05 武闘大会・予選
ライオネット武闘大会。それはライオネット独立から続く伝統的な大会である。かつては戦力向上、戦士発掘。つまり、魔王討伐の為に。そして今は純粋に、優勝を目指して。
この大陸には4つの大きな大会がある。
もうすぐ始まるであろう、ライオネット城、城下町で行なわれるライオネット武闘大会。
アーサーが、魔王を討伐する際に使ったとされる剣、エクスカリバーを賜った湖の跡地とされる場所付近にある、通称『剣の街』アゾット。そこで行なわれるアゾット剣術大会。
魔王が討伐され、人間による大陸統一のあと一歩といった所から、前線を今の国境まで立て直したとされる、魔王軍魔法騎士隊隊長、ランスロット・シードの生まれた都市。通称『魔法都市』カルマ。そこで行なわれるランスロット魔法大会。
魔王城、城下町である、通称『黒の街』アルトバーン。そこで行なわれるアルトバーン騎士大会。
これら、4大大会。1年に1度はやるものの、実は不定期である。
これは、運を試すというのもあるが、基本は情報戦ということだ。
出場可能数は100人。出場権は、大会の開始が近付くと、大会に参加しない関係者に配られる。そしてこれらが推薦やクエストの報酬、小さな大会の優勝景品だったりと、様々な形で配られる事になる。もちろん、出場権を獲得した者がそれを再配布というのも可能だし、ライバルを減らす為に1人で複数の出場権を占有するのもありだ。もっとも、占有出来るだけの実力を持っているものに限って、そういう事をしないものなのだが。
大会は、予選と本選の2つに分けられる。
予選は100人を16グループに分けて、それぞれのグループ上位2人が本選へ。
本選は32人によるトーナメント戦である。
とまぁ、運がよかったのだろう。大会に出場する事になった。
予選は祭が始まる前の朝早くから昼前に。
本選は昼から夜に。
まぁ、予選と言ってもメインイベントには変わりない。会場には既に多くの人がいた。
「うぉ、凄い人だな」
「やっぱりメインイベントですからねー」
「サーヤはいいの?宿放っておいて」
「大丈夫ですよー。いつものことですし、トーリさんの晴れ舞台を見逃したら、もう後悔で生きていけません」
「ははは、大袈裟だよ」
「そんな事ないですけどねー」
「そんな事より! 予選って終わったら後は本選まで自由なのよね? それならさっさと終わらせて3人でいろいろと廻りましょうよ」
「あっ、それはいいですね!」
期待に満ちた2人分の視線を向けられる。
「……わかったよ。ちょっと疲れるけど、早めに終わらせてみる」
予選のルールは、6ないし7人が同時に戦い、気絶、もしくは場外で失格。最後まで残った2人が本選へ。というもの。
始めはチームを組んで、強い奴から減らしていくのも、ある程度数が減るまで防御に徹するのも作戦の内だ。
『それでは、予選開始です!』
16グループ全てが同時に開始した。
バン! 開始の合図と同時に何か大きな音が鳴り、
『おおっと、今の音は何で――どうしたのでしょうか! 既に1グループの試合が終わっています!』
奇襲。俺が早く試合を終わらせる為にとった方法である。
チームを組むのにも、防御に徹するのにもやはり相手の情報というものが必要不可欠である。つまり、様子を見る必要がある。
俺は、その隙を突く事にした。
開始直後に試合場の中心にダッシュ。そして上方に魔法で花火を飛ばし、相手の気が空に逸れた瞬間、全力で四方八方に衝撃波を飛ばした。
鎧の人には効かなかったみたいだが、残りの4人は1、2メートル後ろ、つまり場外へと吹っ飛ばされた。
試合場に残ったのは、俺と鎧の人の2人。試合終了だ。
「ありがとうございます。おかげで、他のグループの試合を見る事が出来る」
「そうか、それは良かった。俺としては全員飛ばすつもりだったんだけど」
「私に奇襲は効きませんよ」
「そうか、考えておくよ」
「ええ、決勝で会いましょう」