表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/11

第9話 Who are you?




Obsidianのライブから数日が経った。

真樹と翔は仕事。有希は高校に、日向は大学へと出かけている。

医大生であるという昌だけが、家に残っていた。

正確に言えば、管理人である萌奈美も居る。

そんな中、昌は、自分の疑問を解決すべく、萌奈美の部屋の扉を叩いた。


「どうぞ」

短く聞こえた返事に、昌は扉を開く。

「どうかされましたか?」

画面に顔を向けたまま、萌奈美が尋ねる。

「ああ、お前に確かめたいことがある。」

扉のところで立ち尽くしている昌に、萌奈美が視線を向ける。

「座ってください。」

自分の手前にある椅子を指す。

「それで、確かめたいこととは何でしょう」

いつも通り、淡々と用件だけを問う。

「お前に誘導なんざ通用しねえだろうから、単刀直入に聞く。」

昌がかけている眼鏡をぐっと上げ、萌奈美を見つめる。

「お前────ミラ、だろう」

萌奈美の表情が、少し揺らぐ。

「そうですけど。よくわかりましたね」

それも一瞬。

「もう4ヶ月も顔見てんだ。変装したくらいでわからないわけがない」

昌がフッと笑う。

「変装、ねぇ……」

萌奈美がニヤッとした。いや、した気がする。

「あ?なんだ、今のほうが変装だとでも言いてえのか?」

昌が凄む。鼻で笑われたような感じがして、気に食わなかった。

「まあ、私がミラだったらなんだというのですか。バラしたいのならどうぞバラしてくださいよ。─────────『陽蘭』の元総長さん」

昌がビクッとする。

「手前ェ……どっから情報仕入れた」

萌奈美が微笑む。今日は、表情がある。

「どこからって、ここから」

愛用のPCをポンポンと叩く。

「管理人ですから、ね。皆さんのことはある程度分かりますよ」

だからと言って、と萌奈美は続ける。

「別に、それをどうこうするつもりはありませんから。」

「面白い奴だな、お前」

昌が肩の力を抜いた。陽蘭とは、何だろうか?

「お前じゃありません、萌奈美です。昌さん?」

挑発するように萌奈美が言う。

「わかった、萌奈美」

さん付けとかやめろよ、昌が足を組む。

「おま、萌奈美さ、何でいつもと性格違うんだよ」

「何でって、面倒だから?」

萌奈美が首を傾げる。

「昌には自分作ってもバレるみたいだし、諦めた」

悪戯っ子のように萌奈美が笑う。

「知ってたか?日向と翔の奴、Obsidian?のファンらしいぞ」

それを聞いて、萌奈美が困ったといった顔をする。

「そりゃあ、バレたらまずいな。黙っといてくれ」

口の悪い奴だ、と昌が思う。

「お前次第、だな」

「は?」

萌奈美が眉間に皺を寄せる。

「俺の前では性格作るなよ。」

条件だ、と付け足す。

萌奈美がああ、と言う。


────────人間らしいところもあるんじゃねえか。

何だか満足したような気分に陥り、昌は自室へ戻った。


「こんなところに、後輩がいるなんてな…」

作られた黒髪の彼女の呟きは、聞こえない。




2人の過去が繋がっていることは、まだ昌は気づかない………

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