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第4章 また誘ってください 社交辞令でございます。

「無理……無理無理無理!」


心の中で何度も繰り返す。口に出しても意味がない。

私は、この世界が恐ろしすぎて、全身が硬直していた。


目の前に現れたのは、さっき私が一瞬だけ目を背けたカマキリの一匹。

静かに、ゆっくりと歩いている。周りを見渡すその目が、まるで獲物を探しているように見える。


心臓が激しく打ち始める。

「やばい、やばい、近づかないで……!」


そのカマキリが何をしようとしているのか、私は分かっていた。

そして、ついにその“何か”を目の当たりにする時が来た。


草むらの中で、カマキリが突然、そのカマを伸ばす。

目の前に動く物を探し始め、そして、ついに見つけた──


それは、芋虫だ。


「ぎゃああああああ!」


私は、思わず声を上げてしまった。

カマキリがその足で芋虫を捉え、ぐちゃっ、ぎっぎっ! と音を立ててその柔らかい体を引き裂く。


その瞬間、青白い液体が飛び散る。

芋虫の体からは、液体が流れ出し、草むらに染み込んでいく。

その液体はまるでゼリーのようにとろけて、異様な臭いが鼻を突いた。


「うううっ、やめて……う、うえっ……!」


私はその場を動けなくなっていた。

足が震えて、視界が歪んでいく。

目をそらそうとしても、その場から逃げられない。


カマキリは、芋虫の足をかじりながら、その体を引き裂き続ける。

その無感情な動きが、私の胸に重くのしかかる。

そして、カマキリのカマが芋虫の体をさらに切り裂いていく様子を、私はただ目を背けられずに見守るしかなかった。


「うっ……ひぃっ!」


その光景を見ていると、胃の中がひっくり返りそうになる。

そのぐちゃぐちゃの音が、耳から離れない。


カマキリは、食べながら、芋虫を食べ進めていく。

そして、突然、何かに気づいたように目線が私に向かう。

その冷たい目に、私はまた身を震わせる。


「おい、何か見てんのか?」


そのカマキリが、低い声で私に話しかけてきた。


「えっ……え?」


驚きと恐怖が混ざった声で反応してしまった。

カマキリが、私に気づいたのだ。


その目がじっとこちらを見つめ、まるで私がいなければこの食事を続けられるかのように無言でじっと見ている。


「お前、なんか、怖い顔してるな。」


そのカマキリは芋虫の残骸をかじりながらも、私を観察してきた。

その冷徹な視線が、私の体の芯まで凍りつける。


「え、えっと……す、すいません! その、何か気になっちゃって……!」


声が震えて、私の言葉はうわずった。

何か言わなきゃいけない、でも、何も思いつかない。


「ん? 気になる? 食う?」


そのカマキリは、食べるのを止めることなく、私に言った。


「食べる……ですか?」


私は、そのまま呆然とその言葉に反応してしまった。

その冷たい目が、まるで“試しに食ってみろ”とでも言わんばかりに、私を見つめてくる。


「お前、食わんのか?」


そのカマキリがまた言った。私は、しばらくその場で何も言えずに立ち尽くしていたが、咄嗟に変な言い訳をしてしまった。


「い、いえ、お腹いっぱいでございます! ありがたき幸せでございますが、…本当に、満腹でございますので…!」


自分でも、何を言っているのか分からない。でも、ここで何かしら言わなければ、恐怖に押しつぶされそうだ。


そのカマキリが少し首をかしげたが、結局はまた芋虫を食べ続ける。

そして、私はその隙をねらうように、必死でその場から逃げた。


「無理無理無理! 虫、無理ーーー!!」


足を速めて逃げ続け、振り返ることはしなかった。


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