86話 番外編 本條桜子
「カシャカシャ……」「おういいね…そこでJUMPして見ちゃう そうそうそういいよ〜」
「お疲れ様 桜子さん」「お疲れーなっちゃん」「桜子さん今日は20時からアイドルのアイツと目黒の焼肉店でお食事が入ってます」
「あーあれね 社長のお小遣い稼ぎでしょ」「社長にも困ったものですね」「ふふ まぁしょうがないよね 2、3枚週刊誌に写真撮られれば良いでしょ」
「桜子ちゃ〜ん 今日も綺麗だったよ…今晩食事でもどうだい?」「ごめんなさい笠々木さん、今夜は仕事が入ってるんですーまた誘ってくださいね」
「そりゃ残念 じゃあまたの機会にね桜子ちゃ〜ん」
「…キモ!桜子さんに!〇✕△▢!〇✕△▢!」「ふふ なっちゃん顔が怖いわよ」
私は本條桜子 一応売れっ子のモデルをやっている こう見えてもまだ19歳なのだよ
私がモデルになったきっかけ…そうそれは中学2年の事だった 社会の授業の時の1枚の写真 モデルとは全く関係のない戦後の日本の風景…あの写真を見た日から私の夢にあの子は現れた…
『おねー様おねー様』『あらどうしたの?』『私もおねー様くらいになったら おねー様の様なピンクのワンピースが似合うようになるかしら』『ふふ 私より似合うと思うわよ 可愛いのだから』『あらやだーっおねー様ったら 早く大きくなりたいなー』『ふふ』
私はひとりっ子なのだけど あの日から妹がいるような感情が…それも2人?…よくわからないけど 私がおしゃれをすると夢のあの子が喜んでくれる 私もそれが嬉しくてお小遣いの大半を洋服に使うようになっていた
毎日が撮影の日々を気がつけば3年もしている 大人達のいやらしい視線とお誘いにも動じなくなった…ふふ あまり良い事では無いような気もするけどね
「なっちゃん今日はもう帰っていいわよ」「え でも…」「ふふ わたしを あんなガキがなんとか出来ると思う?」「それもそうですね…明日は午後から だからって遅くまで漫画なんか読んでてはダメですからね!」「わかってるは此れでもモデルよ 夜更かしは美容の敵だもの…お疲れ様」
わたしは目黒の焼肉店をそうそうに つけられていないことを確かめ帽子眼鏡マスクを駅のトイレで…電車に乗り一路新宿へ Let's 漫画喫茶!
やっぱり人が多いわね「おねえさん おねえさん…」無視無視 お目当ての漫画喫茶に…受付混んでる…「身分証はありますか?」「…」「それだと入れません」あれは中学生?高校生かしら…こんな時間に歌舞伎町に放り出すっていうの?…都条例ってやつか!良いとこのお坊ちゃんお嬢ちゃん(今はじじぃにばばぁだ)が決まり事を作るとこれだから…
「今晩は…」わたしは階段のはずれで中学生くらいの女の子に声を掛けた「ごめんなさいね…これでわかる?」帽子に眼鏡マスクを外した「えっ!桜子さん⁉」「あなた家出してきたの?」「…」「…お腹空いたわね…ハンバーガーが食べたいわ 付き合いなさい!」名も知らぬ女の子の手を引き近くのハンバーガーショップへ 食べきらないほどの注文をし二階の窓側の席に座った「おい あれモデルの桜子だよな(ざわざわ)」「きゃっかわいい…」「カッシャ!」「パッシャ!」
「わたしひとりでは食べきらないから あなたも食べなさい」「…いただきます」「はい 召し上がれ…ふふ」
「おいおい桜子俺も忙しいんだが…」…来たわねメールで幼馴染の圭治を呼び出したのだ「大丈夫よ彼はわたしの幼馴染の刑事なの圭治が刑事⁉はは」そう圭治は五つ年上のお隣さんだった
今は新宿署の生活安全課の刑事なのだよ「圭治も座って食べなさい」「職務中だ」「これも仕事よ!だいたいこんなかわいい子を夜の歌舞伎町に追い出す店ってどうなのよ!」「どうなのよ!って言われてもな」「…ふふ」あらやっと笑ったわね
「入店させたら罰則って⁉保護しなかったら罰則じゃないの!保護されて困る人でもいるわけ!」
「ごめんな 桜子はこうなると止まらないんだよ…」
「なに⁉圭治!」「いえなんでも…」
「ハング〇ンや仕置き人 もっこり両さん うらめしい本屋を知らないわけ⁉」
「あーどこかにいないのかしら…」
