逆恨み
翌日、宿屋の店主に温泉が近くにないか聞いたら、温泉がある宿を教えてもらった。
ライバル店だろうに教えてくれるなんて優しい店主だ。
昨日の依頼で予定よりも収入があったので、1日だけそっちの宿に泊まることにしようと歩いて向かう
道中の店に入りつつ進んでいると…
「おい!待てこらっ」
急に後ろで大声がしたので振り返る
そこにはメイカスがいた
どう考えても僕に言ってるよね……
「え、えっと、なんですか?」
僕は恐る恐る聞く
「てめぇのせいでシズネさんにフラれたじゃねえか!」
付き合っていたのだろうか?
シズネさんはそんな事言ってなかったけど。
「それは僕のせいではないと思いますけど……そもそも本当に付き合ってたんですか?」
「もちろんだ。一緒に買い物に行ったり、ご飯を食べたりしたさ。それなのに今朝会いに行ったらあなた達とは昨日解散したでしょう?関わらないでと言われてフラれてしまった」
「……それって付き合ってたんじゃなくて、パーティ組んでただけじゃないですか?」
最初は本当に付き合ってたのかと思ったけど、後半はメイカス個人ではなく、パーティのことを言っているように聞こえた
「そんな訳がないだろう。俺達はあんなに愛し合っていたのに」
「……買い物は何を買って、食事はどこで食べたんですか?」
「2人で食料とかポーションを買ったな。食事は色んたところで食べたぞ。草原や森でも食べたし、ダンジョンの中でも食べたな」
思い出に浸っているところ悪いけど、それは冒険者仲間としての対応だと思う。
「それメイカスさんの勘違いですよ。そんな事言ったら、僕も昨日遺跡でシズネさんとご飯を食べましたよ。もちろん付き合っていませんが……」
僕は指摘してあげる。勘違いしたまま引きずっていても可哀想たから
「ふざけた事ぬかしてるんじゃねぇぞ!」
メイカスは怒って殴りかかってきた
ガキン!
日頃からシールド掛けといてよかった。でもいつまで持つかわからないし逃げないと……
僕は走って逃げるけど、追いかけてきた
「待ちやがれ!」
身体強化魔法を掛けていない僕はすぐに追い付かれるだろう。
僕は逃げるのをやめて、土魔法で自分の周りを壁で囲って立て篭もることにした。
街中だし衛兵さんが駆けつけてくれるはずだ。それまで保てばいい
僕は篭りながら自分に身体強化魔法を掛ける。
これで壊されてもさっきよりは早く逃げれるだろう
壁の外では騒ぐ声が聞こえる
メイカスの攻撃手段はわからないけど街中で流石に高威力の魔法を使ってくるとかは無いと信じたい
しばらくすると、メイカスを取り抑えようとしているであろう声も聞こえてきた
さらに少し経ち、「もう大丈夫です」とメイカスではない声が聞こえたので僕は壁を消して外に出る。
外には衛兵さんに地面に寝転がされて取り押さえられているメイカスがいた。
「大丈夫だったかい?」
「ありがとうございます。助かりました」
取り押さえている人とは違う衛兵さんに聞かれ、僕はお礼をする
「状況を聞きたいので、君も一緒に詰所まできて欲しいんだけど……もしかして迷子?」
衛兵さんは近くに大人がいないのを見て迷子と思ったらしい
「迷子じゃないです。これでも冒険者です」
この流れにはもう慣れたので僕はギルド証を見せる
「確かに冒険者みたいだね。それじゃあついてきてくれるかい?」
「わかりました」
すぐにわかってくれた。
これからは子供扱いで困った時はギルド証を見せよう
僕は衛兵さんについて詰所に行く
何があったのか聞かれたので、一昨日ギルドであった事から説明する
「うん、大体の事はわかったよ。食い違いがあるといけないから向こうの聴取が終わるまで少し待っててね」
すぐに解放はしてくれないようだ。
少し待っていると、メイカスと言っている事が全然違うと言われてもう少し待つことになった。
どうするのか聞いたらシズネさんに話を聞きに行くそうだ
シズネさんが来れば僕の言っている事が合っていたとわかるだろう。
万が一、シズネさんがメイカスと付き合っていたと言うのであれば、メイカスに謝ろう。
しばらくして衛兵さんとシズネさんがやってきた。
「確認が取れたからもう帰って大丈夫だよ。ありがとね」
衛兵さんから帰る許可をもらった
「エルクくん、ごめんね。巻き込んでしまって……」
シズネさんに謝られる
「大丈夫です。怪我する前に衛兵さんが助けてくれましたので。……シズネさんはメイカスと付き合ってたんですか?」
僕は尋ねる
「付き合ってるわけないじゃない。別に彼氏がいるもの」
「え、そうなんですか?」
彼氏がいるのに男3人とパーティを組んでたことに驚きです
「ええ、だから他の人と付き合う気なんてないわ」
なんだかメイカスが可哀想になってきたな
「そうなんですね。それじゃあ僕は行きますね」
時間をとられたけど、温泉は逃げないから大丈夫だ。
そして、温泉がある宿に着いた
昨日泊まった宿とは違って、いかにも高そうである
「いらっしゃいませ。あれ、ぼくだけかい?」
青年に聞かれる。店主にしては若いから息子とかかな
「はい。温泉があるって聞いて、部屋は空いてますか?」
「今日はもう満室なんだ。さっきまでは一部屋空いてたんだけどね、少し前に埋まっちゃったよ。ごめんね」
そんな……メイカスがいなかったら間に合ったってことじゃないか。メイカス許すまじ
しかし、空いていないものはしょうがないので、僕は銭湯で我慢することにする。残念だ
「わかりました。ありがとうございます」
僕は帰ろうとするけど、男性に止められた
「ちょっと待ってな」
青年は奥に行った後、男性を連れて戻ってきた。店主かな?顔がなんとなく似ているし親子だと思う。
「この坊主のことだな」
「ああ」
「坊主、温泉に入りたいんだろ?」
「うん、でも部屋が空いてないそうなので諦めます」
「入っていけ」
「え?」
僕は驚く
「本当は宿泊客以外はダメだが、今の時間なら人も少ないし子供が1人くらい増えたところで誰も文句は言わないだろう」
「でも、いいんですか?」
「子供が気にすんな。店主の俺がいいって言ってるんだからいいんだよ」
「ありがとうございます。いくらですか?」
やった。入れることになった
「だから、そんな事気にするな。いいから入って来い。おい、案内してやれ」
「ああ、それでこそ自慢の親父だ。やったな、入っていいってよ」
やっぱり親子のようだ。
「ありがとうございます」
2人のおかげで僕は温泉に入る事が出来た
僕は帰りにお礼として石鹸の詰め合わせを渡すことにした。
ローザ達、貴族の娘達が喜ぶのだからいいものなのだろう。僕が作ったのではなく、貰い物のおすそ分けとして渡した。
変な気を使うなと言われたけど、お礼の気持ちなのでと言って無理矢理渡した。
僕は昨日泊まった宿に戻って部屋を借りる。
店主に「向こうの宿に泊まるんじゃなかったのか?」と聞かれたので、「部屋が空いてなかったけど、ご厚意で温泉に入らせてもらえました」と答える。
「昔からあいつは子供に甘いな」って笑いながら言ってたので昔からの知り合いのようだ
もしかしたらこうなるのがわかってて、あの宿を教えてくれたのかもしれない。
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