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カヘルVSきのこ激闘

 


 強力なる誘昏睡薬、≪さべたけ≫きのこ精油をしみ込ませた手袋をはめた男が、静かにファイーに迫った――。


 び、しぃッッッ!!


 その間に割り込む黄土色の影。男の手を上向き、必要以上に厳しくぶっ叩いたのは――我らがデリアド副騎士団長のいぼいぼ戦棍である!



「うぐぅッ」



 戦棍先端の鉄球は、即座に軌道を変える。低いところに構え直したカヘル、続いてなめらかに腰を切る――


 ぱっこーん!


 男のまる空き脇下すぐに、正確にして冷酷なる一撃!



「ぎゃふうううッッ」



 ああ順調に伸びる安打率、男の悲鳴が左方向へすっ飛んで行った。


 カヘルは横に無事なファイーを見、次いで前にのびた側近を見る。しかし残る敵一人はローディアの毛深い巨躯の下から這い出して、そのとき調理台ににじり寄っていた。



「こいつでも、くらえぇぇぇッッ!」


「むっ、嫌な予感が」



 男は何かをぶん投げた。落ち着き払ったファイーの呟きはかき消える、小さな壺が音を立ててカヘル面前に迫る!


 ひゅーん!


 迫ったからには叩き返すのがカヘルの信条である、ばこッ。


 ぼわぁぁぁぁぁん!!



「!!!」



 しかし何と言うことだろう。粉砕したはずの素焼き壺から、すさまじい勢いにて粉塵が巻き上がったではないか!?


 一瞬にして視界がふさがれる、もともと蜜蝋みつろうの手燭だけでうすぼんやりとしていた室内が、さらに暗くなってゆく!


 クマホコリダケの爆発、と察してファイーは騎士作業衣の襟を立て口元を覆う。


 取り立てて健康被害のないきのこの一種だが、生乾きのものに強い衝撃を加えると、勢いよく胞子を噴き出す性質があった。子どものいたずら遊びに今も昔も大人気だが、某隣国の第二妃などは最終ひみつ兵器として携帯しているのだからあなどれない。



「カヘル侯、」



 ファイーは呼びかけて、はっとする。いきなり自分の目の前、カヘルの後頭部が近くにあった。


 ぐるるるるるる、……


 カヘルの戦棍の柄には、頑丈なる革製つり紐すとらっぷがつけてある。いまデリアド副騎士団長はその革紐を右手首に通し、恐るべき速度にて戦棍を回転させていた!


 おお、カヘルの右手中心に巻き起こる小竜巻。ちょこざいなきのこ粉塵なんぞ、目ではない! またたく間に、爆発余波のもやもやが晴れてゆく。


 きのこ爆発の隙をついて逃げ出し、表玄関の方へと行きかけていたきのこ売人は、ぎくりとカヘルを振り返る。


 しかし彼は、同時に思いついてもいた。すぐ近くの隅っこで縮こまっているかも・・客のおしゃれ老紳士を人質にし、盾としながらとんずらすればよい、と!


 その時、散りかけるきのこ粉塵の中から、もっさり出て来た影があった。


 それはでかい図体ずうたいをしているくせに、やたらめったら迅速に動いて男の前へと回り込み、長い得物をひと振り……すぱん!


 男は二重山括弧・右向き≫の形に折れて、横にとすんと飛んだ。ばしっ! 壁にあたって、ずるりと落ちる。



「ローディア侯、大丈夫ですか」



 カヘルの回転旋風の後ろから、ファイーが声をかけた。襟の内側からのびしびし声はくぐもっている、そこに微かに優しい心配もこもっている。



「ああ、大丈夫でーす。私、ひげの層が厚いもので~」



 へやの隅でどきどきしながら成り行きを見守っていた、おとり捜査の協力者……トロモーン町役場のおしゃれ職員の手を取って、助け起こしながらローディアは朗らかに答えた。その右手には、鞘に入ったままの長剣を握っている。



「……」



 戦棍回転を徐々にゆるめるカヘルは、少々けげんそうな表情でローディアを見た。



「口ひげで阻みましたから。さべたけ精油の失神も、長くは続かなかったようです! 幸運でしたー」



――ザイーヴさんの手前で私においしいところを持たせるため、失神したふりをしていた……?



 すちゃッ。戦棍を右手に握りとめ、カヘルは胸に湧いた疑いを払いすてる。



――否、まさか。いくらローディア侯でも、そこまで器用なことは。



 大外れ、側近渾身の演技である! 当ったり前である! 気づくべきである! ここまで上司思いの部下を持つとは、幸せ者なりキリアン・ナ・カヘル!!



「……これで、ヤンフィールが活用していたと見られる幻覚きのこ、≪さべたけ≫栽培・販売業者の摘発は終了です。彼らが気絶しているうちに拘束してきのこ在庫を確認し、チャスタス侯に引き渡すだけにしておきましょう」



 いつもの冷えひえ調にて、カヘルは淡々言い放った――。




〇 〇 〇 〇 〇


しいたけ侯『何ダ、ナンダ。私ガコレカラ、らすぼすトシテ登場スルトコダッタノニ。モウ片付イテシマッタノカ……?』


みかん猫「しっ、だめよSir.ターケ! きのこつながりだからって、領界を越えてはいけません」


しいたけ侯『ブー』


みかん猫「それにあなたの茸かさ必殺フリスビーだって、カヘル侯なら本塁打に打ち返して倍返しよ。早く菌床におかえりなさいな」


宣伝::「別府めざして湯けむり勇者!ハニー猫と行くVSきのこ満喫の旅」

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