ハギス実際に食べてみたレポ
この度、「秋の歴史2023」向けに短編を一本書き上げました。
タイトルは『ハギスと女王と元女王』。
イングランドのエリザベス一世女王が、虜囚となっているスコットランドのメアリー一世元女王と会食するお話で、そこで振舞われる料理がハギスです。
もちろん、お話そのものは私の創作ですよ。もっとも、その当時ハギスという料理自体は存在していたようですが。
「ハギス」とは何ぞや?
簡単に説明すると、羊の内臓を細かく刻んで、オート麦やタマネギなどとともに羊の胃袋に詰め、茹でるかもしくは蒸したスコットランドの伝統料理です。
何それ美味しそう、とおっしゃる日本人の方はそう多くないかと思われます。
実際、スコットランド以外の人々からはキワモノ扱いされており、フランスのシラク大統領(2005年当時)がイギリス料理を揶揄して「(ハギスみたいな)ひどい料理を食っている連中は信用ならん」と発言したのに対し、英国のストロー外相(当時:出身はイングランド南東部エセックス)が「ハギスに関しては全面同意」とコメントしただとか、まあ色々ネタにされているようです。
私がはじめてハギスというものを知ったのは、ドラゴン四兄弟が主人公の某小説ですが、この度拙作の題材にするにあたり、日本国内で食べてみることはできないものかと思い、ネットで調べてみました。
東京ならばまだしも、それ以外の地域ではちょっと難しいかな、と思っていたのですが、調べてみると大阪にも提供しているお店が見つかりました。
で、実際に食べに行ってきた話をエッセイに仕立ててみたのが本作です。よろしければ、『ハギスと女王と元女王』本編とともにお楽しみください。
さて、前述のとおり、関西でハギスを食べることが出来るお店、ということでネット検索してみたところ、東大阪に一軒あることが判明しました。
大阪市内の長堀のあたりにも一軒あったようなのですが、どうも閉店してしまったようで……。コロナ禍の影響でしょうか、悲しいことですね。
それはさておき、東大阪市の近鉄奈良線八戸ノ里駅の近くにあることはわかったものの、正直私にとってはあまり馴染みのない地域でして。大阪といっても、梅田やなんばのあたりしかよく知らないものですから。
近くに何か見どころはないものか、と思い調べてみたら、司馬遼太郎記念館なるものが最寄りにあることが判明しました。
おお、そんなものがあるのか。じゃあついでに行ってみよう、ということで、さっそく先日行ってまいりました。
仕事が休みの日に、まずは大阪駅で一度改札を出て、近辺で昼食を摂り、目的地へと向かいます。
近鉄沿線ということで、環状線鶴橋まで行って乗り換えるのかな、と思っていたのですが、調べてみると、おおさか東線の河内永和で近鉄に乗り換える方が20円ほど安い(笑)。へえ、そんなルートもあるのか。
けど正直、おおさか東線とか存在も知らんかったわ(沿線の方ごめんなさい)。
JR大阪駅23番ホーム? いや、これまで大阪駅は数えきれん程使って来たけど、ホームは1番(環状線)から11番(北陸方面行)までしかないと思ってました。
20番台ホームは、1~11番ホームからは少し離れたところにあるのね。東京駅の京葉線ホーム……よりマシか(笑)。
ついでだから調べてみた(暇人)。
Ya〇oo乗換案内で調べてみたところ、環状線からおおさか東線への乗り継ぎと、山手線から京葉線への乗り継ぎ、どちらも20分弱で想定されているようですね。
実際に歩いてみた感覚では、京葉線ホームの異次元感よりかはだいぶマシなように思えたんだが……。はじめて舞浜に行った時のインパクトが強すぎるのかな?
