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私の世界にようこそ  作者: てけと
第一幕『イレギュラー』
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大嫌いだった町からの脱出

前半ココ視点で後半はシンの視点です。

「ココは荷物を馬に乗せて門の前で待っててくれ」

「はいっ!では予定通り西門でお待ちしておりますね」

「頼んだ」

 

 私は旅の支度をします。昨日の夜に荷物の確認は済んでいるので、後は馬に積み込むだけだ。


 干し肉などの食料をカバンいっぱい詰め込んだもの、水…はかなり用意が少ないようですが、シン様曰く、水は重いからそこまで積みたくないとのことです。水は一番必要なのに…


 あとは治療に必要なもの一式です。正直これが食料の次に多いです…どれだけ怪我する予定なのか…普通旅するのにここまでは必要ありません。ですがシン様が必要というなら必要なのでしょう。


 あとこれだけの物資を運ぶなら馬車は必要だったと思います。馬が疲労して、潰れないかとても心配です…


 資金を得るのに森で戦闘する時間はとても短かったです、その代わりこの町をいろいろ回ることが多かったと思います。


 私はこの町が大嫌いでした。それはもう…この町にいるくらいなら死んでしまったほうがマシ、と言えるくらいには。

 でもシン様とこの町をいろいろ回って、いろんなものを食べながら歩いたり、きれいな景色を見に行ったり、のんびり過ごした時間はとてもいいものでした。


 私がこの町を好きとは思えなくても、シン様と一緒ならこの町にいてもいいかな?と思える程度には…


 そして私は馬に旅の荷物を載せて、西門に向かいます。獣人とバレてはいけないのでローブを深めにかぶります。

 そして西門が見えたところで…私の大嫌いな人が目につきました…

 

 私の前のご主人様でした…

 

「よう。そんな荷物抱えてどこに行こうってんだ?」

「……」

 

 私は無視をして西門に向かいます。


「ほう?ご主人様を無視するとはいい度胸じゃねえか!くそったれの獣人如きが!!」


 最悪でした…


「獣人!?」

「獣人がなぜ町の中に…」

「衛兵仕事してるのかっ!」

「さっさと放り出せ!とらえろ!」

 

 一瞬で囲まれてしまいます…どうすればいいんでしょうか…?


 前のご主人様はニヤニヤしてこちらを見ていました。


「お前はいい仕事をしたよ。これで俺もまた儲かるってもんだからな!」


 なんのことでしょうか?この人はもう私には無関係なはずなのに…


「何のことかわかってないようだな…なかなか有望な奴をたらしこんだじゃねえか。まさか獣人が好きな奴がいるとはなっ!しかも鉄の冒険者だ!これはいい稼ぎになる!」


 シン様の事でしょうか?まさか…まさかまさか…

 最悪の想定をします…たらしこんだ…つまり私をつかいシン様を…捕まえたというのでしょうか…


「ゴミとはいえ少しは稼ぎになるかと思って獣人を攫ってきたが、鉄の冒険者の奴隷が手に入るなんて!俺は運がいいな!お前の待遇もちょっとはよくしてやるよ!」


「っ!?」

 

 冒険者を奴隷に…?そんなことしたら一大勢力を敵に回しかねないのに…この町は自分たちが何をしてるのか知らないのでしょうか?


 私を餌にシン様を奴隷にするつもりなのでしょう…シン様に御貸しいただいてる剣を抜きます。


「抵抗しようってのか?この人数に何ができる?」


 すでに私は20名以上に囲まれていました。


「奴は獣人でも戦闘能力のない狐だ!さっさととらえろ!」

「武器を持ってるぞ!盾持ち前に出ろ!一気に抑え込め!」


 私は荷物を載せた馬のしりをたたき、西門に向かって走らせました。


「うおっ!」


 道は一瞬広がりましたがすぐに閉じます。馬は西門を抜けて走っていくのが見えました。

 これで私がどうなっても最悪旅の荷物は外に出すことができました…

 私が死ねば、シン様の足手まといにはなりません。もちろん死にたいわけではありませんが…

 捕まってご迷惑をかけるくらいならいっそ…


 ココを中心に盾を持った男たちが押し寄せる。


「てぇいっ!」


 ココは前からやってくる盾持ちに盾ごと斬りつける。

 木材を基本に作られた盾はスパッと斬れ正面の盾持ちはたたらを踏む

 しかし全方向から一斉に押し寄せる人にさすがに対処しようがなく……

  




~~シン視点~~



 俺は一目散に西門に向かって走る。後ろから怒鳴り声が聞こえる。


「あいつを捕まえろ!衛兵!!」


 衛兵数名が前に立ちふさがる。もうこの町は俺にとってどうでもいい町だ。だから容赦なく…

 

 俺は前に、横3m、縦10m、厚さ50cmほどの石壁を具現化する。そしてそれを走っている勢いのまま蹴りつけ、前方に倒す。


 グラッと石壁は前に倒れていく。


「げっ!?」


 ズウンッ!と石壁が前方に倒れる。


 逃げ遅れた衛兵は石壁の下敷きになり、グチュ!という嫌な音を立ててつぶれる。

 俺は具現化し倒した石壁を下に走る。通り抜けると具現化を解除しておく。

 残されるのは圧死されたグチャグチャの死体だけだった。


 その後も石壁で、立ち塞がる衛兵を圧死させながら西門前までたどり着く。

 するとそこにはなぜか人だかりがある。

 まさか…


「どけぇ!」


 槍を具現化し投げつける。数名に突き刺さり人垣が分かれていく。


「ひぃぃ…」

「殺されるぞ!にげろ!」


 一般市民は恐怖におののき一目散に逃げていく。


 その人だかりの中心には取り押さえられたココの姿が見えた。


「とまれっ!こいつがどうなってもいいのか!!」


 羽交い絞めにされぐったりしているココの姿があった。


「……」


 怒りがこみあげてくる…


「シ…ンさ…ま…」

「しゃべるんじゃない!!」

 

