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第2話 嵐5分前

4月3日 入学式当日




ガヤガヤ・・




K大付属女子寮から徒歩約5分の圏内にあるK大付属高校。

クラス発表のはり紙の前に2人と、多くの生徒が集まっていた。






「へー結構新しい子いるねー。どれ。あたしのお眼鏡に叶う子はどこに・・」


美香が、本当に嬉しいって顔でキョロキョロしている。


「美月ちゃん、美香ちゃん、おはよ〜」


とすると、同じく中学からのお仲間、新堂 麻衣が鞄を胸に抱え、駆け寄ってきた。


美月は軽く手をふり、


「おはよう。麻衣」


美香は


「おはよーまーいっ。あれ?麗しのお兄様は?」


麻衣にギュっと朝の包容ときている。



麻衣は身長150cmに満たない身長で小動物を思わせる可愛さと信じられないことだが、空手剣道の段保持者という見かけからは想像もつかない屈強さを兼ね備えている少ない友人、親友の1人であった。

本人曰く、変質者の類から守りの手段を得るべく、麻衣の兄、涼平と共に道場に通い、身につけたとのことであった。



「お兄ちゃん?お兄ちゃんならさっき輝良さんと一緒にもうクラス行っちゃったよ?」


「えー」


「2人また同じクラスだったみたいで。お兄ちゃん、懲りもせず輝良さんに抱きついてすげなくされてた。」クスクス

その場面を思い出したのか、麻衣は楽しそうだ。


「・・」


美月は思わず、従兄、輝良の疲れた顔を思い出し、これからの1年を心配してしまった。


美香は


「きゃー。またお2人のツーショットが見れるのねー。もうこの時をどれだけ待ったことか・・」

と奇声をあげながら、ぶつぶつつぶやいている。その顔はとてもとても、恐ろしいほどに嬉しそうだ。


思わず、麻衣を見ると、こちらを見て苦笑を返した。


美月も苦笑を返し、絶対に、輝良との関係は隠し通そうと、何度目か分からない誓いを新たにした。


「ところで、美月ちゃんも美香ちゃんもクラスの掲示はもう見たの?」

思わず微笑み返したくなる、世の男を虜にするであろう、天使の微笑みで麻衣が聞くので、


「今来たとこだからまだ。」


と美月が返すと


麻衣はにっこり笑って


「美月ちゃんはB組、美香ちゃんはC組だったよ。」


「えー」


美香が大きな声で叫んだので、慌てて、美月は美香の口を両手でふさいだ。


モゴモゴ

「美香?こんなところで奇声を発するな。オーケー?」


コクコク。真っ赤な顔で美香がうなずくので手を放してやると

「はぁはぁ・・」


そうとう苦しかったようだ。一生懸命、呼吸を繰り返している。


美月と麻衣2人は、集まってしまった視線に軽く頭を四方に何度か下げ、美香の腕を引き、

人気のまだ少ない玄関へと向かった。


美香は

「はぁああ・・・」

息も落ち着いたのか、立ち止まり、信じられないといった強い視線を美月に送り

「・・死ぬかと思った・・」

と強く、つぶやいた。


「・・で?麻衣のクラスは?」


美月は、美香の立ち止まりに足を止めたが、構っちゃいられないとまた歩をすすめ、麻衣に尋ねた。


「麻衣は、美月ちゃんと同じB組だよ。1年ぶりだね、一緒のクラス。」


「あーそうだな。」


「また1年よろしくね。」


「おう。よろしく。」


「・・おい。2人して・・拗ねるぞ・・」


1人足を止めていた美香が、言葉の弱さと裏腹に強く叫ぶので、


「はあ・・わかったから早く歩け。」


美月は立ち止まり、美香が来るのを待った。


美香は

「あーあ。2人が同じクラスで、あたしはCか〜・・あっ。まい、Cであたしを幸せにしてくれそうな男の子っていた?」

さっきまでの落ち込みはどこへやら。美香はニヤっといった表情を麻衣に向けた。


「んーC組はねー・・あっ阿倍さんがいたよ。」

麻衣は視線を一度逸らせた後、にっこり言った。


「ゲっ・・阿倍ってあの阿倍穂乃香あべ ほのか?2股3股当たり前の?」


「2股3股は知らないけど、その阿倍さんだよ。」


「さ、最悪・・」

美香は麻衣の言葉に顔を真っ赤にして項垂れている。


「誰それ?」

美月は知らない名前に首を傾げた。


「げ。美月知らないの?」


「知らない。初めて聞く。」


「あいつは、・・・」

美香は言葉にならないようで口をパクパクさせた後、唇を噛みしめていた。


「?」

思わず麻衣のほうを見やれば、麻衣は麻衣で視線をさまよわせている。


「???」


「あー美香ちゃん。美月ちゃんも。もうチャイム鳴っちゃうよ。早く行こ?」

と麻衣が美香の背中を押しながら玄関上の時計を指差した。


時間を見、慌てて3人は教室へと向かうことととなった。




過去との対面のまであと少し。




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