30話 それならいいですけど
陽翔とレイカは古代の妖魔を倒すためにジフという町に行った。その間、ルテラと椎菜は陽翔達の帰りを待っていた。夕方頃に帰る予定のはずだが、深夜になっても帰ってこないため心配している。
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「勇吹君、遅いですね」
「えぇ……」
陽翔達が古代の妖魔を倒していれば既に帰っているはずだが、深夜になっても帰ってこない。ルテラ達は2人のことが心配になる。
しばらく待っているとレイカがドアをすり抜けて入ってきた。
「うわっ……レイカさんか」
「驚かせてごめんね」
何の前触れもなくレイカが入ってきたため、椎菜は驚いた。そして、胸をなでおろす。
「勇吹君もいるよね?」
「いるよ」
レイカがドアを開けると陽翔が音を立てないように入ってきた。
「起きてたのか」
「心配で心配で眠れなかったんですよ」
「すまん。いろいろやってたら遅くなった」
「いえいえ、無事でなによりです」
最悪の事態を想定していたルテラと椎菜だったが、陽翔とレイカが無事だったので安心した。
「妖魔は倒せたの?」
「……間に合わなかった」
そう言う陽翔は悔しそうな表情を見せた。続けてレイカが説明する。
「町は壊滅。復活した妖魔はアイツらの領域に行ったみたい」
「そう……」
一つの町が壊滅したということは大勢の人間が犠牲になった。ルテラと椎菜は悲しくなる。4人の間に重い空気が流れた。
「今日は疲れたでしょう。ゆっくり休んでください」
「ああ」
町の壊滅、何よりも強凄の死により精神的に疲れているのは事実だ。陽翔は気を休めたいところだった。
「その前に話しておきたいことがある。……マヤペアで池成に会った」
「なんで?」
陽翔達は他のクラスメートや日本人と会わないように行動させられている。
「俺達を待ってたみたいだった。封印を解けばレグニ族が攻めてくることを伝えるために」
「なんで知ってるの?」
「遺跡に大昔のレグニ族がいたらしい」
「へぇ……」
ドギマが教えていない情報を聞けるかもしれない。椎菜はそのレグニ族に会ってみたいと思った。陽翔も同じ気持ちだ。
「本当のことを美春ちゃん達や杏ちゃん達も知るといいな」
「皆……四井達以外は知ってるよ。ドギマがそう言ってた」
「なんでドギマにそんなことが分かるの?」
「遺跡に行った後の拓斗達の動きがおかしかったから他の日本人に行かせたらしい」
「なるほど。天界から監視されてるんだよね」
「ああ。厄介だよ」
自分対の行動を天界から監視されていることに陽翔は苛立たしく思う。
「ふぁ~」
椎菜が大きい欠伸をした。
「眠いの?」
「うん」
「……ごめん。もうちょっとだけいい?」
重い口調にならないように言った。
「何?」
「実は四井達にも会ったんだ」
「本当!?」
「ああ」
「え?」
椎菜は手を合わせて嬉しそうな表情を見せたが、レイカは悲しげな表情になった。
ルテラは首をかしげる。四井強凄達が盗賊になったことは言わないと決めているからだ。
「異世界生活を楽しんでるみたいだったよ。日本にいても面白くないから帰るつもりはないって言ってた」
「そう……。ちょっと残念だけど無事ならいいかな」
「じゃ、俺は風呂に入るから、先に寝てくれ」
どうしても、強凄達が死亡したという事実が顔に出そうになる。陽翔は足早に浴室に入った。ルテラが険しい顔で見ているとは知らずに……。
2
「勇吹君、起きてますか?」
「なんだ?」
ルテラは、椎菜が眠っていることを確認してから声をかけた。
「さっきの話、どういうことですか?」
「さっきの?」
「四井君たちのことです」
「やっぱり、そういうことにした方がいいと思ってな……」
口が裂けても「死んだ」とは言えない。
「嘘をついて、青山さんが本当のことを知ったらどうするんですか?」
「アーカイスは広いんだから会うことはないだろ」
自分でも苦しい言い訳だと思っているが、二度と会うことはないのは事実だ。
ドギマは強凄達が死亡したことを知らないのでバレることはない。
「そう言っても他の日本人と会ったり、妖魔と遭遇したり偶然が重なっているじゃないですか」
「大丈夫だ。会ったのは本当なんだよ。どういうわけか改心したみたいだけどな。」
「……そうですか。それならいいですけど」
強凄達が改心をしたことを聞けば喜んでもいいはずだが、ルテラは疑念の眼差しを向けている。何かを隠しているんじゃないかと疑っているようだ。
「起こしてごめんなさいね。おやすみなさい」
「おやすみ」
陽翔は目をつむったが、寝付けなかった。




