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私の世界にようこそ  作者: てけと
終幕『私の世界で幸せに』
102/189

シンは世界の果てへ

 俺は…マオの町を出てから…何日たったんだろうな…いちいち数えてない…

 まあとりあえず重要なのは…俺はやっと、大陸の端に来たようだ。

 この世界で初めて見る海。これがきっと、大陸の端だ。人種族の国から獣人国、そして獣人国から魔人国、全て地続きだった。ならあの町から西北に向かえば…

 もしほかに大陸があるなら…また時間をかけて、端に向かうだけだが…

 

 切り立った崖の上に立ち。300mほど下にある海に向かって飛び込む。

 波の音にかき消され…俺の飛び込んだ音はなかった…


「しょっぱい…海で間違いないな…」


 すぐに海面から顔を出す。小舟を具現化し、乗り込む。そして沖に向かって舟を漕ぐ。沖に出た後、すぐ寝ころんだ。


「あとは寝てりゃ…どっかに着くだろ…」


 ほぼ寝ずに、ここまで飛んできたので、少し横になったら、すぐに意識は落ちて行った。






 朝、目が覚めると、俺をかじっている、魚が数十体ほど、小舟に乗り込んでいた。


「トビウオ?でも…口がでかいな…」


 ヒレが羽のようになっている、トビウオのような魚だが、口がパカッと開き、俺に食いついていた。


「どうせ日中は暇だしな…海の幸がどんなもんか…実験するかな…」


 そうして、小舟の横に、漁船を具現化し、そこに乗り込む。包丁を出し、自分に噛みついているトビウオを、自分の肉ごと剥がし、捌いていく。

 数体は刺し身で、後は焼きと、乾燥させて出汁用に…


「ふーん、元の世界だと、もっと淡白な味なんだが…割としっかりと白身の味がするな」


 そして俺は、釣り竿を具現化し、エンジンの無い船で、波に任せ、船を進める。

 海の幸を堪能しながら…


 




 そしてそれから日が経ち…まるで魚の加工場みたいになった漁船は、何かにぶつかり止まる。

 コツン、コツンと何か壁に行き当たったような音がする。


「ん?ここが世界の果てか?」


 魚市場の職員のような。長靴にひざ下まであるエプロンをし、魚を加工していた俺は、船の船首に向かう。


 船が当たる先は、真っ黒な空間だった。光を当てても、それより先は全く見えない。

 しかし…


「進めないな…どうするか…」


 せっかく果てまで来たのに、進めないんじゃな…何か手はないか?

 しかしよく見ると、船はまだ進もうとしている。壁にではなく、その壁を沿うように、横に向かって。


「海に流れがあるのか?ん?あれは…」


 ふと船が向かう先を見ると、大きな渦巻きを見つける。波と波がぶつかってできるものではなく、浴槽の栓を抜いたかのような、そんな渦巻きだ。


「なるほど…あそこを経由して、真水が大陸に供給されるのか?」


 確か大陸の中心は、ずっと雨が降っていると書いてあった。この世界で雲をあまり見たことはない、どうやって世界の中心にいってるのか疑問だった。


「まるで魚の水槽の、ろ過装置みたいだな…っと‥商品を傷つけるわけにはいかないな」


 どこに売るわけでもないが、ついつい保護してしまう…元の世界の癖だ。

 船倉に、加工済みの魚を全てキレイに詰め込み。船に衝撃防止のタイヤを大量に着ける。


「素直に、管理者の元に繋がってりゃいいが…そうはいかないよな…」


 少しの望みに縋りたくなるが、俺の予測では…ここはある島に繋がっているはずだ…

 そして俺は船ごと、渦巻きに飲み込まれていく…

 





 渦巻きから、落ちると…そこは空だった。海の水ごと、俺は空から落ちる、漁船の上にパラシュートのように布を具現化する。


 ドドドドドと海の水が、空に浮いている島に落ちていく。そして俺は船ごと、海水が落ちているところより、少し離れたところに着水する。

 パラシュートを消すと、そこには湖のような空間があった。


「ほう?空飛ぶ島とか、心躍るが…ここが…シャルの故郷か?」


 俺は天人族の彼女に、いろいろ聞いていた。空を移動する島、そんな島に通常の方法で行きつく訳がない。しかし…世界の危機が来ると、空から勇者が降ってくるという。


 ()()()()()ではない()()()()()と言った。だから空を見ていると。


 世界の危機が来ると、どうなる?どうやって勇者は、天人族の住処に行きつく?

