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テント君の冒険~点子ちゃんの星~

作者: 馬月 芭瑠

きいやああああああ。

まだお日様がほんの少ししか顔をだしていない早い朝、シーダの森の奥から、大きな叫び声が聞こえました。シーダの森に住む動物達は一斉に叫び声が聞こえてきた方を見ました。

あっちはてんとう虫一家が暮らす方。

叫び声の主はてんとう虫の点子ちゃんのお母さんでした。

「一体どうしたんだい、こんな朝早く。近所迷惑じゃないか。」点子ちゃんのお父さんが聞きました。

「点子の七つあるはずの星が一個消えてしまったの。」お母さんは答えました。お父さんもビックリしました。

でも、点子ちゃんは自分の背中を見ることが出来ないので、気にしていないようです。


さて、その事件は瞬く間にフキの森に住むテントくんの耳にも伝わりました。

実は、次の日曜にテント君と点子ちゃんは結婚式を予定しているのです。シーダの森と、フキの森から、たくさんの生き物達が集まる式です。

「よし、僕が次の日曜迄に点子ちゃんの星を見つけてこよう。」

そう言ってテント君は早速シーダの森の番人、フクロウネズミさんに、昨日の夜、何か変わった事がなかったか聞きに行きました。

「そういえば、昨日、日がくれる前に、西の村にいる犬がこの辺りを、クンクンと歩き回っておったぞ。」


テント君は西の村の犬に会いに行きました。犬は困った様子で家のドアの前に寝そべっていました。

犬はそばに飛んできたテント君に聞きました。

「ああ、ちょうどいいところに。ねぇ、きみ。僕の鼻に何かついてないだろうか?昨日から、なんだか鼻がムズムズするんだよ。」

「ドレドレ」

テント君が犬の鼻先に寄っていくと、なんと、点子ちゃんの星が鼻の頭にくっついていました。

「あっ、それ、僕が探していた大切な星なんだ。こんなにすぐ見つかるとは思わなかったよ。今、僕がはがしてあげるから、じっとしててね。」

そう言ってテント君が犬の鼻に止まりヒラリと星をはがしたその時です。

はぁはぁ、はぁくしょーん。犬が大きいなくしゃみをしました。

まぁ、大変。

ヒラヒラー。

クルクルー

テント君とせっかく見つけた点子ちゃんの星とテント君が吹き飛ばされてしまいました。

クルクルクルー。テント君の体は回転しながら、池の方に飛んで行きます。


池に浮かぶ大きいな葉の上でこれまた恐ろしく大きいなカエルがテント君が飛んで来るのを待ち構えていました。

テント君はどうやら、目が回ってしまって、自分の羽で飛ぶことができないようです。

もう、ダメ!!テント君早く目を覚まして!!


カエルが長ーい舌をテント君に向けて突きだした瞬間「ドボーン」と大きいな音がして、カエルは葉の上から池に落ちちゃいました。テント君はスイスイ気持ちよく泳いでいたアメンボさんの背中に落ちました。アメンボさんは頑張ってそのまま岸まで泳いでテント君を運びました。

「ねぇ、君、ついたよ。ここまできたら、もう安全だよ。」アメンボさんに声をかけられてテント君は、ようやく目を覚ましました。

「ありがとう、アメンボさん」テント君は羽をバタバタとしアメンボさんの背中から離れました。

びちゃっ。何処からか水滴がとんできました。

先ほどの犬が水浸しになった体をブルブルとふってその度に水滴を辺りに撒き散らしてます。

どうやら、犬が池に勢いよく飛び込んで、水面に浮かぶカエルをひっくり返したようです。

「犬さんも、助けてくれて、ありがとう」

「元々は僕のせいでもあるし。ところで探してた星はどこに飛んでいったんだろう」

また、犬がブルブルっと体をふりました。

「つめて。おい、そこの犬。さっきから水がかかって冷たいじゃないか。風邪ひいたらどうすんだよ。」

犬とテント君は同時に声のする方を振り向きました。

そこには背中に一杯針を背負った針ネズミがいました。針にはリンゴが刺さっていました。

「なんだ、針ネズミかの針坊か」犬と針ネズミは知り合いのようです。

「それ、また家の庭のリンゴだろ。」

「落ちてたリンゴだ。いいだろう。どうせ、落ちて、つぶれかけたリンゴなんて、食べないだろ。」犬と針ネズミが、言い合ってるところ止めて声をかけました。

「あ、あのー。針ネズミの針坊さん、そこからずっと、様子を見ていたのなら、おしえてください。点子ちゃんの星はどっちの方に飛んでいきましたか。」

「ああ、あの黒い星。それなら、ほれ、あそこに引っ掛かってるよ。」

針ネズミの視線の先に、蜘蛛の巣にからまった星が、太陽の光を受けて、キラキラひかってました。


パタパタ、ブーン。

テント君は、一目散に飛んで行きました。

「おおお、おい。待てよ!!!」

針ネズミの止める声が遠くからきこえましたが、テント君は夢中でした。

「あいつ…」


テント君は絡まった糸から、星をはがそうとしているうちに自分の体まで、蜘蛛の巣にベッタリくっついてしまいました。


ギョロ、ギョロ、大きな目をした蜘蛛が、獲物を察知しました。ギョロ、ギョロ。


「わー、どうしよう。今度は僕にもどうにも出来ないよ。」

犬さんはその場で、ワンワン吠えるしかありませんでした。


「おい、てんとう虫、これを受けとれ!!」

針ネズミは自分の体の針を一本抜いて蜘蛛の巣のテント君に向かって投げました。

ピューンと真っ直ぐに飛んで行く針。

テント君はうまく針をつかみました。


ピン、ピン、

自分の体にまとわりついた蜘蛛の巣を針でたくみに切り離していきます。


あぶない、あぶない。

危機一髪のところで、蜘蛛の巣から自由になったテント君。

点子ちゃんの星も、針を使って取り戻しました。



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