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雄志編 3話 勇吹君、今頃何をしてるんだろう?

 雄志達がアーカイスに転移させられてから7日が経った。

 今日は生存確認と情報交換のために皆で集まることになっている。理由は日本と違ってアーカイスには遠くにいる人間と会話できる機械や魔法は存在しないから。







「四井達がいないな……」

 雄志が呟く。

四井強凄(よつい きょうせい)名島王(めいじま きんぐ)空星宇宙(そらぼし すぺーす)大竹月姫(おおたけ かぐや)がいない。

「アイツらならトッシュに行くと言ってた」

 そう言ったのはイケメンな男子生徒。

「それはいつの話?」

「確か召喚されて2日目」

「勝手な奴らだ。無事だといいが……」

 皆で集まると約束していたが、四井達はそれを反故にした。とはいえ雄志は彼らの安否が気になる。




「どこに行くか言ってくれただけいいじゃん。私は勇吹君の方が気になるよ。誰か会えた?」

 美春が質問をしたが首を縦に振った生徒はいなかった。

 陽翔は初日に皆と離れ離れになり、2日目にトッシュに向けて出発したのだから当然だが。

「誰も会えてないんだぁ。やっぱりトッシュにいるのかな?」

「あんな奴、放っておきなよ」

 気が強そうな女子生徒が言った。

 雄志や椎菜など一部の生徒を除いて皆、陽翔が自分勝手に行動していると思っている。この少女もその一人だ。

「いや、放っておけないでしょ」

「なんで?」

「同じクラスだし、椎菜が()

「ちょ!」

 何かを言おうとした美春を椎菜が慌てて制止した。

「おっと、ごめん」

「青山さんがなんだって?」

「何でもないよ。とにかく勇吹君も放っておけない」

「あ、そう。だったら桜木さん達だけで探したら?」

「そのつもりだよ」

 雄志、椎菜、美春、茂手は魔物とマトモに戦えるようになったら陽翔を探しに行こうとしている。





 陽翔のクラスメート達は自分達がアーカイスで得た情報を伝え合った。といってもまだ7日目。妖魔と戦った者はおらず、手引き書に書いてあること以上の情報はなかった。

 強いて言えば、銀髪の女から貰った『力』のおかげで身体能力の向上が実感できたこと。

なるべく定期的に生存確認と情報交換を行うことにして、次は20日後にカサフで会うことにした。









 雄志達がアーカイスに転移させられて12日目。

 雄志、茂手はタイマンなら武器のみでストブリンを倒せるようになった。美春も弓と魔法の遠距離攻撃のおかげでストブリンを倒せる。椎菜は武器のみでミドブリンを倒せるようになった。

雄志達はトッシュに行くことにした。陽翔がいると信じて……。




「勇吹君、今頃何をしてるんだろう?」

「女の子と一緒にいたらどうしよう……」

 椎菜が不安そうな顔をする。

「それはないでしょ」

「そうかな?」

「まだ12日目だよ? あの勇吹君が女の子と一緒に行動できると思う?」

「分かんないよ。魔物に襲われてる女の子を助けて、そのままついてきたとか……」

「そんな都合のいい話はありえないから! そんなことより無事にトッシュに辿り着くことを考えなさい」

「……うん」

 陽翔に会う前に死んだら話にならない。陽翔が女と一緒に行動しているか? という確かめようのないことを心配するより無事に会えることを考えなければならない。

 椎菜達は気を引き締めてトッシュを目指した。



 ハジマという町に着いたが夕方だったので泊まった。ハジマには陽翔がいたが、雄志達はそのことを知らない。

 翌朝、出発して昼頃、イグストという町に着いた。









 イグストの喫茶店で休憩しようとした時、ドリザーンやストブリン、ボスネークがやってきた。

「魔物か! どうする?」

「この状況じゃ戦うしかないだろ」

 数が多い。それに次の町まで距離があるので、ここで休憩したい。彼らに逃げるという選択肢はなかった。

 武器を出現させて魔物と戦い始めた。



「うん? あの子達……」

 中年の男が雄志達に注目した。そして直ぐに魔法を使って魔物と戦い始める。



 陽翔の時とは違い厄介な魔物はおらず、数も少なかったのでケガ人を出すことなく魔物を倒せた。





「お前さん達も何も持ってない手から武器を出すんだな」

 中年の男が話かけてきた。

「えっと……」

 雄志達は突然声をかけられたので戸惑った。

「前にも何も持ってない手から武器を出した奴がこの町に来たんだよ」

「それって……」

「うん」

 椎菜と美春が互いの顔を見た。

 手引書によるとアーカイスには何もない空間から武器を出せる魔法は存在しないらしい。武器を出現させることができる人がいるとすれば四井達か陽翔しかいない。




「その人って勇吹君……ハルト・イサブキですか!?」

「そうだが……知り合いか?」

 中年の男は陽翔のことを知っていた。

「はい。私達、その人を探してるんです」

「そうか……」

「勇吹君がどこにいるか知ってますか?」

「トッシュに行くと言っていたが……」

 少し歯切れが悪い。何か言いたいことがあるようだ。





「トッシュ! あの……いつの話ですか?」

「確か10日くらい前だ。しばらくトッシュにいると言っていたから今もいると思うが……」

「やったね! 椎菜」

「うん」

 トッシュといえば椎菜達が向かおうとしている町だ。椎菜は自分の予想通り、陽翔がトッシュにいることが分かったので嬉しくなった。

「お前の予想が当たったな」

 と大知が国広に言った。

「ああ」

 雄志もまた、陽翔の居場所が分かったので嬉しくなった。





「あー……一応言っておくけど彼、記憶喪失と言っていたから、会ってもお前さん達のことを思い出せないかもしれない」

「え……」

 衝撃的な事実を知り雄志達はショックを受けた。中年の男を疑っているわけではないが、雄志達は信じたくなかった。

「本当なんですか!?」

「本人と連れの女の子が言っていたから嘘じゃない。ちなみにその女の子は俺の知り合いだ。信用できる」

 中年の男が喋っている時、椎菜が「女の子!」と叫んだ。

「俺の言うことは信じられないかもしれないが、まぁ会って確かめるといい」

「……」




 陽翔の居場所は分かったが、記憶喪失かもしれない。そんな不安を抱えながら雄志達はイグストを出てトッシュを目指した。


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