シンは世界の果てへ
俺は…マオの町を出てから…何日たったんだろうな…いちいち数えてない…
まあとりあえず重要なのは…俺はやっと、大陸の端に来たようだ。
この世界で初めて見る海。これがきっと、大陸の端だ。人種族の国から獣人国、そして獣人国から魔人国、全て地続きだった。ならあの町から西北に向かえば…
もしほかに大陸があるなら…また時間をかけて、端に向かうだけだが…
切り立った崖の上に立ち。300mほど下にある海に向かって飛び込む。
波の音にかき消され…俺の飛び込んだ音はなかった…
「しょっぱい…海で間違いないな…」
すぐに海面から顔を出す。小舟を具現化し、乗り込む。そして沖に向かって舟を漕ぐ。沖に出た後、すぐ寝ころんだ。
「あとは寝てりゃ…どっかに着くだろ…」
ほぼ寝ずに、ここまで飛んできたので、少し横になったら、すぐに意識は落ちて行った。
朝、目が覚めると、俺をかじっている、魚が数十体ほど、小舟に乗り込んでいた。
「トビウオ?でも…口がでかいな…」
ヒレが羽のようになっている、トビウオのような魚だが、口がパカッと開き、俺に食いついていた。
「どうせ日中は暇だしな…海の幸がどんなもんか…実験するかな…」
そうして、小舟の横に、漁船を具現化し、そこに乗り込む。包丁を出し、自分に噛みついているトビウオを、自分の肉ごと剥がし、捌いていく。
数体は刺し身で、後は焼きと、乾燥させて出汁用に…
「ふーん、元の世界だと、もっと淡白な味なんだが…割としっかりと白身の味がするな」
そして俺は、釣り竿を具現化し、エンジンの無い船で、波に任せ、船を進める。
海の幸を堪能しながら…
そしてそれから日が経ち…まるで魚の加工場みたいになった漁船は、何かにぶつかり止まる。
コツン、コツンと何か壁に行き当たったような音がする。
「ん?ここが世界の果てか?」
魚市場の職員のような。長靴にひざ下まであるエプロンをし、魚を加工していた俺は、船の船首に向かう。
船が当たる先は、真っ黒な空間だった。光を当てても、それより先は全く見えない。
しかし…
「進めないな…どうするか…」
せっかく果てまで来たのに、進めないんじゃな…何か手はないか?
しかしよく見ると、船はまだ進もうとしている。壁にではなく、その壁を沿うように、横に向かって。
「海に流れがあるのか?ん?あれは…」
ふと船が向かう先を見ると、大きな渦巻きを見つける。波と波がぶつかってできるものではなく、浴槽の栓を抜いたかのような、そんな渦巻きだ。
「なるほど…あそこを経由して、真水が大陸に供給されるのか?」
確か大陸の中心は、ずっと雨が降っていると書いてあった。この世界で雲をあまり見たことはない、どうやって世界の中心にいってるのか疑問だった。
「まるで魚の水槽の、ろ過装置みたいだな…っと‥商品を傷つけるわけにはいかないな」
どこに売るわけでもないが、ついつい保護してしまう…元の世界の癖だ。
船倉に、加工済みの魚を全てキレイに詰め込み。船に衝撃防止のタイヤを大量に着ける。
「素直に、管理者の元に繋がってりゃいいが…そうはいかないよな…」
少しの望みに縋りたくなるが、俺の予測では…ここはある島に繋がっているはずだ…
そして俺は船ごと、渦巻きに飲み込まれていく…
渦巻きから、落ちると…そこは空だった。海の水ごと、俺は空から落ちる、漁船の上にパラシュートのように布を具現化する。
ドドドドドと海の水が、空に浮いている島に落ちていく。そして俺は船ごと、海水が落ちているところより、少し離れたところに着水する。
パラシュートを消すと、そこには湖のような空間があった。
「ほう?空飛ぶ島とか、心躍るが…ここが…シャルの故郷か?」
俺は天人族の彼女に、いろいろ聞いていた。空を移動する島、そんな島に通常の方法で行きつく訳がない。しかし…世界の危機が来ると、空から勇者が降ってくるという。
飛んでくるではない降ってくると言った。だから空を見ていると。
世界の危機が来ると、どうなる?どうやって勇者は、天人族の住処に行きつく?
