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1ダースのこぶた

 むかしむかし、あるところに12匹のこぶたがいました。

 こぶたの兄弟たちはときどきけんかをしながらも、みんななかよくくらしていました。

 ある日、お母さんぶたがこぶたたちに言いました。


「あなたたちはもう十分に大きくなりました。自分たちで家を作って、一人でくらしなさい」


 こぶたたちはお母さんの元をはなれ、ひとりひとり家を作ることにしました。


「どうしよう」

「どうしよう」

「どんな家を作ろうかな?」

「どんな家がいいかな?」

「すぐにできる家がいいよね」

「かんたんなのがいいよね」

「たのしい家にしよう」

「りっぱな家もいいよ」

「ぼくはじょうぶな家を作ろう」

「こわれないようにしないとね」

「ぼくはこれで家を作るよ」

「じゃあ、ぼくはこれだ」


 みんなおもいおもいの家を作ります。

 りっぱなお家にじょうぶなお家。かんたんなお家にたのしいお家。

 みんなどんな家を作るのでしょう。


 こぶたたちが家を作ると、そこに4匹のわるいオオカミがやってきました。


「へっへっへ。オオカミさまのおとおりだぁい」

「おや? こぶたたちが家を作っているぞ」

「なまいきだ。こわしちまおう」

「そうしよう。そうしよう」


 まあ、たいへん。オオカミたちはこぶたたちの家をおそいます。

 こぶたたちの家はオオカミにこわされてしまうのでしょうか。




 こぶたのひとりはワラの家を作りました。


「こんな家、ふきとばしてやる」


 オオカミたちは大きく息をすうと、ふぅーっとワラの家をふきとばしました。


 家をふきとばされたこぶたはぴゅうっとオオカミたちからにげました。




 べつのこぶたは木の家を作りました。


「こんな家、こわしてやる」


 オオカミたちはいっせいに体当たりをして、木の家はバラバラにこわされました。


 家をこわされたこぶたはぴゅうっとオオカミたちからにげました。




 べつのこぶたはレンガの家を作りました。


「この家はふきとばされも、こわされもしないぞ」


 家の中で、こぶたはえへんとむねをはりました。


 オオカミたちは話し合って、レンガの家の地面をほりはじめました。


「うわぁ〜、やめてくれ〜」


 レンガの家はバランスをくずして、どしーんとたおれてしまいました。


 家をたおされたこぶたはぴゅうっとオオカミたちからにげました。




 べつのこぶたはガラスの家を作りました。


「こんな家、くだいてしまえ」


 オオカミたちはガラスの家をたたいてこなごなにくだいてしまいました。


 家をくだかれたこぶたはぴゅうっとオオカミたちからにげました。




 べつのこぶたはほら穴を家にしました。


 オオカミがほら穴の入り口にきたら、中にいるこぶたににげみちはありません。


 こぶたはオオカミがくるまえにぴゅうっとにげました。




 べつのこぶたは土の中に家を作りました。


「こんな家、うめてしまえ」


 オオカミたちが上でどしんどしんと大あばれをすると、家は土の中にうめられてしまいました。


 家をうめられたこぶたはぴゅうっとオオカミたちからにげました。




 べつのこぶたはお菓子の家を作りました。


「こんな家、食べてしまえ」


 オオカミたちはむしゃむしゃとお菓子の家を食べてしまいました。


 家を食べられたこぶたはぴゅうっとオオカミたちからにげました。




 べつのこぶたはお空に雲の家を作りました。ここならオオカミもかんたんにはこれないでしょう。


「こんな家……こうだ!」


 オオカミはぐぐっと足に力をこめると、ピョーンと大きくジャンプ。

 オオカミが雲の家までやってきました。


 オオカミが雲の上でどしんと足をふむと、雲の家はまっさかさまにおちてしまいました。


 家をおとされたこぶたはぴゅうっとオオカミたちからにげました。




 べつのこぶたは炎の家を作りました。ここならオオカミもあつさでまいってしまうでしょう。


 しかし、あまりのあつさにこぶたもすんでいられませんでした。


 こぶたはオオカミがくるまえにぴゅうっとにげました。




 べつのこぶたは水の中に家を作りました。ここならオオカミもいきがつづかないでしょう。


 しかし、こぶたもおなじくいきがつづきませんでした。


 こぶたはオオカミがくるまえにぴゅうっとにげました。




 どんな家を作ってもオオカミにこわされてしまう。

 どんな家ならいいのだろうか。

 こぶたたちはすぐにできるワラの家を作り、そこにあつまって話し合いました。


 あーでもない。こーでもない。

 こぶたたちは話し合います。


「ぼくにいいかんがえがあるよ」


 まだ家を作ってないこぶたが言いました。


 どんな家、どんな家?


