第6話 過去との対面その1
K書店前。
美月は睨みつけるように、K書店の看板を見つめていた。
この3年通い馴れたこの書店に入るのを躊躇う日が来るとは、美月も夢にも思わなかった。
早く着きたくなくて、でも早く済ませてしまいたくて。
悶々と考えながら歩き着き、左腕にある腕時計を確認するも、学校を出て10分も経っていなかった。
それもその筈、この書店、美月が住む、寮の目の前にあるのだから、本来ならば、5分とかからずたどり着いた筈の距離なのである。
「はあ。外にいないってことは中なんだよな。・・さっさと入って、話、済ませるか。」
美月は重い足取りで、書店へ足を運んだ。
あまり広いとはいえない店内を軽く見渡すと
「・・本当にいたよ・・」
はあ。腹が括れてないというべきか、美月は自分の発した内容に、嫌な気分になった。
雑誌を読んでいるらしいアイツに近づき
「おい。」
「・・」
くー岡本くんって呼べってか?呼びたくないっ・・
「・・・岡本くん・・・」
なんとか美月は声を絞り出した。しかし、弱弱しい声となってしまい、美月は舌打ちしたくなった。
一方、アイツは名を呼ばれて、やっと気づいたらしく、顔をこちらに向けてニーっと唇の端をあげた。
「よ、美月。遅かったな。」
そこにある表情から、美月は過去、そして今の現状を読み解く何かを得ることはできなかった。
「ってか岡本くんって。。気持ち悪い。鳥肌たちそう・・・昔みたいにユーキでいいじゃん。」
美月は挑発も投げかけも無視し尋ねた。
「・・・話ってなに?このあと、約束があるから時間ないんだけど。」
美月は今度こそ弱った声にならないよう腹に力を入れた。
「ちぇー。美月ってばひどいよな。久し振りに会ったってのに。まあいいや。ここで話したらお店の人にも迷惑だし、出るぞ。」
「・・」
美月は無言のまま店外へ出た。
「で?」
「まあ落ち着けって。近くに座れるとこない?公園とか。店先で立ち話できる話でもないだろ?」
ニヤっと笑ってアイツは言った。
「・・・こっち・・」
美月はため息をつきたい気持ちを抑え、先を歩き、近くの公園まで無言のまま案内した。
アイツも無理に話そうとはしなかった。
公園のベンチに座り
「で?」
美月は振り返り、再度同じ問いかけをした。
「ほい。」
投げられた何かをキャッチすると、それはいつの間に用意したのか紅茶のペットボトルだった。
「なに?」
「俺の奢り。飲めよ。」
「・・」
「払おうとしたら殴るかんな。」
「はあ・・」
「まっ座れば?」
「ム・・」
ここに案内したのは自分なのに・・と訳のわからない苛立ちを覚え、
「言われなくても座ります。」
と言い放ち座った。
アイツも美月の隣に座った。
「・・・」
「まあマジで久し振りだよな?」
「「・・・」」
「はあ・・まあそうだね。」
無言の間に耐えられず、つい美月は答えていた。
アイツはわかりやすくホっとした表情を浮かべ
「3年ぶり?」
「ん。」
美月は言うべき言葉もなく、ただ頷いた。
「・・・なー。美月、怒ってんのか?」
アイツが、言葉少なにこちらに向けていた視線を逸らして言うものだから
「・・なんでそう思う」
美月は無表情に前だけ見つめて問いかけた。
「・・クラスで再開した時、全然嬉しそうじゃなかった・・」
(実際、嬉しくなかったしな。)
「今も面白くないって顔してる・・」
(実際、面白くもないしな。)
「溜息ばっかだし・・」
(ム・・それはお前がいるからだろ。当たり前。)
「それに・・さっきから全然こっちを見てない。視線も合わない。口調も顔も怖い。」
「・・なんだそれ・・」
ムッとしてつい、答えてしまった。
「なんで?クラスの子とは普通に話してたから、俺限定ってことだろ?」
「お前がそう思うなら、そうなんだろ。」
過去を覚えてる素振りすらない、こいつにただただ腹が立ち始めていた。
「話はそれだけか?」
もう話すことはないと、美月は立ち上がろうとした。
「おい。」
右手首を掴み、引っ張られたことで、美月はまたベンチに座ることとなってしまった。
しかも、こいつにもたれかかるようにして!
「放せよ。」
美月は右手首を解放しようと、左手であいつの右手を離そうと必死になっていた。
「・・話はまだある。美月、あいつのことまだ覚えてるか?」
美月の抵抗を気にすることなく問いかけてくるこいつに腹がたちながら
「あいつって誰だよ。」
と手首を解放しようと美月はもがいていた。
「・・山崎 要。」
ハっ。思わず美月は岡本いや、ユーキの顔を見つめていた。
「「・・」」
「・・ヤマザキ カナメ・・」