 奴隷商の男がココを殴りつける。


 そしてその隙に俺の周りを衛兵共が囲んでくる。


「わたし…はだ…い…じょうぶ…なの…でしん…さまは…たび…にでて…くださ…い。いき…てく…ださ…い」

「だからしゃべるなとっ!」


「俺は……」


 言葉を飲み込み…にやりと笑うことにした。


「お前らは運がいいな。俺の望むものを今日与えられるんだからな」

「何のことだっ!」


 そして俺の能力の限界分の武器が上空から降ってくる…


 それは槍 刀 細剣、ロングソード、バスターソード、曲刀、ナイフ等のありとあらゆる種類の武器がその数は数百本、町に降り注ぐ。


 ドドドドドッ!と雨のように降り注ぐ武器。


「なんだこれ…ぐあっ!」

「ギヤァァァ!」

「助け…あああぁぁ!」


 町から悲鳴が上がっていく。


「今日の天気は晴れ時々武器だったようだなぁ」


 悪役じみた顔でそう言い放った。


 奴隷商とココの周りには降らないようにしている。俺には刺さっているが…

 

 この数日何も観光だけしているわけではなかった。この町の闇は深いがそれを知らずに普通に生活している人もいたはずだ。そういう人たちに被害がないのかといえば…嘘になるがまあ意図的に避けるようにはしてある。

 そして俺は俺の能力の限界を森で試していたし。武器屋でいろんな武器を見て想像できる武器の種類、使い方などもいろいろ学んでいた。あの武器屋のおっさんは古今東西いろんな武器を持っていた…


 こんな町滅んでも問題ないだろう?そう決意したのはさっきだったわけだが…


 周りの衛兵はすべて死んでる。そして…


「ひぃ…やってられるかよ!!」


 ココを羽交い絞めしていた衛兵は逃げていった。もちろん逃げた先に武器が降ってくるのだからすぐそのまま絶命していた。

 一通り武器が降りやみ、俺は俺に刺さっていたナイフを抜き取る。そして……


「せ…せめて命だけは…っ!」

「そうだな…お前を殺すとお前の奴隷もみんな死ぬしな…死なない程度に切り刻むか…」

「おま…金ならある!いくらでも払うから…どうかそれで勘弁を…」


「全部だ」


「はっ…?」


「まずお前の奴隷の契約書を全部出せ」

「それは…ギャァァっ!」


 おれは奴隷商の足の甲にナイフを突き刺す。


「ぜ・ん・ぶ・だ」

「はいぃぃっ!」


 そういうと奴隷商は来ていたコートを脱ぎその内ポケットにはいっている丸まった契約容姿百枚程度をだす。


「これで全部か?」

「そうです!これですべてです!!」


 どうやら契約書は他者が破棄しても契約は解除されるので肌身離さず持っているらしい。

 しかしその契約書の詳細はわからないので、もしその奴隷自身の契約書を自分で破ると死んでしまうとか。

 案外がばがばなんだな奴隷契約って。

 町に降り注いだ武器の具現化を消し、ガスを生成して、そのコートごと契約書を燃やす


「なっ!?」

「これで全奴隷が契約解除されたわけだ。じゃあさっさと死ね」


 ナイフを男の心臓に突き刺し…


「がぁっは!」

「生かすわけないだろ…」


 奴隷商は絶命した。


「し…んさ…ま」

「ココ…すまないな、旅の準備したのに全部パァになったな」


 そう言って笑う。

 

 意識を失い、俺の胸に倒れてきたココを抱きかかえ、西門に向かう。




 西門にはダンが立っていた。立ちふさがるなら…殺すしかないか…そう思っていたが…


「俺はお前を止めたりはしねぇよ…この町のやってたことを今日初めて知ったぜ…」

「そっか…どうするんだ?」

「どっかの誰かさんが街をぶっ潰しちまったからなぁ…俺はこの町が好きだ。だから復興に尽力を尽くすさ」

「一応人手は町の外にある元奴隷どもを使えばいい。解放されてるはずだ。無理やり町の冒険者にされてたやつも復興に手を貸すだろ。あとは奴隷商が抱えてる資金を使え」


 あの奴隷商は、すべての財産を、俺に差し出した。なら、どう使おうが俺の勝手だ。


「色々と考えてくれてるんだな…」

「こんな町滅びていいとは思ってるさ。でもいい奴もいたわけだしな…町は嫌いだが…この町に住む人はそこまで嫌ってないぞ?」


 何も知らずに、この町で暮らしていた人も、少しはいるだろう。目の前の衛兵もその一人だ。


「また機会があったら寄ってくれよ…その時にはお前らが好きになれるような町にしとくからさ!」

「考えとくよ…」


 そう苦笑いしておく


「獣人の嬢ちゃんが逃がした馬ならあそこにつないであるぞ」


 門の近くの木に、荷物を載せた馬が2頭繋がれていた。馬だけは逃がしていたのか…


「さすがココだな…世話になったな…ダンさん」


「料金は前払いでいただいてるからな!」


 

 そして俺はココと二人西へ向かう。目指すは獣人国首都ビーステイルである。

お読みいただき有難うございます。


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