 こぶたの兄弟たちはきょうみしんしんです。


「ぼくが作るのは鉄の家さ。でも、それには兄弟みんなで協力しないといけないんだ」


 こぶたはみんなに近寄るように言うと、輪になって、みんなで作る鉄の家について話しました。




 さあ、それから大いそがしで鉄の家作りが始まりました。


 まずはほら穴を家にしていたこぶたの兄弟が、ほら穴の家に帰りました。

 そしてカツーン、カツーンとツルハシで壁をつつき、ほら穴から鉄の石をとります。


「はい、とれたよ」

「よーし。ぼくにまかせて」


 とれた鉄の石を雲の家を作ったこぶたが、雲の上にのせて運びます。


 こぶたが運んだ先は炎の家でした。


「はい。もってきたよ」

「よーし。ぼくにまかせて」


 炎の家を作ったこぶたが鉄の石を炎の中に入れてドロドロにとかします。


 ドロドロにとけてあつくなった鉄のかたまりをこんどはレンガの家を作ったこぶたにわたします。


「あついから気をつけてね」

「うん。まかせて」


 こぶたは鉄のかたまりをレンガの上にのせて水の家まではこびました。


「おまたせ。もってきたよ」

「ありがとう。あとはぼくにまかせて」


 水の中に家を作ったこぶたが鉄のかたまりを水の中に入れます。そして、じゅううと冷やして形をととのえました。


「はい。できたよ」

「よし。ここからはぼくたちのでばんだ。みんながんばるぞ」


 できあがった鉄を使って、のこりのこぶたたちが家を作ります。


 えっさ、ほいさっ。えっさ、ほいさっ。


 鉄をくみたてて、どんどん家が作られていきます。

 じょうぶな鉄の家なら、ふきとばされもこわされもしません。


 土の中に家を作ったこぶたがじめんに穴をほり、そこに木のはしらをうめます。

 これでレンガの家のようにたおされることもありません。


 鉄の家にはガラスのまども作りました。これで外のようすが見れます。

 まどは小さく、ここからオオカミがはいってくることもないでしょう。


 ついに鉄の家がかんせいしました。

 りっぱなりっぱな鉄の家。みんなでいっしょうけんめい作った鉄の家。

 こぶたたちは「バンザーイ」とよろこびました。




 そこに4匹のオオカミがやってきました。

 こぶたたちはいそいで作ったばかりの鉄の家にはいります。

 そして、しっかりととびらをしめました。


「やいやい、こぶたたちめ。こんな家を作りやがって、なまいきだ。こわしてやる」


 オオカミたちはこぶたたちが作った鉄の家をこわそうとします。

 しかし、息をふいても、体当たりをしても家はこわれません。

 たたいても、てんじょうで足ぶみをしても、じめんをほっても、家はびくともしませんでした。


「なんてじょうぶな家なんだ。こわせないぞ」

「それなら、大きな声でこぶたたちをこわがらせてやろう」


 オオカミたちは息をすいこむと、4匹でグワーっと大声をだしました。

 こぶたたちをこわがらせて、家からでてこさせようというかんがえでした。


 しかし、こぶたたちはこわがりませんでした。

 なぜなら、すぐよこに兄弟たちがいるからです。


「このまま、まっていよう。そうしたら、お腹をすかしたこぶたがでてくるぞ」


 オオカミたちは鉄の家の外でじっとまつことにしました。


 しかし、こぶたたちはでてきませんでした。

 なぜなら、家の中にはたくさんのお菓子があったからです。

 お菓子の家を作ったこぶたがもってきました。


「うーん。でてこないぞ」


 やがてオオカミたちはあきらめて、さっていきました。


「やった! オオカミたちがにげていくぞ」


 家をこわされなかったこぶたたちはよろこびました。

 ひとりひとりが作った家ではオオカミにこわされてしまったけど、みんなで作った家でついにオオカミにかちました。


 ひとりひとりではまけてしまっても、兄弟みんなのちからを合わせれば、強いオオカミにもかてたのです。

 こぶたたちは兄弟みんなでよろこびました。


「あれ?」


 そこでひとりのこぶたが気づきました。


「どうしたんだい?」


 べつのこぶたがたずねると、そのこぶたは兄弟たちの数をかぞえます。


 ワラの家を作ったこぶた。

 木の家を作ったこぶた。

 レンガの家を作ったこぶた。

 ガラスの家を作ったこぶた。

 ほら穴を家にしたこぶた。

 土の中に家を作ったこぶた。

 お菓子の家を作ったこぶた。

 雲の家を作ったこぶた。

 炎の家を作ったこぶた。

 水の中に家を作ったこぶた。

 そして、鉄の家を作ろうと言ったこぶた。


 鉄の家にいるこぶたは11匹。兄弟がひとりたりないのです。


「いちばん末っ子の弟がいない!」


 こぶたの兄弟たちはさわぎだしました。


 そういえば、末っ子のこぶたの家を見ていません。

 オオカミにこわされてしまったのでしょうか。それとも、オオカミにこわされず、その家にまだいるのでしょうか。

 末っ子こぶたはいったいどんな家を作ったのでしょうか。






 こぶたの兄弟たちがさわいでいるころ。

 お母さんぶたは家の中にむかって言いました。


「まったく、あとはあなただけよ。お兄ちゃんたちはみんなとっくに出ていったのよ」

「えへへ。ぼくはもうちょっとこの家にいるよ」


 末っ子こぶたはお母さんぶたに言いました。

 末っ子こぶたがえらんだのは、お母さんの家でした。

 なぜなら……、


「だって、ここがいちばんりっぱで、じょうぶで、かんたんで、たのしいんだもん」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 末っ子がかわいかったです。 お兄さんたちはみんな工夫して家をつくったんですね。 雲の家、すごい。 鉄の家、鉄鉱石の採掘からなんですね(笑) たのしいお話、ありがとうございました。 (#^…
[一言] 良い作品でした。 末っ子以外の11匹がしっかり活躍していたのが良かったですね。 投稿されている他の作品も良さそうなので読んでみたいと思います。楽しみです!
[良い点] まさか狼も増えているとは ほぼ全員が協力しあって退ける展開が非常にいいですね!( ・∇・) [一言] ……私も3びきのこぶたモチーフの童話を書きましたが、今本物の童話に触れてしまった気が…
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