第6話 管理人の素顔
「ボス!お疲れ様です」
暗い部屋の中。
一人の黒ずくめの女に、その場にいる者達が頭をさげる。
「ああ。私がいない間に何か変わりはあったかい?」
女が、被っていたフードを取る。
「モナミ、何もなかったらわざわざお前の手を煩わせたりしねえよ。」
そう。女は萌奈美だった。
ただ、いつもと違う。
目は青く、眼鏡もかけていない。
腰まである艶やかな黒髪は、綺麗な金色に変わっている。
何より違うのは、表情があること。眉を寄せ、何かを考えている。
「遼、何があったんだ?もしかして…」
机に、遼が腰をかける。
「そう、そのもしかしてだ。昨日の夜、どこの奴かはわかんねえんだが、奇襲をかけられてな。下っ端がやられた。
向こうは、お前を出せと言ってきてんだ。
───────────────────────どうする?」
「お前はどうして欲しい?」
萌奈美が顔をあげ、逆に問う。
遼が立ち上がり、フーッと息を吐く。
「俺は、俺達は、お前には出て欲しくない。
でもな、どうやら、お前の普段の姿がバレちまってるらしいんだよ。」
遼が写真を取り出す。
そこには、日向と買い物に出かけた時の萌奈美の姿が写っていた。
「あいつらの様子を見ると、確信は取れてねぇみてぇだが、バレるのも時期だろう。」
萌奈美の口角があがる。
「…おかしいな。あの場所は、遼とおじ様しか知らないはずだぞ?
まあ、心配するな。放っておけば次期に忘れるさ。」
その妖艶な微笑みは、彼女の思考を隠した。
「話は変わるが、久しぶりに、音楽がしたくないか?」
マフィアなんてそうそういるものか。
しかも、22やそこらの若い女の子がボスだなんてあり得ない。
世間一般の人はそう思うことであろう。
しかし、これがあり得てしまったのだ。
しかも、萌奈美達のグループは業界でもトップクラスときたものだ。
あり得ないことがあり得てしまっている。
それは、神谷萌奈美の存在そのものである。
彼女の素顏。
それは、最強マフィアの正体不明の女ボスであった───────────────────────────