閑話休題
最初の目的地である司馬遼太郎記念館は、近鉄河内小阪駅と八戸ノ里駅の間にあって、河内永和と河内小阪はわずか一駅。
じゃあいっそ、近鉄線は使わずにJR河内永和から歩いて行くか、ということで、30分弱ほど歩いて目的地に到着しました。
司馬遼太郎先生(1923~1996)の名前は、おそらく皆様ご存じのことでしょう。日本を代表する歴史小説家ですね。
記念館は先生の元ご自宅の敷地内に建てられており、先生が執筆なさっていた書斎の様子も、庭から見ることが出来ます。
雑木林みたいな(司馬先生のご趣味なのだとか)お庭を見て回っていると、こんなものを発見。たたら製鉄で出来た鉧だそうです。楓が芽吹いているのが可愛らしいですね。
記念館の建物は安藤忠雄氏(1941~)の設計とのことで、おしゃれなコンクリート建築です。
吹き抜け三階分の壁一面に、司馬先生の蔵書2万冊がびっしりと並べられていて圧倒されます。いや、総蔵書数は6万冊とのことで、これの3倍あるんですね。ただただすごいの一言です。
しかし、いささか残念ながら、先生ご愛用の虫めがねや筆記用具、バンダナなどの品が展示されてはいるものの、それほど時間を掛けて見学するようなところではなく……。流されている映像を繰り返し見たり、先生の蔵書に囲まれながら次回作の構想を練ってみたりして、ゆっくりと過ごしてはみましたが、1時間もいたら十分です。
さて、まだ時間は早いしどうしようか、と思いつつ、とりあえず八戸ノ里駅まで行ってみたところ、駅のすぐ近くに、宮本順三記念館なるものを見つけました。
これは、グリコのおまけのデザイナーとして活躍された宮本順三氏(1915~2004)という方が蒐集された世界の玩具などを展示した記念館で、係員の方にじっくりと解説していただき、中々楽しめました。
宮本氏は、とにかく子供たちを喜ばせたい、という情熱にあふれた方だったようで、胸が熱くなります。
ちなみに、そこには江崎グリコの創業者江崎利一氏(1882~1980)直筆の感謝状といったものも展示されているのですが、めっちゃ達筆で驚きました。
ちなみに、司馬遼太郎記念館も宮本順三記念館も、入館料は500円です。
というわけで、お待たせしました。
いよいよハギスに挑戦です。
お店の名前は一応伏せておきますが、近鉄八戸ノ里駅近辺のスコットランド風パブ、とまで言ってしまえば、ネットで簡単に特定できることでしょう(笑)。
カウンター席だけのこじんまりしたお店で、まだお若いマスターに、まずはギネスビールを注文。あまりお酒は強くないので、1/2パイントで十分です。
そして、これがハギス。たっぷり添えられたマッシュポテトと混ぜながらいただきます。
本場ではターニップ(あるいはルタバガ)という野菜も添えられることが多いのだとか。これは洋種かぶとも呼ばれ、蕪に似ています(というか、同じアブラナ属ではあります)が色は黄色く、味や食感もかなり異なるそうです。
ハロウィーンのジャック・オー・ランタンを、本来はカボチャではなくカブで作っていた、という話をご存じではないでしょうか。これに用いられていたのがルタバガです。
元々はスウェーデン原産だそうで、英国に伝わったのはチューダー朝の時代よりもだいぶ後のようなので、作中には登場させませんでした。
まあ、ジャガイモも登場させるのはちょっと微妙だったんですけどね。
あと、ハギスにスコッチウィスキーをぶっかけて食べる、なんて話もありますが、そこまではやりませんでした。
マスターのお話によると、日本で提供されるものは牛の内臓を使っていたりするケースも少なくないようですが、こちらではちゃんと羊のを使っているそうです。
ブラックペッパーが効いていて、特にくさみは感じません。
もっとも、マスター曰く、それでも苦手なお客さんはいらっしゃるのだとか。
まあ、私は以前『4月29日は羊肉の日なんですってよ、奥さん』というお馬鹿なタイトルのエッセイにも書いたとおり、羊肉のくさみが気になったことがない人間なので。あまり参考にはならないかもしれません。
結構ボリュームはありましたが、ギネス一杯とともに完食。
想像していたよりはずっと食べやすかったです。日本人向けの味に調整されていることと、私が羊肉に抵抗がない人間だったから、ということもあるだろうとは思いますが。
デザートにはクラナハン(クラナカン)というスコットランドのスイーツをいただきました。
これは、ホイップクリームに蜂蜜とスコッチウィスキーを加え、ラズベリーと、ウィスキーに漬け込んだオート麦をあしらったものだそうです(Wikipedia参照。お店のレシピはまた違うかも)。
ホイップクリームの甘みと洋酒の香り、ラズベリーの酸味が混ざり合い、とても美味しかったです。
ちなみに、ハギスは「ハギス」という動物、というか半ば妖精みたいなのの肉だというジョークがあるそうです。
スコットランドのハイランド地方に生息し、嘴があって丸っこくて毛むくじゃらで足は三本、満月の夜に心の綺麗な者だけが目撃できる、とかなんとか……。
もちろんあくまでもネタなのですが、ロマンがあっていいですね(笑)。
<おまけ>
ふと気になったので、ン十年ぶりかでグリコを買ってみた。
最近のキャラメル&おまけはこんな感じです。
思ったよりよいお値段でちょっと驚きました。
下敷きなどで坂を作り、真円形の兎と楕円形の亀を転がして遊ぼう、というものです。
楕円形のなんかちゃんと転がるのかな、と思ったけど、意外に転がります。
何だか童心に返りますね。
というわけで、ハギス実食レポでした。
できれば、一度本場のにも挑戦してみたいとは思いますが……さすがにスコットランドはなぁ(遠い目)。ちなみに、英国はロンドンに一度行ったことがあるだけです。
ま、いずれ機会があれば(笑)。
ではまたお逢いしましょう(^^)ノシ