第7話 朝帰りなんて許しません
午前7時半。
萌奈美が遼に連れられて家を出た次の日である。
今日は祝日。
普段であれば、皆、まだ朝食をとっているであろう時間帯。
しかし、彼等は食事をしていない。
無言で、リビングに集まって座っている。
萌奈美が、朝になっても帰って来ないのだ。
共同生活の上で、他の住人──ましてや、管理人の私生活に首を突っ込むのはご法度だ。
それなのに、なぜだか彼等は萌奈美の帰りを待っている。
「ただいま帰りました。」
萌奈美の声とともに、ドアの開く音がする。
リビングに緊張が走る。
「萌奈美、ちょっとここ座れ。」
萌奈美がリビングに入ってきて、まず口を開いたのは真樹だった。
不思議そうな顔をして、萌奈美が真樹の前の席に着く。
「どうかしましたか」
目や髪の色は普段のものへと戻っている。
相変わらず、動揺することもなく、迷惑がった様子を見せることもなく、淡々としている。
それに、反して、真樹は足を組み、指を絡ませた手には力が入っている。
皆同様に、なんだか落ち着かないようだ。
「お前、あの男とどこ行ってたんだ?無断外泊は禁止だろうが。」
そう、神谷荘では無断外泊禁止という決まりがある。
「すみません。仕事があったもので。以後、気をつけます。」
それだけ言い、萌奈美は部屋と戻った。
「はぁ……。」
真樹が溜息をつく。
「まあ、萌奈美ちゃんにも仕事とかいろいろあるんだろうから、あまり干渉するのはやめよう。」
翔が微笑む。
「でも、翔さんは気にならねえの?モナとあの遼とかいう奴の関係。」
有希が不服そうに言う。なぜだか、子供みたいに不貞腐れている。
「他の住人の私生活には首を突っ込まない────それがここのルールだ。」
昌が珍しく口を開く。チラッと真樹や有希、日向の方を向く。
わかった、というように、3人が溜息をつく。
『でも気になる』
口ではどう言おうと、性格があまり似通っていない神谷荘の住人たちの気持ちがこれほどまで一致したのは初めてであろう。