第4話 潔白証明の儀
不定期更新を予定してます。
一週間に一度は更新したいと思ってマス。
大きなトラブルはなかったけど、森の中では何度かゴブリンと遭遇した。
その時に出発前に作っておいた簡易槍がさっそく役に立った。
いつも通り恒輝と凛がゴブリンの気を引きつつ、槍を振り回していると偶然凛の槍がゴブリンの脳天を直撃した。
のたうち回るゴブリンに恒輝が意を決して、トドメをさした。
ちょっと恒輝の顔が青くなっていたけど、特に問題はなさそうだった。
このときはじめて俺以外の誰かがゴブリンを倒したのだけど、案の定ゴブリンは煙になって二人に吸い込まれていった。
注意深く観察していた俺は、恒輝に入っていった煙のほうが凛に入っていった煙より多いことに気づいた。
「あー、恒輝が言ってたファンファーレってこれか。」
「え、何か聞こえたの?私何も聞こえなかったよ!」
予想していた中で一番最悪のパターンが現実味を帯びてきて頭を抱えそうになったけど、とりあえず目の前にいるゴブリンの首を切っておいた。
でもこの戦いでコツを掴んだのか、恒輝と凛はただゴブリンの気を引くだけじゃなくて、槍で攻撃するようになった。
・・・凛の場合はただただ槍を振り回してるだけな感じもするけど、なぜか的確に頭だったり、武器を持った手だったりに当たってるんだよなぁ。
森が夕暮れに染まるころ、ようやく森を抜けだすことができた。
最悪野宿ができるように食料や道具は集めておいたけど、野宿しなくて済むならそれに越したことはないだろう。
あたりを見渡すと、ちょっと離れたところに町があることに気づいた。
「あっちに町があるみたいだ。とりあえずそっちのほうに行こう。」
「了解であります!隊長!」
「だから隊長はやめぃ!」
30分ほど歩いてようやく街にたどり着いた。
平原は森と違ってゴブリンは現れなかったけど、何か変な水たまりがあった。
水たまりにしては透明度が高かったり、ちょっとこんもり盛り上がってたりしてたのだ。特に気にせずスルーして進んだけど。
町の前には門番らしき人が立っていた。
中世の甲冑とまではいかないけど鎧を着ていて、手には槍を持っていた。
「止まれお前たち。身分を証明するものはあるか?」
「えーっと・・・学生証でいいですか?」
門番から尋ねられて恒輝が答える。
基本的に人とのやり取りは恒輝が担当している。というか俺は基本気づかれない。
「ガクセイショウ?なんだそれは?」
「これなんですけど・・・」
「うーん?読めないぞこれ。」
学生証を持った門番は上下をさかさまにしたり裏返しにしたりするものの、書いてあるものが読めなかったようだ。
このやり取りを見て、俺の予想はほとんど確実なものになった。
「あー、すみません!私たち旅人なもので、身分を証明するものがないんですがどうしたらいいでしょうか?」
「うわっ、びっくりした。なんだもう一人いたのか。」
恒輝の横から声をかけると門番が激しく驚いていた。やっぱり気づいてなかったみたいだ。
普段俺が人に話しかけるなんてそうそうないので、恒輝と凛が「どういうこと?」と不思議な顔をしているが、気にせず門番と会話を続ける。
ここで選択をミスってしまえばこの門番の人・・・いやこの町の人が敵になる可能性もあるからだ。
「ふむ。そうなると簡易的ではあるのだが、手続きをいくつかしてもらわねばならない。具体的に言えば『潔白証明の儀』と『水見の儀』だな。」
「『潔白証明の儀』と『水見の儀』?」
『潔白証明の儀』はなんとなく予想がついた。
たぶん罪を犯したことがある人が引っかかるような何かで判別するのだろう。
でも『水見の儀』はよくわからない。
「『潔白証明の儀』は門の詰め所でできるんでこっちにきてくれ。説明するよりやってみせたほうが早い。」
そういうと門番の人は歩いていく。
ほかにどうしようもないのでついていくと派出所みたいな建物が門のそばにあった。
「適当に座ってくれ。よっと、これが『潔白証明の儀』に使う水晶だ。これに手をかざしてくれ。」
恒輝、凛、俺の順で手をかざしていく。全員真っ白だった。
「オッケーだ。これでお前らは犯罪者じゃないことが確認できた。」
「犯罪者だったらどうなるんですか?」
「おう、レディーいい質問だ。食い逃げなどの軽犯罪者は黄色、盗みなどの犯罪者は赤色、殺人などの重犯罪者は黒に染まるんだ。」
あーよかった。ゴブリンはカウントされないみたいだ。
ゴブリンの集落から色々持ち出したりゴブリンを殺しまくったから少しひやひやしてたけど、本当に良かった。
二人は気づいてないみたいだけど、俺たちがいるスペースの床はよく見るとうっすらと切れ目がある。
犯罪者が混ざってたら某モノマネ選手権よろしく床がパカッと開くだろう。
下に何があるかわからないけど、碌な目には合わないだろうなぁ。
「さて、ここまでやっておいてすまないが、今日はここで一晩過ごしてもらってもいいか?日が暮れてからは中には入れないんだ。」
太陽は門の前で話をしているうちに沈んでしまっていた。
この詰め所には仮眠室があるらしく、そこを貸してくれるということだった。
とりあえず野宿じゃなかっただけありがたいと思うことにして、申し出を受け入れることにした。