「全部漫画の話だろ…」「なにか言った⁉」「いえ…」「…ふふ」
「この子のことは 圭治に任せるから…事情をちゃんと聴いてもし糞親だったら逮捕して頂戴!」「逮捕っておまえ…わかったよ」「このおじさんは大丈夫だから」「おじさんって俺はまだ24だ!」わたしは女の子に連絡先を渡して店を後にした…今日は家に帰るか…「ピロロン」圭治からメール…桜子さん ありがとう…それとご馳走様でした。あの子にとってなにかが良い方向へ変わるといいな…
「ピンポーン」「なっちゃんおはよう~まだ10時だけど…」「いいから開けてください!」はいはい
「桜子さん あれは誰なんですか⁉」「ふあ~ あれって?」「SNSにハンバーガーをがっついてる桜子さんと同じくがっついている男の写真が もう沢山!アイドルのあいつはどうしたんですかー!」
「ちゃんと焼肉食べているところを週刊誌のカメラマンに撮られたわよ」「焼肉食べたあとに あのがっつき様ですか⁉」「いいじゃない」「桜子さんはモデルなんですよ」「食べても太らないし」「…羨ましい…じゃなくて 男 おとこ!」「ああ 只の幼馴染よ」「只のって…」「大丈夫よ刑事さんだし」「刑事…なにをやらかしたんですか!」「なにもしてないわよ…強いて言えば…女子中学生を拾った?」「女子中学生を拾った?猫じゃないんですよ!」はいはいわかったから…
このあとも永遠となっちゃんのお説教が仕事入りまで続いた…。
「桜子さんじゃあ明日は朝6時に向かいに来ますので なにも拾わないでくださいね!」「わかったわ なっちゃんも運転気をつけて帰ってね」「はーい」「ブーン…」
「コツっコツっコツっ」「チンッ…ピッ」駐車場からエレベーターで62階の部屋まで ビルや大きな橋がライトアップされて皆は綺麗な夜景と言うけれど…私には…
「チンッ」「あれ?こんな時間に誰か…」帽子を深く被った…「お前がお前が悪いんだ」「グサッ!」「わっわっわー!」駆けていく男の後ろ姿…そうか私は刺されたんだ…
なっなにこのどんよりとした黒いモヤわ…さっきの男の感情?(お前が悪いんだ)(チヤホヤされてるっからっていい気になっちゃって)(何様のつもりよ)これはなっちゃん…ふふ…はは…。
気がつけば 私は罵声の中に倒れ伏せていた…なに 此処は…化け物の死体があちらこちらに 私…動けない怪我を…私の手…なっ化け物と同じ
「まだ、生きておる奴がおるのか」なっ!ドラゴン!さっき男に刺されたばかりなのに 今度はドラゴンに殺されるんだ…死にたく無い『死にたく無い』…
此処わ?天井がある私の手…人間の手だ…
「おう 気が付いたか」「…あなたは」「我か?ハハ其方を拾ったドラゴンだよ」「…そうだ私はドラゴンに殺され…あなたは人間の様ですが」「ああ 人間の身体を乗っ取った おぬしにも与えてやったぞオーガの娘よ」「私はオーガの娘…確かにオーガの記憶がある…お兄ちゃん?」
「私を助けてくださったんですね ありがとうございます」「唯の気まぐれだよ 動けるようになったら 我の側近として側に置いてやる」「ありがとうございます」
こうして私はドラゴン 黒竜様の側近として側に使える事になった 日本に未練が無いわけでは無いけど 作り物の平和と偽りの自由に辟易としていた私にとって この世界は新鮮に思えた…夢の中のあの子には悪いけど…ふふ 今はおしゃれどころではないわね
そうそう黒竜様に名を与えられた…サラと…黒竜様は私の元の名前を知っているのでは?…考え過ぎか でもこの世界ではまだ生きるのが精一杯で皆が1日1日を一生懸命に生きている…私は今生きている あの時男に殺されたけど…間違いなく私は此処に生きているんだ
※※※
「大臣に頼まれてやっただけだ!私は悪くない!」「私も大臣の命令で用意しただけです!」
「お前たち黙れ!」
「…なんだなんだ」「新しいドラマの宣伝かしら?」「えー見た事ないよあんなおっさん!」
大型ビジョンに映し出されたのは…
新宿にピンクのレオタード姿の娘が3人 夜の喧騒の中 空を駆ける
そんな未来が来るのは遠い話では無かった




