第3話 フェロモン王子の憂鬱
風変わりな管理人、神谷萌奈美が現れてから、約1ヶ月が過ぎた。
俺────────紅月真樹は、あいつも他の女と同じだろうと思って、皆に一つ賭けを持ちかけた。
それは、《誰が最初に神谷萌奈美を落とすか》。
有希はもちろん、普段だったらあまり乗り気にならない日向や翔まで乗ってきたもんだから驚いたわ。
昌は知らねえが、これで、俺達のゲームが始まった。
勝算は十分にある。
女は、愛想振りまいて優しくしときゃ落ちる。俺はそう確信していた。
あいつは、萌奈美は違った。
毎日の様に肩を抱き寄せたり、頬にキスしたりすりゃ、ころっと落ちると思ってたが、萌奈美の場合は無関心。
俺が何をしようが、表情一つ変えやがらない。
自分の部屋で仕事しているみたいだから部屋に押しかけて褒めちぎってもシカト。
まるで、俺の存在になんて気づいていないかの様にPCの画面に向かっている。
俺の方を向いたかと思えば、「用がないのなら出て行ってください。」ときたもんだ。
こりゃあ、かなり厳しいな。
俺は部屋からでる瞬間、萌奈美が眼鏡を外したのを視界の端に捉えた。
大きな黒い目には、何かを決意した様な強い意思が感じられた。
色白なその顔立ちには、日本人離れした西洋の美しさがあった。
不覚にも目が奪われた。
ゲームとか関係なしに、彼女を自分のモノにしたい。
彼女の一切変わらない表情を、俺が崩したい。
そんな欲望に駆られたのは、俺だけの秘密。