て、羨ましそうにそう言う。
「…シンはリリアがそう言うだろうと、思ったらしくて…」
私は、シンに、リリアがそう言ったら渡してくれ、と頼まれていた、リリア用の装備を取り出す。
「これ…は…」
「これなら邪魔にならないだろ?手を傷めないように作ってあるし、決して破れないようにしている。大事に使えよ。だそうです」
黒い革の手袋だ。リリアの手にフィットするようにできている。素材はよくわからないけど…手首で固定できるように、ボタンがついている。
「まったく…シン…大好き…」渡した手袋を、ギュッと胸に抱きしめるリリア。
「ですね…何気にシンも、私たちのことを想ってはくれてるのですよね…んじゃあ行きますよ」
出来ればさっさと終わらせて…シンの元へ行きたいところですね…
「では全員予定通りに。基本殺していいですが、一人だけは確保しておいてください。では散開」
「「「「了解!」」」」
リリアとサーニャは正面から、シユとミーコは裏を封鎖。私は離れた位置で、情報の分析と解析。そして指揮をする。全体を把握し、簡単な指笛で、指示を出し、拠点を制圧していく。
数十分もたてば…ほぼ壊滅した、盗賊の拠点が出来上がる。
こうしてできる限り、多くの拠点を潰しながら、情報を集めていくのだった。
「ある程度情報は集まりましたが…核心に迫る情報は特にありませんね…」
拠点を潰し始めて、30日、赤丸の付いた拠点は全て潰したが…これと言って重要な情報はなかった…
私とリリアなら、質問するだけで、呼吸の乱れ、視線、筋肉の硬直による動揺などで、持っている情報はすべて読み取れますが…
多分組織の中心にいる数名の幹部以外は、人を攫って、送るだけ。それだけを命じられているようですね…送る位置もバラバラだ…意味のない所に送って、ただ捨てている、とかもあるのかもしれませんね…
「仕方ない…シユ、ミーコ。明日ここの街道で、盗賊が人を攫う予定があります」
私は地図を指さして、シユとミーコに指示する。先ほどの拠点で入手した情報だ。
「二人でそれを、一度追跡してみてください。情報はいつも通り飛ばしてください」
シユの追跡能力と、ミーコの隠密能力なら、気付かれずに追跡できるはずだ。
「わかったよココお姉ちゃん…しかしどこまで追跡する?完全に移送されるまで?」
「危険を少しでも感じたら撤退。そうですね…向かう方向が分かれば…いいのですが…ほかの所から攫ってきた人達と合流した場合は、その場所を知らせて待機をお願いします。出来るだけ情報を掴めるように頼みます」
「人質を殺そうとしたらどうするの?」
「制圧出来そうなら制圧。無理なら…私たちが来るまで待機してください…辛いでしょうが…」
「…了解…」
「大丈夫です。私たちは首都で援軍を連れて、追いかけますので。ひとまず先に、追跡お願いしますね?」
そこでシユとミーコと別れた。私たちは一度首都に戻り、策を練ることにした。情報は逐一送っているので、向こうでも何かわかってればいいのだけど…
「言われた拠点は潰しましたが…特にこれと言って、情報はありませんでした…」
「おかげで人種族領の被害は、ほぼなくなっているわね…なぜか魔人国と、獣人国の方も、突如動きが無くなったそうよ?」
首都の冒険者ギルドで、同族の受付嬢と情報のやり取りをする…
全体的に動きが無くなった?
「私たちが襲撃した拠点の中に…ボスがいた?そんなはずは…」
「もう一つ…準備が整った、という可能性もあるわね。何をしようとしてるのかはらないけど…必要な人数が揃った、と見てもいいかもしれないわね…」
「…ならば…救出の依頼を、私たちは先行します。ついでに有能な冒険者を借りたいのですが…」
「ええ、どちらも手配済みよ?そろそろ来る頃かしらね」
同族の推薦なら、心配する必要もないだろう。出来るだけ早く、ミーコとシユを追わなければならない。邪魔なら最悪…置いていくだけだが…
「冒険者になってから…指名依頼ばっかりね…これが普通なの?」
「そんなことないと思うけどな~…まあ稼げるなら私はいいと思うよ~」
「マオに養ってもらうわけにも…いかないですし…がんばる…」
そう言いながら、冒険者ギルドに似つかわしくない、メイド服を着た、三人組が現れる。
「彼女たちなら、適任でしょう?」とにっこりと笑う受付嬢。
「ええ…ですが…マオに許可を取りに行かないとですね…」
私たちは、ルイとルルとニーアを連れて、ミーコたちを追いかけることにしたのだった。




