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序章 …わたしって。

 

静かな夕暮れ…今日も一日が終わろうとしている。薄暗い部屋の中、夕食の支度をする。

今日と言う日を振り返りながら…。


****


(パ―――ン!カンカンカンカン!)(がやがやがや)(ズンチャカ♪ズンチャカ♪…)(ピコ…ピコ…ピコ…)(がやがやがや)

(ブウーンーン)「いらっしゃいませ!」「本日の特売…」「焼きたてですよー!」5割引きのお惣菜…あっ!「ふー最後の一個だったわね!買えてよかったわ!」「ママお菓子買って!買って!」…(ブウーンーン)「ありがとうございました!」


街はいまや365日24時間止まることなく動き続け 誰しもが機械の如く働き続けている…壊れ果てるまで…。


****


(ブウ――――ン…チン!)(ガチャッ)「「熱っ!」」


スーパーで買ってきたお惣菜と10パック100円の味噌汁…そうそう今日は私の大好きな御萩もあるんだっけ…だけど本当に好きな御萩はぱさぱさのツヤのないあんこ なのだけど…お金も作る気力もない…。


(ワイワイワイ)(なに言っちゃってんの⁉SNSでバズっちゃって…)(ガヤガヤガヤ)


「ご馳走様でした!」(ジャー…カチャカチャキュッ)(ジャー…カチャカチャキュッ)「ふー…。」


(ピチャ…ピチャ…キュッ…)(どわっはっ!はっ!はっ!…それじゃあ! 本日のゲスト!…お笑い界の!…)((ピッ!))(パチン!)


明かりを消しても街の喧騒が遠くに聞こえる。この部屋の窓からでは星も見えない…そう空を見ることも忘れがちな生活だ。


わたしは身なりを整え床に就く…。いつしか生をなして92年、何時お迎えが来ても良い様に…。


心残りは父の事だ わたしが生まれる前に戦死したそうだ。御国の為、植民地支配からの解放…仕組まれた戦争…一般市民の虐殺…戦犯責任を甘んじて受け入れ未来を護った先人達…誰もがそんな事は無かったかの様に…忘れられた…。


母は私を身籠り父方の両親と暮らしていたと聞く母はすでに身内を亡くしていたらしい。


『『『ろくでも無いな!戦争!』』』


何時もわたしを ぎゅっ と抱きしめてくれた母、女手ひとりであの戦後を育ててくれた…そんな母も 私が14の時 他界した。祖父母も物心がつく頃には他界していて…(おぼろ)げな記憶しかない。


闇市 食堂 靴屋の下働き等々で なんとか生きながらえた。高度成長期を工場勤務で過ごし その後は商社の事務で、お局と揶揄(やゆ)されながらも定年まで働けた。


順風満帆(じゅんぷうまんぱん)とまでは言えなくとも病気もせず怪我もせず絶望する事なくやってこれた…。天涯孤独と言う言葉以外は満足いく人生だっただろう…。後は如何(いか)に上手に死ぬか…それが問題だ!

  …

     …

        …

     …

  … 『ニャー』


う うーん?…「「「…眩しいわ!」」」『…また、目覚めて…し…まった…?』 …? …? 


私は白刃の光の中、目を覚ます。 …? …? 「…うーん?」


いつもと景色が違う…?六畳ほどの団地の…寝室…?…では 「ない!」


何処までもつづく雲の上、白銀の世界が広がっている。夢⁉…いや…これは…そうか私は… 人生を終えたのだ…。


今日は朝からヘルパーさんが来る日だったわ!…すぐに見つけて頂けるだろう。事故物件にしてしまったのは心苦しいが致し方ない!


…しかし 此処は何処だろう…天国?…まさか死後の世界があるとは…。


死んだら全て無になると…。 これは予想外だ!


私は自分の手を見る… そこには疲れ果てた年老いた手があった。


「…。」『死んだら若い頃に戻るとかないのか…、』「…。」「「がっかりだ!!」」


「「これなら無の方がよいんじゃないか!!」」


「「「うっ!腰も痛い!!!」」」


―――「「「うるさいぞ!!!!」」」―――


「⁉…。」 何処からか声がした?声の方へ振り返る…と そこには少女が立っていた。


如何にも神?…女神?といういで立ちで。


「あなたは誰ですか?」一応聞いてみた「神じゃ!見てわからんか?」「…?」 …疑問形?


とりあえず閻魔様ではないようだ。「神様 ここは何処で私はこれからどうなるのでしょう?」


「そうじゃな それをこれから説明しよう」説明してくれるらしい…


「ここは神の住まうところ おぬしらの言うところの神界じゃ!」いやいや 神界って…⁉


「おぬしはこれから別世界に転生する」「…?」なんですと⁉「また人生をやれと⁉」


やっとお迎えが来たと思ったら また いちからやれと…。


「不満か?」そりゃあ不満ですとも、理不尽な世界、神がいるなら何とか出来なかったのか!「…とは言ってものう わしも約束を(たが)えるわけにもいかんのじゃ」


「…約束ですか?」


神社にお参りには行ったことはあるが宝くじが10億円!当たりますように。パン!パン! ぐらいしか覚えがない。当たった試しがないよ!(怒)


「そう、其方の父とな…」「えッ⁉…」 わたしの父…、神薙英機(かんなぎひでき)


神が言うには 戦争を終わらせるにあたり父に命を懸けて…文字通り命がけの任務をあたえたらしい。その見返りが生まれてくる子の幸せだったと言う。わたしの幸せ…なら、なんで…。戦争を終わらせる為?…世の中は終戦終戦、終戦記念日などと何十年にもわたって風潮してるが、敗戦敗戦、敗戦確定日なんだよ、一般国民を無差別大量虐殺した勝利国が善で、わたしの父は悪なのか!ぎゅっ…「それならば、若くして亡くなった父にもう一度 生を与えて頂けないでしょうか?」「願わくば 母にも…。」


「それは既に行なったぞ 二人とも幸せな人生を全うして眠りについた」


二人とも幸せな人生を…おや…わたしより後に生まれて先に…「そっか…。」


「グスッ…」「我が人生に悔いなし!」


「いや、そこは悔いれ!」


「おぬしは決して幸せには見え何じゃったぞ!いつもひとりぼっちで…」「それには神様にも責任があるのでは?」「…、」―――静寂―――「あるのでは?」「 …。」


『『『黙るなよ、神!』』』


人の幸せは人それぞれ…、しかし神に不幸認定されるとは。


…わたしって?



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