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7.地位と名誉。

ごめん、〆は次だ(*'▽')長くなりそうだった。

応援よろしく。







「なるほど。アクア・リュクセンブルク、か」

「えっと、もしかして経歴諸々は調べられてますか……?」



 ――スケルトンドラゴンとの戦闘から一日。

 俺は冒険者ギルドで、お偉いさんから呼び出しを受けていた。ギルド長と名乗った好々爺然とした男性は、片側だけの眼鏡をいじりながら資料を見ている。椅子に腰かける姿は一見して弱々しい。そのはずなのに、肌を刺す緊張感は只者でないのを示していた。


 そんな人物が、俺の捨てた名前を言い当てたのだ。

 何かある、と考えるのが自然だろう。


「ギルドの持つ情報網、舐めたらいかんぞ? もっとも、お前がいったいどのような過去を持っていたとしても、現時点では何も問題はない。あくまで、現時点だがな」

「そ、そうですか……」


 ギルド長は優しく笑うが、こちらの肝は冷えっぱなしだった。

 だが、いまは何もないのなら言葉を控えよう。


「それで、どうして俺を呼んだんですか?」

「おお、そうだったな。では本題に入るとしようか」


 そのために話題を転換すると、長は頷いて話し始めた。



「お前が倒したドラゴン――フレアドラゴンというのだがな、それは先遣隊が大打撃を受けた魔物だった。それ故に、外部より専門家を招く予定だったのだ」

「専門家、ですか」

「あぁ、アニス・アレクセイという竜狩りの末裔だ」

「…………え、アニスさん?」



 そこで出てきた名前に、俺は思わず反応する。

 彼女はいま、医務室で本格的な治癒術を受けているところだった。命に別状はないとのことだが、数日は絶対安静という話だ。俺の反応に、ギルド長はまた首を縦に振る。


「結果的に、あの娘では力不足だった、ということになるが」

「そ、そんな言い方しなくても……」

「こちらからの依頼料も、決して安くない。それにお前は忘れているようだが、冒険者ギルドは完全な実力主義だからな。力なき者に、価値など見出さない」

「………………」


 とっさに言い返そうとした俺に、釘を刺すように告げる長。

 彼の厳しい声色に、こちらは何も言えなくなった。その無言を了解と受け取ったらしい相手は、一つ息をつくと再び語り始める。


「本来であれば、アレクセイの娘にその地位を用意するはずだった。だがしかし、結果的にその座に就くのはお前のようだな。――アクア・リュクセンブルク」

「地位、座……いったい、何の話ですか?」

「なに。先ほども言ったが、冒険者ギルドは完全な実力主義だ。成果を上げた者に対しては、正当な報酬を与えなければならないのだよ」


 ――それもまた、今回に限って例外的だが。

 最後にそう付け足しながら、ギルド長は静かにこう言った。



「それでは、アクア・リュクセンブルクへの報酬を与える。まずは聖金貨三百枚、そして――」



 ニヤリと、口角を吊り上げながら。




「全冒険者の頂点『SSSランク』の座を、な」――と。








『いいか、アニス! 貴様はアレクセイの子として、強くなければならん!』

『はい、お父様!! アニスは頑張ります!!』



 アニスは竜狩り一族の期待を一身に背負っていた。

 幼い頃から厳しく躾けられ、尋常でないほどの鍛錬で肉体を追い込む。特殊な環境下に置かれていなければ、大人でも裸足で逃げ出すほどの修練の日々。

 時には命を落としかけたこともあり、涙に暮れる夜もあった。

 それでも若干十五歳の彼女は、誰にも弱音を吐かずに成し遂げたのだ。



『すべては、一族再興のために!』



 ――竜狩りのアレクセイ。

 その名はかつて、全世界に轟いていたといって過言でない。

 世界に魔素が満ち溢れ、大地を当たり前のように魔物が闊歩していた時代。アレクセイは人々の希望であり、拠り所に違いなかった。

 だがしかし、時は流れて環境は変化する。

 魔物の脅威は鳴りを潜め、人は竜狩りの力を不要なものと判断した。


『――いいか、お前は一族のために!』

『――何度同じ間違いをするのか!』

『――すべてはお前のためだぞ!』


 それでも彼らは生き方を変えられない。

 地位と名誉に固執し、力こそがすべてという思想を捨てられなかった。アニスは見様によっては被害者とも取れたが、肝心の彼女もまた目を曇らせていたのだ。

 彼らのもとに、王都のギルドから依頼が舞い込んだのはそんな時だった。





「私は、失敗した……?」



 病床で目を覚ましたアニスは、開口一番にそう口にした。

 手足がまともに動かせない状況からして、彼女の結論は間違っていないだろう。そして、あの青年が姿を現した瞬間に確信に変わった。


「あ、起きたんですね。アニスさん」

「アクア、くん……?」


 あの絶望的な状況下で、自分を守った彼が無傷。

 だったら、それはつまり――。


「う、うああああ……!」


 そこからはもう、アニスは何も考えられなかった。

 ただただ涙が溢れてきて、自分ではどうしようもない。相手の困惑など考える余裕もなく、子供のように泣きじゃくった。

 何故なら彼女はそれだけ、この依頼に賭けてきたのだから。

 だから、悔しくて仕方がなかった。



「…………」



 そんな少女の姿を、アクアは静かに見守っている。

 そして、やがて意を決したように言うのだった。



「アニスさん、一つお願いがあります」

「……え…………?」



 困惑するアニスを真っすぐに見ながら、まったく裏表のない笑みを浮かべて。




「俺と一緒に、パーティーを組んでくれませんか?」――と。



 


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