第2話 ゴブリンの集落
不定期更新を予定してます。
一週間に一度は更新したいと思ってマス。
しばらく歩いていると、少し開けたところに出た。
森の中にあるちょっとした広場のようなそこにはいくつか建物があった。
木の枝を組み合わせて作った、テントのような建物は全部で八つ。
そして広場にはさっき見たゴブリンと同じような奴らが何匹かいた。
「あー、もしかしてあれがさっき言ってたゴブリンみたいなやつ?」
恒輝が確認してくる。ちょっと涙目のようだ。
「そうそう。あれが2匹いた。」
俺もたぶん若干涙目だと思う。
「建物みたいなのからどんどん出てくるね・・・」
凛がほぼ泣きそうな顔をしていた。
ゴブリンたちは全部で20匹くらいはいるだろうか。
メスっぽいのとか、オスっぽいのとか、子供っぽいのとかいるけど、みんな揃ってこん棒やら石でできた斧を持っていた。
明らかに歓迎するために出てきたわけではないだろうなぁ。
「はぁ・・・とりあえずいつも通りにいきますわぁ・・・」
ため息をつきながら、恒輝と凛のそばから離れていく。
「すまんが頼む!凛は任せろ!」
その声を聞いて、俺はゴブリンたちへと近づいていく。
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橘凛はトラブルを呼び寄せる体質だった。
小さい時から一緒に遊んでいた俺と恒輝は毎回のように巻き込まれていた。
凛が道を選べば、不良に絡まれ、事故にあいそうになる。
凛と旅行に行けば、乗り物は故障し、何かしら事件に巻き込まれる。
その中でも、小学生の時と中学生の時に大きな事件があった。
小学校の時は、凛と恒輝が誘拐された。
三人で遊んでいた俺たちを狙って、身代金目的の男たちが攫って行ったのだ。
一緒に遊んでいたのに気づかれなかった俺は攫われる凛と恒輝と一緒に自ら車に乗り、犯人の後ろについていって一緒に誘拐犯のアジト(廃墟となった病院)に入った。
気づかれないままついていった俺は二人が閉じ込められた部屋の鍵を誘拐犯のポケットから盗って、誘拐犯が脅しにつかっていたナイフを使って、二人を縛っていたロープを切って、二人を連れて脱出した。
ちなみに誘拐犯がいた部屋には普通に入ったし、ナイフも誘拐犯の目の前のテーブルにあった。
脱出した後に派出所に駆け込んで、助けを求めて、誘拐犯は無事逮捕された。
中学の時は、凛が貯金箱の貯金を銀行に預けたいと言い出して入った銀行で強盗事件に巻き込まされた。
俺たちの後から入ってきた覆面の男たちが銃を発砲しながら、銀行を占拠した。
爆弾と、いくつかの銃器を使って、大人子供関係なく脅して、従えさせた。
しばらくの間、犯人の指示に従っていたけど、気づかれていないことを確認してからは一人で行動し始めた。
犯人たちが持ち込んだ爆弾らしきものの起爆装置をこっそり盗ったり。
荷物の中に入っていた予備の銃や弾薬を外に放り投げたり。
見取り図と強盗犯の立ち位置を書いた紙を外に設置されていた警察の対策本部の机に置いたり。
警察の突入のタイミングに合わせて覆面を180度回転させて強盗犯×3の視界を遮ったりした。
その結果、夜には家に帰ることができ、美味しいカレーを食べることができた。
大きい話はこんなところだけど大なり小なり、凛が選んだ選択肢は必ずトラブルにつながっていた。
俺と恒輝はできるだけそうならないように、凛に選ばせないように心掛けていたけど、今回は不思議な出来事が多すぎて頭から抜け落ちていた。
今回のゴブリンの集落にきてしまったのも、凛が進む方向を選択してしまったのが原因だろう。
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恒輝と凛は森の中を走っている。
迷わないように、と俺があらかじめ木々につけていた目印をもとに、来た道を逆走していく。
ゴブリンの姿はもう残り5体ほどになっていた。
二人が撒いたわけではなく、ゴブリンを俺が後ろから順に倒していったからだ。
親にも気づかれないときがあるほど、俺は影が薄い。赤の他人ならほぼ間違いなく俺の存在に気づかれない。
そうであるが故に、昔遭遇した二つの大きな事件は解決できたのだけど。自動ドアは開いてくれないし、かくれんぼをしたら隠れていることを忘れ去られて置いていかれるけど・・・
そんな俺を恒輝と凛は気づいてくれる。
だから俺たちはこういうトラブルが起きた時に決めてることがある。
目立つ恒輝とトラブルを呼び寄せる凛が囮に、影の薄い俺がすべてを片付ける。
今回も二人が逃げてるのを追いかけるゴブリンたちを俺が後ろから気づかれないように始末していく。
いつぞや不良に絡まれたときも似たようなことをしてる。命のやり取りはなくて、脅すだけだったけど。
人ではないゴブリンなら・・・まぁ凛と恒輝の安全を優先するさ。
途中で何回かファンファーレが聞こえてきたけど、気にせず作業を続ける。
ゴブリンに追いついては首を切る。ゴブリンに追いついては首を切る。
元いた場所に戻るころに、やっと最後のゴブリンの首を切って安全を確保できた。
こうして俺たちはトラブルを経て、ふりだしに戻った。