白のピース
パチンパチン...
放課後の廊下に何か音が響いた。その音は教室からこぼれている。中を覗くと腰まで伸ばした黒髪を片手でいじりながら机に向かっている女子がいた。
「柳瀬?何してるんだ?」
俺は好奇心に話しかけてみた。すると女子…柳瀬亜樹は振り返ってフッと笑った。そして再び机に向かう。
「パズル…」
「パズル?」
俺が近づくと机の上には何の絵も描かれていない真っ白のパズルのピースが散らばっていた。
柳瀬はそれを一つ一つ手に取ってはめてゆく。
「これ…何もないじゃん。こんなので分かるの?」
「ねぇ…パズルって面白くない?」
「は?」
俺は質問に答えない柳瀬の態度や全てにイラついて思わず声を荒げてしまった。
流石に学年から孤立してる奴とは付き合えないと思い教室を出ようとすると柳瀬が声をかけてきた。
「斎藤くんだっけ?コレ見てどう思った?」
「どうって…つまんないなって…」
俺が答えると柳瀬は「ふーん」と言って一つピースをつまんで見せた。
「何?」
「このピースと同じものは世の中に存在しないんだよ。分かる?」
俺はその言葉に首を傾げた。何言ってるんだこいつ…と思いながら首を横に振る。
「私はね、パズルは人間関係と同じだと思うの。性格があう人もいれば合わない人もいる…パズルも同じじゃない?」
「じゃあお前は?どなピースなんだよ。」
俺が挑発して言ったのを知ってるのか柳瀬は少し悲しそうな顔をした。そして白のピースの中から一つうっすらと色のついたものを手にした。
「コレ…かなぁ…コレだけはどんなピースとも合わないの…ゆるかったり取れなかったり…私もそうなのかな?」
そう言った柳瀬は泣きそうな顔をしていた。
今柳瀬は足を怪我している。だが誰も彼女を心配するような事はしなかった。哀れむ目で見るだけで上り下りがキツそうな階段で手助けなどしなかった。
「あっそ。」
俺はぶっきらぼうに言い捨てると教室を出て行った。