第5話 詰め所での朝食
不定期更新を予定してます。
「私こと地球の女神が~」のほうでは報告していますが、更新頻度がかなり落ちてます。
できるだけ頑張りますがかなーーーり遅くなりそうです。
朝日が差し込んできて、眩しさに思わず目を覚ます。体を起こして伸びをすると、体中がバキバキと音を立てた。
仮眠室のベッドは二段ベッドが二つあった。どちらも板に布を張り付けただけの簡単な作りでとても硬く、長時間寝るとご覧の有様だった。本当に仮眠用って感じのベッドだなぁ・・・
熟睡できるほどではなかったけど、野外で寝るよりかは眠れたんじゃないだろうか。
眠い目をこすりながら部屋の外へ出ようとすると、目の前でドアが開いた。
「おう、お前ら朝だ!起きろーぃ!」
昨日の門番のおっちゃんが部屋に入ってきた。目の前にいる俺には気付いてない様子なので、そっと横に移動する。
なぜかおっちゃんはエプロンを付けて両手にフライパンとおたまを持ってる。ずかずかと部屋に入ってきたおっちゃんがフライパンをおたまで叩きながら恒輝と凛を起こす。
「朝だぞーぃ!おーきろーぃ!」
「もう食べられないよぅ・・・むにゃむにゃ」
凛、それ昨日もやってたからな。何かを食べる夢しか見てないのかお前は。
「あれ、もう一人いなかったか?」
「ふわぁ・・・影吉なら隣にいますよ。」
あくびをしながら俺を指さす恒輝に釣られて、こちらを見てようやくおっちゃんは俺に気づいたようだ。
「おわぁっ!?いたのか!?」
「えぇ、ドアを開けたときには目の前にいましたけどね。顔洗いたいんですけど、どこで洗えます?」
「あ、あぁ、井戸なら外に出て裏に回ってくれ。」
いつものことなので軽く流して、外へと向かう。と、部屋を出る直前におっちゃんに声をかけられた。
「いけね、忘れるところだった。顔洗ったら朝飯用意してあるから、それを食って教会に行くぞ。」
「分かりました。恒輝、凛、お前らも顔洗えよー。」
「うぃー。」
「ふぁーい。」
顔を洗った後、おっちゃんが用意してくれた朝食を食べることになった。
あ、だからエプロンなんかつけてたのか。おっさんがエプロンつけてるとか何の罰ゲームかと思ったけど、飯食わせてくれるなんておっちゃんいい人だな。
朝食に出てきたのは、黒くて硬いパンと目玉焼きとコーンスープだった。
黒くて硬いパンはそのままだと食べれないくらい硬かったけど、スープに浸してから食べるとそれなりに美味しかった。
目玉焼きの卵は、詰め所の裏にあったニワトリ小屋にいた鳥の卵だろう。さっき顔を洗いに行ったときに見つけた。でもあれ、明らかに鶏じゃないんだよなぁ・・・ちょっと聞いてみるか。
「裏にいた鳥は何て名前ですか?」
「ウーだな。」
「あぁ、ごめんなさい。付けた名前じゃなくて、種類が聞きたかったのです。」
うん、きっと質問の仕方がわかるかったんだ。意図が通じなかったからあの鳥に付けた名前を言ったに違いない。そう自分に言い聞かせる。
「? あの鳥の種類がウーだぞ?寒村だったり、常夏の国でも飼育されている栄養満点の卵を産んでくれる鳥だ。お前らの故郷にもいるだろ?」
おっちゃんの言葉を聞いて、スープに浸したパンを美味しそうに食べている凛と目玉焼きをナイフとフォークで綺麗に食べている恒輝の首根っこを掴んで部屋の隅に移動する。
凛が恨みがましそうな顔をしていたけど、そんなのを無視しておっちゃんに聞こえないように小さな声で二人に話しかける。
「あのおっちゃんの話で確信を持ったから言う。俺たちはたぶん異世界に来てる。」
「い、いせか・・・ふがぃっ!?」
大きな声を出しかけた凛の口を慌ててふさぐ。恒輝は「やっぱり?」みたいな顔をしていた。
俺と恒輝は割と趣味が合う。ゲームだったり、ラノベだったり、漫画だったりは大体共有している。
凛も割と一緒のものを見ることが多いけど、恒輝ほどではなかった。
そんな俺たちが最近ハマってたのが異世界転生モノのラノベだった。この状況はそういう物語の序盤とそっくりなのだ。
「まぁ、ゴブリンがいる時点で色々とおかしかったしな。」
見知らぬ土地、見知らぬ生物、謎の煙とファンファーレ、ゴブリンを倒すと出てくるビー玉、そしてトドメに知らない常識・・・どう考えてもファンタジーな世界です。本当にありがとうございます。
ここまで状況証拠が揃うまで確信を持たなかったのは、どちらかというと信じたくなかった、というのが正しいのかもしれない。
見知らぬ土地は当然異世界なので、知っている土地があるはずもない。
見知らぬ生物も異世界ならいてもおかしくはないだろう。
謎の煙はゲーム的に言えば経験値で、ファンファーレはきっとレベルアップ。
ビー玉は、魔石とか核とかそんな感じのドロップ品。
知らない常識は、この世界が俺たちのいた世界と違うルールがあるということ。
「ど、ど、ど、どうしよう!?」
「どうするもこうするも、まずは生活できる環境を整えていかないとな。そのためにもまずは水見の儀ってやつを受けて、この町に正式に入れるようになろうぜ。」
凛がパニックになりかけていたけど、俺の提案を受けて二人は頷いた。
提案と言っても「なるようになるしかない」って状態だし、まずは水見の儀ってやつからだ。
そうと決まればテーブルに戻ってスープが温かいうちに朝食を済ませなくては。