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定年退職したからVRMMOをはじめてみた2.0  作者: ぐわじん


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16/44

16、ダンジョン

修正前との比較

ほぼ追加

あとがきにオマケ

 ん? 目の前に洞窟がある。ダンジョンかな? なんの準備もしてないけど、ちょっと覗いてみるくらいありかも知れない。

 洞窟の前に立つ、入口はかなり大きい。高さ三m、幅三m位の広さがありそうだし、これなら槍でも中で戦えそうだ。入口の横には看板が立っている。


「怪物出るので危険です、オークが多くいます。でもお宝があるかもよ」

 注意を促しているのか、誘っているのか全然わからん。まあ多少危険かもしれないが、どうせ死んだって復活出来るんだから中に入ることにする。ランタンに明かりを付けると火種は残り二個になった。あと六時間分だし十分足りるだろ。


 洞窟は自然な感じの作りで、ところどころ、天井、壁、地面に穴が開いている。そこに槍を突っ込もうとしても入らない。絵というのではなく、バリアでもあるような感じだな。

 プレイヤーは入れないけど、敵は出てくるという設定かもしれない。となると行きに敵がいなくても、帰りには敵がいる可能性があるね、だとするとやっかいだな。


 少し進むと洞窟は左に曲がり始めた、そのまま進むと今度は右に曲がる、そして振り返ると真っ暗です、出口が見えません。

 洞窟なんて入ったことないし、今のこの世の中真っ暗な場所なんて無いから段々と不安になる。洞窟の上から水滴が落ちて顔に当たった。


「あひゃーー」

 思わず変な声が出てしまった。まだ百mも進んでいないが帰りたくなる。しかし折角入ったのだし、何らかの敵なりイベントなりが起きないと勿体ない気がする。

 更に数十m進んだところで、奥から、キィキィ声が聞こえる。洞窟といえばあれだろな。バサバサバサバサという羽音と共に何十匹というコウモリが向かってくる。

 

 コウモリが私の周りを飛び回り、私に体当たりしてくる。ダメージは殆どないが生理的に嫌だ。


「ウァアアァーヒィーー」

 何匹かのコウモリが体にまとわりつく、思わず十文字槍を落として体に付いたコウモリを手で払う。

 背中に痛みが走り、HP急激に減り始めた。背中に付いたコウモリがどうやら血を吸っているようだ。視界の隅に赤くて丸い円の中に、心電図のようなマークが表示されて、波打っている。

 洞窟内に寝転んで何度も体を回転させる。ゴロゴロ、ゴロゴロ。


「キィー!キィ!」

 悲鳴と思われるような鳴き声とともに、体で押し潰されたコウモリがヒクヒクしているのが見える。どうやらHPは少ないようだ。転がりながら槍を拾い、無茶苦茶に槍を振り回す。

 十文字槍の刃にコウモリが当たって羽が傷ついたのか、どんどん地面に落ちてバタバタしている。飛んでいるコウモリは数匹? 羽? になり、大分落ち着いてきた。

 あー気持ち悪い。とりあえず地面のコウモリを刺しまくる。飛んでいるコウモリはどこかに消え去ったようだ。


「フレーダーマウスを倒しました。経験値六百が入りました」

 うーんマウスなの? バットやコウモリだと思ってた。でもこのゲームの製作者は名前の統一性が無いから何語か気になる、いや造語の可能性もあるな、が、今は死体を剥ぎ取ろう。

 死体は二十匹? 羽? あって、とりあえず匹にしよう、一匹からは、コウモリの牙、コウモリの羽が二個ずつ手に入った。よく見ると服に黒くて丸いものが沢山付いてる。


コウモリの牙……コウモリの牙


コウモリの羽……コウモリの羽


コウモリの糞……毒性がある、何に利用するかはあなた次第です


 何これ、説明怖いんですけど。でも役に立ちそうだなポシェットにしまっておこう。しかしフレーダーマウスなんだよね? どうしてコウモリなんだろうな。

 心電図のマークは消えていた。現実世界の体で脈拍などに異常があった場合表示されるもので、一定以上の値になると自動的に強制ログアウトとなる。その場合このキャラクターはこの場で放置されるので、大抵は死ぬだろうな。

