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8.重荷を一度、ゆっくり下ろして。

ここで第1章終わり(*'▽')ノ

次回から第2章!!







「パーティー……どうして、私と?」



 俺の申し出に、アニスさんは少し怪しむような表情を浮かべた。

 それも当然だろう。あんな戦いを経た上で、継続してパーティーを組む利点など思いつきようがない。下手をすれば両者共倒れだったのだ。普通に考えれば容態の心配こそすれ、今後は別の道を歩もうというのが普通であるように思われる。

 でも、俺には何故かそれができなかった。

 理由を問われれば、具体的に何かを提示できるわけではない。それでも、



「アニスさんの一族が、今回の依頼にすべてを賭けていたと聞きました」

「………………」



 ギルド長から聞いてしまった以上、もう無視などできなかった。

 それに『竜狩りのアレクセイ』という名前にも、少しだけ聞き覚えがある。情報源はいわずもがな、オタクな幼馴染みの話だったけれど。アイツ曰く、この一族は今回の依頼が失敗したことによって、いよいよ無価値の烙印を押されてしまうということだった。

 その責任を負うことになるのは、すべての期待を背に命を落とした一人の女性。

 そしてそれは、きっとアニスさんのことだったのだろう。


「今回の依頼を遂行できなければ、貴方の一族は無価値と判断される。だけど俺には、どうにもそれが許せなかったんです。いくら期待されていたとして、一人の女の子に背負わせるには責任が重すぎですから」

「………………」


 今回、俺が関与したことで結末は変わった。

 アニスさんは生きている。それでも、彼女の一族を取り巻く状況は変わらない。このままでは、竜狩りの一族は世界から消されてしまうのだろう。忘れられて、いなかったことにされる。

 そんなこと、俺には見過ごすことができなかった。


「だから、一緒に戦ったことにすれば――」

「それは同情か……?」

「……え?」


 だから今からでも、俺と正式にパーティーを組んでいたことにすればいい。

 そう考えて提案しようとすると、彼女はそれを察したらしい。ベッドのシーツを軽く握りしめながら、恨めしそうに言うのだ。


「それはキミが、私と違って結果を出した人間だから言えるのだろう。力を持っているからこそ、何もできなかった私に同情できるのだろう……?」

「………………」


 所詮、俺が彼女に差し伸べている手は偽善に過ぎないのだ、と。

 その鋭利な言葉に思わず、俺は声を発せなくなった。

 本当に、これは偽善なのだろうか。

 たしかに彼女の言う通り、発端は哀れみからかもしれない。だけどそのことと、苦しんでいる女の子に手を差し伸べることは同じだろうか。――本当に?


「たしかに自分は、貴方の抱える責任の大きさに同情しました」

「やはり、その程度――」

「でも、だからこそ終わらせたくないと思ったんです」

「……なに?」


 そこまで考えてから、俺はハッキリと違うと確信を持てた。

 だから、疑心に怯えるアニスさんに伝える。



「だって悔しいじゃないですか。一生懸命頑張ってきたのに、たった一回の失敗や間違いですべて終わりだなんて。アニスさんはみんなのために必死に努力してきたのに、そんなことさえも誰の記憶に残らないなんて、悔しいじゃないですか」



 結果はたしかに、上手くいかなかったかもしれない。

 だけどもその過程は、刻んだ足跡は。



 たとえ何があっても、忘れられていいものではないはずだから。




「だから、ここからまた始めれば良いんです。それで、もしよければ――」




 俺はそこで言葉を切り、ベッドの傍で片膝をついてアニスさんを見上げた。

 そして、そっと彼女の手を取って告げる。



「俺にもその、手伝いをさせてもらえたら嬉しいです。……なんて」――と。



 最後はどこか恥ずかしくなり、小さく笑いが出てしまった。

 なんとも締まらない。本当に俺は昔から、大事なところで茶化してしまう。


 だけど、こちらの言葉はアニスさんに届いたのかもしれない。

 彼女は手から伝うように喉を震わせ、小さく話し始めた。



「ほんとうに、また始めても……いいのかな」

「もちろんですよ。取り返しのつかないことなんて、滅多にないですから」

「だったら、いまからでも私はみんなに報いれるのかな」

「……はい。諦めなければ、きっと」

「そう、か……」



 涙声になったアニスさん。

 綺麗な顔をくしゃくしゃにして、瞳には大粒の涙を湛えて。



「だったら、また頑張ってみても……いいかもしれない」



 そう、言うのだった。

 直後に彼女の感情は決壊し、先ほどよりも大きな声で泣き始める。

 まるで幼い日から、我慢し続けていたものをすべて吐き出すようにして。



 泣き崩れるアニスさんを見ながら、俺は静かに胸を撫で下ろす。

 窓の外を見ると、そこにはまた新しい朝の日が昇っていた。



 


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