 世界の危機とやらで、住処を追われ、世界の果てまで逃げて…そしてたどり着くのではないか?と考えたわけだ。


「俺の予測は当たったかな?」


 遠くから、20人ほどの、羽の生えた幼女が、俺の元に飛んでくるのが見える。


「ゆーしゃさまだ!」「ゆーしゃさま!」「おまちしてました!」


 と幼女たちが俺の周りに殺到する。ツバサに話は聞いていた。こいつらは長い間ずっと…得体も知れない勇者を待っていたのだ。


 そして…ツバサはこう言ってた。いつかその島に行って。娯楽をばらまいてやると。


「その役目…俺が果たしてやろうじゃないか」


 とても悪い笑みを浮かべ、俺は俺の策を前に進める。







 天人族の力を借り、船を岸まで漕いでいく。船倉には氷をたっぷり詰めているので、当分魚は大丈夫だろう。


「ゆーしゃさま!せかいのきき?」

「いや…別にそうじゃない。そう言えば勇者のお願いを聞かないといけないんだっけか?」

「「「「「「「「「「うん!!」」」」」」」」」

「んじゃあ…()()()()()()。以上だ。そして俺にこの島を案内してくれ」

「「「「「「「「「「へ?」」」」」」」」」」

「俺の名前はシンだ。とりあえずこの島を回りたい」

「でもこの島何もないよ?」


 首を傾げる天人族。シャルの面影があるな…


「お前らにとっては、何もないかもしれないが…俺にとってはそうとも限らん。全部、端から端まで案内してくれ」

「はーい!」


 俺は幼女たちの後を付いて行く。その後いろんなところから、天人族が合流し、最終的には60人ほどになっていた。


 真っ白な建物が、廃墟のように、そこらに立っていた。ボロボロで、人が住めるようなものは、どこにもない。

 そして、ところどころに、実のなっている木が生えている。少し歩くと、大きな草原のようなところもあった。

 生き物は…天人族と、海と一緒に落ちてきた魚くらいのようだった。

 井戸のようなものもあって、どうやらこの島自体が、海水を真水にするろ過装置としての役割になっているようだ。

 たぶんだが、大陸の中心にいくと、真水を放出しているのではないだろうか?


「お前らはどこで寝てるんだ?」

「ん~?私たちは決めた場所からずっとうごかないよ?光から出て、自分の決めたいちにすわって‥あとは光にまたはいるときくらいかな~?うごくのは」

「ふむ…この実がお前らが食べてる実か?」

「あんまり味しないけどね~この実のたねをうえると、そこにまた木ができるんだよ」


 変な植物だな…と思いつつ実をもいで食べる。


「確かに水っぽいが…微かに味がするな…スモモか?…ん?」


 ふと実ではなく、枝の方に目が行く。一つ枝を折り、かじる。


「これは…枝の表皮はカカオ豆の味がする…枝の中心は砂糖?甘い…」


 この世界は、俺の元の世界の食材と形が違う。コーヒーで学んだ。

 この枝自体が、チョコレートのようになっている。外側の表皮から、カカオ豆、ココアバター、砂糖…比重が合っているが、混ぜなければ意味がない。

 

「この草原は…稲穂?麦か?」

「ただのくさだよ?」


 モミを一掴みし、手で擦る。すると殻がとれ、中に白い粒が現れる。一粒口に入れて舌の上で転がす。


「米だ‥こんなところに…雑草のように…」


 この草原、全てが米なのか…まじか!

 膝くらいしかない草だが…これは確かに米だ‥なんだと‥さすがに雑草までは見ていなかった…


「よし。やることは決まったぞ。お前らも手伝え。俺がこの場所に楽園を作ってやる。どの国より豊かな楽園をな!」


 60人ほどいた天人族が、首を傾げる。


「神もびっくりして、ついつい顔を出すような。そんな楽園を…天岩戸大作戦だ」

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