 椅子の開発チームが驚いているかも知れないな、終わったら一報入れておこう。しかし気持ち悪かった。


 更に奥に進むと奥から走ってくる音が聞こえる。ドド、ドド、ドドオ……。かなりまずい気がする。槍を前に突き出し腰を落として待ち構える。

 猪だ、猪が数匹見えた、槍の正面に来た猪はそのまま刺さる、突進してきた力で少し押し戻される。残りの猪はそのまま洞窟の外に向かって走っていった。


「ヴィルトシュヴァインを倒しました。経験値が三十入りました」

 うーん多分ドイツ語だろう。経験値が普通の猪とは違うからワンランク上の猪なんだろうな。剥ぎ取ると猪肉が八個、猪の皮が二枚入った。

 しかし、あのまま他の猪に突進されていたらやばかったな。なんで攻撃して来なかったんだろう。


 少し進んだところで、少し広めの部屋に付いた。正面に二つ、左右に一つずつ道が続いている。背後には私が来た道があるので、五差路(ゴサロ)だ。

 右の道の前には箱が置いてある、宝箱っぽい。もしかしたら罠があるかもしれないので、槍でつついてみるが何も起きない。箱の蓋には若干の隙間があるので、槍の刃を差し込んで開けてみる。

 特に罠はなく、中にはマールが入っている。


「一万マールを手に入れました」

 おおーこれは嬉しい、洞窟に入った価値があったな。マールはいっぱいあるが、現実世界でも想定外で一万円貰ったと思ったらそれは嬉しいよね。お詫びの一万とは違った一万だね。

 しかし、なんでマールが手付かずでこの場所にあるんだろう? 私以外今までに誰も来なかった? 誰かが無くなったら置きに来ている? うーん不思議だな、まいっか。


 さて、どこに進んでも良いが、迷った時にはハジメ会議かな、いやハジメ会議をするほどでもないな、通路の先が何か分からない状況では選択するメリットが思いつかないので会議のしようがない。

 右の通路の前まで来たのだからこちらの方に進もう。テクテク、テクテク、歩いていると段々と道が細くなってきて、天井が低くなってきた。

 まだ進めるしもう少し進もう、テクテク、テクテク、ん、また正面から大きな音が聞こえてくる。思ったとおり猪だった。一匹だけ倒して残りは通り過ぎていった。なんで残りは通過するだけなんだろうか?


 更に前に向かって歩と前から明かりが見えて、段々と近づいてくる。緑色の肌をした筋肉ムキムキの露出高めで、原住民のような模様を体につけた集団だ。

 多分入口に書いてあったオークだな、この狭さを上手く活用出来して、後ろに廻られないようにしよう。五m位の距離で睨み合う。


「「アースワーク」」

 オークの何体かが魔法を唱えると、オークの前からこちらに向かって、地面の下から土の壁がニョキニョキ生えてきた。私の左右に高さ一.二mくらいの土壁が出来た。壁は私の後ろにも数mくらい続いているに様に見える。

 オークの順番が入れ替わって弓を構えるのが見える。ビュンビュンビュンビュン、矢が沢山飛んできているのが見えるが避けようがない。どんどん体に刺さっていく。

 HPが赤くなったところで弓が終わった。前を見ると先ほど出来た壁の上を走ってくるオークが見える。槍を出して牽制しはじめたら、


「アースワーク」

 私がいる場所にも土壁が出来て、体制を崩しながら土壁の上に乗り、壁のうえで両手を付いてワンワンスタイルになる。正面を見ると棍棒が見えた。壁の上を歩いてきたオークの一撃で