世界の危機とやらで、住処を追われ、世界の果てまで逃げて…そしてたどり着くのではないか?と考えたわけだ。
「俺の予測は当たったかな?」
遠くから、20人ほどの、羽の生えた幼女が、俺の元に飛んでくるのが見える。
「ゆーしゃさまだ!」「ゆーしゃさま!」「おまちしてました!」
と幼女たちが俺の周りに殺到する。ツバサに話は聞いていた。こいつらは長い間ずっと…得体も知れない勇者を待っていたのだ。
そして…ツバサはこう言ってた。いつかその島に行って。娯楽をばらまいてやると。
「その役目…俺が果たしてやろうじゃないか」
とても悪い笑みを浮かべ、俺は俺の策を前に進める。
天人族の力を借り、船を岸まで漕いでいく。船倉には氷をたっぷり詰めているので、当分魚は大丈夫だろう。
「ゆーしゃさま!せかいのきき?」
「いや…別にそうじゃない。そう言えば勇者のお願いを聞かないといけないんだっけか?」
「「「「「「「「「「うん!!」」」」」」」」」
「んじゃあ…自由に生きろ。以上だ。そして俺にこの島を案内してくれ」
「「「「「「「「「「へ?」」」」」」」」」」
「俺の名前はシンだ。とりあえずこの島を回りたい」
「でもこの島何もないよ?」
首を傾げる天人族。シャルの面影があるな…
「お前らにとっては、何もないかもしれないが…俺にとってはそうとも限らん。全部、端から端まで案内してくれ」
「はーい!」
俺は幼女たちの後を付いて行く。その後いろんなところから、天人族が合流し、最終的には60人ほどになっていた。
真っ白な建物が、廃墟のように、そこらに立っていた。ボロボロで、人が住めるようなものは、どこにもない。
そして、ところどころに、実のなっている木が生えている。少し歩くと、大きな草原のようなところもあった。
生き物は…天人族と、海と一緒に落ちてきた魚くらいのようだった。
井戸のようなものもあって、どうやらこの島自体が、海水を真水にするろ過装置としての役割になっているようだ。
たぶんだが、大陸の中心にいくと、真水を放出しているのではないだろうか?
「お前らはどこで寝てるんだ?」
「ん~?私たちは決めた場所からずっとうごかないよ?光から出て、自分の決めたいちにすわって‥あとは光にまたはいるときくらいかな~?うごくのは」
「ふむ…この実がお前らが食べてる実か?」
「あんまり味しないけどね~この実のたねをうえると、そこにまた木ができるんだよ」
変な植物だな…と思いつつ実をもいで食べる。
「確かに水っぽいが…微かに味がするな…スモモか?…ん?」
ふと実ではなく、枝の方に目が行く。一つ枝を折り、かじる。
「これは…枝の表皮はカカオ豆の味がする…枝の中心は砂糖?甘い…」
この世界は、俺の元の世界の食材と形が違う。コーヒーで学んだ。
この枝自体が、チョコレートのようになっている。外側の表皮から、カカオ豆、ココアバター、砂糖…比重が合っているが、混ぜなければ意味がない。
「この草原は…稲穂?麦か?」
「ただのくさだよ?」
モミを一掴みし、手で擦る。すると殻がとれ、中に白い粒が現れる。一粒口に入れて舌の上で転がす。
「米だ‥こんなところに…雑草のように…」
この草原、全てが米なのか…まじか!
膝くらいしかない草だが…これは確かに米だ‥なんだと‥さすがに雑草までは見ていなかった…
「よし。やることは決まったぞ。お前らも手伝え。俺がこの場所に楽園を作ってやる。どの国より豊かな楽園をな!」
60人ほどいた天人族が、首を傾げる。
「神もびっくりして、ついつい顔を出すような。そんな楽園を…天岩戸大作戦だ」




