5.二度の賭け。
短めです(*'▽')ノ
「いったい、キミは……?」
アニスは朦朧とする意識の中で、信じられないものを見た。
見定めようと思い、自らが誘った青年――アクアが剣を突き立てると、そこから周りを取り囲むようにして大地が隆起する。それはレライエの矢も、ドラゴンのブレスも容易に防いでみせた。おそらくは【地属性】の魔法か何かだろうが、このような使い方は知らない。
そもそもとして、一人の人間が複数の属性を操ることが例外的だった。
「……何者、なんだ?」
だからこそ、アニスは驚愕する。
だが、さらに目を疑う戦闘がここから繰り広げられることになるのだった。
◆
「まずは、レライエたちをどうにかしないと……!」
一か八かにしては、上手くいった方だと思う。
アクアに【地属性】の素質があるとは知らなかったものの、やはり天賦の才を持つというだけはあった。本来の物語の中でも、もっと真面目に磨けばたいそう輝いただろうと思う。
やろうと思えば、なんでもできた。
あるいは、そんな規格外の才能を活かすのが俺の役割かもしれない。
「よし、行くぞ。……アクア・リュクセンブルク!」
俺は自分であって自分ではない彼に語り掛けながら、気合いを入れた。
そして、足元の地面に触れる。すると轟音と共に大地は隆起し、まるでバネのように俺の身体を宙へと放り投げた。呆然、という表現が正しいか分からないが、レライエたちはただただ俺のことを追いかけるように見上げている。
おそらくは、彼らにとっても想定外の動き。
そうやって唖然としているのなら、こちらにとっても好都合だった。
「喰らえええええええええええええええっ!!」
俺は剣を思い切り振り上げ、そのままレライエへ向かって急降下。
相手が飛んで逃げるのだったら、こちらはさらに上から叩き伏せればいい。脳筋作戦だと、言いたければ好き勝手に言ってくれて構わない。だが、俺にはこの作戦しか思いつかなかった。
急接近するレライエに、渾身の力で剣を叩きつける。
防御力自体はさほど高くないのだろう。
「よし、次……!」
いとも容易く瓦解して魔素へ還る相手には目もくれず、俺は残りのレライエへと視線を移した。そして先ほどと同じ要領で距離を詰め、一気に叩き伏せていく。
かなり大味な戦闘ではあるけれど、ここまでは順調だった。
残るは相手方の総大将――名付けるなら【スケルトンドラゴン】というやつか。
「こいつの弱点は、いったい何だ……?」
虚ろな様子でこちらを見据える骨竜に、俺は剣を構えて間合いを計った。
先ほどのブレスは以前のドラゴンと異なり、紫色だったはず。もしかしたらアンデッドになることで、属性が変化しているのかもしれなかった。
だったら、ある程度は警戒しなければならない。でも、
「アンデッドってつまり、幽霊ってことだろ? だったら……」
弱点は案外、単純かもしれなかった。
俺はそこで一度冷静に、茜から教わった属性を思い出す。
「火、水、地、風、雷。その五大属性に加えて、あと二つ」
口にして、改めて理解した。
この【スケルトンドラゴン】が抱える弱点は、一つしかない。
「闇、そして対応するのは――【光属性】」
俺は柄を握る手に、力を込めた。
一度の戦闘で『一か八か』の綱渡りを二度もするなんて、思いもしない。
「でも、やるしかないよな……!」
だけども、そうしないと生き残れないのなら。
俺はゆっくりと呼吸を整えて、骨竜を睨みつけたのだった。
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