「最寄りの村に戻りますか? はい いいえ ※注意:LV十までは死んでもデメリットはありません」

 ”はい”を選択して街にもどる。やっぱ無理か、初期村から二つも先の街のダンジョンだしな。今度は他の人とPTを組んで来ようと考えて……PTを組めるほどの知り合いがいない! グハー、余計な精神的なダメージを喰らった。

 一番仲が良いといえば、ローラントだがNPCだし店があるだろうし、次がエルドワかなー、これもNPCだし小さい子? を連れて行きたくない。

 そういえばエルドワって幾つなんだろう、ドワーフって背が低いから実は成人て可能性もあるな。



 ちょっと気力が萎えたので、一旦休憩にしよう。エールラーケの門の外で、猪肉を一個だけ五百マールで売りに出して、放置露店する。一旦ログアウトするとログイン出来ない可能性があるからな。あれ? だとすると誰もちゃんとログアウトしなくなるんじゃないか?


オマケです。ハジメ会議が気になった方に。

凄い昔の過去例ですが、どうぞ。



 外出先の帰りに、ココナーージーーというケーキ屋さんの看板が目に入った。


「ケーキ全品二十%OFF」

 この一言でケーキを買うことを決めた。問題はなんのケーキを買うかという事だ。私はチョコレートケーキが好きなので、大抵はガトーショコラだ。希に季節限定のチョコレートケーキを買うことがある。

 しかし、モンブラン、渋皮栗のモンブラン、紅芋のモンブラン、が目に入る。そう私はモンブランも好きなのだ。悩む、悩む、こういう時に甘い囁きをしてくる悪魔や天使が皆にも居ると思う。いやいるんだよ、私にもその声が聞こえる。


「何を悩むことがあるんだい。ガートショコラと渋皮栗のモンブランを買えば良いだろ、安いんだし二個買っちゃえよ」

 悪魔ハジメが耳元で囁く。安いんだし二個でいいよね、と思っていると、別の声が聞こえる。


「そうだよ、ソイツの言う通りだよ。迷うことはない、限定の紅芋も一緒に買っとけばいいさ」

 確かに食べたいんだから三個買えばいいかなと思っていると、別の声が聞こえる。


「早まるな! そこにミルフィーユがあるじゃないか、それだって好物、差別はダメだろ。それも買っちゃえよ」

 なるほど、確かに差別は良くない、この四個を買おう。ここまで悪魔ハジメたちの言葉に惑わされていた私に天使ハジメのやさしい声が聞こえる。


「よく考えなさい、一度にケーキを四個も食べれる訳がないでしょう。一度に食べれるのは二個が限度、という事で、奥さんの分も合わせて四個買うのです。少しずつシェアすれば四種類食べれるじゃない」

 なるほど流石は天使だ、説得力があるな。よし、じゃあこの四個を買おうと思うと、それを遮る声が聞こえる。大天使ハジメだ。


「奥さんの好みはイチゴのショートケーキやフルーツタルトなどの果物が入っているものです。今選んだものは全て自分好みの物ばかり、それでは駄目です。

 それにケースの端を見なさい。ジャンボシュークリームは百二十円で最初からお得なのに、それも二十%OFFですよ。

 という事で、ショートケーキ、フルーツタルト、ジャンボシュークリーム二個を買うべきです。


 そして自分のために先ほどの四個を買って、今日はケーキ二個をシェアして食べて、明日はケーキとシュークリームにしなさい」

 それを聞いた悪魔達が、


「おまえそれでも天使かよ」「より酷くなってるじゃねーか」

 など、言い合いを始めた。ハジメ会議の始まりだ。

 悪魔達は出費の大きさを軸に論理を展開し、天使達は食べた時の幸せを主張して争っている。

 最終的に大天使ハジメの言い分が通り、ケーキ六個とシュークリーム二個を買って帰り、奥さんに買いすぎだと怒られた。


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