side エレナ⑤
長期休暇中、私はほとんどの時間を教会にいた。
王立学院だけでなく、他の学院でもこの時期は休みになる為、怪我や病気になり教会を頼ってくる人が増える。
教会に訪れる人の基本はお金がない人だ。
お金がある人は基本治療所に行く。
教会でも寄付という形でお金を頂いてはいるが、いくら払うかは定めていない。無償で治療するときもある。
それでなんで教会が潰れないのか不思議だったけど、神父さんに教えてもらって納得した。
まず、世界にある教会は組織が繋がっており、どこかの教会が資金不足で潰れそうになったとしても、他の教会から援助が入るということ。
ならその他の教会はどのようにお金を集めているのか…。それはどこでも同じである。寄付以外にはない。
お金がない人が来ることが多いだけで、治療には裕福な人も来る。商人や貴族などだ。
その人達はなんで治療所ではなくて、教会に来るのか。それは神への信仰心が強いからだ。
そう言った人は、治療とは関係ない時も教会を訪れて神に祈りを捧げて寄付をしていく。
前に重症の人を治した時、私に寄付としてお金を渡された。もちろん教会への寄付なので、そのまま神父様に渡したけど、中には数えきれない程の金貨が入っていた。
たまにこういったことがあるから、他の人からは気持ち程度の寄付でも教会は成り立つことがわかった
私が教会でお願いされている仕事は他のシスターさんとほとんど変わらない。
掃除をしたり、花を育てたり、食事を作ったりする。
あとは神父様のサポートだ。
治療をする時もあるけど、回復魔法を使っての治療は神父様から禁止されている。
薬を塗って、包帯を巻いたり、患部を冷やしたりするだけだ。
回復魔法を使った方が綺麗に治るのになんで使ったらダメなのか聞いたら、神父様から「どんな怪我や病気でもエレナちゃんが回復魔法で治してたらどうなるかわかるかい?」と言われた。
私はよくわからなかったので神父様に答えを聞いた。
まずは治療所が潰れることになるそうだ。お金がある人がなぜ教会ではなくて治療所に行くのか……それは教会があえて最低限の治療しかしないからだ。
私は回復魔法で少しだけ治すみたいな器用なことは出来ないので、お金がある人も治療所じゃなくて教会に行こうとなってしまうわけだ。
そもそも、教会は治療をするところではなくて、神に祈りを捧げるところなので、治療目的で流行るのは困るとも言われた。
なので私が回復魔法を使うときは本当に使わないとヤバい時だけだ。
でもそのおかげで大分包帯を巻くのは上手になった。エルクよりもキレイに巻けるようになったと思う
長期休暇も終わり、放課後日課となったリーナとの訓練をしていると担任の先生から呼び出しが入った。
話を聞きに行くと、冒険者ギルドから指名依頼が入っているとのことだった。先生は内容を知らないとのことだったので週末にギルドに顔を出すことにした。
最近はずっと教会の方に行っていたので、ギルドに来るのは久しぶりだ。
ギルドに行くと、中等部の訓練に回復要員として参加して欲しいとのことだった。
今回は冒険者としてではなく、教会からの応援として参加して欲しいとのことだ。
私は迷ったけど日程を聞いて受けることにする。
学院長にエルクのチームにはならないように話をしておけばいいだろう
当日、私は待ち合わせ場所に向かったはずだ。
そして気づいたら教会のベッドの上にいた。
神父様に聞いたら、冒険者の方が気を失った私を連れてきたそうだ。外傷もないことからベッドに寝かしていたとのこと
後日、冒険者ギルドに行ったけど、その時に一緒に依頼を受けていた方は王都を離れてしまったとのことで話を聞くことが出来なかった。
トラブルが発生して、訓練が中断したことはわかったけど、詳しくは不明のままだ
体に不調はないし、聞いてもわからないので、なんだかスッキリしないけど一旦置いておくことにする。
そして週末にいつも通り教会でお手伝いをしていたら、弟が私を訪ねてきたと神父様に言われた
私は驚く。
なんで私が教会にいることを知っているんだろうか?
