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酔って寝た友人の背中に、彼女ではない名前を落書きした

作者: いちは

4年前、酔いつぶれてしまった友人の背中に丸文字で落書きした。


「浮気しちゃぃやョ!! カォリ」


仲間5人で爆笑しながら、彼の背中の写真を撮った。


数日後。

友人は彼女と非常に険悪になった。

彼女は背中の落書きについて、彼を問い詰めてはいないようだった。

女のプライド、だろうか。

落書きのことを、俺たちは彼には言いだせなかった。


さらに数日後。

友人は彼女と別れるかもしれないと言いだした。

彼には、彼女の不機嫌の理由がさっぱり分からないようだった。

それもそうだ。

この状態になって、俺たちも動揺し始めた。

3年近く付き合ってきた二人を、破局に導こうとしているのは、

俺たちの悪ふざけの落書きだったからだ、多分。

いや、多分じゃないか。


数週間後。

合コン三昧の彼がいた。

半ばヤケッパチに遊びまくる彼を見て、俺たちは胸を痛めた。

合コンで酔いつぶれた彼の背中に、

「ゴメンよ」 「許してくれ」 「すまん」 「申し訳ない」 「カオリ」

と寄せ書きをした。

そして、やはり爆笑しながら写真を撮った。


数ヵ月後。

元彼女は、やはり耐えきれなかったのだろうか。

「カオリって誰よ」

と彼を問い詰めたらしい。

その時になって、彼は初めて気付いたのだった。

俺たちの落書きに。

だが、彼は俺たちに対して怒らなかった。

彼女に対して言い訳もしなかったようだ。


4年後、つまりつい最近。

彼と彼女から、結婚式の招待状が届いた。

結婚式に参加した俺たち悪い友人5名。

披露宴での出し物は、誰が言いだすともなく決まっていた。

フンドシ姿にTシャツでステージに上がる俺たち。

一気にTシャツを脱ぎ捨てて、新郎新婦に背中を向けた。

背中には、お互いにマジックでデカデカと書いた、


「お」 「め」 「で」 「と」 「う」


彼だけが大爆笑。

不思議そうな新婦に、彼が顔を寄せて何か話していた。

みるみるうちに泣き出して、それから笑いだして、半泣き半笑いの彼女。

きょとんとした出席者たち。

新婦が、笑ったり泣いたりしながら、ステージまでやって来た。

それから。

全員ビンタされた。


落書き事件から4年目にして、俺たちの罪は洗い流されたのだ。




二次会で酔いつぶれた新郎の背中に、


「奥さん、別れてください。 カオリ」


と書いたことは言うまでもない。

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