たまたま教会で鉢合わせしたならわかるけど、私を訪ねて来たと言うことは、私がここで手伝いをしていると知っているということだ。
神父様は私がエルクと会わないようにしていることを知らないので、居留守をすることも出来ずにエルクに会うことにした。
客間にいると言うので、私はドキドキしながら部屋にはいる。そして本当にエルクがいるのを見て私は驚く。
エルクは私の方に来ようとして、転んだ。
私が慌てて近寄ると擦りむいていたので、回復魔法をかける
その後、エルクから信じられないことを聞くことになった。
何故かエルクのチームの訓練に同行することになっていて、私は死にかけたらしい。
そして、私を助ける為にエルクが魔法を暴走させたと……
全く覚えていないのでよくわからない。
とりあえず、エルクに確認したところ、まだ自分の特異性についてはスキルをたくさん使えるくらいにしか思っていないようだ。
なので、私が高等部に飛び級して通っていることは引き続き秘密にした。
まあ、これで学院外でならいつでも会えるようになったのだからよかった。
来週にエルクがつくった食べ物を持って来てくれる約束をした。久しぶりにエルクのご飯が食べれる。そう思っただけで口の中に涎が溢れる。
まだまだ話したいことがあったけど、神父様に急患が来たと呼ばれてしまったのでエルクと別れることにした
後日、学院長にエルクと教会で会った事を話に行く
「先日も同じような話をしましたよね?」
学院長の言葉に私は驚く
「え?なんのことですか?」
意味がわからないので学院長に聞き返す
「先日、飛び級したのが私だとバレなければ問題ないはずなので、やっぱりエルクのチームに同行させて欲しいって言いに来ましたよね?」
そんな事を言った記憶はない
「すみません、その辺りの記憶が無くて……。どんな話をしたか教えてもらえませんか?」
「大丈夫ですか?魔物に襲われて大怪我を負ったと言う話は聞いていましたが、そんなことになっているとは知りませんでした」
「はい、体は大丈夫です。でも訓練当日からの記憶がないんです」
「そうか…。何かあれば協力するから遠慮せずに言うんだよ。それでさっきの話だけど、話したのはその訓練の朝だったね。元々君は他のチームに同行するようにしていたんだけど、朝に君がやってきて「エルクは私が飛び級した女の子ってことは知らないから、学院外で会うのは問題ないと思う。だからエルクのチームに同行したい」って言ったんだよ」
そんな事を言ったんだ……
「元々君が言い出した事だし、私も失念していただけでその通りだと思ったから予定を変更したんだよ。急ではあったけど、運良く変更が間に合ったからね。その時に君は教会で働いていることも伝えるって言ってたよ」
「そうでしたか。エルクに住んでいるところを聞かれたので、学院長の計らいで特別に高等部の寮を借りてると……それで何かあれば学院長を通して欲しいって言ってしまいました…」
「ああ、構わないよ。それじゃあエルクくんから君に用事があると言われたら、君に伝えることにするよ」
「ありがとうございます」
「覚えてないみたいだから、もう一度確認するけど、高等部に通ってることは引き続き黙ってればいいのかな?正直、今のエルク君には良い友人がたくさん出来たと思うんだよ。あの頃の君とは周りの環境が違うから、自分の力が他とはかけ離れていると分かってもそこまでヒドいことにはならないんじゃないかな?」
学院長はこんな事を言うけど、私は学院長が言う友人の事をほとんど知らない。
でもエルクが思い悩まないのであれば、力を隠す必要は何もない
「少し時間を下さい。大丈夫だと思ったら私から話しても良いですか?」
エルクから友人の事を聞いて、話をするか決めることにしよう
「大丈夫だよ。話をしたなら2人で私のところに来るといい。これまでのことも私からうまく説明してあげるよ」
「ありがとうございます」
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